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嫁になんていかないからねっ。  作者: しゅーまつ
未成年編

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48/118

イライラ

「よう、ジルベスター」


「ゾイドか。いつ帰って来た?」


「昨日だ。いちご姫様と入れ違いだ。姫様帰っちまったんだな」


「あぁ、授業が始まるからな」


ゾイドは家庭持ちなので宿舎には入っていない。

 

「お前がここに来るなんて珍しいな」


「お前が元気がないと聞いてな。いちご姫様と親子ごっこしてたんだってな」


「クインシー様から聞いたのか?」


「そうだ。クインシー様も溜まってた公務に追われてるからか機嫌が悪くてな。王宮がピリピリしてやがる。陛下も何事かと驚いてたぞ」


「いちご姫様とゼル殿がいなくなったからな。楽しみも気の抜くところもないんだろ」


「そうかもな」


「ゾイド隊長、ビールで宜しかったでしょうか?」


「おお、スマンな。で、お前は何を食ってるんだ?」


「いちご味のつまみだ。ほれ」


「は?いちご味?」


ポリポリ


「どこがいちご味だ。辛いだろがっ」


「いちご姫様が俺達の為に考えてくれたビールのお供だ。いちご味で合ってるだろ?」


「ふんっ。そういうことか。しかし、確かにこれはビールに合うな」


「だろ?」


「お前、いちご姫様がいなくなって寂しいんだろ?」


「そうだ」


と、素直に答えるジルベスターに驚くゾイド。


「来週、忙しいか?」


「いつも通りだ」


「護衛騎士に体調の悪いやつが居てな。学園の護衛、ユーバリー様の護衛に付いてくれないか?」


「俺がか?」


「そうだ」


「しょうがないな。他の隊員は持ち場を離れられんから俺が行くしかないな」


「なら頼んだぞ」


「おう」


「礼はいちご味のビールのお供の作り方をうちのに教えておいてくれ」


「了解。コックに言っておく」






「リーリャ、またぼーっとしてますよ」


「申し訳ございません」


はぁ、まったくこの娘は。




コンコン。


「入れ」 


「クインシー様」


「なんだノノロ」


「来週のユーバリー様付きのメイドでございますが、リーリャに行かせて宜しいでしょうか。お客様のご予定もございませんし」


「リーリャは客担当だろう」


「はい。こちらの仕事は済んでおりますので遊ばせておくのももったいないもので」


「分かった。好きにしろ」


「かしこまりました」



そうか。ユーバリーのメイドにリーリャを行かせるのか。


うむ、そろそろ学園が寄付金を正しく使ってるか視察をせねばならんな。リーリャが行くときに付いていくか。



コンコン


「入れ」


「クインシー様。アームス殿下より速達が参りまして。ケーキやシャーベットを学園で振る舞うからレシピを送るようにご命令がございました」


「レシピの登録は済んでおるな?」


「はい。各フルーツですべてシャルロッテ様の名前で登録致しました。他の料理も同様に」


「なら構わん。レシピを出してやれ」


「ただ、ケーキは料理メイドには難しいかと。学園には様々な国の王族の生徒もおりますし下手な物を振るわれるとメロン家の威信に・・・」


「来週私は学園の視察にいく。お前もそれに付いてこい」


「かしこまりました」



翌日から活気を取り戻したメロン王宮。マスク王はクインシーが突然機嫌が良くなった事が不思議であった。




「おはよう」


「おはようございます」


「休めた?」


「お気遣いありがとうございます」


「パンと卵とベーコンでいい?」


「いえ、食事まで頂くわけには」


「嫌いじゃないなら食べてって。作る手間は変わんないから」


作るのゼルだけど。


ゼルは料理の手際がいい。護衛騎士もおおと驚いていた。護衛騎士ならゼルを口説いてもいいぞ。



「護衛も一緒に食べるの?」


「ここはそうなの。嫌ならバリ姉は部屋で食べなさい」


「嫌なんて言ってないでしょっ。いちいち意地悪言わないでよ」


「バリ姉がそんな事を言うからだろ。護衛の人が食べにくいだろうが。それにゼルもいつも一緒に飯食ってんだろ?」


寝不足なのでついキツく言ってしまった。



ユーバリーが戻る時に護衛騎士が


(大変美味しかったです)


とゼルに伝えていた。



登校してるとめっちゃざわつかれる。昨日の食堂の話が広まってるのだろう。


「ゼル」


「はい」


「居心地悪いから帰っていい?」


「ダメです」


もう面倒臭いので全無視で化学の本を読み込んでいき、記憶を頼りに違う所を書き出していく。


「シャルロッテさん。この問題を」


「わかりません」


「あ、あのシャルロッテさん?」


「わかりません。次の人を当てて下さい」


ヒソヒソ ヒソヒソ


休憩時間も他のクラスや違う学年まで見に来てヒソヒソヒソヒソ



「ゼル」


「はい」


「帰るぞ」


「ダメですよ」


「うるさいっ」


あと一時間残ってるけど早退した。


早めの食堂に行く。


「おや、まだ授業中じゃないのかい?」


「ムカつくから早退してきた。ラーメンに卵」


「ラーメンばっかりじゃないか」


「ラーメンが食べたいの」


おばちゃんの心配もイライラしている今はウザいのだ。



「姫様。どうされたんですか?いつもなら陰口なんて平気でしたのに」


「うるさいな。イライラしてる時に話かけんな」


ズゾー ズゾー


ラーメンを食べて、化学の本を読もうとしたがイライラが止まらないので、出掛ける事にした。冒険者ギルドに行かねばならんのだ。それに部屋に居てユーバリーが来たら当たり散らしてしまうかもしれない。


さっき、ゼルにも当たってしまったな。悪いことをした。


「ゼル」


「はい」


「肩車して」


と言うとひょいと持ち上げて肩車をしてくれた。


「ゼル」


「さっきはごめん」


「何がですか?」


「話かけんなって怒鳴っただろ?」


「フフ、姫様が成長されてるのですよ」


「重くなった?」


「いえ、反抗期ってやつですよ。無性にイライラするんです。仕方がありません」


反抗期?俺が?

そういやこれぐらいの歳から始まるんだっけ?俺は中学生になってからだったけど。


もしかして精神より肉体に引っ張られてるのか?それとも成長期の身体にラーメンばっかりとか食べてるからか?いやこの半月はメロン家で食べてたしな。


「ゼル」


「はい」


「嫌いになった?」


「いえ。私にも反抗期がありましたから」


「どんなんだった?」


「剣の師匠が居たんですけど殺してやろうかと思いましたよ。敵いませんでしたけど」


「そっか・・・。ゼル」


「はい」


「ごめんな」


「大丈夫ですよ」


シャルロッテはゼルの頭をギュッとした。




冒険者ギルドに到着。


「すいませーん」


「はい、ご依頼はこちらで受けたまわります」


「いや、商売に来たんだけど、話聞いてくれるかな?」


「商売?」


「はい。携行食品を売り込みに来たんですけど需要ありますか?」


「どういったものでしょう?」


「これなんだけどね」


と、インスタントラーメンを見せる。


「このままかじるんですか?」


「お湯掛けて食べるの。試食する?」


と、受付のお姉さんと隣接する食堂に行く。


「嬢ちゃん、何だこれ?」


「インスタントラーメン。お湯かけたら食べられるんだよ。器貸してくれる?」


と、ひとつの麺を二人で分けてもらう。


「お、こりゃ旨い。いくらだ?」


「ひとつ銅貨3枚。ここで売るならそこに利益乗せてね。これほとんど利益ないから大量に買ってくれても値引けないんだ」


「なるほどな。これは携行品と言ったな」


「干し肉と硬いパンとかばっかりだと嫌でしょ?野営する時にお湯だけ沸かせば食べられるし。ここに野菜や卵とか入れてもいいし」


「なるほどな。ちょいとかさばるのが難点だが軽いしな。よし、試しにおいてやる。10個ほどくれ」


「明日でもいい?」


「構わんぞ。支払いは現金と身分証のどっちがいい?これから取引増えるなら身分証の方がこっちも楽だがな」


「じゃ身分証で」


「よし、一応契約書交わしておくか。これ多分売れるぞ。携行しなくても晩飯とかに買っていきそうだな」


「酒飲んだ後に食べる人も出て来ると思うよ。味が濃いのが好きならお湯少なめ。薄いのが良ければお湯多めで調節出来るし」


「酒飲んだ後に食うか?」


「一度勧めてみて。それではまったら毎回頼むと思うよ」


「嬢ちゃんいくつだ?」


「10歳」


「フルーツ学園の生徒だよな?」


「そうだよ」


「これどこで作ってる?」


「食堂のおばちゃんに作って貰ってる。直取引したらレシピ代掛かるからこれより高くなるからね」


「お、しっかりしてやがんな。そういう意味じゃねぇ。食いもんだからちゃんとしたとこで作ってるか確認しただけだ」


「あ、疑ってごめん」


「いや、商売しようってんならそれぐらいでちょうどいい」


そんな話をしていると受付嬢が契約書を持って来たので、名前と単価を記入する。身分証はお姉さんに預けた。


「ん?マーセナリー?お前もしかしてマーセナリーの人間か?」


「違うけど知ってるの?」


「傭兵の国だからな。ギルドで知らん奴はおらん。クインシー様の出身国でもあるからな」


と、その時に受付嬢が青ざめた顔をして頭を下げた。


「な、何?」


「クインシー様が後見人をされているとは知らず失礼な態度を申し訳ございません」


「は?」


「家を離籍したときにクインシー様が後見人になってくれたの」


「は?クインシー様が後見人だと」


「そう」


(あと、メロン王国の王族の身分をお待ちです)


「これは失礼致しました」


「冒険者ギルドがそんな事気にすんなって。敬語も似合わないからやめて。こっちも苦手だから」


「構わんのか?」


「ぜんぜん。身分を盾に商売しにくるなら買えって命令するよ。それにこんな単価の安い商品売りにくるわけないじゃん」


「そりゃそうだな。しかし、いくら売ってもしれてるだろ?」


「そんな事ないよ。他にも売りに行くから。売り先が増えたらバイトするより楽に儲かるからね。食堂のおばちゃんの生産能力もあるから、売れそうなら早めに数確保してね」


「よし、100注文する。食堂に取りに行けばいいか?」


「え?取りに来てくれんの?」


「こっちは運搬する道具もあるからな」


「じゃ、庶民食堂のおばちゃんに言っとく。多分明日なら出来てると思う。おばちゃんにいちご姫から買ったと言ってくれればわかるから」


「いちご姫?」


「そ、私のあだ名。髪が赤いでしょ?」


「いちごにメロンにマーセナリーか。面白い姫様だ。これから宜しくな」


「こちらこそ」



「姫様」


「ん?」


「機嫌が直って良かったですね」


あ、本当だ。もう反抗期は終わったのだろうか?



シャルロッテが自分の変化に驚くのはもう少し先になるのであった。


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