終章 しばしの休息
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選抜戦から一夜明けた休息日。
久しぶりに学食の仕事をするべくロロベリアは朝早くに寮を出て学院へ。
だが学食より先に医療室へ立ち寄った。リースの容態を早く確認したいのもあるが、ユースとどのような話をしたのか。
また二人の間にわだかまりがないかを確認するためで。
「……どうしたの?」
医療室に入るなり二人の間に感じる微妙な空気に嫌な予感。
もしかしてまだ話し合いをしていないのか。
それとも払拭できなかったのかと心配してしまう。
「愚弟のせいで怒られた」
「姉貴が食い過ぎたのが悪いんだろ」
しかし理由を聞くなり心配を返して欲しかった。
とにかく昨夜の内にリースが目を覚ましたにも関わらずユースが医師を呼ばずに独断で食事を与えたこと。更にはそのまま二人で寝落ちしたのを今朝方様子を見に来た医師が発見しお説教をされたらしいが、変わらない姉弟のやり取りに呆れながらもロロベリアは安堵する。
「ロロ、これからわたしはもっと強くなるから」
「てなわけで一緒に打倒アヤトを目標にしようぜ」
更に今後はたまにでも良いのでアヤトとの訓練に参加させて欲しいと申し出を受け、二人の気持ちが嬉しくて。
ただその判断はアヤト次第なので確認しておくと保留に。
後は選抜戦について、今後についてを少し話している内に医師がリースのメディカルチェックをする為に現れたのでロロベリアは医療室を出た。
「鍵がない……」
のだが、学食に到着したところで合い鍵をリースに渡したままだと気づいた。
休養日は基本同じ時間にロロベリアが清掃を始めて途中でアヤトがやってくる。その後室内訓練場で精霊力が枯渇する寸前まで遊びと称した訓練との流れ。
そして今日はお見舞いに立ち寄ったのでいつもより遅い時間。にも関わらず施錠されているならアヤトはまだ来ていないことになる。
そもそも今日からロロベリアが清掃をするとアヤトは思っているのか。
今日から訓練を再開するのか。
選抜戦後に話し合っていないので途方に暮れてしまう。
「やっぱりこれ、便利ね」
本来なら困るところ、しかしロロベリアはブローチを手に余裕の笑み。
アヤトにではなくマヤになるも、気軽に連絡が取り合えるのはこうした場では実に役立つと念じて呼び出した。
『ロロベリアさま、優勝おめでとうございます』
『……微妙な結果だけど』
『わたくしのがんばれーは聞こえましたか? なんて、あれほど静かな中で声を上げては目立つと控えてましたが』
『かもね。でも応援してくれたならありがとう。ところでアヤトは――』
『そうでしたわ。もしロロベリアさまから連絡があれば伝えるよう兄様より言伝を預かっているんです』
『……言伝?』
『はい。構ってちゃんなロロベリアさまのこと、まずあるだろうと。さすがですね、構ってちゃんなロロベリアさま』
『それはどうも……で、アヤトはなんて?』
『正午にロロベリアさま専用の訓練場へ向かうので、それまでに清掃を済ませて待機しておくこと。だそうです』
『……そもそもどこにいるの?』
『確かにお伝えしましたわ』
『マヤちゃんも私の話を聞こうよ……あ、マヤちゃん? 私、鍵がなくて――』
『ではロロベリアさま、また後ほど』
『だから聞いて! マヤちゃん?』
気軽に連絡は出来るのは便利でも、相手次第だと痛感した。
とにかく慌ててリースの元に戻り、メディカルチェックを受け終えるのを待ってから合い鍵を受け取り、学食の清掃を済ませる忙しい時間を過ごして。
「自主練でもしてたのか」
「……そんなところよ」
ギリギリ正午、専用訓練場へ現れたアヤトを出迎えることができた。
「それよりも随分と遅い時間ね。どこかへ行ってたの?」
それはさておき、リビングルームで一息吐いていたロロベリアは早速問いかける。
「王都だが」
「……まさか昨日から?」
「まあな。依頼完遂の報告と、ついでに配達も頼まれた。こいつをリスとユースに渡しておけ」
アヤトがコートのポケットから取り出したのは二枚の封筒。
恐らくサーヴェルから二人へ改めて依頼をしたこと、これからのことが綴られているのだろう。
「分かったわ。でも、すぐに報告するなんてあなたも律儀ね」
ならばと受け取りつつロロベリアは嘆息するも、これはこれでらしいと納得。
「面倒ごとは早急に終わらせたいんだよ。ま、どうでもいいが白いの、土産だ」
「…………お土産?」
だが、再びコートのポケットから取り出された木箱を受け取り。
中を確認すれば一口サイズのお菓子が入っていて。
「茶はお前が用意しろよ」
「え? あの……どうして?」
「あん? 昔話をするんだろう」
まさかの状況にロロベリアが飲み込めずにいるとアヤトは訝しげに告げた。
「それなりにだが楽しめたからな。約束通り遊ぶ前に機会を設けてやったんだ」
しかし続く言葉に表情が綻んでいく。
正直なところ、勝利はしたものの秘策も破られて事実上は敗北と実感していただけにこの話は流れたと思っていた。
「なんだ、もう忘れたのか」
「いえ……ならお茶を用意するわ」
それだけにこの不意打ちは願ってもなく、ロロベリアは嬉々として席を立つ。
「だが、それなりにだからな。長話をするつもりはねぇぞ」
「充分よ。それで、何を話してくれるの?」
「やれやれ……何がそんなに楽しいんだか」
それから、本当に僅かな時間だがロロベリアはアヤトの思い出話とお茶会を楽しんだ。
今回更新で第三章も完結!
そして明日の更新はオマケの内容を予定しています。
三章内で割愛した出来事になっているのでお楽しみに!
みなさまにお願いと感謝を。
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