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嫁になんていかないからねっ。  作者: しゅーまつ
未成年編

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52/118

魔法コースの教師

「クインシー様」


クインシーが職員室に行くと教師達が立ち上がって頭を下げる。


「良い。本日はシャルロッテに魔法適正なしと言った教師に会いに来た。どこだ?」 


ざわっ


教師陣はクインシーが後見人をしているシャルロッテに才能が無いと言った魔法コースの教師が粛清されるのだと受け取った。


「ご、ご案内致します」


そう震えながらこちらに来たのはシャルロッテの担任の先生。


「クインシー様、姫様の担任の先生でございます。姫様にとても優しくして下さり、姫様も大変お喜びでございます」


と、ゼルが担任教師を紹介する。


「そうか、シャルロッテは寂しがりやだ。宜しく頼むぞ」


「は、はいっ」


クインシーはシャルロッテと接するようになって、王妃モードから冒険者モードでいることが多く、今日もそのままだった。



魔法コースの教師の研究室へと案内され、担任の先生はすぐに帰っていってしまった。


「先生、姫様の件で伺いました」


そう扉の前でゼルが声を掛けると扉が開き中へと入る。



「クインシー様。このような場所で申し訳ございません」


「構わん」


「シャルロッテ様の件でございますね」


「それもあるが、賢者を測定出来た魔道具に付いて聞きに来た。なぜ貴様がそのような物を持っている?」 


「私は代々神官を務める家の者でございます。私は生まれた時から魔力が多く、神官の勉強はそっちのけで魔法の研究ばかりをしておりました。それもあって、親から神官より魔法使いになれと言われて追い出されました。跡継ぎ問題もございましたので追放と変わりません」


「で?」


「家の物も知らない魔道具が倉庫の中にあり、私はそれが魔法使いのランクを測定する機械であることを知り、追い出される時に持ち出したのです」


「どのような物か見せてくれ」


「クインシー様、申し訳ございません。私が斬って壊してしまいました」


「それは残念だな。その魔道具の出元はわかるか?」


「いえ、その記録はございません。が、恐らく今は無き魔法国家、マジマジアの魔道具ではないかと思っております。マジマジアが滅ぼされたおりに様々な魔道具や魔法に関する書物が強奪されたとの記録がございましたので」


「なぜそれが教会にあったのだ?」


「それはわかりませぬ。使い道のわからない魔道具だったので寄付されたのかもしれません」


「そうか、邪魔をしたな」


「クインシー様、私は生きていて宜しいのですか?」


「シャルロッテが命を張って助けた者をどうしろというのだ?」


「本日は私を・・・」


「魔道具の事を聞きに来ただけだ。他の教師には魔力適正無しと言った事で説教を食らったとでも説明しておけ」


「ありがとうございます」



クインシーとゼルは街でビールを買い込み、シャルロッテの部屋に戻った。


ゼルにポテトを揚げさせ、ビールを飲むクインシー。ゴッゴッゴッゴ。プハッ


「ふぅ、賢者を判定した魔道具はお前の国の物だったんだな」


「あれは一般的な魔道具かと思っておりました。形は違いましたが私も幼き頃に測定した事があります」


「そうか、それで疑問に思わなかったのだな。それよりお前も飲め。ジルベスターがいるから護衛の事は心配するな。一人で飲んでもつまらん」


「ジルベスター様はユーバリー様の護衛なのではありませんか?」


「宿舎にいる間はいらんだろ?それにユーバリーはシャルロッテの所に行くだろ」


「そうですね。ではお付き合い致します」


ゼルもマジマジアが滅ぼされ、魔道具や書物が奪われたのは理解していたが、それを改めて聞かされ少し神経が高ぶっていた。


「あの教師、お前の事に気付いているのではないか」


「あの教師の前で姫様に治癒魔法を掛けましたからそうかもしれません。マジマジアの事も知っていたのならその可能性が高いです」


「ふむ、ではやつは大きな秘密を2つ抱えたのか。精神的に病むかもしれんな」


「どうされますか?正気を失うと秘密を漏らすやもしれません」


「しかし、シャルロッテが腹を刺してまでお前を止めたのだ。どうこうするわけにはいかん。いっその事、こちらへ引き込むか?」


「引き込む?」


「お前が魔力を抑える魔法をシャルロッテに教えるか?」


「姫様に私の秘密を背負わせる訳には参りません」


「だろ?魔力を抑える魔法ってどれだけの奴が教えられるのだ?少なくともメロンにはおらん」


「た、確かに魔力を抑える魔法が必要な者などほとんどおりませんから」


「あの教師、マジマジアの書物をかなり読み込んだのではないか?もしかしたらまだ持っているやもしれんぞ」


「あっ」


「よし、ちょっと手は考える。引き込む事に依存はないな?」


「はい」


クインシーはあの魔法コースの教師を引き抜いてシャルロッテの家庭教師にしようと考えていた。ただ、中立都市の教師をメロンに引き抜いてしまうと他国との争いの種になる可能性があるので、良い案がないか策を練ることしたのである。


「クインシー様、私の身分がメロンの騎士爵になっていたのですが問題があるのではありませぬか?」


「シャルロッテはメロンの王族にしてあるからな。それを護衛するにはメロンの騎士である必要がある。メロンの騎士は全員貴族だ。それとも騎士爵では不満であったか?」


「いえ、不満などございません。ただ申し訳なく」


「気にするな。お前には給料、シャルロッテにはお小遣いも入るぞ」


「そ、そんな事をして頂くわけにはして参りません」


「気にするな。シャルロッテとお前は好きにすれば良い。別にメロンに縛り付けるつもりはない。他の国から誘われた時にも断りやすいだろ。給料とお小遣いはメロンの者だという実績作りの為だ」


「他国から誘われる?」


「シャルロッテをメロンの王族にしたのもそのせいだ。どこからもちょっかいかけられないのであればここまでする必要はなかったんだがな。そのうちシャルロッテに近付く者が増える」


「なるほど」


「ま、成人するか卒業するときにどうするか自分で決めさせてやれ。このままメロンの王族になるもよし、ならぬもよしだ。アームスやアンデスの嫁になるつもりもメロンの王になるつもりもないのだろ?」


「と、思います」


「私の代わりに軍の統括をしてくれても良いのだがな」


「姫様はムカついたら自ら前線に突っ込みそうです」


「ふははははっ。そうかもしれん。というか軍が不要になるかもな」


「はい。それは有り得ます」


と、冗談めかして言ったクインシーにゼルは真剣な顔をして答えた。


「例えば、姫様と私が魔法攻撃を行うとします。クインシー様、ジルベスター様、ゾイド様が近距離攻撃の盾になって頂けたら、もう軍は不要です。一国を滅ぼす事が出来るでしょう」


「それほどか?」


「賢者とはそういう存在だと言うことです。それだけに暗殺の危険が伴いますし、他国が連合を組んで先に滅ぼそうとするやもしれません」 


「そうか・・・。ギフトに加えて賢者にするとは、神はあやつに何をさせるつもりであろうな」


少しの静寂のあと、二人はまた飲みだした。



ーユーバリーの部屋ー


「かぁ様達はどこに行ったのかしら?」


庶民食堂からユーバリーの部屋に戻った。クインシー達がここへ戻ってくると思ったからだ。


シャルロッテはリーリャに思う存分フニフニしている。


「シャルロッテ様、その・・・お腹はちょっと・・・。ジルベスター様もいらっしゃいますし」


ジルベスターの前で腹をフニフニムニムニし続けられ、リーリャは辱めを受けているような気になっていた。


「だって、ゼルは硬いし、バリ姉も肉ないし、フニフニ、ホワホワに飢えてたから仕方がないじゃない。太もも触っていい?」


「嫌です。またムッチリとか言うんでしょっ」


「うん」


「もうっ」


「なんで?褒め言葉だよ」


「違いますっ」


「ね、お父さん。そうだよね?」


「う、うむ・・・」 


いきなりそんな振りをされたジルベスターは赤くなってそう答えた。


「ほら。女の子はフニフニムッチリしてる方がいいんだよ」


「もうっ。やるなら男の人がいないところでやってください」


「え?いいの?」


「飢えてらっしゃったのなら仕方がありません」


リーリャもシャルロッテが嬉しそうにフニフニにしてくるのは嫌ではないのだ。自分もシャルロッテの手触りの良い髪を撫でられるし。


「バリ姉、リーリャ連れて帰っていい?」 


「いいけど。私もそっちに泊まる」


「えー、狭いじゃん。あのベッドで4人で寝るの無理だよ」


「なんで私だけ除け者にするのよっ」


「え?フニフニしてないから」


「ゼルも硬いじゃない」


「だから硬いのは間に合ってるの。下着姿に猫ミミとしっぽつけたら寝に来てもいいよ」


ジルベスターは女だけの空間にいるのがとても気まずい感じだった。



その頃のクインシーとゼル


ゼルがビールのつまみとして肝炒めを作り、ますますビールが進んでいた。


「うはははっ。やはりこういうのが良いな。王宮は堅苦しくてな。冒険者時代の頃が一番楽しかった」


「王妃様はしんどいのですか?」


「まぁ、良いこともたくさんあるが、誰も逆らいもせず、私には気を使うだろ?それが窮屈でな。その点シャルロッテは実に面白い。しれっと私に乳を揉ませろなんて言ってきた奴は初めてだったからな」


「クインシー様は魅力的でございますから」


「冒険者時代も初めはモテたぞ。全部返り討ちにしたがな。それからは言い寄ってくる男などおらんかったのが、マスクは私なんかに花束を寄越しおってな」


と、ご機嫌のクインシーはマスクとの出会いを話だした。


「どこで見初められたのですか?」


「ある魔物の討伐をしたときに報奨式というのがあってな。そこでひと目惚れされたようだ。初めは王子の癖に何をやっておるか?と思ったが、その後もしつこく花束を寄越してきてな、根負けしたってところだ」


「クインシー様は仕方がなく結婚されたのですか?」


「どうだろうな。初めはそうだったかもしれん。男みたいな私にこれだけ本気で惚れてくれる男はもう出て来ないかもと思ったのだ。メロンの王子の立場を捨てても良いとまで言って来たからな」


「へぇっ。熱烈ですね」

 

「マスクは私をS級ではあるが平民だと思ってたからな」


「クインシー様はマーセナリーの姫様でもあられましたね」


「それがまた問題になってな。マーセナリーは傭兵国家。そこの姫を嫁にもらうなどとメロン王宮は揉めたのだ」


「それでマスク様はなんと?」


「クインシーはクインシーだ。平民でも傭兵でも何でも構わんと押し切ったのだ。もう結婚せざるをえんだろ?」


「確かに」


「あやつは私が出した他に女を作らんという条件もけなげに守っておるしな。まぁ、幸せではある」


クインシーは少し優しい顔になってゼルにのろけたのであった。



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