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アームスが大人になっていく

「で、アームス。これからの話ってバイトのことでしょ?」


「そ、そうだっ。庶民の同級生に聞いたら1時間働いて銅貨5枚しかもらえんのだぞ。酷いではないかっ」


想定した半分か。


「頑張ってひと月で金貨1枚稼いでね」


「そんなの無理だろうがっ」


「あなたが言い出したんでしょ?」


「それはそうだが、無理だと知っていたのだろうが」

 

「当たり前じゃない。貴族以外の人間はそうやって暮らしてるの。学校が終わったらアルバイトに行って、帰ってきてから銅貨3枚の食事を取るのに悩んで、結局銅貨1枚のモヤシ炒めを食べ、寝る時間を削って勉強する。それに対して貴族の子供は学食無料、稼ぐ必要もないから遊びで金貨100枚を賭けに敗けたから受け取れとか言う。そのお金は学生達が爪に火を灯して稼いだお金の一部なのよ。アームスはこれをどう思うのよ?」


「それは身分が・・・」


「生まれ持った環境は自分では変えられない。でもそれであれば、身分に甘えることなく、為すべき事を為すべきなのでは?王子として生まれたのはあなたの責任でも成果でもないけどね」


「俺に何をしろというのだ?」


「アームスはいずれメロン王国の王様になるんでしょ?国は民によって支えられてるの。王はそれをきちんと守りなさい。その為に今は学ぶ時。大切なのは何かと言うことを知るべきだわ」


「お前はなぜそのような事を知っている?」


「半分庶民でしたからね。私はいずれ自分で稼いで国の為に使ってもらうべき税金を納める事になりますわ。それが下らない事に使われるなんて虚しすぎます。なんのために税金を納めるのかと」


「・・・・」


「あの本を買おうと思ってアルバイトをすれば、1日6時間働いて銅貨30枚。毎日休みなく働いて月に銀貨9枚。一切お金を使わなくても貯めるのに1年はかかります。錬金術コースの主席を狙うならそれもいいかもしれませんけど、そうでないなら図書館の本で十分なのです。だから買いませんでした」


「お前は将来何をするつもりだ?」


「錬金術はポーションとか作れるようになるそうですからポーション屋とかいいかもしれませんね。ゼルの給料も稼がねばなりませんし。ある程度稼げる商売をしないとダメなのです」


「その歳でもう将来を見ているのだな」


「私一人ではありませんからね。ゼルを雇わないとダメなのです」


「分かった。軽々しくひと月で稼いで買ってやるとか言ってすまなかった」


「いいえ。殿下にその事に気付いて頂けただけで良かったと思います。メロン王国はとても良い国ですので、より良い国にしてくださる事を願いますわ」


「我が国を気に入ってくれたのか?」


「はい、とても。夏休みの間遊びにいかせて頂いてありがとうございました。とても楽しい時間でしたわ」


「そうか。そう言ってくれると嬉しい」


「では、殿下もお勉強頑張って下さいませ」 


と、話を終わらせた。



入れ違いにユーバリーが入ってくる。

 

「どうだったの?アームスにぃは真剣な顔して出て行ったけど」


「うん、初めに会った時の印象と随分と違うかな。やっぱり男の子は短期間でどんどん変わっていくのね」 


「へぇ。私からしたら全く変わらないけどね。で、何して遊ぶ?」


「同級生が来るまで待ってよ。あとお昼ご飯どうする?」


「食堂に行けばいいじゃない」


「今日はどの学年も始業式だけだから混むよね?」


「あー、そうだった。上の奴らもいるわ」


12歳までの学年は早めに終わるのでお昼を先に食べられる。その後は上の学年が来るのだ。


「ラーメンでよかったらここで食べる?」


「なにそれ?」


「んー、同級生が来たらどうするか決めよっか。それまでポテト食べてよ」


と、ゼルに冷凍ポテトを揚げて貰う。


「これ美味しいよね」


「バリ姉ならケチャップ付けた方が好きかもよ」


と、ケチャップも用意。飲み物は炭酸水レモン。ユーバリーのには砂糖を入れておいた。


半分ぐらい食べたところでコトカ達がやってくる。


「あの・・・」


「メロン王国のユーバリー姫。学年はひとつ上だけど、一緒に遊びたいんだって」


「えっ?えっ?えっ?」


「私とシャルロッテは姉妹みたいなものだから気を使わなくていいわよ。敬語もいらないし」


「姉妹ですか?」


「そう。シャルロッテは私の事をバリ姉って呼ぶわ。あなた達もそう呼んでいいわよ」


「と、とんでもございませんっ」


無茶を言ってやるな。この二人は常識があるのだ。


「コトカ、ご飯どうする?食堂混むからどうしようかってバリ姉と言ってたの。ラーメンでもよかったらここで食べる?」 


「ラーメン?」


ということでゼルが作ってくれる。


「お湯だけで出来るの?」


「そう。食堂のおばちゃんがここまで作りあげてくれたんだ。昨日商業登録したから、そのうち売りに行かないとね。あ、バリ姉のとこちょくちょく王宮に使い出る?」


「週に一度は護衛とメイドの交代があるから出るわよ」


「手紙書いたら届けてくれる?クインシー様にお礼も言わずに戻って来ちゃったから」


「そんなのいらないんじゃない?」


「ダメよ、ジルベスター様やリーリャにも書くんだから。あと、コックさんにラーメンのレシピを渡さないとね」


「コレ、うちで作らせんの?」


「軍の遠征とかに持っていけるでしょ。今から試作して量産したら冬の行軍とかに間に合うかなって」


「あんた、軍のご飯のことまで考えてんの?」


「だって、遠征が続くとずっと干し肉とパンとかなんだって。そんなの自分だったら嫌じゃん」


「そんな食事なんて私達に関係ないじゃん」


「ダメダメ、軍は国防を担ってんだよ?もっと大切にしなきゃ」


「ふーん。そんなのかぁ様に任せておけばいいじゃない」


「クインシー様はそういうのが当たり前だから気付かないの。それにこのラーメンはクインシー様も気に入っているのよ。家でも食べられたら喜ばれるわ」


「これ、もう食べられる?」


と、コトカとアキが聞いてくる。


「はい、どうぞ」


3人はフォークとスプーン。俺とゼルは箸だ。ゼルも箸を使えるようになったのだ。


「あっつ。なんか変わった食べ物ね」


「嫌い?」


「ううん。甘くないんだなぁと思っただけ」


3人とも甘い食事に慣れているから不思議なんだろうな。


「私が食べる物は甘くないよ。あと、もういちごのデザートも無いし」


「あ、シャルロッテ。離籍の話はどうなったの?」


と、ラーメンをチュルっと食べてコトカとアキが聞いてくる。 


「ん、もうストロベリー家の人間でもないし、住民でもないの。住民登録はメロンでしてもらったから」


すぞーすぞー。シャルロッテはそう言って豪快にラーメンをすする。


「えーっ、そうなんだ。メロンに家あるの?」


「ないよ。だから王宮が住所になってる」


「王宮?あっ!そ、そ、そ、そっか。おめでとう」


「言っとくけど、メロン家の籍じゃないからね。私はシャルロッテ・マーセナリー。クインシー様のご実家の家名を頂いたの」


「でも、私達もう家族同然でしょ?夏休みの間一緒に住んでたし、お風呂も一緒に入ったりしたし」


「まぁね」


それを聞いて真っ赤になるコトカとアキ。


「さっきアームス殿下が来られてましたよね?」


「うん。初めて会った時はムカついてぶっ飛ばしたけど、少し大人になったかな」


「・・・・・」


「ワイルド様は?」


「実は話したの初めてだったんだよね。実は優しい人だったて初めて知ったよ。離籍してから知るなんて皮肉なもんだね」


「へぇ〜」


「あ、コトカ。作って欲しいものなんだけどね」


と、ラーメンを食べ終えて、猫耳としっぽを絵に描く。


「これは何する為のもの?」


「ん?バリ姉に付けて貰うの」


「えっ?私に?」


「うん。絶対似合うと思うんだ。なんでも言うこと聞いてくれるって約束したよね?」


「し、したけど。これつけさせてどうするつもりよ?」


「ん?見て楽しむの。ゼルにじゃれ付いてもらったりとか」


「な、なんでそんな事をさせるのよっ」


「だって、バリ姉は肉が足りないから見て楽しむしかないじゃん」


「み、見て楽しいの?」


「うん」


「しょ、しょうがないわねっ」 


コトカは姫様に何をさせるんだ?と呆れていたが、アキはこっそり自分の物も作ってと頼んでいた。




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