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学園寮へ

シャルロッテの母親の葬儀は質素であった。


「ゼル、なんで誰も参列しないの?」


「は、それは母君が庶民でございましたもので・・・」


王族が庶民の葬儀に出るなんてことはないらしい。


しかし、子供を産ませておいて葬儀にも来ない父親とか王様とはいえ酷いよな。


(シャルロッテのお母さん、この身体は俺が入っちゃったけど、多分魂はお母さんと一緒に天国へと行ったはず。向こうで天国で幸せに暮らして下さいね)


そう、心の中で祈ってお別れのキスをした。ファーストキスがおっさん、2度めのキスが可愛い亡骸になった宙二であった。


10歳の姫が母親にお別れのキスをしたのを見てゼルはむせび泣いていた。宙二に少しやましい心があったのは知らない。


そしてシャルロッテの母親は火葬されて天に登っていった。



「なぁ、ゼル。イチゴ飯はいらないと言ったよね?」


「しかしながら・・・」


「もうっ、いいから、ジャガイモを揚げて塩かけて持って来て。それにビールがダメならコーラかなんかないの?」


「コーラとは?」


「無いならビールみたいにシュワシュワしたやつでもいいから」


そうリクエストすると、持って来たのはイチゴサイダー。

仕方がないのでそれを飲むが、甘過ぎるっての。


「姫様、ジャガイモだけ召し上がるなんて庶民の・・・」


「ミリイ、いいからアーンして」


ミリイは一口かじって食べさせてくれる。嬉しいけどだんだん面倒になってくる。こういう食べ物に飢えてきてたから、もっとガツガツいきたいのだ。 


「ミリイ、もっと早く、早く」


と、急かしてポイポイと口に入れて貰うと、ゼルがウズウズしている。


「姫様、私が・・・」


「お前のかじったのはいらん」


シュンとするゼル。


「学校って明後日からだよね?どうして明日出発なの?」


「はい、馬車で半日程かかりますので」


ん?


「毎日通うのに遠くない?」


「姫様が通われている学校は全員宿舎に入っていたのもお忘れですか?」


全寮制なのか。


「ベリーベリーとかも?」


「さようでございます」


「一人部屋?」


「全生徒が一人部屋ではございません。王族、並びに上級貴族は個室にございます。従者がおりますので」


なるほど。


「じゃ、ミリイが一緒に来てくれるんだよね?」


「従者は私でございます」


ゲッ


「ゼル、ミリイと交代してね」


と、言うと物凄く悲しそうな顔をする。


「なりませぬ。私は護衛も兼ねておりますっ」


「ご飯とか洗濯とかどうすんだよ?」


「私めが・・・」


「却下」


なぜ男に少女の下着とか見られ無きゃならんのだ。


「な、なぜでございますかっ」


「お前、イチゴ飯とか作るんだろ?それにお前に下着とか見られたくない」


「今はまではっ」

 

「今までは今まで。これからはこれからなのっ」


「しょ、食事は食堂もございます。が、他の者たちが・・・」


「そういやさ、この前はここの食堂で食べたけど、それ以外なんで全部ここで食べてるんだ?」  


「そ、それはその・・・」


「妾腹だから、正妻の兄妹と食べるのはおかしいとかそんな所?」


「た、端的に言えばその・・・」

 

なるほどね。


「寮、宿舎だっけ?そこの食堂で食べると何が問題あるのか?」


「姫様はそのお人見知りもございましたし、他の者達からの噂やその・・・」


「あー、そんなの気にしないから大丈夫」


「身分も様々な者もおりますし」


「どうでもいいよそんなの」


「かしこまりました」


「あと、従者がお前しかダメなら下着は自分で洗うから」


「なりませぬっ。姫様にそのような事をさせてはっ」


「お前に洗われるよりマシだ。嫌ならミリイに代わって貰う」


「かしこまりました」


ゼルは渋々了承した。



翌日は馬車が3台で各兄妹別々だ。


差別されてそうなのでもっとドナドナな馬車かと思ったらそうでもなかった。



ガコンガコンと揺られながら学園に向かう。


「ゼルは授業中とかどうしてんの?」


「従者は一番後で立って姫様の頑張りを見ております」


毎日授業参観状態なのか。



そして学校に着くとめちゃくちゃデカイ。


「こんなに大きいの?」


「はい、連合国以外からの生徒もおりますし、庶民でも成績優秀な者はここへ通います」


へぇ。


まずは宿舎に向かうがこれもデカイ。身分によって階層が分かれているらしく、身分が上ほど上の階だ。一応最上階だけど端っこの方だ。エレベーターやエスカレータが無いなら、1階の方がいいよな。



部屋はキッチン、リビング、寝室2つ、バストイレ、乾燥機付きのランドリーまである。なかなか宜しい。


「さっき同じ階層に男が居たんだけど、男女で建物とか階層が分かれてるとかないの?」


「ございません。学園は出会いの場でもございますので」


「事件とかはないの?その、無理矢理とか・・・」


今の俺が襲われたらやられてしまうのだ。そんなのは絶対嫌だ。


「無い、とは言い切れませぬが、まぁ大丈夫です。私もおりますし」


やべぇとこだなおい。


これ、身分の下の娘が上の男から何かされても泣き寝入りとかじゃないだろうな?



寝室のうちの一つは広めでWベッドサイズ。もう一つは狭めでシングルベッド。もちろん俺が広い方だ。


「お腹空いたけど何か食べるものある?」


「では、イチゴオムレツでも」


「いらん」



ということで食堂へ向かうとチラホラと学生が居た。


メニューを見てみると、様々なフルーツ料理が並ぶ。


「なぁ、ゼル。なにここのメニュー?」


「王族や貴族の食堂は各国の様々なフルーツが・・・」


「食堂はここだけ?」


「庶民向けのところにもございますが・・・」


「じゃ、そっちへ行く」


「な、なりませぬっ。高貴な身分の者が庶民の食堂へなどっ」


「うるさいっ!なぜ飯にフルーツを使うんだよっ。こんな不味いもの食えるかっ」


「甘味は高貴な身分の者しか口にすることが出来ません。最高の贅沢なのですぞっ」


「高貴な身分の者ほど質素に生きなければならないだろうが。民からの税金で生活をしているのだろうがっ」


と、最もらしい事を言ってみる。


「ひ、姫様・・・。そのようなご立派なお考えが」


うるうると目を潤ませるゼル。


「では、庶民用の食堂へ参ろう」 


一番下の階に降りて庶民向けの食堂に行くとざわざわされる。


ヒソヒソと貴族がなぜここに?とか言われているのが聞こえる。


「なぁ?どうして貴族かどうかわかるんだ?」


「従者がいるのは貴族の証でございますので」


お前のせいか・・・


「なら、お前は上の食堂で食え」


「ひ、姫様から離れられるわけがございません」


「皆が引いてるだろうが。鎧を着た奴がいるとそうなるに決まってるだろ?」


「し、しかし・・・」


「なら、次からは鎧を脱げ」


「これはいざと言うときに姫様をお守りする為の」


「毒に鎧は効果あるのか?」


グハッ


膝から崩れ落ちるゼル。


「此度の不始末は・・・」


「それももうやめろ。いちいち鬱陶しい」


「申し訳ございません」


「今日は仕方がないから、明日から鎧を脱いで来いよ」



と、ハンバーグとパン、ジュースは炭酸にレモンを絞ったものがあったのでそれを頼むというか、自分で注文しに行って持って来るセルフサービスだ。料金は無料らしい。


「おばちゃーん、ハンバーグとパンと炭酸レモン頂戴」


と、注文するとまたざわつかれる。


「姫様、そのような些事は私にお申し付け下さい」


「ゼル、学校にいる間は姫様呼びするな。周りが気を使う。シャルロッテでいい」


「しかし・・・」


「お前、いちいち口答えすんなよ。だからミリイと代わってくれと言ったんだ」


「申し訳ございません。ではシャルロッテ様と・・・」


「様もいらん。人前では従者ではなく、友達みたいにしていろ。いいな、次に口答えしたら掌底食らわすからな」


「しかし・・・」


→P


ガスッ


「なっ、何をっ」


「次に口答えしたらコンボ食らわすからな」


「も、申し訳ございません。シャルロッテさ・・・」


PPP


グハッ


懲りんやつだ。


ゼルがダウンしたが、追い打ちまでは止めておいてやろう。


同じ物をゼルの為に注文し、それを持ってテーブルへ。


「このような食事を・・・」


「だいたいさぁ、あのイチゴ料理って皆旨いと思ってんの?」


「甘味こそが高貴な」


「高貴かどうかなんて聞いてない。旨いかどうかを聞いてるんだ」


と、話しながらパンにハンバーグを挟んでかじる。


「ひ、姫様」


ぎぬろっと睨み付ける。


「シャルロッテ、そのようなはしたない召し上がり方をされてはなりません」


「いいからお前もやってみろ」


「しかし」


「口答えすんなって言っただろうがっ」


と、言われてゼルは同じようにして食べる。


「お、美味しい・・・」


「わかったら、黙って食え」


「ど、毒見を」


「お前の齧ったのはいらんと言っただろうが。それにもう死なんと思う」


「そんな事はわからないではないですかっ」


「成すべき事があるらしいから、それを成すまでは死なんだろ。神もそこまでポンコツだったら知らんけどな」


いでででででっ


神の悪口を言ったら口がつねられたみたいな痛さが襲ってくる。これはバチだろうか?


「神ですか?」


「いいから、早く食べて戻ろう。注目を浴びすぎてるからな」


と、さっさと戻る事にした。ここのメニューなら食えそうだ。自炊かここで食べる事が増えるだろうから皆に慣れてもらわないとな。 




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