イケない遊びはバレる
翌日からも似たような生活が続く。バリ姉に貰った制服はゆったりしていて楽だ。大きめの制服はゼルから新入生の頃を思い出しますと言われた。
今日も他の所にラーメンを売りに行きたかったけど、まだ本調子ではないので出掛けるのは食材を買いにいくだけにしておく。食堂に行くのも昼食だけ。朝と晩飯はゼルが作ってくれる。
そしてメロン家でお世話になった人々に手紙を書いてユーバリーに託しておいた。
「シャルロッテ、出来たわよ」
他生徒のザワザワとヒソヒソがようやく収まり、ゼルが殺気を消した事からコトカ達が寄って来たのだ。
「猫耳?」
「そう。お昼ご飯のあと遊びに行っていい?」
「いいよ」
「おばちゃん、レバーと小松菜」
「あんたはひとつ食べだしたらずっとそれだね」
「うん、同じものが続いても平気」
もうレモンは始めからジャバジャバ行く。そのうちあだ名がレモン姫様になりそうだ。
飲んでるのもレモン炭酸水だからな。
ユーバリーとゼルは鶏肉のフライを食べていた。
部屋に戻ってしばらくするとコトカ達がやってきた。
「はいこれ」
「おー、バッチリじゃん。よく出来てるよ」
「結構頑張ったのよ」
「うんうん、ありがとう。じゃ、バリ姉これつけて」
「本当にやるの?」
「当然。めっちゃ似合うと思うよ」
と、猫耳としっぽをつけさせる。
「下着姿になる?」
「ならないわよっ」
水着でもいいんだけどな。仕方がないので服のままだ。
「うん、よく似合ってる。ちょっと手をこうやってみて」
と、猫手をさせる。
じゃ、次はこうやってと、猫々させていく。めっちゃ似合うわ。もう獣人といっても過言ではない。
「ゼル、そのソファーに座って腹筋出して」
「え?」
「いいから早くっ」
ゼルが自分でシャツを持って腹筋を出したところに猫ユーバリーにじゃれさす。
「うひゃひゃひゃ」
ユーバリーもSっ気が出てきたのか、うりゃうりゃとちょいちょいしてゼルの反応を楽しみ出した。やめてっやめてっと言いながら腹筋を隠さないゼル。それを見て赤くなるコトカにふんふんと興奮するアキ。
やらしておいてなんだけど、とてもイケない遊びをしている気がする。
が、俺も参戦しよう。
今度は猫耳ユーバリーの喉をごろごろする。ゴロにゃんするユーバリーはゼルをちょいちょいし、ゼルはみもだえる。
コンコンと扉をノックされたのも気付かず遊んでいると、ゼルがたまらず声をあげた。
「もうダメーーっ」
ガチャっ
「どうしたっ」
と、入って来たクインシーが見た光景は自分の娘が猫にされ、身もだえるゼルにちょいちょいし、シャルロッテにゴロにゃんされている姿だった。
「何をやっとるか貴様らっ」
そしてクインシーの後ろにはリーリャとジルベスターがいた。
「ったく、メロン家の姫に何をさせてるんだ」
「ケモミミ娘ごっこ」
クインシーが怒ってるのでコトカ達は帰ってしまった
「獣人の真似事なぞさせるな」
「獣人って本当にいるの?」
「他国にはいる」
「それは探しに行きたい。本物のケモミミをフニフニしたい」
「ったくお前は」
「それにしてもクインシー様はどうしてここに?ジルベスター様もリーリャも」
「私は学園の視察、ジルベスターとリーリャはユーバリーの世話だ」
あ、交代で来たのか。
手紙は入れ違いでメロンに行ってしまったじゃないか。
「ん?シャルロッテ、少し顔色が悪いか?」
「ちょっと貧血がでてるだけです」
「シャルロッテはレバーばっかり食べてるの。よくあんな不味いの食べるわよね」
「そうか。レバーは貧血にいいからな」
「クインシー様達も晩御飯ここで食べます?レバーと小松のごま油炒め美味しいですよ」
「ビールはあるか?」
「あるわけないです」
「そうか残念だ。ここは狭いからユーバリーの部屋で食うか。ゼル、そこで作ってくれ」
と、言われて移動する。が、少しふらついてしまったので、ジルベスターがおぶってくれた。
「いちご姫様。大丈夫ですか?」
「お父さんにおぶってもらいたかっただけです」
そういうととても嬉しそうにしてくれた。
ユーバリーの部屋もアームスと同じく豪華で広い。
ゼルがレバーと小松菜炒めを作ってくれる。ユーバリーはメロンを食べるそうだ。
「む、旨いなこれ」
「本当ですな。これはビールが欲しくなりますな」
クインシーとジルベスター絶賛。リーリャはメロンを食べだした。
恐らくクインシー達は理由を付けて会いに来てくれたのだろう。ジルベスターは護衛なんてしてないし、リーリャも一緒に飯を食っている。
寂しくなった心が一気に満たされた気がした。
「クインシー様はどこに泊まるのですか?」
「シャルロッテはゼルと一緒に寝ているのだろ?」
「はい」
「なら、空いてる部屋を使う。ここはジルベスターとリーリャが使うからな」
「わかりました。ご自由にお使い下さい」
どうやら3人とも次の交代までいるらしい。
しばらく話をして部屋に戻るときにジルベスターがおぶって送ってくれた。
3人で風呂に入りクインシーにフワフワ枕をしてもらうと、とても安心する。
そして風呂から出てラーメンが売れだした事を報告する。魔力測定の件は心配するだろうからクインシーには話さなかった。
翌日、俺の護衛にジルベスターが付いた。ユーバリーは学校には護衛を連れて行かないから問題ないらしい。それならゼルは不要だろうと、クインシーが連れて行ってしまった。
ザワザワザワザワ。
護衛がゼルからジルベスターに代わり、リーリャも付いてきた。リーリャが付いて来たのは男性に身の回りの世話は無理だろうとの事だ。お付きを二人連れて学校にくる人はいない。ジルベスターはゼルと違ってデカいし、見るからに威圧感がある。そりゃざわつかれるよな。
「シャルロッテさん、今日の護衛の方は・・・」
「先生。お気になさらずに」
と、ジルベスターが言うと先生は少し赤くなった。好みなのだろうか?
休み時間にリーリャが制服に気付く。
「シャルロッテ様、その制服はユーバリー様の物ですか?」
「そう。服が小さくなってバリ姉がくれたんだ。よくわかったね」
「メロンの刺繍が入ってますからね。少し大きめが可愛らしいです」
「メイド服にも刺繍入ってんの?」
「入ってますよ、ほらここに」
「へぇ。ぜんぜん知らなかった」
「アームス達のも入ってんの?」
「もちろんです」
「マシューは?」
「マシュー様?、マシュー・ホカドー様ですか?」
「そうそう」
「メロンの刺繍が入ってるのは王族と王宮勤めの者だけですよ」
「そうなんだ」
それを俺が着ていていいのだろうか?
放課後になったらユーバリーが教室にやって来た。
「シャルロッテ、一緒に帰ろう」
ザワザワザワザワ
「珍しいしいね、ここに来るの」
「ちょっと早く終わったからね」
ユーバリーはメロン王国の姫だから知っている人が多いので注目を浴びるなか下校したのであった。
「クインシー様、ご報告があります」
「シャルロッテの体調の件か?ただの貧血ではないのだな?」
「はい、実は」
と、ゼルは人のいない場所で魔力測定の際に起こった出来事を一部始終話した。
「あいつめ、無茶をしやがって」
「誠に申し訳ございません。私がクインシー様のご忠告を失念していたばかりに」
「いや、構わん。皆のいる前での測定にならなかった事が幸いしたな」
「はい。それは助かりました」
「それにしてもシャルロッテが賢者とはな」
「はい、賢者が実在するとは思っておりませんでした」
「マジマジアの姫がそう言うならそうなのだろう。その教師に会わせろ。賢者を測定出来た魔道具をなぜ持っていたのかも気になる」
「あっ」
「だろ?賢者が神話にしか出ないものだとすると、それを測定出来た魔道具は何なのだということになる」
と、クインシーに指摘をされ、魔法コースの先生の所に向かうのであった。
ユーバリーやジルベスターを連れて庶民食堂へ。
「おや?誰だい?」
「ユーバリー姫の護衛とメイド」
「いつもの護衛はいないのかい?」
「クインシー様とどこかに行ってるよ」
と、世間話をして、今日はラーメンにしておいた。俺は卵と小松菜炒め入り、ユーバリーはハンバーグ、ジルベスターとリーリャもラーメンで肉マシマシにしておいた。
「手紙が入れ違いになったけど、ラーメンのレシピもいれてあります」
「これは野営とかにいいですね」
「うん、冒険者ギルドも仕入れてくれたんだ」
「いくらで卸されたのです?」
「ここで銅貨1枚で仕入れて、銅貨3枚で卸してる」
「銅貨3枚ですか。なら、メロンでの仕入れもここで出来ますかな?」
「いや、軍に卸す数は作れないと思うよ。千とか万単位になるでしょ」
「そうですな」
「おばちゃーん。ラーメンって万単位で作るの無理だよね」
「当たり前さね。そこまでの数を作るなら工場を作らなきゃ」
「工場ですか。わかりました。ちょっと考えます」
ジルベスターは何をするつもりなんだろう?
なんとなく話が大きくなるんじゃないかと心配するシャルロッテであった。