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白き大英雄と白銀の守護者  作者: 澤中雅
第十五章 迫り来る変化と終演編
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二人の王子

アクセスありがとうございます!



 ラタニ、ロロベリア、ミューズが応接室に戻ってきたのは授与式の直前。

 ただ自主的にではなく開始時間が迫っても一向に化粧室から出てくる気配のない三人を危惧した使用人が声を掛けたからで、もし放置していれば三人とも間違いなく集合に遅れていたかもしれない。

 更に時間を掛けたはずなのにラタニの髪型は普段通りの一括り。もちろん髪は綺麗に梳かされていたが式典の主役としては少々華やかさに欠けているわけで。


「……すみません」

「……申し訳ありません」


 と言うのもミューズは普段髪を結い上げない上に社交会などの出席では使用人に結ってもらっている。加えて手先が不器用なことから上手く出来なかった。

 対するロロベリアは手先こそ器用でもやはりオシャレに疎く、そもそも髪を弄らないので勝手が分からない。


「この髪型が一番似合うってを二人が言ってくれたんだ。かまへんかまへん」


 まあ当のラタニは上機嫌。それにロロベリアやミューズにとってやはりラタニにはこの髪型が一番シックリきたからこそ普段通りに落ち着いた結果で。

 他にもロロベリアとミューズも同じ髪型にしようとラタニが提案、お返しとして二人の髪を梳かしたり結び目に使うアクセサリーを選んだりと時間を忘れるほど盛り上がってしまった。

 なので普段は下ろしたままのロロベリアやミューズもラタニと同じく一括りに纏めている。まあそこそこ髪の長いラタニやロロベリアに対し肩口で切りそろえているミューズは少し短いので完全なお揃いではないが、結び目は同じ雪の結晶をモチーフにした白銀の髪飾りが輝いていた。


「お揃いなんて素敵じゃない。似合ってるよ」

「「ありがとうございます」」


 髪飾りに気づいたランに褒められた二人も嬉しくはあるが、言葉とは裏腹に表情が優れない。そもそもこの髪飾りは授与式に備えて王族が用意した物、ラタニだけならまだしも自分たちが勝手につけていいのかと心配で。


「気にしない気にしない。この髪飾りは授与式をサボらなかったご褒美として国王さまにちょーだいっておねだりしておくから。あたしたちのお揃い記念ってことで受け取ってくれい」

「欠席しないだけで褒美をもらうのもどうかと思うけど……」

「……そう言って頂けるのなら遠慮する方が失礼ですから」


 そんな心情を察したのかラタニはケラケラと言い放つ。

 ただ理由はさておいて、今までの功績や信頼関係を踏まえればレグリスも笑って了承するだろう。加えてお揃い記念に自分たちが姉妹の契りを交わした意味も含まれているのなら妹分として姉の厚意を受け入れるべき。


「よろしい。そんじゃま、面倒事をさっさと終わらせますか」


 なにより嬉しい物は嬉しいと笑顔を向ける二人にラタニも満足して授与式に臨めた。



 ◇



 バルコニーに続く通路前には既にアレク、レイド、エレノアに宰相のマーレグが待っていた。レグリスと王妃は準備が出来次第こちらに訪れるのである意味ラタニたちは最後の到着。王族よりも後に来るのは不敬だがラタニなら今さらと不満を漏らす者は誰も居ない。


「完全に着飾るよりはお前らしくていい。髪飾りの件も了承した。私から陛下に伝えておこう」

「さすが宰相さま。話が分かるねぇ」


 また髪型の変更やロロベリアやミューズの髪飾りも含めてあっさりと許可を出るのも今さらだった。


「授与式が始まる。手順通り学院生は――」


「先生、おめでとうございます」

「別になーんもめでたくないんだけどあんがと」

「どういたしまして。私は王族として出席するが、みなはマイレーヌ学院の代表として恥じぬよう振る舞って欲しい」

「なら妾も学院生として振る舞わなければならんな」

「……サクラは皇族代表としてだろう」


「……ラタニさん」


 マーレグが淡々と授与式の準備を進めていく中、エレノアを交えて盛り上がる様子を遠巻きに見詰めていたアレクはため息一つ。

 アレクの視線はラタニに向けられていて、学院生に囲まれて楽しそうな姿に複雑な気持ちが込み上げていた。

 先日強く拒絶されたように、もうラタニには新しい居場所が出来た。

 それはラタニにとって良い変化なのかもしれない。しかし未だ約束を忘れられないアレクには寂しくもあるわけで。


「兄さんは他にも気にすることがあると思うよ」


 そんな感情に嘖まれているアレクに向けて、同じく遠巻きに眺めていたレイドが呆れるように忠告を。


「なにが言いたいのかな、レイド」

「アヤトくんの欠席は兄さんも知っているだろう? 父上との関係や彼の能力もね」


 意味深な忠告にも穏やかに対応するアレクに肩を竦めつつレイドは続ける。

 アヤトの欠席理由は聞いているが実のところレイドは半信半疑。

 マヤの体調不良を理由に面倒な授与式を欠席、というのはアヤトらしくはある。ただ状況を踏まえれば他の可能性もある。

 なんせ反ラタニ派の不審な動きはレイドも把握している。にも関わらずレグリスが静観を貫いているのは既に手を打っている他にない。

 そして諜報活動のみならず周囲に悟られぬよう荒事を処理できるアヤトが急遽欠席したのなら。


「まさか……奴らはこの授与式を妨害するつもりか」

「故に父上は彼に何かを依頼した……ボクの考えすぎかも知れないけどね」


 今さら状況を把握したのか、苛立ちで眼を見開くアレクに対しレイドは首を振るのみ。

 もちろん本当にマヤの体調不良による欠席という線もある。ただ様々な可能性を考慮した上で、不測の事態に備えるのも王族の務め。

 特に今回は多くの民衆も参加するのだ。愚かな貴族による暴走で被害を被らせるわけにはいかない。

 なのに王族の勤めを怠りラタニにご執心なアレクが滑稽で。

 二人の間に何があったのか明確には知らないが、少なくとも自分やエレノアとは違う立場を越えた関係なのは間違いない。


 そして僅かでも二人の関係性を垣間見たからこそ、アレクは次期国王に相応しくないとレイドは常々感じていた。


「ただ……ね」

「他にも不審な点があるのかな」

「ちょっと考え事をしていただけだよ。それより時間だ、ボクらも行こうか」


 思わず口から出かけた言葉を飲み込み、レイドは先にバルコニーへ向かった。




ラタニさんとロロやミューズが姉妹のような関係を深めている一方で二人の王子、特にレイドさまは思うところがあるようですね。

もちろん二人も王位を争う中でも兄弟として仲良くしますけど、レイドさまはラタニさんとアレクさまの関係について何を知っているのか。そこからアヤトくんにどんな協力を持ちかけたのか……は、お約束の後ほどですね。



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読んでいただき、ありがとうございました!


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