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白き大英雄と白銀の守護者  作者: 澤中雅
第十五章 迫り来る変化と終演編
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進む準備と静かな異変

アクセスありがとうございます!



 ラタニの勲章授与式前日。


「やっほー」

「お世話になります」

「きた」


 昼過ぎにラン、ディーン、イルビナがニコレスカ邸に到着。

 授与式に出席する地元が王都外の学院生には宿を用意してくれる話もあったが三人はこちらに滞在。

 今まで子どもたちにお泊まりする程に仲良くなった友人が居なかったせいか、前回のお泊まりをクローネが喜び、是非来て欲しいと勧めた結果だ。

 ちなみに貴族として度々お世話になるのも気が引けたジュード、ルイ、レガートは普通に用意してくれた宿を利用。シエンは精霊種の精霊石に興味津々なのか、声を掛けてくれたズークの屋敷に滞在するらしいがそれよりも。


「アヤトはどこ?」

「マヤちゃんもいないけど……」


 出迎えてくれた中にカルヴァシア兄妹の姿がないことにシルビアとランが質問を。

 マヤはともかくニコレスカ家の客人だろうとアヤトがわざわざ出迎えるようなタイプではないのでそこはいい。ただ久しぶりに手合わせをお願いするつもりで、ディーンも同じ考えていた。


「二人は一端実家に戻ってるんですよ」

「なんでまた」

「アヤトの考えなんて分からないっすよ」

「マヤちゃんはお兄ちゃん子なので……」

「一緒が良いわけね」


 ユースやロロベリアの返答に納得してくれたものの、実のところアヤトは昨夜出かけたきり帰宅していない。故に使用人にもマヤも含めて自宅に戻ったと伝えていたりする。もし三人が自宅に行こうと持ちかけても、居なければ外出したことにすればいいと四人の中で打ち合わせ済み。

 先ほどマヤ伝手に連絡を取ったところ、今日中には帰るとの言伝はあったがいつ頃になるかは不明。そもそもどこで何をしているのかロロベリアこそ知りたいがそれはさておき。


「残念。でもアヤトの家、行ってみたい」

「あたしも。アヤトの家にはツクヨさんも居るし、せっかくだからこの子たちを磨いでもらいたいな」

「なら昼飯の後に行ってみますか」


 予想通りの展開に動じることなくユースは了承した。



 ◇



 ロロベリアたちが昼食を囲っていた頃、アヤトと言えば軍施設に忍び込んでいた。

 昨夜の内にサクラへ浄化した精霊石を届けた後、一晩掛けて反ラタニ派の動向を探った結果をカイルに伝える為だ。

 もちろん国王にも報告するが夕刻まで面会できないなら、先に依頼をしてきたカイルにも伝えようとの理由。律義と言うより早くカイルを安心させたいだけかもしれないが、とにかく昼休憩時で一人になった所を狙って接触。

 突然現れたアヤトに驚くも、指定された場所に向かったカイルは話を聞くことに。


「虫唾が走る……っ」


 その結果にカイルは込み上げる怒りのまま拳を固く握る。

 反ラタニ派の計画はそれほど許しがたいもの。

 なんせ勲章授与を祝おうと王城に集まる民衆の中に金で雇った精霊術士を紛らせ、授与式に合わせて暴れさせるのだ。しかも精霊術士の逃走を協力した後は口封じに始末するつもりでいるらしい。

 もし遂行されれば多くの平民が命を落とし、授与式どころではなくなる。せっかくの晴れ舞台は惨劇として記録に残るだろう。

 まさに平民を軽んじる貴族らしい最悪な計画。

 いくら窮地に立たされていようと暴走もここまでくれば笑えない。


「落ち着けと言っても無駄か」

「当然だ。……だが、そうだな」


 故にアヤトの軽口にも怒りが抑えきれないが、事前に把握できたのは大きいと息を吐きつつ平静を取り戻す。


「陛下はどうお考えだ」

「まだ報告してねぇからなんとも。ま、夕刻に茶を飲む約束はしているから安心しろ」

「そうか……当然カルヴァシアも最後まで協力してくれるのだろう?」

「抑止込みの依頼だからな。場合によっては授与式を欠席するかもしれん、実に残念だ」

「本当に残念だと思っているのか……?」


 お陰で心にもないことをしれっと告げるアヤトに呆れる程度には落ち着けて。


「カルヴァシアが欠席しようと誰も気にしないかもしれないが、口裏合わせが必要なら言ってくれ。むろんお前の悪評が広まらないよう立ち回ると約束する」

「別に広まっても構わんぞ」

「俺が構う。正式には陛下の依頼でも、元は俺の頼みなら尚更だ」

「律義というか、先輩は面倒事がお好きなようだ」

「律義に関してカルヴァシアには言われたくない」


 助力の申し出も皮肉で返されたカイルは皮肉で対抗しつつも真剣な表情で続けた。


「少しは周囲に頼ることを覚えるよう卒業式でもレイドから言われただろう。……未だ後輩に頼り切りな俺が言える助言ではないが」

「なら必要があれば先輩に頼らせてもらうか」

「そうしろ」


 適当な返答をされたが二人は苦笑を向け合う。


「では後ほどな先輩」

「待ってるぞ後輩」


 最後に国王と面会した後もう一度会う約束を交わしてアヤトは姿を消した。

 反ラタニ派の計画を掴めた以上、国王は上手く対処してくれる。

 もちろん最後まで気を抜かず、カイルも出来る限りの協力をするつもりだ。

 ようやくラタニが晴れ舞台で認められる瞬間を絶対に邪魔させないとの決意を胸にその場を立ち去った。



 ・

 ・

 ・



 授与式を目前に様々な思惑や準備が進む一方で――


「未だ浄化の兆候もないとは……精霊種は従来の霊獣とは別物なのか」

「誕生そのものが異質だとアーメリ殿の報告でもありましたからね」

「だからこそ研究の必要があるのに、この調子ではいつになることやら」


 王国最高峰と謳われる研究施設では数名の職員ら嘆いていた。

 一同が見据える先には分厚いガラス越しに鎮座する精霊種の精霊石。歪な形をした二欠片の精霊石は運ばれた当初と同じ漆黒のまま。

 それだけならまだいい。問題は研究を始めて間もなく不調を訴える者が現れ始めたことで。

 精霊石に近づくことで起こる不調が持たぬ者に始まり、精霊力の保有量が低い者から順に続くことから漏れ出る精霊力の影響と判断したものの、今では誰も近づくことが出来なくなった。

 先日サクラに譲渡した小さな欠片ですら密閉しなければ影響を受けてしまうほど。お陰で研究も中断せざる得ない状況で。


「焦らず今は浄化されるのを待つしかない……か」


 簡素な部屋に保管している精霊石を前にもどかしいと天を仰ぐしかできない面々の中に、ツクヨかミューズが居ればその異変に気づいたかも知れない。


 精霊石の中心部に宿る精霊力が()()()()()()()()()()()()




残りの序列保持者や学院生会のメンバーも王都入り。

また反ラタニ派の計画もアヤトによって事前に把握したことで授与式に備えた準備も万端ですね。


……把握していない異変もありますがとにかく、次回からついに授与式当日。

まずはお久しぶりのキャラも登場するのでお楽しみに!



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読んでいただき、ありがとうございました!




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