表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

短編集:小さな魔法医エリカ外伝

小さな魔法医エリカ外伝 ~ミラーナ王女は譲らない~

作者: タイガー大賀

現在連載中の『小さな魔法医エリカ ~ほのぼの治療日記~』の登場人物の中でも、極めて特異なキャラクター『ミラーナ王女』の過去とは?


 イルモア王国の王女『ミラーナ』は、幼少期から自分がやりたい事は全てやり、欲しい物は全て手に入れる子供だった。

 我が儘を言うのではない。

 ましてや泣き(わめ)いた事など一度もない。

 ではどうしたのか?

 全て言葉(たく)みに説得するのだ。

 5歳の頃、自身に剣術の教育係を付けさせる事に成功している。

 目的はハンターになる事。

 その頃から冒険(たん)や戦記物の絵本を読んだり、同様の物語を読み聞かせて貰うのが大好きで、大きくなったら自身がハンターになる事を夢見ていた。

 だが、そんな事(自身がハンターになりたいと思っている事)は全く感じさせずに父親である国王を納得させている。

 (いわ)く、国王の長子である自分は、例え自分が国王として父の跡は継がず、国王となる男性を婿(むこ)として迎え入れて王妃になるとしても、国王の血を引く者として(たみ)を守る()(がい)を示さなければ国民の支持は得られないから。

 こんな事を言われては、父親である前に国王として認めざるを得ない。

 更には魔導師や参謀も同様の手口で教育係として付けさせている。

 国王自身、そんな娘に(だま)されているとは露程(つゆほど)も思っておらず、むしろ剣士・参謀・魔導師として成長していく娘を(ほこ)らしげに思っていた。

 そんな国王も、1つだけ不満に思っている事があった。

 それは、ミラーナが一度も父親である自分の事を『お父様』と呼ばず、何度要求しても『父上』としか呼んでくれない事だった。

 母親である王妃に対しても『お母様』とは呼ばずに『母上』としか呼ばなかった。

 他の娘達2人は、最初こそ姉のミラーナを見習うかの様に『父上』『母上』と呼んでいたが、何度も教えている内に『お父様』『お母様』の呼び方が定着した。

 しかし、ミラーナだけは(かたく)なに『父上』『母上』で押し通した。

 理由を聞くと「意味は同じだから」と言って、全く直す気配が無かった。



 ようやく待望の王子が生まれた頃の事。

 ミラーナは12歳になっていた。

 淑女(レディー)としての教育も、既に始まって2年が()っていた。

 しかし、(いま)だに自身の事を『お父様』と呼ばないミラーナに対して(ごう)を煮やした国王は、ちょっとした脅しのつもりで


『私の事をお父様と呼ばないのであれば、私はお前を淑女(レディー)とは認めない! 国王の娘として、淑女(レディー)として相応(ふさわ)しい言葉(づか)いに改めよ! 今後、私の事は『お父様』、母の事は『お母様』と呼びなさい!!』


 これなら言い返せないだろうとドヤッた国王は、直後のミラーナの言葉に打ちのめされた。

 ミラーナは平然として


(しょう)()(いた)しました。では今後は『父上』ではなく『国王陛下』とお呼び致します』


 と言ってのけた。


「は?」


 ミラーナの言う事に理解が追い付かず、国王は()の抜けた言葉を発する。

 ミラーナは淡々(たんたん)と続ける。


(わたし)は意味が同じであるならば、自分が言い(やす)い言い方を無理に変える事は無駄な事だと思っております」


「いや、あの…」


 困惑する国王を尻目にミラーナは淡々(たんたん)と続ける。

 ついでを言えば、跡継ぎである王子が生まれた直後から、ミラーナは自称を『わたくし』から『わたし』に変えていた。


「仮に(わたし)が国王陛下の呼び方を『父上』から『お父様』に変えたとしても、そもそも(わたし)淑女(レディー)としての自覚が全く無い以上、呼び方を変える事に意味があるとは思えません。(わたし)淑女(レディー)としての自覚が無い以上、陛下を『お父様』と呼び方を変える事にも意味があるとは思えません。ですので今後は『父上』でも『お父様』でも無く、『国王陛下』とお呼び致します」


 そう言い残すと、ミラーナはさっさと謁見(えっけん)()(あと)にするのだった。



 その後、国王は『お父様と呼ばれるのは(あきら)めるから、せめて()()()()などと言う他人(ぎょう)()な呼び方は()めてくれ』と、涙ながらに懇願(こんがん)し、ミラーナの国王に対する呼び方は『父上』で定着した。

 更にミラーナは、万が一剣が折れた場合に備え、体術の教育係を付けさせる事にも成功した。

 ミラーナの『なにがなんでもハンターになる』という目的は、着実に進みつつあるのだった。

自身の目的達成の為には手段を選ばないミラーナ王女。

無理矢理達成するのでは無く、周囲が『そうせざるを得ない状況に追い込んで行く』のは天性の物なのか?

なんだかシリーズ化しそうな予感…


と思っていたら、短編集としてシリーズ化してしまいました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ