VS 序列七位
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「……お前、ほんと何なの」
続いて個人訓練にやってきたディーンはまず問いかける。
これまでアヤトと模擬戦を行ったカイル、ティエッタ、シャルツはわずかな時間でも疲労困憊。怪我も多くカナリアの治療術のお世話になっていた。
にも関わらず向かい合うアヤトは三連戦を終えても汚れどころか息すら乱していない。自分たち序列保持者との力量差は昨日のデタラメな模擬戦で痛感したが、体力含めて持たぬ者とは思えない。
また戦闘狂のような戦いぶりからディーンはアヤトに対して若干恐怖心があった。
「何だと言われてもな。カナリアの開き直りで指導員に回されただけだが」
「そうじゃなくてな……」
聞きたいのはそこではないと、バカにしているのか素なのかが読めず肩を落とす。
「いくらアーメリさまの弟子とはいえ、持たぬ者にしては強すぎだろ。いったいどんな訓練してきたんだよ」
「さあな」
「……教える気はないと」
「いや、面倒だが教えるつもりならあるが?」
「なら――」
「なんせ序列保持者の精霊士や精霊術士さまはどいつもこいつも弱っちいからな」
そっちの教えるかとディーンが突っこむより先にアヤトは嘲笑。
「ただお前はリス並みのバカだ。上手く教えられるか自信はねぇが」
「バカって……お前」
「どうした? 頭の賢さなら序列どころかリスと最下位を争うほどのバカ」
「この……っ」
淡々とした口調で侮辱されディーンはギリッと奥歯をかむ。
「短絡的なのもリスと良い勝負だな」
「やかましい! 俺をバカにしたこと後悔させてやるからな!」
更に煽られ我慢の限界と精霊力を解放、茶髪と碧眼がエメラルドよりも澄んだ翠に変わる。
『駆け・駆け・大鷲のごとく――』
続けて詩を紡ぎディーンを中心に風が吹き始め。
『空を自由に我が身のものに――風旋飛翔』
その風が両足へと集約し、ディーンの身体が上空へと舞い上がった。
常に風を操り制御をし続けなければならない飛翔の精霊術は風の精霊術でも難しいとされている。詩を紡いだとはいえ学院生で可能とするディーンはやはり序列持ちに相応しい実力がある。
「どうだ! いくらお前が強くても空は飛べないだろ!」
故に監視塔より高く舞い上がりアヤトを見下ろしどや顔を。
いくらアヤトが素早くとも空を飛べなければ攻撃は不可能、完全にマウントを取ったことでディーンは勝ち誇る。
「……やはりバカか」
「なんだと!?」
見上げるアヤトは焦らず哀れみの視線を向けていて、変わらずバカにされてディーンが叫ぶ。
「なら聞くが、お前はそこからどうやって俺を攻撃するんだ?」
「…………」
この指摘にディーンは今さらながら気づいて口を閉じてしまう。
飛翔の精霊術は追尾型の精霊術と同じで常に自身の精霊力で風を操り制御をし続ける必要があるので、別の精霊術を使えば制御を離れて落下してしまう。
言霊で発動できるほどの緻密な制御力があれば、ロロベリアが選抜戦で披露したように使用後、再び制御下に置くことで上空からの攻撃も可能。
だが詩を紡いで発動したように、ディーンにはロロベリアほどの制御力はない。
「ああ、ラタニのように同時発動が可能なら問題ないか。さすが序列七位さま、たった一日で物にするとは恐れ入る」
「…………」
また昨日ラタニが見せた声と音による同時発動なら制御を離すことなく攻撃することも可能、しかしあんな神業はラタニ以外に不可能で。
「だがラタニですら指鳴らしの精霊術で捕らえられんから俺と遊ぶ際も空を飛ばんのだが……なるほど、既にあのバケモノすら超えていると。これは後悔するしかねぇな」
「…………」
もちろん王国最強の精霊術士を超えられるハズもなく、アヤトの完全な嫌味を受け入れるしかなく。
「では後悔する前に全力で排除するか――」
硬直したままのディーンを見据えてアヤトが右腕を振るい一瞬の煌めき、からの鋭い風切り音と共に頬に赤い筋が走る。
「やれやれ、ラタニ以上のバケモノを前に臆して手元が狂ったようだ」
嫌みったらしく肩を竦めるアヤトがわざと外したのが分かるだけに、二〇メル以上も上空にいる自分の頬皮一枚分狙える緻密な投擲が出来るお前も充分バケモノだろとディーンは突っこみたい。
「次こそは当てねば後悔してしまうな」
「…………」
なのでアヤトが再びナイフを取り出すと同時に、このままではただの的になるだけだとディーンは無言でスーと下降を。
「こっからが本番だこんちくしょう!」
「さっさとこい」
そして地上に立つなり何事もなかったように指を突きつけるディーンにため息を吐きつつアヤトも抜刀。
若干自暴自棄に見えるも昨日の模擬戦から言霊で精霊術を放っても躱されるのは必至と理解している。
なんせラタニの精霊術すら躱せる相手だ。術の発動、速度で劣る自分が捕らえられるはずもない。
『暴風纏え!』
故にディーンは竜巻で四肢を纏う精霊術を発動。
移動速度を上げるだけでなく竜巻による防御も可能、また攻撃範囲の広さ、ギリギリ躱せても引き寄せることで相手のバランスも崩すと近接戦でディーンが使う切り札の一つで。
「うらぁぁぁ――っ!」
ディーンが飛び出すと同時にドッと地面が抉れ、従来の倍の速度でアヤトに迫り拳を繰り出す。
だがアヤトに通じるはずもなく。
「猪突猛進なところもリスそっくりだ」
どれだけ拳を繰り出しても、蹴り上げても風圧の影響を受けないギリギリのラインを見透かしているように悠々と躱していく。
「くっ……ちょこまかと!」
あまりに余裕に躱すので苛立ちからディーンは焦り大ぶりになっていくも警戒は怠らない。
四肢以外は無防備、朧月で斬りつけられれば一溜まりもないのでいつ繰り出されても四肢の竜巻でガードできるよう――
「おい」
「なんだよ!」
「そろそろ反撃するぞ」
警戒していたのだが右拳をバックステップで躱すアヤト自ら宣言、ならばと朧月に注視していた。
ゴンッ
しかし左手の朧月ではなく、いつのまにか右手に持っていた鞘の先端で引き寄せる右拳を打ち衝かれてしまった。
「ってぇぇぇ――っ!」
思わぬ攻撃からの激痛にたまらずディーンが叫び膝を折る。
「竜巻の中心は無風、お勉強が足りん」
悶絶する中、頭上から聞こえるとても呆れる声が。
「そもそもお前の反応速度で序列六位さまの剣筋を追えるのか?」
「…………」
更に追求されてやはり反論できない。
朧月ではなく鞘での攻撃、以前に近接戦でディーンはランに劣る。
そのランですら凌駕するアヤトにそもそも近接戦闘が無謀で。
「とまあ、最初にリスを引き合いに出したように、お前はまずここを鍛えるべきだな」
顔を上げればアヤトがこめかみを指で突く。
つまりバカにされているわけで、残念ながらこれも否定できず。
これなら最初から近接戦を望むのではなく、精霊騎士を相手取る精霊術を駆使した本来の戦法の方がまだマシだとようやく理解。
「分かったらびびってねぇで本来のスタイルでかかってこい」
「誰もびびってないわ!」
見透かしたような挑発を受け顔を真っ赤にして突っこむディーンだが。
アヤトに抱いていた恐怖心はなくなっていた。
このVSシリーズ(?)でこの内容が作者は一番楽しく執筆しました。
いいじゃないですか、ディーンみたいな序列持ち。
みなさまにお願いと感謝を。
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作者のテンションがめちゃ上がります!
読んでいただき、ありがとうございました!




