表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
白き大英雄と白銀の守護者  作者: 澤中雅
第十五章 迫り来る変化と終演編
689/780

過激な自己紹介

アクセスありがとうございます!



 ラタニから呼び出しを受けたアヤトは軍の訓練施設へ向かった。

 事前に話を通してくれたお陰で施設内には忍び込まずに入り、親善試合前の合同訓練でも使われた屋外演習場へ向かった。


「待ってたぜアヤチン~!」

「アヤチンは止めろ」


 通路を通り場内に入るなり手を振り出迎えるラタニに面倒げに返しつつ中央へ向かうアヤトは隣りに居る人物を一瞥。


「そいつは誰だ」

「おいおいアヤチン、いきなりそいつ呼ばわりとは失礼じゃまいか。なんせこちらに居られるのはダラード支部統括、ナーダ=フィン=ディナンテ侯爵さまじゃぞ」

「なるほどな……知らぬとはいえ失礼したが、なぜ統括さまが居られるかを聞いてんだよ。ついでにアヤチンは止めろと言ったはずだ」

「……それは私から話そう」


 アヤトの不敬な態度に不快感を抱くことなく、むしろ二人のやり取りに苦笑しつつラタニと共に待っていたナーダから事情説明が。

 ダラードも落ち着きを取り戻したこともあり、ナーダは統括として国王へ報告するために今朝方王都に到着。

 ただ王都に来たのは報告だけでなくラタニの勲章授与式に出席する為。なので報告を済ませた後、ラタニの元へ向かったナーダはアヤトは昨日王都入りして、滞在中はニコレスカ邸でお世話になっていること。更に屋外訓練場で訓練相手をする約束をしていたので、待っていれば会えるとラタニから聞いたらしい。


「私も君と会いたいと思っていたので同席させてもらったわけだ」

「侯爵さまが俺のような平民に会いたいとは光栄だな」

「……噂に聞いた通りだ。さすがラタニの弟分なだけはある」

「別に弟分でもないんだが」


 全く光栄と感じない態度にナーダはある意味納得するはさておいて。


 実際は遠征訓練でもアヤトの欠席をナーダが残念がっていたのを知るだけに、ラタニは二人を合わせようとマヤを経由して呼び出しただけで約束などしていない。つまりアヤトもナーダが居ると知っていたりする。

 場所を屋外訓練場に指定したのも師弟関係として訓練する為に、希にここを利用させてもらっているとの理由。なんせラタニは時の人、街に行けば住民が集まり、自宅に帰ればやはり騒がれると最近は帰宅すらしていないのだ。かといってナーダの屋敷にアヤトが行くのは不自然、要は訓練の約束をしていたという体で二人を引き合わせたわけでしかない。


 ただラタニには別の理由からここを選んでもいた。


「ナーダ=フィン=ディナンテだ」

「俺のような平民にご丁寧なご挨拶をどうも」


 故に自ら名乗り手を差し出すナーダを内心ワクワクと見守っている中、相変わらず不敬な態度でアヤトが手を伸ばした瞬間――


「ふん――っ」


 ナーダは精霊力を解放、同時に左手で抜いた剣で斬りかかった。

 学院生時代は元王国最強ワイズ=フィン=オルセイヌのライバルとされ、卒業後も実力でのし上がり、今ではダラード統括を任されただけあって五〇過ぎでも衰えのない剣筋。


「よっと」


「ほう……?」


 しかしアヤトは身体を反らして悠々と回避。

 不意打ちの斬りつけに対しても動揺しない姿にナーダは感嘆の笑み。


「見事なものだ!」

「そりゃどうも」


 追撃を試みるもアヤトは弧を描くように後退しながら躱すのみで。


「私のような年寄り相手では剣を抜く気も起きないとでも言いたげだな!」

「あんたこそ、そこいらの精霊騎士さまよりも鋭い剣筋をしてよく言う。つーか侯爵さまに刃を向けるわけにもいかんだろう」

「問答無用で斬りつけられてもか!」

「俺の態度に腹が立つのもわかるからな。だからと言って素直に斬られるような可愛げなんざ持ち合わせてないんだよ」

「自覚しているなら少しは正そうと思わないのか!」

「どうだろうな――と」


 フィールドを広く利用しながら攻防を続ける中、思わず突っこむナーダの振り下ろしをアヤトは後方に大きく飛んで距離を取った。


「ま、無作法が服着て歩いているようなラタニを好む物好きな侯爵さまなら、多少の不躾も広い心で許して欲しいものだ」


「さすがのあたしもあんたに言われたくないさね」


「……そもそも君の態度は多少ではないぞ」


 からのアヤトの反論にラタニと共に突っこみつつ、ナーダは剣を構え直す。


「では許しが欲しいのならば私を楽しませてみろ。そうすれば私に対する態度を全て許すと約束しよう」

「それはそれは、何とも心の広い提案だ」


 ナーダの挑発にも軽口を辞めることなくアヤトは月守を抜いた。


「楽しんでもらえればいいんだがな」

「期待しているぞ――っ」


 同時に地を蹴り斬りかかるナーダにアヤトも月守で応戦。

 両者共に決定打のない斬り結びがしばらく続くも、ナーダの膂力に耐えきれず弾かれた月守が上空へ。


「……ちっ」

「もらった!」


 衝撃で仰け反りながら舌打ちするアヤトに好機とナーダは剣を振り上げる。


「だといいがな」


「な――!?」


 が、先ほどの悔しげな舌打ちが嘘のようにアヤトはほくそ笑み、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 突拍子もない行動に驚愕するナーダを他所に、まるで見計らったように落下する月守がアヤトの左手に治まった。


「少しは楽しんでもらえただろうか? 侯爵さま」

「……充分すぎるほどにな」


 着地と同時に月守の峰を脇に添えられたナーダは降参するよう精霊力を解除。

 自分の挑発に従い勝利ではなく楽しませる為に、敢えて奇を衒った決着がアヤトの狙いだったと察するのは容易い。

 初撃を躱された時点でアヤトとの実力差は痛感していたが、予想を超える差にナーダは笑うしかない。

 そして自分の不意打ちも含めて、この立ち合いの意図をアヤトは察しているだろう。


「ラタニ、侯爵さまになにほざきやがった」

「べつに~。ただ総督さまがアヤトと遊びたいって言ってたから、出会い頭に斬りつければってアドバイスしただけ。なんせあたし以上の無作法者だ、斬りつける理由はいくらでもあるからにゃー」

「無作法者は否定せんが、お前にこそ言われたくねぇよ」

「どの口が言うかね」


 月守を鞘に納めつつ批判するアヤトにケラケラと笑うよう、訓練場を選んだのはナーダに心置きなくアヤトと遊んでもらうためで。

 まあラタニの助言に最初こそ呆れたナーダが実戦したのはやはり信頼があってこそ。

 普段から面白可笑しい優先なラタニでも決して相手を貶めるような助言は口にしない。

 つまりナーダが不意打ちで斬りかかってもアヤトには通用しない。加えてアヤトなら自分の意図を酌んでくれるとラタニも信頼していたのだろう。

 現になんの疑問も抱かずアヤトはな最後まで付き合ってくれた。


「見事なものだ」


 アヤトの実力を試すだけでなく剣を交えることで為人をが知れた上に、二人の関係も垣間見えたナーダは満足しつつ手を差し出した。


「約束通り今後も気にせず接してくれ、アヤト=カルヴァシア」

「そりゃどうも」


 改めて歓迎の意を込めアヤトと握手を交わした。



 

ラタニさんの呼び出した理由でした。

ナーダさまも念願叶いアヤトくんと対面しましたが、助言通りに斬りかかるナーダさまだからこそラタニさんも信頼しているんでしょうね。

ただ剣を交えることでアヤトくんの為人、ラタニさんとの絆を感じられたなら普通に対面するよりもナーダさまは満足したかもです。


ちなみに、以前も言いましたがさすがのラタニさんも君には言われたくないですよ……アヤトくん。



少しでも面白そう、続きが気になると思われたらブックマークに登録、評価の☆をお気持ちのまま★にして頂ければ嬉しいです!

みなさまの応援が作者の燃料です!


読んでいただき、ありがとうございました!



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ