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白き大英雄と白銀の守護者  作者: 澤中雅
第十五章 迫り来る変化と終演編
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届け物

アクセスありがとうございます!



 昼食を共にしたシャルツ、ズーク、ルビラを見送ってしばらく、今度はミラーとグリードがニコレスカ邸に訪問。

 やはり遠征訓練を欠席したロロベリアやミューズに会う為に二人も予定を調整してくれたらしい。


「アヤトくんはいないのかー。久しぶりに遊んで欲しかったのになー」

「俺もイルビナの一件でお礼を伝えたかったんだが……残念だ」

「……すみません」


 ただ同じく欠席していたアヤトの留守を残念がる様子に、なぜかロロベリアは申し訳ない気持ちに。


「おっす……て、誰だ?」

「ツクヨさん?」


 代わりと言っては何だが、予定よりも早く顔を出したツクヨと対面することに。


「ツクヨ=ヤナギ……カルヴァシアたちの武器を打ったという……そうか」

「あなたがツクヨちゃんなんだねー。やっと会えて嬉しいよ」

「お二人は初対面でしたっけ?」

「そうだよー」

「ライマークから話は聞いているが……そもそもライマークとも会う機会があまりないからな」


 共に王都住まいでも二人は軍所属、ツクヨも鍛冶場に入り浸りで滅多に外出しない。仲介役が居なければ会う機会もないだろう。


「こちらはオレたちの先輩です。今は軍に所属してますけど、在学中はアヤトも含めて良くしてもらったんっすよ」

「ミラー=ハイネだよー。よろしくね、ツクヨちゃん」

「グリード=マドリック。会えて光栄だ」

「そりゃどーも。ツクヨ=ヤナギだ、アタシのダチと仲良くしてくれてあんがとよ」


 ならばとユースが仲介役を務めて三人は握手を交わす。


「んで、アヤトはどこ居るんだ」

「……それが今朝方出かけてまだ帰ってないんです」

「つまり相変わらずか」


 からのアヤトの不在にツクヨは苦笑い。

 ツクヨも居場所を知らないのならラタニの所か。何にせよ約束しているのなら夕刻には戻ってくるだろうとミラーやグリードに伝えた後は早速交流を。

 ただズークやルビラは当然、元序列保持者と言えど研究職に就いたシャルツとは違いミラーは模擬戦での交流を希望。またグリードもツクヨの打つ武器に付いて色々と聞いたりと賑やかな時間を過ごした。


「じゃあ明後日の式典でねー。ツクヨちゃんもまたねー」

「終わったらレイドも呼んで、久しぶりの面々で食事でもしよう」


 故に夕食を共にした後、帰宅する二人の満足げな表情にロロベリアたちは内心安堵。

 と言うのも約束の時間になってもアヤトが帰宅しなかったからで。


「……んで、アイツはいつになったら帰ってくるんだよ」

「マヤちゃんから言伝以降は返事が無くて……」

「わたしもです」


 実のところ既に神気のアクセサリーでマヤと連絡を取り、少し遅くなるとは聞いている。しかしアヤトの言伝はそれだけで、どこに居るのか帰宅時間もないままだったりする。

 そして最近知ったがアヤトから神気のアクセサリーを持つ面々に連絡を取る場合はマヤから対価を要求されるらしい。故に言伝という形になってしまうのだが、対価を要求しない代わりにマヤの気分次第で呼びかけを無視するのだ。

 非常時の場合は別らしいが、端的な言伝しか残さないアヤトも踏まえて便利な連絡手段も相手次第だった。

 まあ気分次第だろうと便利なものは便利なのでこれ以上は贅沢と、念のため使用人らを下がらせて応接室で待つことしばし――


「戻ったぞ」

「おかえ……てぇ! その格好どうしたの!?」


 ようやく帰宅したアヤトの姿を見るなりさすがのロロベリアも構ってちゃんよりもまず目を丸くする。

 なんせアヤトはコートや衣服がボロボロ、外傷こそないようだがどこの戦場から生還したのかと思う程の出で立ち。

 ロロベリアだけでなくミューズやニコレスカ姉弟、ツクヨも心配する中アヤトと言えばため息一つ。


「ラタニと遊んでたんだよ……たく」

「お姉ちゃんと……?」

「詳しくはマヤにでも聞け。俺は着替えてくる」


「――はーい」


 面倒げに当てられた客間に向かうアヤトを他所に、一緒に帰宅した体のマヤから事情説明が。

 ただ国王との面会は伏せて、ラタニから呼び出しを受けて屋外訓練場でナーダと対面した後、軽く遊ぶことになったらしい。


「あれだけボロボロになって軽くかよ……」

「まあ相手はお姉ちゃんだし……なら治療したのはカナリアさま?」

「はい。その後、兄様が居るなら顔を出すようモーエンさまが奥さまにクギを刺されていたようで、昼食をご一緒することになりました」

「あの格好で……?」

「奥さまも驚いたでしょうね……」

「事前にラタニさまと遊んでいたと伝えていたので問題ありませんでした」


 その説明で驚きもしない上に中々顔を出さないアヤトを説教したのはさすがモーエンの伴侶と言うべきか。


「なので約束の時間までご一緒していたのですが、途中でサクラさまから連絡が入りラタニさま、モーエンさま、カナリアさま、スレイさま、ジュシカさまが軍施設に戻るに合わせてサクラさまの所へ向かうことになったんです」

「アタシらの呼び出しは無視したくせに、皇女さまの呼び出しは素直に受けるとは神さまも権力に弱いのか?」

「かもしれませんね。最後に、授与式の件で国王さまからお呼びがかかりラタニさまも遅れるそうです」


 ツクヨの嫌味はさらりと交わされるも、アヤトやラタニが約束の時間に遅れた理由は理解した。

 サクラの呼び出しについては直接聞けばいいと一息吐く間に着替えを終えたアヤトが戻って来た。まあ着替えたといっても変わらず黒一色だがそれはさておき。


「マヤから聞いたな」

「ええ。それでサクラの用件はなんだったの?」

「まずはこいつだ」


 早速ロロベリアが問いかければアヤトは黒い石のような物をテーブルに置く。


「精霊種の精霊石か……にしても、こりゃきついな……」

「わたしも……申し訳ございません」


 交渉が上手く行ったのか、サクラは精霊種の精霊石を手に入れたらしいが、同時にツクヨとミューズが口に手を当て目を背けてしまう。


「ああ……オレでも何となく分かるわ」

「胸の辺りがむずむずする……」


 またニコレスカ姉弟も以前とは違う不快感を抱いているように、精霊石から感じ取れる精霊力が妙に禍々しくなっていた。


「……私は特になにも感じないけど」

「なら今すぐ浄化してくれねーか。気持ち悪いったらありゃしねぇ」

「そいつはサクラ個人で譲り受けた物だ、浄化しても構わんぞ」


 ただロロベリアのみ当てられないのは不可思議な精霊力を秘めている恩恵か。とにかくニコレスカ姉弟ですら直視するのを躊躇う程の不快感なら感知能力が高いツクヨやミューズには辛いようで。


「とまあ借りられたはいいが、持ち運ぶのに難儀していたらしく俺がパシられたわけだ」

「いくら持たぬ者でもこいつを長時間触れるのはきついだろーよ」

「そもそも事情を知ってるのはエニシさんだけ。精霊力がゼロのアヤトならうってつけか……ただ時間が経つにつれて浄化されるはずが、更に禍々しい精霊力になっていくのはノア=スフィネがただの霊獣じゃないからか」


 ロロベリアが精霊力を流して透明化させれば四人とも落ち着いたようでツクヨとユースは意見交換。


「研究所の見解はどーなんだ」

「直接触れるか近づかなければたいした影響を受けないらしいが、お前らも実感したように研究どころじゃないそうだ」

「つーか今後は更にきつくなりそうだもんな……。白いのちゃんが浄化した精霊石で何かわかればいいけど」

「その辺りは天才皇女さまに期待するとして、他にも土産をあずかっている」


 未だ成果ゼロの報告に落胆する間もなくアヤトが懐から取り出したのは一冊の書物。

 所々シミや破れはあるものの、大切に保管されていたのは感じられるが目を引くのは表紙に綴られた文字で。

 東国の文字だとは何となくでも察することは出来るが、読めるのはこの中ではアヤトとツクヨのみ。


「白き精霊と世界の始まり……? なんだこりゃ」

「アヤト、これって……」


 故にツクヨが音読するも、タイトルに思い当たるだけにロロベリアが確認すれば予想通りの返答が。


「サクラのお袋さんが語っていた()()()()()()()




ロロベリアたちが先輩方と交流している中、あっちへこっちへと忙しいアヤトもようやく帰宅。

そしてサクラから届いた精霊石の変化について今はさらりと流すとして、ツバキさまが語っていた白い精霊力について綴られていた御伽噺の原本はロロの精霊力に関する新たな発見に繋がるのかは次回で。


ちなみにこれまでちょいちょい話題に出ていたモーエンの奥さんはオマケで登場する予定です。




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読んでいただき、ありがとうございました!



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