アンデスが付いてくる
そろそろ眠くなってきたので解散。クインシーはアームス達に話をしようと引き止めたので、リーリャをこっそり連れて帰る。
「フッフッフ、今夜は寝かさないぞ」
そんな事を言いながら部屋に戻って3人で風呂に入った。
ベッドでリーリャの腹と太ももを散々フニフニして寝た。が、朝起きるとゼルにくっついている。やはり連れていかれてるのだろう。
ーユーバリーの部屋ー
「お前たち、シャルロッテの話をどう思った?」
「私はいいと思う」
「俺はまだよくわからない。メロンは貴族の食べ物だと教えられてきたから庶民にメロンを?とも思いました。」
「アンデスは?」
「発展に繋がるならやるべきですね。いちご姫の言うことこはもっともだと思います」
「マシューはこういう発想はあったか?」
「ありません。貴族と庶民は違いますので」
「まぁ、大半の貴族はマシューと同じ感覚だろうな。貴族達の反対は大きいだろう。アンデスとユーバリーはどうやったら貴族の反対がなくなるか考えておけ」
「母上、自分は?」
「アームス、お前はよくわからんのだろ?考えても無駄だ。こいうのはやりたいと思った奴がやるべきことなのだ。別に私は無理矢理やれと言っているわけではない。問題はメロンに限ったことではないからな。こういった問題は常に発生する。ひとつの勉強だと思えばいい」
「はい」
アームス達が自分の部屋に帰り、ユーバリーが寝た後にクインシーとジルベスターが話をする。
「しかし、いちご姫様の発想はいつも面白いですな」
「あぁ。王族の娘とは思えん。母親が庶民だったとはいえ育ったのは王宮。庶民との触れ合いも無かったはずだ。どうやったらあのような発想になるのかわからんな」
「しかし、裾野を広げて才能あるものを探すというのはその通りでございましょう。それに以前肥料のアドバイスもしてくれました」
「うむ、本を読んでいたとはいえ、未知なる物を知りすぎているな。もしや神託を受けているのではあるまいな?」
「神託?」
「神はシャルロッテに何かをさせようとしているのかもしれん。あいつはそれを隠しているのか、知らぬ間に神託をされているのかよくわからんがな」
「神に愛されていると?」
「愛されているなら神は初めからもっと良い境遇にしていたのではないか?庶民よりかは遥かによい境遇ではあるが、王族としては良くないだろう?」
「そうですね。実家を離籍しなければならないような境遇でしたからな」
「本件は少し考える。この事は他言するな」
「はっ」
翌日、食堂のおばちゃんにスライサーをプレゼントし、ラーメンを発注しておいた。そして夜にユーバリーの部屋にメロンケーキが運ばれてくる。
「え?これ誰が作ったの?」
「合格でしょうか?」
「あ、コックさんも来てたの?」
「はい。メロン家の料理メイドにようやく仕込み終えました。他の菓子も仕込み済でございます」
「来てるのぜんぜん知らなかったよ。よかったらプリン覚えて帰る?」
と、コックにプリンを教えた。これ単品でもいいし、シャーベットやケーキ何かと組み合わせて生クリームとメロンをあしらったプリン・ア・ラ・モードとか出来るよとアドバイス。レムのお料理教室はとても役に立つ。
「これはまた研究するものが増えました」
と、喜んでいた。
そしてクインシー達が来て一週間が経ち、みんな帰ってしまった。
「姫様、寂しいのですか?」
「うん」
「また来月来て下さいますよ」
「うん」
クインシー達が帰ってから、アンデスがよく来るようになった。ラーメンの売り込みの話を聞きに来ている。経済学コースに進むのに実際にどうやって物が売れていくのか見たいらしい。ユーバリーの私も付いていく攻撃がでるが、ユーバリーは護衛付きになるのではっきりと断った。商売にならないと。
アンデスは男なのと、ゼルがいるから大丈夫と護衛を説得したのである。
「いちご姫、どこに売りにいくのですか?」
「干し肉とか色々売ってる店。移動商人はそこで携行食を買うみたいだから」
精肉を売ってる店でも干し肉とかは手にはいるけど、雑貨店みたいな所があり、そこに売りにいくのだ。
「すいませーん」
「いらっしゃい。何かお探しですか?」
「いえ、売り込みに来ました」
「売り込みに?」
「はい、ラーメンという携行食品です。こういうものなんですけどね」
と、ギルドでやった事と同じ説明と試食をしてもらう。
「これから寒くなる時期に向けて売れると思うんです。各国の商売人がまず食べて、これが売れるとなれば仕入れもしていくと思うんですけど」
「うちはいらないよ」
「分かりました。お時間を取らせてすいません。ただ、これ大量生産はまだできないので、後から仕入れるといってもお答え出来ないかもしれません」
「そうかい」
と、ここでは断られた。
「良いのですか?」
「別にいいよ。本命は2番目に大きな店だから」
「ん?どういうことですか?」
「ここは一番大きな店だから、仕入先には強気でしょ。無理矢理売っても買い叩かれるから。利益薄いのに値下げさせられたら売る意味ないの」
「0よりいいんじゃないですか?」
「大量生産して売り先に困ってたらそれでもいいけど、おばちゃんが作ってるから無理して安売りする必要もないんだよ。適正な値段で買ってくれるところだけでいい」
次は2番手の店。
同じ説明をする。
「うーん、見たことが無いもは売れるかどうかわからないからねぇ」
「先程、一番大きな店でも断られましたので、あそこには卸しません。もしこれが評判になったら他のもついでに売れるのでここが一番大きな店になるかもしれませんけど?」
「そんなにうまく行くわけないだろ?」
「では、3番目の店に売りに行きます」
「そこで売れるようならこっちでも仕入れてやっていいぞ」
「いえ、卸しませんよ。というか生産が追いつかなくなると思うので無理だと思います」
そういうとフフンと笑われた。
「ここが本命じゃなかったのですか?」
「あまり感じの良い対応じゃ無かったから別にいいかな。次行ってみよう!」
と3番目の店に。
「うーん、新しい商品ねぇ」
「あそことあそこで断られました」
「だろうな。見たこと無いものってなかなか売れないんだよ」
「ここも同じ考えですか?」
「そうだね。試しに少しなら仕入れてあげてもいいけど」
「店を大きくするチャンスだとおもったんですけどね」
「どういうことだい?」
「最大手と同じような品揃えしてても勝てないですよね?絶対に品揃えの種類の多さで負けますし」
「何が言いたいんだい?」
「ん?このままで満足されてるなら別にいいです。上を目指している店に売りに行きますので」
「そりゃあ、誰だって最大手を目指してるに決まってるじゃないか」
「なら、新しい物にチャレンジするべきですよね?挑戦しない人にはチャンスは来ませんよ」
「お嬢ちゃん小さいくせに難しい事を言うね?」
「当然です。学生は常にチャレンジしてますから。ラーメンは卸値が1つ銅貨3枚。100仕入れても銀貨3枚。掛け金としては少ないと思いますけどね。どうします?」
「お嬢ちゃん話面白いな。よし、100仕入れてみるわ」
「取りに来てくれたりします?学生なので時間の融通があまりきかないもので」
「どこにだ?」
「学園の庶民食堂。いちご姫から仕入れたと言ってもらえばわかります」
「いちご姫?」
「私のあだ名です。髪の毛がいちごみたいでしょ?」
「本当だな。別にいいぞ。あそこには野菜配達したりしてるからな」
「そうなの?」
「うちみたいな所はあまり儲からない仕事も受けないとやってけないからな」
「へぇ。ならちょうどいいね。明日食堂にくる?面白い調理器具があるけどそれを見せてあげる。まだ売り出してないけど、それを売るなら仕入れてあげる」
「調理器具?」
「そう。そのうちみんな使うようになると思うんだ」
「まぁ、明日行けばいいんだな?」
「うん。昼ご飯の時間が過ぎた頃に来てくれる?」
「分かった」
「何をするんですか?」
「スライサーを取り扱ってもらおうかな」
「ポテチのやつ?」
「そう。メロンで売るよりここの方が数が出そうだからね。あと、ピーラーも作って貰おうかな」
「ここだけ熱心に話をしてたな」
「うん、将来この店の近くでポーション屋やれたらいいなと思って。ちょっと中心地から離れてるから家賃とか安そうだし。その時に仲のいい店があると何かと便利だし、流れの商人が多く集まる店だと相乗効果もあるしね」
「そんな先のことまで考えてるのか?」
「そう。出来上がってる場所は家賃も高いから。今の店は条件にピッタリね」
「ポーション屋をやれなかったらどうするんだ?」
「ん、プリン屋とかでもいいかな。それにプリンスメロンが庶民でも作れるようになったら、あの店に私が卸してもいいし」
「あれ、まだ決まったわけじゃないですよ」
「ダメだったらダメで別にいいよ。色んな種まきしておくとどれか芽を吹くだろうし、何もしなかったら何も生えないからね」
アンデスは感心した。目の前の事でなく、ずっと先の事まで考えているシャルロッテに。
そして、自分の妻にするならこの娘しかいないと思ったのであった。




