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白き大英雄と白銀の守護者  作者: 澤中雅
第十五章 迫り来る変化と終演編
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結びつく伝承

アクセスありがとうございます!



 アヤトがサクラから預かってきたのは精霊種の精霊石と以前話題に挙がっていた御伽噺が綴られた書物。

 聞けば今日帝国から届き、送られてきた書物を一通りサクラが目を通した後でアヤトを呼んだらしい。その後エニシも踏まえて三人で確認した結果、白い精霊力について記されている御伽噺の書物を持ち帰ったわけで。


「内容からして帝国のものと思ってたけど……まさか東国の御伽噺だったとはね」


 精霊信仰の強い内容だけに帝国の御伽噺と予想していたが背表紙の文字が東国なことにユースは苦笑。

 まあサクラの母の実家は東国出身なのであり得る話、帝国に広まっていないのも納得。また東国の文化も王国には広まっていない、自分たちも知らない伝承なども期待できる。


「お爺さまやお父さまに確認したところ、白い精霊力について記された文献は見当たらなかったそうです」

「なら今のところこの御伽噺が唯一の手掛かりになるかもしれないか……」


 ミューズの補足から少なくとも教国でも他に手掛かりがなければ尚更、例えそれが御伽噺でも今は些細な情報だろうと欲しいだけにロロベリアにとっては貴重な書物になるわけで。


「エニシさんから聞いた以外の情報はあった?」


 問題は東国文字が読めないこと。故に手掛かりの書物を手に取らず既に目を通しているアヤトに確認を。


「まず爺さんから聞いた話はこの原本に綴られていたのはあらすじに過ぎん」


 さすがにアヤトも面倒で済まさず、書物を手に取りぱらぱらと捲っていく。


「そして他に送られてきた書物も調べた限り東国は教国に似た風習のようだ」

「教国と似た風習……?」

「要は王国や帝国とは違い、神への信仰心が重きにされている」

「ではこの書物も御伽噺ではなく東国の教典だとアヤトさまはお考えでしょうか」

「サクラや爺さんも踏まえて、教典の内容をガキにも分かりやすく纏めたものとは結論づけたか」

「たしかにあり得ますね」


 アヤトらの結論にミューズも同意見。教典の文脈は幼少期では理解しがたい、また興味を持たせるために御伽噺として読み聞かせるのは教国でも常識だった。

 そして教国に伝わる教典と食い違う内容が所々に見られたのは教国と東国では信仰する神が別なのか、それとも元は同じ教典でも国による捉え方で変わったのか。

 なんにせよ御伽噺と言えどベースは教典。もちろん教典が完全に史実を綴っていると捉えていないが、ただの御伽噺より信憑性はあるかもしれないとミューズが考察する中、書物を開いてテーブルに置いたアヤトはある一文を指さした。


「サクラのお袋さんも読み聞かされた内容を爺さんに話していたなら簡潔にもなるだろう。むろん所詮は御伽噺だが、それなりに興味深いものは綴られていた」

「なになに……『一度滅亡した世界を憂いたレヴィア神が原初の精霊(ロゼ=アード)を産んだ』?」

「レヴィア神……?」

「……ロゼ=アードねぇ」


 アヤト以外で東国文字を読めるツクヨがその一文を朗読するなりミューズとユースが反応。ただ神の名を疑問視するミューズに対し、ユースは原初の精霊の名に引っかかりを覚えたからだ。

 なんせ原初の精霊の名は謎の少女が呟いていたローゼアという名に酷似している。教国で伝わっているレーヴァ神が東国ではレヴィア神と変わった、その逆も然りと長い年月を経て変化が起きても不思議ではない。

 つまり謎の少女が呟いていたローゼアとは原初の精霊を差しているかも知れない。まあアヤトが前置きしたように所詮は御伽噺、しかし興味深い内容なのは間違いないわけで。


「他に興味深いのはこの辺りか」

「お前が読めよ……『原初の精霊は自身の精霊力によって世界に蔓延する悪しき淀みを浄化。はじまりの精霊力は白き輝きを放ち、芽吹きの礎となった』」


 更にページを捲るだけめくり放置するアヤトにぼやきつつツクヨが朗読を続けるその内容もまた興味深い。


 世界は原初の精霊力(ロゼ=エクト)で満たされたことで二日目に地と草木が産まれ、三日目に火と熱が産まれ、四日目に水と実りが産まれ、五日目に風と安らぎが産まれた。そして六日目、原初の精霊は自然で満たされた世界を見守る友として自身の精霊力を元に『地の精霊王ムマンド』『火の精霊王イフレタ』『水の精霊王ウンデナ』『風の精霊王シフルア』を産みだすと、エニシから聞いた話よりも細かな内容が綴られていて。


「『最後に精霊王の精霊力を元に産まれた四大精霊の友として人を産んだ神は神の園へお戻りになった。そして原初の精霊と四精霊王は精霊と人がいつまでも手を取り合う世界が続くよう、再び世界が悪しき淀みに覆われないよう神に変わり見守っている』……ねぇ」


 そして最後まで読み終えたツクヨが胡散臭げに頭を搔くも、原本のお陰で様々な疑問も繋がっていく。

 ノア=スフィネの精霊石に秘められていた精霊力がこの御伽噺に綴られている世界に蔓延する悪しき淀み、つまり黒い精霊力なら白い精霊力で浄化されて透明化した。

 白い精霊力を元に世界は自然に満たされただけでなく、四大の王となる精霊を産んだという部分は世界に満ちる精霊力は白と捉えられる。

 なにより原初の精霊と四大の精霊王が精霊と人との友好だけでなく、再び世界が滅亡すると危惧して見守っているのなら。


「原初の精霊力で滅亡した世界を照らしても完全には浄化できなかったのか、悪しき淀みが再び蔓延する可能性を視野に入れていたから。だからノア=スフィネの誕生や散り際に見せた黒い霧は、その()()()()()()()()()()()ってわけね」

「何度も言うが所詮は御伽噺だがな」


 再びアヤトがクギを刺すように四大精霊の王の情報など、子どもに興味を持たせるよう教典を元に改編した可能性はある。

 だからといって現状と結びつく情報も多く綴られている。


「真に受けるのも違うけど、興味深いっちゃ興味深いか」


 特に今は情報が少なすぎるが故に、この原本を笑い話で一蹴するわけにもいかないとユースも結論づけた。




原本によって東国の風習、また教国の教典に綴られていなかった原初の精霊や四大精霊王の名も出てきました。それにより謎の少女ミライから得た情報、ノア=スフィネに関連付く部分も出てきましたが果たしてどこまで信憑性があるのか。

またロロの精霊力と関わりはあるのか……は後ほど。



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