アンデス王子は将来有望
ユーバリーとキャッキャウフフと話してるとグースがチラチラ見てくる。ユーバリー姫は君には高値の花だから無駄だ。
アームスとワイルドは元々知り合いのようだな。ベリーベリーはストロベリー王国の王かメロン王国の王妃を狙っているのだろうか?アームスに猫々してやがる。
アームス達にユーバリーが呼ばれて向こうへ行ったのと入れ替わりに第二王子のアンデスがやって来た。
「初めましてイチゴ姫」
「こちらそこアンデス王子様」
「ユーバリーが不躾な事を申し上げたみたいで申し訳ありません」
13歳でこんなに優雅に振る舞えるのか。凄いな。
「ユーバリー姫様は先程私なんかにわざわざ謝罪にお越し下さいましたわ。それにお友達の様なお姉様になって頂きましたの」
「そうでしたか。ユーバリーはガサツですが優しい子ですので宜しくお願い致します」
「こちらこそ宜しくお願い致します。ところでアンデス様もイチゴ姫の事をご存知なのですか?」
「クラスメイトがよく話してますからね」
「アンデス王子様は庶民とお話されますの?」
「私は第二王子というのもありますからね。兄のアームスが王になれば直接民に関わるのは私になるでしょうから」
ほぅ、王は兄に任せて摂政みたいな役割をするつもりなのか。この優雅な振る舞いの裏はなかなかやり手なのかもしれない。しかし、この世界の若い子はすごいね。自分の13歳の頃なんて比べ物にならんわ。格闘ゲームにのめり込んでたよな。
「イチゴ姫、あなたはどの学年の勉学までご理解を?」
「どうでしょう?理数科目は結構好きですわ」
「ほう、数字が好きということですか?」
「というより、答えが決まっているものが好きですの。文学とかは正解がいくつもありますでしょ?」
「なるほどね。イチゴ姫はなかなか興味深いお方ですね」
「アンデス様もご聡明な方でございますね。メロン王国の将来は安泰であられると思いますわ」
「そう言って下さると嬉しいものですね。良かったら明日の玉遊びは同じ組で回りませんか?」
「私はこの通りのチビですし、初めてですのでご迷惑をお掛けしますわ」
「構いませんよ。最終組でゆっくり回れば問題ありません」
ということでOKしておいた。
「姫様、アンデス王子をお気に召されましたか?」
「第一王子はどんな人か知らないけど、時期メロン王国は実質第二王子が実権を握るんじゃない?王は第一王子だろうけどね」
「ほう、では姫様は第二王子狙いですか?」
「何が?」
「嫁入りですよ」
「なんで嫁に行かにゃならんのだ?」
「この晩餐会はそういった物も含まれているのでは?」
「それはベリーベリーとラズでしょ。私は嫁などに参りませんわ。それにゼルを養わないといけませんし」
「私を養う?」
「あなたが嫁に行けなかったらの話よ」
「よ、嫁になど行きませんっ」
「でしょ。私も嫁にはいきませんわ」
「し、しかし・・・」
「私の嫁ぎ先によってはゼルはお役御免になりますわよ」
「えっ?」
「婿をもらうならともかく、嫁ぐのに他国の騎士は不穏分子と取られてもおかしくないですし、その国の騎士達も面白くはないでしょ?」
「た、確かに」
「ね、私が嫁に行くとはそういうことですの」
「で、では王になって、婿を取りましょう」
「こんなところで迂闊な事を言うな。お前まで狙われんぞ」
と、ドスを効かせてゼルに忠告する。王位なんて狙ってもいないのに、狙ってるとか思われたら危ないじゃないか。
「も、申し訳ありません」
「バツとして寝るときに特訓な」
「は、はひ・・・」
さて、まだ歓談が続いているようなので、余計な事に巻き込まれないうちに小さなお子様の私はおいとまさせて頂きましょうかね。
「ゼル、もう私は部屋に帰っても宜しいのでは?」
「そ、そうでございますね。退席しても宜しいか聞いて参ります」
と、ゼルが向こうへ行くとシドがこそっと話し掛けてきた。
(イチゴ姫、ちゃんと姫様らしく喋れるんだな)
(面倒で嫌だけど、他国の王族がいるからね)
(うん、そっちの方がイチゴ姫らしいや)
(ふふふ、そうかしら?)
(や、やめてくれよ)
(はいはい。じゃ、今日はありがとうね)
(こちらこそ。楽させて貰ったわ)
(他のバイトも頑張ってね)
(おうっ)
ゼルが戻って来た。
「姫様、マスク王とクインシー王妃に挨拶をしてから帰るようにと」
ハイハイ
「マスク王様、クインシー王妃様。この度はストロベリー王国までお越し下さいましてありがとうございました」
「おぉ、そなたは本当にイチゴ姫と呼ばれておるそうだな」
「皆、面白がってそう呼ぶだけでございますわ」
「いやいや、それだけ庶民から親しみを持たれている証拠であろう。将来が楽しみであるな」
「私の将来は決まっておりますわ」
「ほう、それは女王ですかな?」
と、ニヤッと笑うマスク王。
「そうですわね」
と、言うと、ベリーベリーにキッと睨まれた。おい、猫々したの消えてんぞ。
「冗談ですわよベリーベリーお姉様」
「まぁ、シャルロッテったら」
と、抱き締めて足を踏もうとするので唇をペロンと舐めたら手を引っ込めた。
「私は護衛のゼルを養わねばなりませんの。私のせいで嫁に行けなさそうなので一生面倒みないといけませんのよ。ですから何か商売でもしようかと思っておりますわ」
「商売?」
「はい。ストロベリー王国は優秀な姉兄がおりますので国は安泰ですもの。私は不要ですわ。学生の間はストロベリー家にお世話になりますが、その後は自立して商売人になろうかと」
「しかし、王家の人間が商売人などを・・・」
「私は半分だけ王族ですからね、その半分は学生の間で終わります」
そう言うとマスク王は黙った。
アマ王は渋い顔をしている。
「シャルロッテ姫」
「はい、クインシー王妃様」
「商売人の道は厳しくてよ」
「では本日王妃様にお近付きになれましたので商売人になったあかつきには売り込みに参りますわ」
「フフフッ、面白い娘ねあなた」
「お褒めのお言葉と受け取っておきますね。ありがとうございます。では、皆様ごゆっくりお楽しみ下さいませ。お子様な私にはそろそろベッドが恋しい時間ですので失礼させて頂きます」
と、挨拶をして、ユーバリーに手を振ってから帰った。
「あー、疲れた」
「姫様、とても堂々とした態度で感服致しました」
「褒めてもバツの特訓はなくならんからな」
「お、お手柔らかに・・・」
お風呂から上がってベッドに寝転ぶとゼルがモジモジして入って来ない。
「おやすみ」
と、寝たふりをするとやっと入って来たので抱きついてコショコショしてやった。
「ウヒャヒャヒャヒャ」
ベッドで暴れるゼル。あー、これで柔らかかったらいいのに。
そう思ってくすぐり続けたら背骨が折れるかと思うぐらい抱き締められた。
翌朝は早起きさせられた。馬車で移動するらしい。
「スボンなんだね」
「はい、玉遊びですので」
「ゼル、鎧を脱いでいけよ」
「どうしてですか?」
「一緒にゴルフやろうぜ」
「ゴルフとは玉遊びのことですか?」
「玉遊びって変だろ?だから名前付けた」
「私もやるのでしょうか?」
「当然。これなら男に勝っても問題ないだろ?」
「そ、そうですね」
馬車で移動して到着したのはゴルフ場というよりも野原にグリーンを作ったみたいな感じだ。ゴルフの原型ってこんな感じだったのかな?ゲームの解説でそんなのがあった気がする。
ゴルフはゲームでしかやった事がないけど、コマンドが使えたら大丈夫そうだ。試しにクラブを持ってゴルフゲームを想像するとお馴染みのパラメーターゲージが見えた。さすが転生特典。
今回も一番乗りだ。おそらくゼルは俺の立場を考えて早めに到着するようにしているのだろう。
「おはようイチゴ姫。早いですね」
「おはようございますアンデス王子様。昨夜は先に退席してたくさん眠りにましたから」
「あれから私達未成年も先に上がらせて貰ったのですよ。兄達は遅くまで飲んでたようですが」
と、二日酔いっぽいワイルドとアームスがやって来た。今年から飲めるようになったけど飲み方知らないんだろな。これから飲んで吐いてを繰り返して自分の適量を知るようになるさ。と、酒飲んでタバコの誤飲で死んだ奴に言われても説得力ないわな。
他のメンツもやってきたが王妃と正妻達はやらないみたいだ。スカートだし従者に日傘持たせてる。
組合せは、王様、王様、ワイルド、アームス、ベリーベリー。
こちらはアンデス、ユーバリー、グース、ラズ、俺とゼル。
「姫様、やはり私は遠慮致します」
「なら、俺とペアを組もう。交代交代でやればいいんじゃない。ほら、俺は小さいからハンデ貰ってもいいと思うんだ」
「大丈夫でしょうか?」
「アンデス王子様。私にハンデを頂けませんかしら?」
「ハンデとは?」
「手加減って奴です。ゼルと交代交代で打つのをお許し下さいませ」
「なるほど。構いませんよ」
「おいお前。なぜ、アンデス王子に聞くのだ?この中で俺が年長者だろうが?」
「グースお兄様。お客様が最優先ですわ」
「そうよ、歳が上だから何なのよ?」
と、ラズの援護が入る。ラズは俺の味方をしたというか、アンデスへのアピールか?
チッと舌打ちするグース。こいつ小物っぷりが半端ないな。
「では、アンデス王子様、お手本を見せて頂けませんか」
と、上手くラズがアンデスをオナーにした。
アンデス、グース、ユーバリー、ラズ、俺達の番だ。
「シャルロッテ様、何か賭けましょう」
と、ユーバリーが持ち掛けてくる。
「私は初めてですのよ」
「じゃ、賭けるものは決めていいわよ」
「それなら・・・。あっ、夏休みが明けたらお部屋に遊びに来てくださるでしょ?私が負けたらその時にいいものをプレゼントいたしますわ」
「あなたが勝ったら?」
「私のお願いを聞いてくださいまし」
「どんなお願いよ?」
「とっても簡単なのでその時のお楽しみにして下さいませ」
「まぁ、いいわ。私が勝てばいいのよね」
「はい」
と、ニコニコと返事をしておいた。これで勝っても負けても猫耳&しっぽ確定だ。くーっ、カメラかスマホ欲しいっ。
そんな事ともつゆしらずにユーバリーはブンブンとクラブを振って気合を入れていくのであった。




