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ワイルドという人

始業式に行くのに制服を着ると少しキツイ。メロン家の食事で太ったか?


「どうされました?」


「スカートがキツイんだよ」


「そういえば少し大きくなられたかもしれません」


あ、太ったんじゃなく成長か。

 

「夏服はこのまま我慢するけど、冬服ダメだろうね」


「そうですね。これから毎年買い替えるないとダメでしょうね」


「お金かかるね。制服って高いんだろ?」


「はい。冬服は特に」


「着れなくなった服ってどうするの?」


「庶民は売ったりしますが、貴族は学園に寄付することになります。庶民の生徒は新品を買うのはなかなか厳しいですから」


なるほど。


これ、ラーメンを売り込みに行かないと持ち出しばっかりになるな。生産をどこかに依頼するか、食堂のおばちゃんに委託するしかないな。おばちゃん余裕あるかな?


「姫様、行きますよ」


と、始業式に向かう。


講堂に行くとまたキャーキャー歓声が上がるからF4がいるんだろな。


「あ、シャルロッテ!」


と声を掛けて来たのはコトカだった。


「久しぶり」


「夏休み何してたの?」


「んー、色々。結構濃厚な夏休みだったよ」


そこにアキもやって来た。


「あ、コトカ。裁縫で作って欲しいものあるんだけど」


「どんなの?」


「始業式終わったら部屋に来る?絵に描いて説明するから」


「分かった。アキと二人で行くね」


と、何やらキャーキャー声が近付いてくる。ん?


「シャルロッテ」


と、声を掛けて来たのはワイルドだった。


「ご無沙汰しておりますワイルド様」


「普通に話してくれていい。敬語は不要だ」


「いえ、ストロベリー家の第一王子であられるワイルド様には無理でございます」


「ちっ、今日始業式が終わったら話がある。お前の部屋はどこだ?」


「前と同じです」


「ん?そのまま使えているのか?」


「はい」


「分かった。そこへ訪ねる」


「申し訳ございませんが本日は学友と先約がございます」


「シャルロッテ、私達は後でいいからっ」


と、コトカに言われてしまった。


そしてまたキャーキャー声が近付いてくる。


「シャルロッテ、始業式の・・・。ワイルド、何してんだ?」


「アームスこそシャルロッテに何の用事だ?」


「なんでもいいだろ?それよりシャルロッテ、始業式のあと話があるからお前の部屋に訪ねるぞ」


「何しにくんの?」


「これからの話だ」


「残念ながら、ワイルド様が先約です。その後は学友との約束が」


「ちょっとぉ、私達は最後でいいわよっ」


あーっもうっ。


「じゃ、ワイルド様の後でね」


「分かった」


と、アームスは去って行った。


「アームスと随分と親しげになったんだな?」


「普通に話せと命令されただけでございます」


「なら、俺にも普通に話せ」


「私はもう離籍いたしましたので命令される筋合いはございませんわ」


「なら、アームスにもその筋合いはないだろが」


ここでメロン家の事を話すのまずいだろうな。


「そうでございますね。では普通に話させて頂きます。何の用?」


「お前の事だ。ここでは話にくいから部屋で話す」


「了解です」


と、業務的に答えておいた。



「ど、ど、ど、どういうこと?」


「うん、部屋に来てくれた時に話すよ」


もう始業式が始まるのだ。


退屈な始業式。こんなのやめりゃいいのに。


教室に移動して、先生を見て和む。甘えさせて下さいって言ったらホニホニさせてくれるだろうか?


「シャルロッテさん。このあと少し話を伺いたいので、残って下さい」


と、言われた。離籍とか諸々のことかな。



皆が教室から出た後に先生の表情が変わる。


「な、何があったの?大丈夫?ねぇ大丈夫」


先生可愛らしい。


「ちょっと訳ありでストロベリー家を離籍しました。今はシャルロッテ・マーセナリー。メロン王国のクインシー様に後見人になって頂いて独立致しました」


「アームス殿下かアンデス殿下と婚約したの?」


「まさか。クインシー様個人に後見人になって頂いただけです」


「このまま学園に通えるの?」


「はい。その為にクインシー様が手を差し伸べて下さいました」


「なら、良かったわ。離籍して学園を辞める辞めないの話が出てから」


「あ、事務室に身分証出来たので届けた方が良いですか?」 


「そうね。そうして頂戴」


「先生、ちょっとお願いがあるんだけど」


「なんでも言って」


「ちょっと甘えてもいい?」


「まぁっ」


涙ぐむ先生は手を広げてくれたので遠慮なく抱きついた。


うん、先生ヒンヌー。


嫌いではないけど抱きつき加減はノノロの方がいいな。


ありがとうございますと言って離れた。


「いつでも甘えていいのよ」  


涙ぐみなからそういう先生。善意を利用した挙げ句にヒンヌー呼ばわりしたことを後悔した。ごめんなさい。

 

教室の外に出るとコトカとアキが待っててくれた。


「離籍したって言ってたけど、学園辞めちゃうの?」


「そのつもりだったんだけど、辞めなくてよくなったの」


「王家から離籍ってなにしたのよ?」


「ん、さっきアームス殿下が来たでしょ。友好の場であいつにムカついてぶっ飛ばしちゃったのよ」


「え?」


「勝手に絡んできて逆切れしてさぁ、ついやっちゃったのよね」


「離籍って、追放?」


「そんな感じ」


「だ、だ、だ、大丈夫なのっ」


「うん。なんとかね。詳しくは部屋で話すよ。みんな聞き耳立ててるし」


「分かった。じゃ、頃合い見ていくね」


「うん、待ってる」


そして部屋に戻るなりワイルドがやって来た。


「話とはなんですか?まだ何かしないとダメですか?離籍だけじゃ足りませんか?」


「いや、ストロベリー家に戻って来ないか。これからは俺がお前をちゃんと守るから」


ん?


「ワイルド様と口すらきいたことありませんでしたよね?」


「母や姉がお前をいじめてた事は知っている。父上はお前を一番可愛がった結果そうなった。だから俺はお前を構えなかった。よりイジメがひどくなるのではと。辛い思いをさせてすまなかった。俺は兄だというのに」


そうだったのか・・・。


「ワイルド様の心情を心得ず。無礼な態度で申し訳ございませんでした」


「普通に話してくれ。俺とお前は母は違えど兄と妹なんだから。と言っても、お前は俺を兄とは思えんかもしれんが」


「そうですね。私はストロベリー家の人は家族とは思っていません。私はいらない子でありましたから。私の家族は亡くなった母と護衛のゼルだけです。なのでワイルド様も私が妹であったことをお忘れ下さいませ。私に構うとストロベリー家が荒れます」


「それであっさりと離籍を選んだのだな」


「はい、なまじ王位継承権があったばかりにご迷惑をお掛けしました」 


「今はどうなっている。この部屋を使えるということは上級貴族ではあるのだな?」


「メロン王国のクインシー様が個人的に後見人になって下さいました。なので私はシャルロッテ・ストロベリーではなく、シャルロッテ・マーセナリーになっております。クインシー様の旧姓を家名に頂きました」


「そうか。それでアームスと親しげに話してたのだな」


と、ワイルドと話しているとコンコンとノック音がする。

 

「はい」


と、ゼルが返事をするとユーバリーが入って来た。


「シャルロッテ、遊びに・・・。あ、ワイルド様。ごめんなさい。いらっしゃるとは思わなかったので」


「バリ姉。今日は予定詰まってんだけど」


「えー、学園に戻ったら一緒に遊ぶって言ってたじゃん」

 

「それはそうだけど。予定詰まっちゃったんだよ」


「あとは誰が来るの?」


「次はアームス、それが終わったら同級生が来るの」


「ゲッ、アームスにぃは何しに来んのよ?」


「これからの話だって」

 

「あー、こっちに戻って来るときに馬車で話してたやつね」


「多分ね」


「じゃ、同級生の子達が来たときに合流するから。じゃー後でね。ではワイルド様、ご機嫌よう」


「ユーバリー姫とも友達みたいになったのだな。帰りの馬車と言うことはメロン家に行っていたのか?」


「はい」


「そうか。メロン家の人々は優しくしてくれるのか?」


「はい。とても」


「そうか。分かった。今まで何もしてやれなくてすまなかった。これからは幸せになってくれ」


「はい。ありがとう存じます。ワイルド様もお身体に気を付けて」


ワイルドがあんな風に思ってくれているとは知らなかった。そんなワイルドに今の態度は冷たいけど、なまじ俺と仲良くなるとあの正妻達とワイルドも揉めるからな。それに下手したらまた命を狙われるかもしれん。ストロベリー家とは断絶が正解だ。



で、しばらくするとアームスがやって来た。


「ワイルドは何しに来たんだ?」  


「兄として心配してくれたの。心配ご無用と言っておいたけど」


「そうか。あいつは口数は少ないけどいいヤツだからな」


「ストロベリー家は子供全員に王位継承権があって同位なの。だから妾腹の私がいると家が荒れるし、ワイルド様も私に構うと巻き添えになるからもう構わないで言っておいた」


「そうか。それがなければ可愛がって貰えてたんだろうな」 


「かもしれませんね」


そう言ったシャルロッテは寂しそうな顔をしたのでアームスも心が締め付けられたのであった。


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