冒険者ギルドでの出会い
がーっはっはっ
ギルドの飲み屋は盛況だ。ここは中立都市で強い魔物とかはいないが移動の中心でもあることから護衛依頼が多く、冒険者の数も多いらしい。
「お、食いに来てくれたのか」
ラーメンを仕入れてくれた人だ。
「うん。ラーメン食べてる人いるかなって」
「おー、それがよ。酒飲んだ〆に勧めたらよく出るようになったぜ。もうすぐ売り切れるぞ」
「なら、発注しとくよ。100でいい?」
「おう、明後日取りに行くぜ。で、今日はべっぴんさんと強そうなの連れてんな」
「うん」
と、クインシーの正体は明かさないでおく。騒ぎになるからな。
クインシーが適当にメニューも見ずに注文する。ギルドのメニューはどこも似たような物らしい。
酒無しは俺とアンデス、ユーバリー。他は皆ビール。俺も飲みたい。
運ばれて来たのは串肉とか揚げ物とかだ。
「この串肉、硬いけど結構美味しいね。なんの肉?」
「オークだ。うちの食堂で出てくることはまずないな」
oh!ファンタジー肉か。硬めの豚って感じだな。焼き鶏もうまいけど、魔物の肉なんだろうか?
「リッカ、錬金術は何をメインに教えてるのだ?」
と、クインシーはリッカに質問か尋問かわからないものを始める。
「主にポーションです。鉱物関係は他の物が教えてます。魔道具も別ですね」
「シャルロッテ、お前はポーションメインでいいのか?」
「魔道具も興味ありますね。魔法コースがダメになったので、錬金術の中でも色々学べるといいですね」
「そうか。まぁ、好きに学べ。リッカはポーションの販売はしているのか?」
「いえ、開発だけです。いくつかは権利を持ってるので、個人の実験の財源になってます」
「開発には金が掛かるからな。どこかの国に属したら研究資金には困らんだろ?」
「やりたくない研究もやらされますからね。やりたいことをやれる学園の教師の方がいいのですよ」
「なるほどな」
リッカは飯をバクバク食っていた。食費より研究費に回しているのかもしれない。
「ポーションって、どこで売ってるの?」
と、クインシーに聞く。
「だいたいギルドだな」
「ポーション屋って儲かると思います?」
「ギルドより安いとか、性能が良いとか差別化出来たらな。シャルロッテはポーション屋をやるつもりなのか?」
「卒業したら食い扶持を探さねばなりませんからね」
「うちにくればいいではないか」
「お世話になりっぱなしなのもどうかなって」
「つまらんことを気にする奴だ」
「学生の間は甘えさせて頂きますよ」
ワイワイガヤガヤするギルドの飲み屋。色んなタイプの人がいるよな。驚いたのは結構女性もいることだ。
「女の人の冒険者って意外といますね」
「あぁ、護衛とかでも女性限定とかあるしな。ほら、移動中の着替とかトイレとかあるだろ?」
そうか。女の人のそんな所に男の護衛とか来てほしくないよな。
時間が遅くなるに連れてガラの悪そうな奴が増えてきた。
「よう、赤髪の嬢ちゃん」
「おっちゃん、話し掛けてるだけ?それとも絡んでる?」
「誰がおっちゃんだっ。まだ26だぞっ」
「そんなヒゲはやしてるから40くらいかと思ったよ」
「うるせぇっ」
「で、絡んでるならやめた方がいいよ。強い人多いから」
「絡んでるわけじゃねーよ。お前がラーメンを考えたんだってな?」
「そうだよ。気に入った?」
「おう、旨えなあれ」
「だろ?あれに卵落として、胡椒を掛けたの好きなんだよね」
「おー、卵か。そりゃいいな。今度やってみるわ」
「おっちゃん、ソロでやってんの?」
「いや、パーティー組んでんぞ。あっちにいるのが仲間だ」
と指さした方を見ると、男二人と女二人いた。
「なに?おっちゃんだけ女いなくてあぶれてんの?」
「痛いとこ付くなよ」
あ、図星だった。
「寂しいならここで一緒に飲む?でもおさわりしたらぶっ飛ばすからね」
そういうとクインシーとジルベスターが大笑いした。
「おい、貴様。ここで一緒に飲んでも構わんが、シャルロッテは本当に強いぞ」
「そうかい。ならお邪魔させてもらうわ。嬢ちゃんシャルロッテって言うのか。いい名前だな」
「ありがとう。おっちゃんは?」
「俺はバトラー。こう見えてもB級持ってんだぜ」
「ほう、貴様はB級か。ガーデンの冒険者で珍しいな」
「いや、ここに所属してるわけじゃねぇ。護衛依頼でよく来るがな」
「いつもはどこでやってる?」
「所属はルーシアだ」
「帝国のギルドか」
「そうだ。よく知ってんな。姉さんは冒険者か?」
「元な」
「どこでやってたんだ?」
「ん?初めはマーセナリーだ。その後転々としてたがな」
「傭兵の国か。なるほど、危なそうな雰囲気を持ってると思ったぜ」
「それを探りに来たの?」
「いや、歳上だが美人に引き寄せられたんだ。嬢ちゃんの母ちゃんか?」
「義理のね。多分俺はあんなにフワッフワにならないよ」
「そっか、姉さんフワッフワなのか?」
「もう、完璧。おっぱい枕とか俺をダメにするからね」
「そりゃ羨ましいぞ」
クインシーはそれを聞いてクックックと笑うが、ジルベスターは渋い顔をしていた。
「で、リーリャはホニホニでムッチムッチでね」
「シャルロッテ様、やめて下さいよっ。こんな知らない人がたくさんいるところでっ」
「いいじゃん。自慢したいんだよ。おっちゃん、理解者だから」
「おっちゃん言うなっ。しかし嬢ちゃんは様付けで呼ばれてんのか?」
「そう。私、いいとこのお嬢様なんだよ。オーッホッホッホ」
「いいとこのお嬢様がこんな所に来るかよ」
「いいじゃん来たって」
アームス達は俺がイカツイ冒険者と普通に話してるのを信じられないようだった。
「嬢ちゃんいくつだ?」
「10歳」
「俺とか怖くねぇのか?」
「この前イカツイ奴らと大暴れしたしね」
「イカツイやつ?」
「そ、おっちゃんみたいな奴がゼルの尻を触ったからやっつけたら乱闘になってさ」
「へぇ、こいつは女か?」
「よく見ると美人だろ?触んなよ。俺のだからな」
「フハハハ、お前面白いな。ちっこくて黙ってりゃお嬢様なのによ」
「よく言われる。お姫様みたいだろ?」
「あぁ。今度どっかに行くなら護衛受けてやるぜ」
「ありがとうね。そん時は安くしてね。ラーメンはサービスしてあげるから」
「おうっ。任せとけ。じゃ、アイツラが呼んでるからか戻るわ。またな」
「またね」
バトラーという冒険者は元の席に帰って行った。
「姫様、あまり変な奴に関わらないで下さい」
「見た目はイカツイけど変な事しなかったじゃん」
「そうですけどっ」
「みんないるのに何も心配することないじゃん。それにポーション屋をやったらあんな人がお客さんで来るんだからさ」
「それはそうですが」
ゼルはあの手の人とは関わってほしくないようだ。
「少し飲みたらんが、腹は膨れたな。何かつまみないか?」
クインシーがビールのジョッキをふらふらさせながら聞くのでジルベスターが答える。
「カリカリポテトが恋しいで・・・。あ、いちご姫様、スライサーを預かってたのを失念しておりました」
「持ってきてくれたの?」
「はい」
「じゃ、帰ってポテチ作ろうか」
ということで酒と唐辛子を買って帰った。唐辛子はそんなに細かくないけど仕方がない。
リッカ先生はごちそうさまでしたと学園に帰った。先生用の宿舎があるらしい。
ジルベスターが2種類のスライサーを持ってきてくれた。今日はポテチにする。俺の部屋は狭いのでユーバリーの部屋に移動して作る。塩のみのと辛いのを作って貰った。
飲む人は辛いポテチをつまみ、俺はリーリャの腹をつまんでいた。
マシューが今日の事を聞いてくる。
「お前はあんな奴らとか怖くないのか?」
「別に。ゼルたちもいるし、あの人からは嫌な雰囲気とかなかったじゃん。ベロベロに酔ってたわけでもないし。それに兵士達で慣れてるからね。マシューは怖かったの?」
「こ、怖いとかじゃない。慣れてないだけだ」
確かに、周りにはお育ちの良い人しかいないだろうからね。
「あと、錬金術コースに進む時はリッカ先生の研究室に入るのか?」
「リッカ先生はポーション系で一番なの?」
「そうだ。希望者は多いけど研究室に入れるのは極一部だ。成績が良くても入れないんだ」
「先生、探究心の無い奴はいらんって言ってたじゃん」
「あれ、どういう意味だ?」
「疑問に思って追求するとかそんなとこじゃない?今まで出来てるものを出来るとかどうでもいいんだと思うよ」
「ん?」
「今までにないものを作りたいんじゃない?より高性能なポーションとか違う効能とか」
「今までの物でも十分ではないのか?」
「そういう考えだからいらないって言われんだよ」
「わ、私も錬金術コース目指そっかなあ」
「バリ姉は植物育成に行くんじゃないの?」
「だって誰もいかないんだもん。アームスにぃは帝王学、アンデスにぃはどうすんの?」
「経済コースにしようかと思ってる」
「あれ?ストロベリー家は帝王学か植物育成しかダメとか言われてたけど、メロンはそういうのないの?」
「やりたいことをやればいい。上に立って自分ができないことは出来る奴にやらせばいいからな。何に進んでも経験だ」
これは冒険者だったクインシーの考え方なんだろな。メロンはクインシーがいるから国として強いのかもしれない。
「バリ姉、植物育成は重要だと思うよ。フルーツや野菜育成革命とかやればいいじゃん。国全体の発展につながるよ」
「そうなの?」
「ポーションが必要な人は一部だけど、食べ物は全員が必要だからね。庶民も気軽にフルーツが食べられる国にしてあげなよ」
「そっ、そうね。それもいいかもっ」
「マスクメロンとかは栽培技術がいるだろうけど、プリンスメロンの露地物とか庶民でも普通に育てられると思うんだよね」
「シャルロッテよ、フルーツ栽培は許可制なのだ」
「どうして?」
「高貴な者が食べる物だからだ。くだらんだろ?」
「じゃ、プリンスメロンは瓜扱いにして野菜って事にすればいいんだよ」
「お前は悪知恵が働くな」
「フルーツなんてそんなもんだと思うけどね。より甘く品種改良したものや特別な栽培方法のものとかだけ規制したらいいと思う。でも生産する人が増えたら新しい品種が出てきたり、より良い栽培方法とかでて来るかもしれないし。裾野を広げた方が発展するよね。いっその事、毎年美味しいメロンの品評会とかやればいいのに」
「庶民に作らせてか?」
「そう。思わぬ才能持った人がいると思うよ。神様も美味しいのが供えられたら喜ぶんじゃない?」
「うむ、帰ったら検討しておこう」
ジルベスターはシャルロッテの意見を食い入るように聞いていたのであった。