みんなでゴルフ
ゴルフといっても元の世界程コースは広くない。見たところパー3メインにパー4がチラホラって感じか。クラブもなんか古臭いというか、鉄と木でできてるから飛ばないんだろな。ウッド1本、アイアン3本、パター1本しかないし。
「では先に行かせて頂きます」
と、アンデスが一番長いアイアンを持って打つ。
パシュっ
おー、綺麗なスイングだ。まっすぐ飛んでグリーン前に落ちた。飛距離は100ヤードぐらいなのだろうか。
「少し短かったですね」
「ナイスショットです」
「なんですかそれは?」
「とてもお上手ですという意味でございます」
「イチゴ姫は面白い言葉をご存知ですね」
「はい、一人遊びが多くて自分で言葉を作ったりしていたもので」
「ご自分で作られた言葉ですか。それは興味深い」
そんなわけあるか。
「静かにしろよ」
グースがアドレスに入っていた。静かにするのはマナーだけど、他国の王子と話してんのに物の言い方を知らんのかね君は?
「フンッ」
カシュッ コロコロっ
「ナイスチョットです」
「どこが上手なんだ。嫌味を言うな」
嫌味ではない。チョロした時の掛け声なのだ。
続いてユーバリー。
「私は乗せて見せるわよ」
パシュ
おー、上手いじゃん。アンデスより短いけどまっすぐだ。
次はラズ
コンッ
かなり短いけどグースより飛んでるな。
「さ、イチゴ姫ですよ。距離は気にしないでまっすぐ飛ばして下さい」
「はい、ありがとうございます」
と、2番目に長いアイアンを持つ。クラブの長さ的にこれが限界だ。
ゲージのマックスパワーに合わせてボタン、続いてインパクトを合わせて、むむむっ、ここだっ。ピッ
パシュゥゥゥッ
脳内に響き渡るナイスショット。パーフェクトショットだ。
「行っけぇぇぇ!」
「おおー、一度で乗りましたね」
「パーフェクトショットでしたわ」
「シャルロッテはやった事があるの?」
「初めてですわよ」
現実にはね。しかし、格闘技もそうだけど、コマンドで動く時はシャルロッテボディの性能にプラス補正が効くようだな。グースを殴った時もあんまり拳も痛くなかったし。
「うっわぁ、負けたら何でも言うこと聞くとか賭けるんじゃなかったわ」
「ふふふ、女に二言はございませんことよ」
「たまたま上手く出来たからって調子に乗んなっ」
「次はチョロの番ですわよ。私にかまっている暇があったら早く打たれた方が宜しくなくて?」
「チョロ?」
「はい、チョロっとしか飛んでいませんもの」
「うるさいっ」
と、グースはウッドを持った。あんたティーショットでチョロったのにウッドとか馬鹿じゃない?
「フンッ」
カツッン
ゴロゴロゴロゴロ
うわっ、ラッキーな当たりそこねでグリーン手前まで転がしやがった。こいつヒキ強なのか?
「見たかっ」
「はい、凄いゴロです」
狙ってやったなら凄いよな。
ラズは見た目と違って手堅いゴルフ。きちんと刻んでいく。ユーバリーはガサツと言われている通り荒いな。グースと同じタイプなのかもしれん。
アンデスは予想通り、とてもきっちりしたゴルフ。お手本ってやつだな。
「ゼル、これで穴を狙うのよ」
「知ってますよ姫様。私にお任せ下さい」
「賭けてるからね」
「分かってます。フンッ」
あっ・・・
なぜパターを振りかぶってフルスイングするのだ。
「も、申し訳ございませんっ」
「お前、脳みそまで筋肉なのかよっ。パターでフルスイングしたの初めて見たわっ」
「イ、イチゴ姫・・・?」
「あら、ごめんなさい。ゼルと男の子ごっこをしている癖が出てしまいましたわ。お恥ずかしいっ」
「そんな遊びをされているのですか」
「えぇ、部屋から出してもらえないので・・・このような遊びしか」
ヤバい時は同情を誘おう。これで誰も深く追求してこない。
「ならば私達もお付き合いいたしましょう。ユーバリーもその方が楽だろ?」
「そうね、堅苦しい話し方は無しで良いわよ。シャルロッテは面白いから男言葉で話しなさい」
棚からぼた餅だ。これは楽でいい。
「いいのか?」
「わっ、本当に男みたい」
ユーバリーはさまになった男口調に驚いているのでサービスしてやる。
「お嬢さん、休みが終わったら僕の部屋においで」
イメージはヅカだ。それと少女向け恋愛ゲーム。ガサツな姫が恋に落ちて少女らしくなっていくのだ。
あ、ユーバリーが少し赤くなった。これはチャンスっ。
(ゼル、ユーバリーの手を取って、次はお姫様の番ですよと言ってみて)
と、ゼルに指示する。こいつの方が似合うだろう。
ゼルは片膝を付いてユーバリーの手を取り、
「次はお姫様の番ですよ」
「は、はい」
うん、バッチリだ。これで休み明けの猫耳と腹筋女の危ない組合せが見れるな。
皆がカップインさせて行くなか、ゼルがフルスイングしたボールが見つからず2ペナをくらって打ち直し。
次のホールもアンデスから。初めのホールと同じくゴルフに性格がよく出ている内容だ。
「ゼル、ここはかっ飛ばしていいぞ」
「お任せ下さい姫様。フンッ」
ゼルの打った玉はグリーンを超えて林の中へ。
「かっ飛ばすのも程度があるだろうが」
「も、申し訳ございません」
で、俺が打ち直し。パーフェクトショットは出ずにグリーン手前のバンカーに入ってしまった。
「あー、ごめん。目玉になってるわ。このクラブでエクスプロージョンショットで打って」
「エクスプロージョンショット?」
「ここまで埋まってたら玉が打てないだろ?砂ごと打たないとダメなんだよ。エクスプロージョン、つまり爆発させるように打つってことだ」
「なるほど。エクスプロージョンですか。いい響きの言葉です」
「やりすぎてクラブを折るなよ」
「はい、お任せ下さい。エクスプローーージョンっ」
バッフォォォッン
まさに爆発したバンカー。そして・・・
カツン、コンコロコンッ
「おー、ゼル。直接入ったぞ。素晴らしいっ」
「やりましたっ。姫様っ」
グギグギッ
「キブッ キブッ」
「も、申し訳こざいませんっ」
「また死ぬわっ。自分の力を考えろっ」
また抱き締められてサバ折りを食らう。クマかお前は。
「二人は仲がいいんだな」
アンデスも普通の言葉で話してくる。
「こいつの愛が止まらないんだよ」
「す、少し羨ましいわね」
「なら、ユーバリーもゼルにやってもらう?背骨が折れるかもしれないけど」
「ひ、姫様っ。大袈裟ですっ」
大袈裟ではない。
「だ、大丈夫よ」
「じゃ、俺が」
と、抱きついておしりさわさわしておいた。うーむ、やっぱり柔らかさがまだ足りないな。
そしてゼルのも触ってもみる。
「ゼル、力を抜いて」
「抜いてますよ」
はぁ、残念だ。触っても怒られない立場なのにこんなに硬いとは。
「どうかされましたか?」
「服の下に防具なんか付けてくるなよ」
「つ、付けてませんっ」
「カッチカチやぞ」
「なに女同士で尻さわってんだよ」
と、グースが絡んで来たので尻を触ってやった。くそっ、柔らかいっ。
「なっ、なにすんだっ」
「お兄様の勝ちですわ」
何が勝ったのか不思議そうだが、勝ちと言われてグースは嬉しそうだった。
遅れているので急ぎましょうと言われて次のホールへ。
パー4のコースだ。
「ゼルが打って。ここならオーバーしないだろうから」
「はいっ」
ウッドを持ったゼル。
「エクスプロージョンっ」
ドゴンっブッホォォォォ
チョロチョロチョロ
「何でここでエクスプロージョンショットなんだよっ」
「さ、先程直接入ったので、こうすればまた入るのかと」
「そんなわけあるかっ」
全く脳筋が。ティーグランドに隕石が落ちたみたいになってんだろが。
これ、ハンデでゼルと組んだけど、俺が皆にハンデあげてるみたいなもんじゃないか。
皆も打ち終わり、玉へと移動するときにラズが俺のボールを踏んで行きやがった。クスッと笑ってこっちを見たのでイジメというよりもイタズラなのだろう。
あーあ、草の根本にガッチリはまってるじゃ無いか。こりゃ出すだけだな。
パターを持って縦にしてコツンと前に出した。
「あら、そんな方法があるのね」
「ラズお姉様にこういうクラブの使い方もあると見せたかったからちょうど良かった。あとこんな使い方もあるんだ」
と、クラブで胸の先をちょんとしてやった。
「キャッ」
「あーら、ごめんなさい」
真っ赤になるラズが可愛いので、移動するときにもお尻をちょんとしてやる。
「やっ、やめなさいっ」
やめろと言われるともっとやりたくなるのはサガと言うやつだ。
「ほーれ、ホレホレ」
「やめてよっ」
「ストロベリー家は姉妹の仲がいいよね」
「ええ、とっても」
反撃されるのに慣れてないラズは真っ赤になって怒っていた。こういう反応されるとますますやりたくなるというのは知らないのだろうか?これからはイタズラされたらセクハラで返そう。
次もパー4だ。
「ゼル、ティーショットの見本を見せてやる」
「はい」
「チャー シュー メーン」
パシュゥゥゥ
「何ですかそれは?」
「こうやってリズムを取って打つと安定するぞ」
「わかりましたっ」
そして、またパー4のショットがゼルに。
「いいか、リズムだぞ、リズム」
「はいっ お任せ下さい」
そう言ってアドレスに入ったゼル。
「ラーメンっ!」
ドゴンっ バッシュゥゥゥ〜
「やりましたっ!」
「どこがリズムなんだよっ」
しかし、ぶっ飛んだな。パー4をワンオンかよ。
「姫様のアドバイスは完璧ですっ」
そんなアドバイスはしとらん。
そして、前半が終わって昼休憩。俺がゼルに構いっぱなしだった間に、アンデスとラズ、グースとユーバリーが話すようになっていた。ユーバリーはちょっと顔が引きつっているけど、グースは嬉しそうだな。
前半順位はアンデス、ラズ、俺、ユーバリー、グースだった。
ラズはコツコツゴルフで手堅くまとめたのだ。
「襲いぞっ」
と、アームスが待ちくたびれたようにアンデスに言う。
ランチはサンドイッチだ。
・・・イチゴサンドはわかるけど、なぜマヨネーズなのだ?普通は生クリームだろ?もしくはカスタードとか。
一口食べて、ゼルにアーンしておいた。
昼からもうハーフする予定だったけど、かなり暑いのでやめようかとなった。そういや、顔が焼けて痛いわ。
「そ、それで私が負けてしまいますっ」
後半は無しと言うと、ユーバリーがそう叫んだ。
そう、前半はユーバリーに勝っているのだ。まぁ、俺は勝っても負けてもどっちでもいいんだけど。
と、そこで初めてアームス王子が話かけてきた。
「お前、上手いんだってな」
「たまたまですわ」
「俺と勝負しろ」
「は?」
「お前が勝ったら褒美をやろう。俺が勝ったらお前の秘密を教えろ」
なんですかそれ?
ちょっとヤバい気がする。
>コンテニューしますか?
そんな画面が脳内に表示されていた。