バーベキューその1
そして騎士達のとの宴会の日。早めに訓練を切り上げて風呂にはいった。
部屋で着替えているとユーバリーがやってくる。
「シャルロッテ、今日騎士達の宴会に参加するの?」
「そうよ。お誘い頂いたので」
「私も行きたいっ」
「バリ姉が来たらアームス達も来るっていうかもしんないじゃん」
「絶対に阻止するからっ」
「えー、王族が来たら皆気を許せないじゃん。非番の護衛騎士とかもいるだろうし、騎士隊長もいるんだよ」
「だってかぁ様も行くんでしょっ」
「クインシー様は特別なの」
「私も行くっ!」
「私は誘われた身なんだから勝手に決められないし」
と、ユーバリー参加を阻止する。騎士達は気軽に楽しみたいはずなのだ。
「ぐすっ、ぐすっ。なんでそんな意地悪を言うのよっ」
「泣くなよ」
「だってズルいんだもんっ」
あー、もうっ。
「皆に煙たがられても知らないからねっ」
「行ってもいいの?」
「泣いて行きたいって言ったのバリ姉でしょっ」
「じゃ着替えてくるから玄関で待ってて」
コロッと機嫌が治ったユーバリーは着替えに走っていった。
「シャルロッテ様、宜しかったのですか?」
「じゃ、リーリャが断って来てくれる?」
「無理です」
「だろ?まぁ、子供とはいえ、華が増えたと思ってもらうしかないね」
「シャルロッテ様の方が歳下ですよね?」
「中身は俺の方が大人だろ?」
「そうですね♪」
リーリャもすっかり友達みたいな感じだ。そろそろ一緒にお風呂に入れないものだろうか?ガーターベルト姿を拝ませてくれるだけでもいいんだけど。
「ひ、姫様。この服はおかしくないですか?」
そこそこ露出の多いドレスを着ているゼル。
「おかしい」
ムキムキ女の着る服ではない。
なぜ男のロマンの横乳が筋肉なのだ?
「な、なぜですかっ」
ちょっとそれを指で突付いてみる。
「硬いから。それにバーベキューなのにそんな服おかしいだろ?炭がはねて火傷したらどうすんだよ。いつもの格好でいい」
「はい」
シュンとするゼル。
「リーリャ、見繕ってあげて。動きやすくてゼルに似合うような奴」
「あちらで大丈夫ですよ。シャルロッテ様がゼル様の露出が気になるようであればショールを羽織って行きましょう」
そんな薄いショールに炭が飛んだら一発で穴開くぞと思う。が、これはここの服で、リーリャが問題ないと言ったから俺の責任はないからね。
俺はキュロットとボタンのシャツ。ちょっとガールスカウトチックな服だ。髪の毛も邪魔なのでポニーテールにしてもらった。頭皮が引っ張られて変な感じだけど髪の毛がタレに浸かったりしたら嫌だしな。鏡をみると、うんうん、お転婆ヒロインって感じだ。
「ちょっと、自分ばっかり食べてないで私にもお肉焼いてよねっ」
と、片手を腰にやり、もう片手で指を差してアニメキャラ風にやってみる。
おっさんにはイメージトレーニングが必要なのだ。
「シャルロッテ様、何をされているのですか?」
「イメージトレーニング」
は?という顔をされたけどこれは必要なのだ。
ふとゼルを見るとショールを羽織ったら筋肉が隠れてちゃんと女に見える。
もっと、胴回りも太いと思ってたけど、こういうの着るとそれなりにくびれてんな。
「うひゃひゃひゃひゃっ」
くすぐるとつもりはなかったが、くびれてんなと思いながら自然とさすっていたのがくすぐったかったようだ。
玄関に移動するとクインシーとユーバリーがいた。
おぉ、クインシーが上乳放り出してる。
「遅いぞ」
と言われたが無言で上乳に顔を埋めてみた。クインシーはこんなことをしても怒らないのだ。
「またお前は」
「フワッフワッです」
「ふふ、大人みたいな言動をするかと思えば幼子のようにもなるな貴様は」
違うぞ。大人だからこういうことをするのだ。
「とってもお綺麗ですクインシー様」
「フフフ、今日は女で来ると言っておいただろ?」
「ねー、シャルロッテ。私はー?」
「可愛いよ」
「何よその言い方?かぁ様と随分と違うじゃない」
ユーバリーはまだ小学生だから、綺麗も何もないのだ。可愛らしい以外言いようがない。
「ユーバリーは貴様が誘ったのか?」
「泣き落とされたのです」
「ユーバリーまで来たら皆が緊張するだろうが」
「だってズルイじゃない」
「仕方がない。現場でシャルロッテにヤキモチを焼くなよ。チヤホヤされるのはシャルロッテとゼルだけだ」
クインシーもチヤホヤされると思うけどな。
馬車に乗って騎士達の宿舎方面へ移動する。馬車から降りるのに騎士隊長が手を取ってくれた。スマートだな。
「わ、なにこれ?」
「ん、バーベキューだろ?」
イメージしていたのと違う。とても小洒落ているのだ。それに俺達の座る場所はガゼボみたいな場所に飾りとか付けられている。
「ガーデンウェディングみたいです」
「なんだそれは?」
「庭で結婚式をするのですよ」
「ん?結婚式は教会だろうが?」
そうなんだけどね。
「ユーバリー様までお越し頂けるとは光栄にございます」
「シャルロッテが私を除け者にしようとしたのよ」
「ハッハッハッ。ユーバリー様はこういう催しを好まれないと思われたのでしょう」
「騎士隊長、リーリャもお客様って事でいいかな?」
「はい、結構でございます。本日は男が女性にサービスをさせて頂きます」
と、ガゼボに設えたテーブルに座らされて、焼いた肉とかをここに持って来てくれるらしい。俺のイメージと違う。バーベキューとはグリルを囲んでワイワイするものなのだ。これでは炭火焼きレストランと相違ない。
乾杯してバーベキュースタート。まずは上の立場の騎士達から挨拶にくる。本当に結婚式みたいだ。とても堅苦しい。
自分で食べに行こう。
ヒョイッとテーブルから離れて若手騎士の所へいく。
「自分達ばっかり食べてないで私にもお肉を焼いてよねっ」
と、シュミレーション通りにやってみる。
「肉ぐらい自分で焼けよっ」
と、返してもらうつもりが。
「も、申し訳ございませんっ」
と、謝られた。まだ焼き始めたばかりで騎士達も食べていないのに、これをやるのは早かったか。
「あのさぁ、これはお転婆ヒロインごっこなの。そんな返し方失格。私がめちゃくちゃ嫌な女になるじゃない」
「は?」
「ここは、うっせぇ、肉ぐらい自分で焼けっ、とか言ってくれないと」
「い、意味がわかりませんが?」
「チッチッチ、初めは嫌な出会いから始まって、それからちょっと優しくして、好感度パラメータを上げないと。はい、やり直し」
「はぁ」
「私にもお肉焼いてよねっ」
「じ、自分で焼いてください」
「敬語は不要。普通に話して。そういうの面倒臭い。今日は遊びでしょ?私はメロンの人間でもないし気遣い不要っ!」
「かっ、かしこまりました」
「お肉焼いてよねっ」
「じ、自分で焼けよ」
「もう、意地悪っ。だったら貸しなさいよっ」
と、トングを受け取り肉を焼いていく。
「ほら、食べなさいっ」
「宜しいのでしょうか?」
「あー、ダメダメ。ここはお前が焼いた肉なんか食えるかっ、とか言うんだよ。せっかく女の子っぽく話してやってるのにノリが悪いぞ」
と、もう面倒臭くなってきたので焼けた肉を食べる。旨っ。めっちゃいい肉使ってんな。
「お前らも早く食べろよ。焼き過ぎになるぞ」
「は、ハイッ」
どうもいかんな。真面目過ぎるぞこいつら。
「飲めっ」
と、テーブルにおいてあったワインを注ぐ。
「恐れ入ります」
飲めば崩れて行くだろう。堅苦しいバーベキューなんて楽しくない。
ゼルがこちらにやって来た。
「姫様、あちらで座っていて下さい」
「なんで?」
「皆が運んでくれます」
「いいよ、そんなの面倒臭い。こいうのは自分で焼いて食べるもんなんだ。ほら、焼けてるから口を開けろ。アーンだ」
と、ゼルにアーンする。
「な、火の近くで食べた方が旨いだろ?」
「姫様の近くが美味しいです」
「お前は今日ドレスだから、俺がこうやってサーブしてやる。そのドレス汚すなよ借り物のドレスなんだから」
「ハイッ」
「姫様が護衛に食べさせるのですか?」
「ゼルはこういうの着慣れていないから粗相しそうだろ?その点私は動きやすくて楽な服だからな。スカートじゃないから足も気にしなくていい」
「は、はい」
「ゼルもこうやって見ると女だろ?」
「ハイッ」
「これ、取るとバッキバキだけどな」
と、ショールを取ると皆ゼルに釘付けだ。皆ゴリゴリでもいいのだろうか?
「ひ、姫様。恥ずかしいです」
「何だよ、これなしで来るつもりだったろ?」
「着ている物を脱がされると恥ずかしいのですっ」
「そうなの?」
「そうです」
なら止めておくか。騎士達も固まっているしな。
そしてアルコールが入った騎士達は少しずつ砕けていく。
焼肉にはビールだよねということでテーブルにはジョッキが並べられている。旨そうだな。
冷たく冷えたビールなのだろう。ジョッキが曇って汗をかいている。
「ゼルは飲まないの?」
「あまり強くありませんし、姫様に何かあった時にアルコールが入っていると・・・」
「飲めないわけじゃないんだよな?」
「はい、多少は」
「なら、飲め。遊び場で仕事のことを気にするな。ここで誰が襲って来るんだよ」
「しかし・・・」
「せっかく誘ってくれたのにずっと仕事モードだと皆も楽しめないだろ?早く飲め。焼き肉はアーンしてやる」
「わかりました」
ゴッゴッゴッゴ
おー、いい飲みっぷりだ。スポドリと同じ飲み方だな。
「ハイ、アーン」
とゼルの日頃の頑張りに感謝して甘やかせたシャルロッテであった。