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白き大英雄と白銀の守護者  作者: 澤中雅
第十五章 迫り来る変化と終演編
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幕間 ミライの問題

アクセスありがとうございます!



 森林地帯で休んでいたところを攫った商人を撃退した後、意識を失っていた少女――ミライを救ったのは小さな町で医療所を営む老婆だった。


 老婆の名前はホロア=シアール。話を聞く限り近くの山で野草を摘んでいるところ爆音が聞こえ、向かってみれば意識を失っていたミライを見つけて自宅まで運んだらしい。

 本人曰く職業柄、放っておけなかったと言うが周囲の様子から不審に思うはず。にも関わらず十日間も看病をして、目を覚ましても興味が無いと事情も聞かない為人がミライには理解できなかった。

 まあ善意の押しつけをするつもりはないと医療費などを払うために強制労働を要求されたが、ミライは素直に従うことに。

 この町からダラードまではそう遠くない。厄災の潜んでいた霊獣地帯も近くにあるが、ラタニ=アーメリというバケモノが討伐したなら今のところ安全は約束されたもの。

 ただ逆にラタニ=アーメリが秘める異形の精霊力は用心する必要もある。なんせ精霊を冒涜したあの力は厄災に近い。しかもロロベリア=リーズベルトとも近しい可能性もあるのだ。

 故に次は万全な体勢で相まみえたい。勝てないまでもロロベリア=リーズベルトと接触する時間を稼げれば良いのだ。

 その為にも精霊力が回復する間はホロアに恩を返しお世話になると決めたのだが―― 


「まったくこのがきんちょは何度言ったらまともに掃除できるんだい」

「がきんちょって……アタシにはミライって名前が――」

「呼んで欲しければもっと綺麗にするんだね」

「この……っ」


 ホロアとの共同生活にミライは苛立ちを隠せなかった。

 目を覚まして二日目、早速仕事を任されたのはまだいい。精霊力は万全ではないものの、体調面は回復している。

 そもそも体調に問題があればホロアは働かせないだろう。口が悪く気難しい性格をしてようと、自身の仕事を熟しながらもミライの看護も怠らなかった。医者として当然の判断かも知れないが、ミライも少なからず人間を見直していたのだ。


「とにかくわたしは下にいるから、もっと綺麗にしておくんだよがきんちょ」

「またがきんちょって言った!」


 しかし元気になれば別なのか、日課となった朝の掃除は毎回やり直しを言い渡されるのだ。

 ちなみにシアール家は二階が居住区、一階が診療所となっており、ミライは二階の掃除を任されている。建物は多少年季が入っているも職業柄どこも清潔で普段から小まめに掃除をしているのが窺えた。

 また他に家族は居なくホロアは独り身らしいが、自身のことを話さないので詳しくは知らない。ホロアもミライの事情を聞こうともしないので助かってはいるがそれよりも。


「どうしてアタシが掃除なんか……」


 不満があろうと恩がある身としてミライは教わった通り床の雑巾がけを始めた。

 まあ恩がある以前にホロアに悪意が無いのは()()()()()()()()()()。むしろこれまで視てきた人間の中でも優しい色合いだ。

 ただ精霊力の色に対して口から出てくる辛らつな言葉に条件反射で反論してしまう。これは主君からも悪い癖だと呆れられたものだ。


「それにしても……本が多いわね」


 また精霊力でホロアが水の精霊術士なのも分かるだけに、室内を占領する医学書にも驚いたものだ。

 病は別でも水の精霊術士なら怪我は治療術で治療できるのに、ホロアは怪我に関する勉強も怠っていない。現にミライを助けた際、野草を探していたのも病や怪我に効く薬を研究するためなのは医学書を含め、様々な医療具で察するに容易い。

 精霊力に依存せず知識で患者と向き合う姿勢も好感が持てる。むしろこれから先、ホロアのような人間が増るべき。

 なんせこの世界は主君の影響が徐々に弱まっているように感じる。そのせいでミライにも精霊を視認できず、精霊力の回復も遅いのだ。

 このままではそう遠くない未来、精霊力を宿す人間は産まれなくなるだろう。

 更に主君の加護が完全に消えてしまえば精霊たちも生存できず、自然も維持できなくなる。そうなれば厄災に飲み込まれずとも()()()()()()()()()()()()()


 その為にも御子の可能性が高いロロベリア=リーズベルトと接触し、本人ならば一刻も早く目覚めてもらわなければならない。


 なんせ滅びを回避するには主君の力を受け継いだ御子が必要なのだ。


 ただ同時に直面する問題もあるだけに悩ましい所もある。

 そもそも厄災が潜んでいたなら、他にもこの世界に潜んでいるかもしれない。

 まあ御子の傍にはあの子が傍にいるはず。協力を願えば対処も難しくないだろう。


「でもクロだからなぁ……。ローゼアさまならともかく、アタシの言うことなんて聞くかしら」


 ただ協力してもらえるかは別問題とミライはため息一つ。

 まあその辺りはロロベリア=リーズベルトと接触してから考えるしかない。問題は山積みでも今はまず精霊力の回復に専念するしかないとミライは黙々と掃除を続けた。


「――まあ及第点かね。まったく、出来るのなら最初から真面目にやれば良いものを……わたしもがきんちょにかまけてるほど暇じゃないんだよ」


「この……っ」


 まあ今のミライを悩ませているのはホロアの悪態かもしれないが……。



  

ミライさんとホロアさんの様子でした。

そしてミライさんが色々と悩んでいますが今はさらりと流すとして、次回は本編に戻り勲章授与式の前日となります。



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読んでいただき、ありがとうございました!



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