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白き大英雄と白銀の守護者  作者: 澤中雅
第十五章 迫り来る変化と終演編
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複雑な心境

アクセスありがとうございます!



 ロロベリアたちが王城に到着してしばらく、ラタニも王城に到着。


「遅れてすみません……」


 ただ授与式に備えた準備の為、ロロベリアたちよりも早く到着する予定だったのでカナリアは出迎えてくれた宰相のマーレグにまず謝罪。


「ラタニの遅刻はいつものことだ。むしろギリギリまで逃げないよう連行してくれて感謝する」

「そう言って頂けると助かります」

「三人も大変だっただろう?」

「まあ、大変と言えば大変ですがいつものことですから」

「鬼ごっこみたいで楽しかったのだ」

「普段お荷物のぼくだから少しくらいは役に立たないと捨てられるから感謝なんて恐れ多い。むしろ隊長捜しでもお荷物だったから結局捨てられる運命なんだね。だから最後に感謝してくれるとか宰相も優しい――」


 スレイの自虐はさておいて、事情を察しているマーレグは呆れもせずカナリアたちに労いの言葉を掛ける。

 というのも気乗りしなくても最後は受け入れた以上ラタニも授与式をサボらない。しかし化粧込みの正装を回避する為、開始時間ギリギリまで姿を見せない可能性はあった。式典のような場を嫌うだけに、本人は堅苦しい服装をとにかく嫌がるのだ。

 普段通りにローブを肩に掛けたラフな格好でもラタニらしいと民衆は受け入れてくれるかもしれないが、さすがに授与式を取り仕切る王族としては面子もあるわけで。

 故にカナリアたちも昨日は知らぬ振りで解散しつつ迎えの予定時間よりも早く集合。まあ既にラタニは逃げ出していたが、事前に『ラタニの正装姿を見たくないですか』とマヤに協力を要請していたカナリアのお陰で場所を聞き出しては捜索を繰り返した結果多少の遅刻で済んでいた。


「ちょっとしたお遊びでしょうに。ひとをアヤトみたいな問題児扱いするのはやめてくれまいか」

「……アヤトさん程ではないのは認めますけど」


 こうした四人の涙ぐましい努力を他所に当のラタニは反省の色も無し。確かにアヤトに比べればマシでも王族の取り仕切る授与式に普段着で出席しようとする時点でラタニも充分な問題児だった。

 ただラタニが本気で逃げ切ろうとしたのならマヤの協力があっても不可能、要は本人の言うように遊びの一環だったかもしれない。

 なんせラタニの昇進はほぼ決定。同時にカナリアたち四人も小隊長に昇進することになるわけで。

 もうすぐラタニ小隊は解散、それぞれが別々の隊を率いる側になれば今までのような時間を過ごせなくなる。苦労は多くとも、それ以上に楽しいと思えるだけに寂しさはあるからこそラタニは最後まで普段通りの時間を過ごそうとしているのかも知れない。

 授与式は護衛という立場ですぐ傍に控えることになっている。バルコニーにこそ出ないが間近で尊敬するラタニの晴れ姿を見られるのは寂しさよりも誇らさが勝るだろう。


「とにかくお縄に付いた以上、大人しくきれいきれいしてもらうからみんなは休んでおくように。つーかきれいきれいにされたあたし見て笑うなよー」

「笑わないと確約するのは難しいですね」

「まあ普段とひと味違う隊長殿を楽しみにしていますよ」

「りょーかいなのだ!」

「笑われるのはぼくだから大丈夫ですよ。なんせゴミが着飾ったところでゴミに変わりないしむしろ汚すなってゴミを投げられて――」


 だからこそカナリアたちも普段通りのやり取りを交わして待機室へ向かった。



 ◇



「良い部下たちを持ったな」

「でしょう? 自慢の部下さね」


 カナリアたちが去った後、素直な感想を述べるマーレグにラタニこそ誇らしいと胸を張る。

 嫌われ者の自分に最後まで寄り添い、厳しい訓練にも耐えてくれた家族のような関係を築けた四人の背中を慈しみの眼差しで見送るラタニもまた寂しさはあった。

 だがその寂しさを口に出すつもりはない。四人がそれぞれの道を歩み、成長していくのは良いことであり楽しみでもある。故に最後まで今を全力で楽しむのみと割り切っていた。

 そういった気持ちを酌んでくれる四人の配慮も嬉しいものと感じるがそれはそれ。


「んで、結局アヤトに面倒事を押しつけたんね」

「……すまなかった」


 笑顔から一転、冷めた口調で確認するラタニに言い訳せずマーレグは謝罪を。

 今回の依頼は切っ掛けこそアヤト、しかし最終的に要請したのは国王でありマーレグ。ラタニがどれだけアヤトを大切にしているか知るだけに、ラタニの意思に反した決定を言い訳するつもりはない。

 アヤト自身が踏み込んだと知る上でマーレグに誠意を見せられてはラタニも納得するしかなく、ため息と共に苛立ちを吐き出した。


「素直に出られたら何も言えませんねぇ。そんで、バカ共は何かしでかしそうなんですか」

「その通りだ」


 そして元より隠すつもりはなく、移動しながら反ラタニ派の計画と対抗策をマーレグが説明すればラタニは不満の表情を浮かべる。


「その対策だとアヤト以外に出来る子は居ないから仕方ないけど……せっかくお友だちが揃うのにハブられるんかよー」

「自分だけが面倒な場に立たされるとは関係なく不満だろう」

「捻くれたことばっか言いつつも、あの子らとの時間を楽しんでるからねん。宰相さまもあたしがあの子に青春して欲しいの知ってるでしょうに」

「知っているからこそ、陛下も改めて場を用意するつもりだ。お前の昇進祝いという名目でみなとの時間を取ろう」

「もち仲間内だけを集めたパーティーですよね」

「お前もアヤトも堅苦しい場を好まないだろう?」

「さすが宰相さま、分かってますねん。んじゃ、国王さまにはお礼だけにしておきますか」

「そうしてもらえると助かる」


 もちろんラタニの不満も予想済み、アヤトには知らせていない場を伝えればラタニも理解してくれてマーレグは内心安堵を。

 ラタニとアヤトは王国にとって表と裏の重要な戦力。今後も二人と良好な関係を続ける為にも気遣うのが宰相の務めで。


「バカ共はこちらに任せて、お前は大人しくしておけ。くれぐれも使用人を困らせるないように」

「宰相さまも心配性だにゃー。あたしが良い子ちゃんで大人しいラタニさんなのも分かってるでしょうに」

「準備が終わり次第、迎えに行く」

「あいよん」


 故にケラケラと軽口を叩くラタニをさらりと流しながらも、化粧室まで見送ったマーレグは早速了承を得た報告をするべく国王の元に向かった。



 

授与式前のラタニさんサイドの様子でした。

複雑な心境でも最後まで変わらないラタニさんと、察して普段通りのやり取りを楽しむカナリアたちと、やはりラタニ小隊は良い関係を築いています。

それはさておきラタニさんやアヤトくんのような気難しい二人と上手くやり取りが出来る宰相のマーレグさん、何気に一番王国の平和に貢献している気がしますね。



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