すっかり馴染んだ
シャルロッテがメロン王国で楽しくやっている頃。
「陛下、お話がございます」
「何じゃ、ワイルド」
「なぜシャルロッテが離籍すると言った際にお止めにならなかったのですか」
「お前は何を言い出す?ワイルドはシャルロッテと話した事もなかろう?」
「私が構うと姉や母達の嫌がらせが強くなると思ったからです」
「そうであったか・・・」
「母は違えどあれは妹にごさまいます。ろくに自由も与えず、構いもせず、挙げ句の果てに見捨てるとはどのようなおつもりだったのですか」
「色々あるのじゃよ」
「倒れたと聞いた時には心臓が飛び出そうでした。それが回復して人が違ったかのように強くなり、ようやく接しても問題ないかと思った矢先にいきなり離籍です。あまりにも可哀想ではありませんか」
「シャルロッテはここから出た方が幸せになれるのじゃ」
「どういう意味ですかっ」
「ここに居ればずっと同じような生活になる。それにまた命を狙われるやもしれん」
「あれは原因不明の病では・・・」
「そうであったな・・・」
ワシの迂闊な一言がこのような事態を招いてしまったのじゃ。どうしてシャルロッテをこのまま縛り付けておけようか。と、アマ王はワイルドに言えずに黙ってしまった。
シャルロッテは毎日、昼からゼルの訓練を観に行く。多対1なのは相変わらずだが、相手をする兵の数も増え、非番の騎士達が見学に来るようになっていた。
「姫様、お暑いのでこちらをどうぞ」
見学の所に行くと若手騎士があれやこれやと世話を焼いてくれる。いま手渡されたのは冷たいおしぼりだ。
「ありがとう」
と、顔を拭くとリーリャからはしたないですと注意を受ける。
「ん?顔を拭いちゃダメなの?」
「殿方の前でそのような事をしてはなりません。額や首を軽く押さえるとかだけです。決して脇とか拭かないように」
今から拭こうと思ってたのに。
暑いからスカートに手をやろうとするとそれも抑えられた。
「また訓練の邪魔をするなと怒られますよ」
「だけど、暑いんだもん」
「姫様、これでどうですか?」
二人の騎士が大きな団扇のような物で仰いでくれる。
「うむ、苦しゅうない」
と、姫様ごっこを楽しむ。
若手騎士達は騎士隊長が水分補給、メロンの差し入れ、適切な休憩を取るようになった原因がシャルロッテであることを知り、ゼルに近付きたいのも加わってシャルロッテの下僕のようになっていた。
昼休憩になり、ゼルがこちらにやって来た。
「姫様、また筋肉が付いてまいりました」
と、ペロっとお腹を見せる。騎士達の目が釘付けだ。こんな男みたいな腹を見て嬉しいか?
「ゼル、騎士達にエロい目で見られてんぞ」
「エロい?」
「み、見ておりませんっ」
「ほぅ、本当に見てないのか?」
「あ、当たり前ですっ」
「ゼルは見られても平気みたいだぞ?」
「えっ?」
「見てんじゃねーかっ」
バシュっとサマーソルトキックをお見舞いする。当ててはいないけど驚く騎士達。
「ゼルにへんな事をしたら容赦しないからね」
「し、しませんしませんっ」
「ま、本気で嫁にしたいなら口説くのは許す」
「ほ、本当にございますかっ」
「このまましておくと嫁に行かんからな」
「姫様っ、私はずっと姫様に仕える身でございます」
「お前に結婚しろとは言わないけど、良いなと思う人がいたら遠慮すんな。バッキバキでもいいと思ってくれる人は貴重だぞ。メロン国の騎士なら将来も安泰だし」
騎士達からうぉぉぉっと声が上がる。
「でも求婚するのはゼルより強くなってからね」
「えっ・・・」
「当たりまえだろ?お前らはゼルを守りたいのか守られたいのかどっちだ?」
「もちろん守る方でございますっ」
「なら、ゼルより強くならんとダメだろ?」
「かしこまりましたっ」
「何をやっとるのだ貴様は?うちの騎士をそそのかすな」
クインシーがこっちに来ると直立不動になる非番の騎士達。クインシーは恐怖の対象なのだ。
「強くなる動機がある方がやりがいあるでしょ?」
「ふむ、それはそうだな」
「クインシー様にお願いがございますっ」
「ほう、貴様らが意見するとは珍しいな。私に稽古を付けてもらいたいのか?」
さーーっと青ざめる騎士達。
「そ、それはまたの機会にお願い申し上げます。お願いとはいちご姫様とゼル殿を我々の宴にお誘いしたいのであります」
「貴様らの宴?」
「ハイッ。バーベキューをする予定にしておりまして、それにお誘い出来ないかと」
「だそうだ。どうする?」
「行く!」
「姫様が行かれるなら問題ありません」
「リーリャも連れてっていい?」
「もちろんでありますっ」
「騎士隊長は参加?」
「ハイッ」
「クインシー様は誘うの?」
俺がそういうと、ゲッという顔をする騎士達。嫌だろうけど、怖い一面以外も見たほうがいいと思うんだよな。
「シャルロッテよ、私が行くと皆が楽しめんだろうが」
「では、私の保護者として付いて来て下さいませ」
「ク、クインシー様もぜ、ぜひ・・・」
「いつだ?」
「明後日の夜です・・・」
「わかった。早めに切り上げよう。で、翌日は訓練を休みとする」
ありがとうございますと敬礼していたが騎士達の顔は引きつっていた。
昼飯の時にいつものクインシーは一人で食べている。それが好きなのかと思っていたが、休憩の時にクインシーがいたら休めないだろうとの配慮だろう。
サンドイッチを食べているクインシーの所に行く。
「ん?食うか?」
「いえ、お腹はいっぱいです」
「何か話があるのか?」
「いいえ、お一人で寂しいのではないかと」
「ふんっ、余計な気遣いを。それで騎士達の宴に巻き込んだのか?」
「騎士達にもクインシー様のお優しい一面を見てもらいたいのです。若手騎士達にとってクインシー様は恐怖の対象らしいですから」
「恐怖の対象か。それはそうであろうな。初めに性根を叩き直すからな」
「恐怖政治は危険なのです。いつか逆恨みするとも限りませんしね。本当の恐怖政治をされているならお誘いはしませんでしたけど」
「お前、本当に10歳か?」
「中身は30歳のおっさんです」
「ふふふっ、私と変わらんではないか」
「はい。ですのでクインシー様は恋愛対象でございます」
「我は人妻の子持ちだぞ?」
「はい、背徳感があってドキドキ致します」
「フハハハハっ。よもやこの歳になって口説かれるとは思ってもみなかったぞ」
「クインシー様は気高く美しいですよ。フワフワですし」
「そうか、それでは宴の時は女として行くか」
「はい、ぜひお願い致します」
クインシーはそう言って楽しそうに笑っていた。
訓練が終わって兵隊長がクインシーに進言してきた。
「騎士達だけに贔屓ではございませんか?兵達が拗ねております」
「ん?、貴様らもシャルロッテ達と飯を食いたいのか?」
「もちろんでございます。お立場がございますので、お誘いしてはいけないものだと思っておりました。騎士達は貴族で、兵達は平民でございますので恐縮ではございますが」
「シャルロッテ、兵達も一緒に飯を食いたいそうだがどうする?」
「もちろんOkですよ」
「ならば、最終日に打ち上げを兼ねて宴会にするか?」
「はいっ。皆も喜びます」
「シャルロッテ様、騎士とはまだわかりますが、兵達ともご飯を召し上がるのですか?」
「リーリャは不参加?」
「いえ、ご一緒させて頂きますけど。兵は騎士に比べて粗忽者が多いのですよ。身分差も大きいですし」
「そんなのどうでもいいよ。悪意を持って近付いてきてるわけじゃないしね」
「それはそうですけど」
「それに誘ってくれるなんて嬉しいじゃない。私達よそ者なのに」
「よそ者なんて誰も思ってませんよ」
そういや僅かな期間でメロンの人達と随分と仲良くなれたものだ。これもゼルの頑張りが皆に認められたからだろうな。
「騎士達は貴族なんだよね?」
「はい、そうです」
「リーリャも結婚相手を探したら?」
「んー、騎士になるのは貴族でも家を継げない者ばかりなんですよね」
「家を継ぐ変なやつと無理矢理嫁に行かされるのと恋愛して嫁に行くのとどっちがいい?」
「んー、んー、迷いますねぇ」
「選択肢があった方がいいんじゃない?リーリャが無理矢理結婚させられそうになったところに騎士が颯爽と奪いに来るとか」
そういうとまんざらでも無くなるリーリャ。
「でも、私を射止めようとする騎士なんていますかね?」
「宴会の時にもガーターベルトしてきてね」
「み、皆の前でスカートをめくるつもりですかっ」
「本当は誰にも見られたくないんだ」
と、柱ドンする。
「あっ、あっ、あの」
コショコショ
「キャーハッハッハッハッ」
ビクッ
くすぐられると悪魔に取り憑かれるリーリャ。
うん、気に入らない奴が口説いて来たらくすぐってやるから大丈夫。




