酔っ払い
そろそろお開きらしいのでゼルの元へ。
「姫様だぁ。えへへへへへ」
ゼル、酔ってやがるな。
「ちゃんと口説かれたか?」
「全くですよまったく。私は魅力ないんですかねぇ」
「お前は硬いけど美人だから大丈夫だ」
「ふふふふっ」
ゼルに抱きつかれてほっぺたとかチュッチュッされる。ゼルは酔うとキス魔になるのか。
「お前らゼルにキスされてないだろうな?」
そう騎士達に凄むと、ブンブンと首を横に振った。
「リーリャは口説かれたか?」
「みんな、意気地無しなんですよぉ」
リーリャもかなり飲んだみたいだな。
「ガーターベルト見せたら一発だぞ」
「えー、本当ですかぁ。じゃあ」
と、スカートをたくしあげようとするのでそれを押さえると残念そうな顔をする騎士達。そんな顔するなら口説けよ。
「リーリャ、それは部屋に戻って俺だけにしてくれ」
「わかりましたでありますっ」
「今日はありがとうね。また機会があったら呼んでね」
「はいっ。楽しい一時をありがとうございましたっ」
若手騎士達に敬礼されて、ゼルとリーリャの手を引いて馬車へと移動。
護衛隊長と王宮隊長にもお礼を言いにいく。その間にもゼルとリーリャにベタベタされるシャルロッテ。
「本日はありがとうございました。とても楽しかったです」
「こちらこそ若い者たちに夢を与えて下さりありがとうございます。あんなに嬉しそうな顔をしているのは久々に見ました」
(それにクインシー様のお姿も)
(ちょっと触らせてとか言ってみたら?)
(そんなことをしたら明日には首を晒されていますよ)
と、笑っていた。
馬車に乗り込む時に皆が盛大に見送ってくれた。
「貴様は若いのから隊長クラスまで人気があるな」
「ゼルの頑張りがあるからこそだね。ひたむきに頑張ってと人を惹き付けるんだよ」
「そうだな。ゼルはよくやっている。あれだけ訓練させられたら大半の奴が音をあげるからな」
「クインシー様はそれに付き合える訳でしょ?さすがですね」
「おだてても何も出んぞ」
「いえ、本当に。美人で強くてフワフワで完璧ですね」
「ふふふ。やはり貴様は面白い奴だ」
玄関に到着して、リーリャをどうするか迷う。
「リーリャ、自分の部屋に帰れるか?」
「大丈夫でありますっ。着替えをとってまいりますので」
と敬礼して自分の部屋へと行ったようだ。着替えってなんの事だ?
「では、明日は休みだから好きに過ごせ」
ユーバリーの勉強も休みらしい。
「おやすみなさいませ」
「じゃ、おやすみー」
ゼルが嬉しそうに背中側から首の横に手を回してくっついてくる。チョークスリーパーとか掛けられたら死ぬな。
「歩きにくいぞ」
「ではこうしましょう」
とお姫様抱っこされた。落っことすなよ?
部屋に入ったらそのままベッドに押し倒され、俺の上に四つん這いになって見つめてくるゼル。
「姫様、姫様は男の人ですか?」
「そうだぞ」
「私は女として魅力的ですか?」
「硬さを除けばな」
「それは仕方がありません。長年鍛えたのですから」
「そうだね。この硬さは努力の結晶だ」
「はい。姫様に出会えて良かったです。強くなろうとしたかいがありました」
「そっか。俺もゼルがいてくれて嬉しいよ」
「本当ですか?」
「本当だ」
「私のことは好きですか?」
「好きだよ」
ムチューー
ゼルにキスされてしまった。相当酔ってるなこいつ。しかもこのキスは愛らしい子供にするキスではない。男女間のそれだ。これ、ゼルが男なら俺はやられてたんだろうな、と思う。
ゼルは騎士達にチヤホヤされて発情したのだろうか?
「わ、私の初めてのキスを捧げました」
「女同士だからノーカウントだ」
「姫様は男だと言ったではないですか」
「身体は少女だ」
「そうですよね。姫様ですもんね。クスクスクスクス」
うん、もう訳がわからない。
「このまま寝るか?それとも風呂に入るか?」
「一緒にお風呂に行きましょう」
と、お姫様抱っこされるので、着替えを持ってからと注意した。
部屋から出るとリーリャが来た。
「どうした?」
「着替え持って参りましたであります」
「ん?部屋に泊まるつもり?」
「部屋に戻ったら見せろと言ったじゃないですかっ」
確かに言ったけれども酔った女の娘にいらんことするつもりはないぞ。
「リーリャも酔ってるから部屋で寝てろ」
「お風呂に入らないとダメなのです」
と、一緒にくる。もう知らない。
脱衣所でメイド服を脱ぐという行為から破壊力抜群だ。ゼルもタオルを外そうとするので巻きなさいと注意する。
お風呂に入るとゼルが頭を洗ってくれるが酔って力加減の調節がきかない。首がもげるかハゲそうだ。
しかし、酔っ払い相手は逆らってはいけない。余計にややこしくなるのだ。大学生の頃に嫌というほど経験した。逆らうと100%絡まれる。で、酔った女の娘が言うことは真に受けてはいけない。覚えてないか、何信じてんの、馬鹿じゃない?とか言われて終わるのだ。
ゲッ、リーリャがタオル巻いてない。思いっきり見ちゃったよ。明日全く記憶なかったらいいけど覚えてたら最悪なんだよな。
一度軽く酔ってシラフに戻ったシャルロッテはまだ酔っている二人に対してとても冷静になっていた。
部屋に戻るとリーリャが灯りを消す。スタンドの灯りは付いてるので真っ暗ではない。
パサッと服を脱ぐとエッチなガーターベルト姿だ。
「ど、どうですか?」
なぜ俺は男ではないのだと本気で悔やむ。生前にこんなシチュエーションがあれば30歳になってもナニは新品では無かっただろう。
「はい、とてもエッチでございます」
「ふふふふっ。これで意中の人が出来たら悩殺できますかねぇ」
いや、まずは恋人になってからこういうことをするべきでは?
そして、そのままベッドになだれこんできてスースーと寝てしまった。ゼルもいつの間にか寝ている。
リーリャにおいたするか迷ったが、やめておいた。
でもちょっとだけ・・・
と、身体に手を伸ばすと
「キャーハッハッハッハッ」
ビクッ
リーリャに悪魔が乗り移ったのでやめておいた。
シャルロッテは夢の中でリーリャの頭に666の数字を刻まれているのを見つけてうなされていた。
朝起きると二人はまだ寝ている。怖い夢を見たのか寝汗でパジャマがぐっしょりだ。汗臭いかどうかは自分ではわからないけど、シャワーを浴びてスッキリしよう。
自分で頭を洗うの久々だなぁと思いながら洗っていく。風呂上がりに鏡を見るとなんとなくほんのりと成長しているような気がする。胸を押さえると少し痛いけど、病気じゃないよね?
部屋に戻るとゼルとリーリャが抱き合って寝ていた。なんかやらしい。女同士というより、男女が初めての朝を迎えたかのような感じだ。恋愛ゲームのエンディングが流れたあと、しばらく放置しておいて初めて見られる隠しイラストって感じだな。
いつもはリーリャが朝からご飯や飲み物を用意してくれるがここにいるのでない。
生まれ変わる前は朝飯はあってもなかってもよかったけど、毎日食べてるとちゃんとお腹が空くもんなんだな。それかシャルロッテボディが成長しているからだろうか?
とりあえず、ぬるい水を飲んで二人が起きるのを待とう。
そしてしばらくすると。
コンコンっ
誰か来た。
「はい」
「おはようございます。シャルロッテ様。メイド長のノノロと申します。朝食をお持ち致しました」
あ、リーリャがここにいるから違う人が持って来てくれたんだ。
「初めましてメイド長様」
オバサンだけど、丸顔で可愛げがある。若い頃はさぞ可愛かったのだろうな。
「朝食が遅くなり申し訳ございませんでした」
「ぜんぜん大丈夫だから気にしないで下さい」
「そう言って下さ・・・。リーリャっ!何をしているのですっ」
あ、バレた。
「え? ここは?・・・・キャーーっ」
「早く服を着なさいっ。姫様の部屋で何をしているのですかっ!!!!」
メイド長、激オコぷんぷん丸だ。
「メイド長様、申し訳ありません。私が夜寂しくてリーリャに添い寝をして貰ったのです。おそらく明け方まで私を添い寝しながら見ていて下さったのでしょう。もう一人は私の護衛です。あれも女ですのでいかがわしい事をしていたのではありませんからご安心を」
「そ、そうでござましたか。何かリーリャが失礼をしておりませぬでしょうか」
「いえ、リーリャは優秀で優しくとてもいい娘です。このまま連れて帰りたいぐらいですので」
「そのようなお言葉を頂きまして誠にありがとう存じます」
着替え終わったリーリャがこちらにきてビクビクしている。
「リーリャ、後ほど私の部屋に来るように」
「は、はひ・・・」
「メイド長様。本日はコックとの新しい料理の打ち合わせ。その後は護衛とリーリャを連れて街へ行く予定にしております。リーリャとの話は長引きそうですか?」
「い、いいえ。そうでございましたら、リーリャとの話は後日に致しましょう」
「はい。メイド長様はリーリャから伺っていた通りお優しい方なのですね。いつもリーリャが自慢しておりましたよ」
「そ、そうでございましたか。お恥ずかしい限りにございます」
「そんなお優しいメイド長様に不躾なお願いがございますが聞いて下さいますか?」
「はい、何なりとお申し付け下さいませ。それとメイドに敬語は不要でございます」
「では、少し抱きつかせて下さいませ」
と、やや大柄でふくよかなメイド長に抱きついてみる。おお、柔らかい。ベッドに寝っ転がってくれないかな。この腹の上に乗ってみたい。
「ちょ、ちょっとベッドに寝転がってくださらないかしら?」
「ベッドに寝転ぶ?仰向けで宜しいでしょうか?」
と、メイド長を寝転ばせて腹に乗る。
これは全身が人をダメにするクッションみたいだ。冬場はこれで寝たい。
「メイド長様」
「様付け不要にございます。ノノロとお呼び下さいませ」
「ノノロ?あなたノノロって言うのね?」
「は、はい。さようでございます」
少しの間全身ビーズクッションのようなホワホワを楽しんでから降りた。




