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身分証の中身

「アームス殿下。先程は申し訳ございませんでした」


「何がだ?」


「心配してくださったのに怒鳴ってしまいました」


「別に気にしてはいない。それより普通に話せ。別に敬語もいらん」


「そう?」


ころっと変わるシャルロッテ。


「お前、兵士相手に暴れたんだってな」


「ゼルの尻を触ったからね。その後大乱闘。全部やっつけたけど」


「相手は本気ではないだろう」


「そりゃそうでしょ。本気で来てるようならクインシー様が黙ってないよ」


「お前、母上と仲いいよな。怖くはないのか?」


「ぜんぜん。美人でフワフワで強くて完璧じゃん」


「それは本気で言っていたのか?」


「当たり前でしょ。歳が近い男性なら口説いてたね」


「リーリャみたいな感じが好きなのではないのか?」


「リーリャはリーリャで好き。もう、お腹とか太ももがむっちりしてて、二の腕なんてとろけるようにフニフニで」


そういうと赤くなる二人。


「わ、私は?」


「バリ姉は肉が足らないんだって。でも近々・・・」


「何よ?」


「それはお楽しみ」


「もうっ」


「あの本は結局買わずですか?」


久々にアンデスが会話に参加。


「全部買ったら金貨1枚以上するしね。クインシー様に頂いたお金もあるけど、あれはそのうち返したいと思ってるから」


「なぜだ?」


「だって、遊びでもらうような金額じゃないでしょ?農民なら一生掛けても稼げないかもしれない金額なのに」


「母上が後見人になったんだ。そんなの気にすることないだろ?」


「あのね、それはアームスが自分で稼いだことないからそう思うだけ。一度アルバイトしてみなよ。食堂で皿洗いとか。どれだけ働いたら金貨1枚稼げるか体感した方がいいわよ」


「ひと月もあれば十分だろ」


「ひと月ねぇ。分かった。ひと月アルバイトして私が見ていた本を買って下さいませ。年明けに飛び級のテストがあるからひと月待ってあげるわ」


「それなら受け取るのだな?」


「一般の所でのアルバイトよ。メロン家が関わってない庶民相手の所で」


「ようし、ひと月後にありがとうございましたと言わせてやる」


「是非、お礼を申し上げたいわ。オーホホホっ」


時給銅貨10枚として千時間働かないと金貨1枚にならない。一ヶ月間不眠不休で働いても銀貨72枚にしかならないのだ。



ようやく宿舎に到着して馬車から降りて伸びをする。座りっぱなしは結構しんどい。


「姫様、すぐに部屋に参りますか?」


「いや、ちょっと歩きたい。足に血が溜まってる感じがする」


御者に送って貰ったお礼を言ってアームス達とも分かれた。3人は荷物が多い。俺たちは着の身着のままで行ったから荷物がほとんどないのだ。


「メロン家にお世話になってのもあっという間に終わったね」


「本当にそうですね。クインシー様にはお世話になりっぱなしでした」


「本当だね。いつか恩を返そうね」


「はい」


帰るときにクインシーは忙しいようで会えなかったのでお礼も言えずだ。部屋に帰ったらお礼状を書こう。


特に行く宛が無いので食堂のおばちゃんのところに行ってラーメン食べよ。



「おばちゃん、ラーメンに卵」


「お帰り。戻ってきてそうそうラーメンね。好きだね」


「毎日ごちそうだったんだけど、ラーメンが恋しくて」


「生麺とインスタント。どっちだい?」


「インスタントで。売ってくれるやつある?」


「たくさんあるよ」


ということでとりあえず10食は別で買う。


「ゼルはちゃんとした飯食えよ」


「いえ、私もラーメン食べたいです」


というので、ゼルのは肉マシマシ、野菜マシマシにしておいた。


ズゾー、ズゾーと食べてるとおばちゃんに商人ギルドに登録したかい?と聞かれて忘れてた事に気付いた。これ食べたら行こう。


部屋に戻ってレシピ持って商業ギルドへ。


「すいません、レシピ登録したいんですけど」


「では、こちらへどうぞ」 


と、手続き完了。身分証を出したら驚かれた。何か変なのかな?それか金貨100枚入ってのをみられたのか?


あ、後見人にクインシーの名前があるからか。


身分証は名前しか記載されていない。詳しい情報は専用の機械でしか見れないようだ


「お姉さん。どんな内容か見せてくれる?」


はいと見せてくれた。


【名前】シャルロッテ・マーセナリー

【後見人】クインシー・マーセナリー・メロン

【身分】メロン王国王族

【職】学生

【住民登録】メロン王宮

【住所】ガーデン学園宿舎


ん?


「なにこれ?」


「えっと、何か?」


「身分がメロン家の王族になってんだけど」


「違うのですか?」


「クインシー様個人に後見人になって貰ったけど、メロン家に入ったわけじゃないし、王族って身分証持たないんだよね?」


「持つ必要がないだけで、持たれても問題ありません。現金無しの支払いの為にお持ちの方もおられます」


普通は従者が払うけど、自分で払う人もいるのか。


「ちょっとこっちも見て貰っていい?」


と、ゼルのを見てもらう。


【名前】ゼル

【身分】騎士爵

【職】メロン家王宮騎士

【住民登録】メロン王宮

【住所】ガーデン学園宿舎


「ゼル、貴族になってるぞ」


「え?」


「ほら」


「本当ですね・・・」


これ大丈夫なのか?


まぁ、商業ギルドのお姉さんに聞いても仕方がないので宿舎に戻った。



「ゼル、どう思う?」


「私のは王宮騎士という職にするために貴族にしたのかもしれません。メロン家の騎士は貴族しかなれませんので」 


「なるほど。じゃ俺は?」


「マーセナリーだけだと、マーセナリー国の貴族に思われるからですかね。内緒でメロン家の籍に姫様を入れたなら、シャルロッテ・マーセナリー・メロンになってるはずですから」


「間違いって事はないだろうから、何か意図があるのかもね」


「はい。クインシー様のお考えがあるものと思います」

 

手紙に書くとまずいかもしれないから会った時に聞くか。


「ゼルも貴族なら家名あった方がいいよね。あれって勝手に付けられるの?」


「平民が叙爵した時に家名を貰うことが多いです。今回は身分証だけのことでしょうし家名は付けないと思いますよ」


そうなのか。


「ゼル・シャルロッテとかにする?」


「いいのですかっ」


「ばっか、冗談に決まってんだろ」


「そうですか・・・」


ダメな冗談だったか。落ち込ませてしまった。



部屋に戻ってちょっと暗くなってしまったゼルをくすぐって構う。リーリャがいないのがとても寂しい。次に会う時にはミリイみたいに嫁に行ってしまっていなくなってしまってるのではと思うと心が痛い。


いかん、また泣いてしまう。このシャルロッテボディは寂しがりやなのだ。気分転換に本を食堂に持って行こう。


ゼルに本を持って貰って食堂へ。



「おばちゃん。食堂に本を置きたいんだけどいいな?」


「そんな高価な物置いといたら盗まれるよ」


「そうかな?持ち出し禁止でここで自由に読んでもらおうかと思ってるんだけど」


「じゃ、名前か印付けときな。あんたの名前入りなら盗む奴もいないだろう」


ということでゼルがせっせと持ってくるのに名前を書いていく。いちご姫としてしか認識していないかもしれないのでいちごマークも付けておく。もうストロベリー家の人間ではないけど、元はストロベリー家の資産だから別にいいだろう。


せっせと名前といちごマークを書いている頃。



ーメロン家王宮ー


「リーリャ、何をボーッとしているの。早く片付けなさい」


「申し訳ございませんノノロさん」


いつもならシャルロッテにお菓子を食べさせて貰っている時間だ。それが部屋に何のぬくもりもなく、ガランとしている。


わずか半月程の間の出来事がとても楽しかったリーリャ。


「付いてくる?」


と言われた言葉が胸に残っている。10歳の女の子なのにとてもエッチで優しくて自分を気にいってくれたシャルロッテ。


あれ?


リーリャは知らない間に涙が頬を伝っていた



ー騎士団宿舎食堂ー


「いちご姫様、学園に戻ってしまいましたね」


「授業が始まるからな」


ジルベスターや騎士達は辛い細切りポテトを食べながらビールを飲む。


「今日のカリカリポテト辛いですね」


「そうだな。ビールも苦いな」


「そうですね」




ー兵士宿舎ー


「姫様との乱闘楽しかったな。俺たちカスだとよ」


「全く口の悪い姫様だ」


「女騎士も強かったな」


「姫様の体術も凄いわ。あんな小さい身体で俺達を投げ飛ばすんだからな」


「誰も処分食らわなかったな」


「隊長がそう言ってたろ?」


「そりゃそうだがよ。知らなかったとはいえ、普通あれだけやらかしたらなんかあるだろ?」


「だろうな。処分も無しに帰る時笑って手を振ってくれたしな」


「また遊びに来てくんねーかな」


「そうだな。訓練とか見に来てくれたらいいとこ見せてやんのによ」


「突撃ーーっ!とか言ってくれるかな」


「おぅ、そんな言ってくれたらどこまでも行ってやんぜ」




「そうか、もう帰ったんだったな」


仕事を終えて王宮に戻ったクインシー。子供達が学園に戻って日常が戻ってきただけなのになんとなく沈んだ雰囲気が漂っているような感じだ。



「クインシー様、いちご姫様はまた次の休みには来て下さいますか?」


「あいつは飛び級の試験が年明けにあるからな。難しいかもしれん」


「そうですか。春休みには来て下さいますか?」


「そんな先の事はわらかん」


「そうですか」


クインシーは自室で夕食を食べていた。いつもならメイドが運ぶデザートをコックが運んで来た。


クインシーはコックにシャルロッテが次にいつ来るのか聞かれてら甘いケーキがなんとなくしょっぱい気がした。





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