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白き大英雄と白銀の守護者  作者: 澤中雅
第十五章 迫り来る変化と終演編
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対策と呼び出し

アクセスありがとうございます!



 ラタニの勲章授与式に合わせて王都に帰省した翌日。

 朝食を終えて訓練をしていたロロベリアたちに本日も来客が訪れていた。

 来客はシャルツ、ズーク、ルビラの三人。遠征訓練で会えなかったロロベリアやミューズが先に王都入りしていると聞いて急遽休みを合わせてくれたらしい。


「アヤトさんは留守なのね」

「……そうなんです」


 のだが、同じく遠征訓練不参加だったアヤトの不在に残念そうなシャルツたちに何故かロロベリアは申し訳ない気持ちに。

 昨日もカイルたちが帰宅してすぐ外出したが、今朝も朝食を済ますなり私用とだけ告げて出かけている。もちろん行き先を聞いてもお決まりの返答で、シャルツたちが来た時にマヤに連絡を取ってはみたが返答なし。

 なのでどこに居るのか、いつ帰ってくるかも分からない。まあ昨日はすぐ帰っては来たものの相手はアヤト、今日も早く帰宅するとは限らないわけで。


「夕方にはツクヨさんが来る予定なんで、それまでには帰ってくると思いますけど……」

「私たちは昼までしか居られないから会えそうにないわね」

「新米のぼくらの手も借りたいほど今は忙しい……ふひ、ふひひ――まさか精霊種の精霊石を研究できる日が来るなんてアーメリ殿には感謝しかない!」

「久しぶりにアヤトくんとお話ししたかったんだけど残念だな~」


 残念よりも貴重な精霊石の研究に携われることでテンション高めなズークはさておき、今年から研究所に就職した二人は精霊種の精霊石が運び込まれたことで多忙、政務職に就いたルビラも式典前で忙しいのであまり滞在できない。

 そんな先輩方がわざわざ時間を作って会いに来てくれたからこそ、やはり申し訳なく思う。


「でも式典に参加すなら会えるでしょう。アーメリさまのご厚意で、その日は新旧の学院生会と序列保持者が集まるものね」

「わたしとカイルくんはちょくちょく会えてるけど、レイドくんと会うのはシャルツくんも久しぶりだもんね~」


 ただロロベリアの心情を察してかシャルツの前向きな発言にルビラも会わせてくる。

 確かにニコレスカ姉弟らも遠征訓練ではレイドとのみ会えなかったと聞いている。やはり王族の公務に携わればおいそれと会えない相手、故に全員が揃うのは卒業式以来だ。


「だからアヤトくんとお話しするのはそれまでお預けとして、それよりもミューズちゃんとロロベリアちゃんは公国に行ったんでしょ~」

「そうそう、ツクヨさんから聞いたけど、アヤトさんの曾お爺さまはツクヨさんのお父さまとご縁があったのでしょう? 柳雪という刀も見事だっわね」

「そうなんだ~。わたしも詳しく聞きたいな~」


 などとロロベリアも楽しみにしているとシャルツとルビラが興味津々に問いかける。

 ズークも含めて三人もアヤトの出生について、またロロベリアとミューズが遠征訓練を欠席した理由を知っているだけに土産話を楽しみにしているらしい。


「それにアヤトくんのことだから絶対に何かやらかしたよね~。どんなやらかしをしたのか楽しみだな~」

「……言い方」


 ルビラは他の楽しみもあるらしいがさておいて。

 最近は色々と考えることが多かっただけに、たまにはこうした時間も必要と先輩たちとの談笑を楽しんでいた。



 ◇



 一方、アヤトと言えば王城にいた。

 訪問理由は昨夜カイルと話し合ったように反ラタニ派に対する国王の考えを聞き、必要あればそれとなく諜報を請け負う旨を伝えるためだ。

 ただ王城に忍び込むのは簡単でも、アヤトからレグリスと会うには事前に宰相のマーレグと直接交渉するルールがある。

 故に昨夜ではなく今朝から王城内に潜みつつタイミングを見計らいマーレグに接触、約束を取り付けてから落ち合う場所に再び潜入していた。

 簡単に約束を取り付けられたのは、元々レグリスがアヤトを呼び出すつもりでいたからだ。お陰でそう時間が掛からず会うことはできたのだが――


「チェックメイトだ」

「これで陛下の〇勝一二四敗……と」

「ぬう……うぬぅぅぅっ」


 レグリスの用件はチェスの相手だったりする。

 てっきり反ラタニ派の件だと思っていただけに呆れはしたものの、ダラードの一件から国王としてレグリスも多忙な毎日。大好きなチェスで息抜きもしたいだろうと相手をする辺り、何だかんだでアヤトも付き合いが良かった。


「……もう一戦するぞ」

「負け足りないのは構わんが、そちらの考えも聞きたいんだが」


 まあ連敗続きが息抜きになるかはさておいて、律義に相手をしながらもアヤトは無理矢理にでも話を進めることに。


「確か反ラタニ派の対処についてだったな」


 なのでチェスに夢中なレグリスに変わってマーレグが対応。

 もちろんカイルの名を伏せ、ラタニの状況を自分なりに予想して式典で過激派が行動に移すかどうかを質問している。また必要であれば協力するとも伝えてはいない。

 あくまでレグリスの考えを聞きに来た体での質問に対し、マーレグは淡々と続けた。


「こちらも式典を正式に発表した後、バカ共が陰で集まっているのは確認している。最初はバカ共の動向をお前に調べてもらおうと考えてはいたが、ラタニに必要ないと突っぱねられた」


 レグリスからアヤトに依頼を頼むにはラタニを経由する必要がある。故にレグリスも依頼するつもりでラタニを呼び出したが、やはりラタニが拒否していたらしい。


「もしバカ共が本気で式典を潰す為に動くなら、相手側を追い込むチャンスだとな。陛下が正式に発表した式典を潰せば言い逃れは出来ずこちらも遠慮なく膿を排除できる。また事前にラタニを害するつもりなら、逆に捕らえて終いにもできる。故にこちらも監視を付けるはいるがそれだけだ」


 ただラタニなりに式典を利用して未だレグリスの方針に逆らう者を敢えて泳がせることで誘き出し、確実に排除する目的で。


「ただ事前に動向を探れるに越したことはないが、お前に頼りすぎるのは違うとも説得された。ラタニなりの姉心と捉えればいい」

「姉でも何でもないんだがな」

「変わりに式典中、連中の動きを監視して欲しくはある。未然に防げるのならそれに越したことはない」

「つまり学院生会や序列保持者の参加を認めたのは、建前以外にも理由があったと」

「お前に対する嫌がらせも含めてな。その辺りはラタニに任せているが聞いていないのか」

「王都に来てからまだ会ってねぇよ」

「では私から正式に依頼する。当日の監視を任せてもいいか」


 自分の問題に出来るだけアヤトに関わらせたくないラタニの心情を察した上で、レグリスやマーレグとラタニの間で話し合った結果、諜報ではなく抑止力としての戦力だった。

 ラタニの心情を抜きにしても、確実に排除する方法としては一理ある。カイルの望みとは違うものの、今はレグリスの考えを伝えて納得してもらうしかない。


「報酬次第だ」


 まあ事前調査はするとして、狙い通りの流れになればこれ以上留まる必要も無いとアヤトは報酬についてマーレグと交渉を始めつつ、マークする相手を聞き出した。

 お陰でカイルから聞いた反ラタニ派以外の名を知れたのなら成果も充分。


「決まりだな。チェックメイトだ」

「こやつめ……っ」


 故に話が纏まるのに合わせてチェスを終えた。

 時間配分までする余裕を見せられたレグリスの表情が歪むのも無視して立ち上がる。


「頼んだぞ」

「へいよ」


 次の予定があるのでこれ以上の息抜きは出来ないと、快く見送るマーレグに手を振りアヤトは窓から退室。


『兄様、ラタニさまから連絡です』


「……あん?」


 そのままニコレスカ邸に戻ろうとするも、マヤ経由でラタニから呼び出しを受けた。




自分の面倒事に出来る限りアヤトに面倒事を任せたくないラタニさんの配慮もありましたが、国王さまも式典に備えた準備を進めていました。

まあ国王さまの方針を知った上で自ら反ラタニ派の動向を調査するつもりでいるアヤトくん、何だかんだでカイルと同じくラタニさんの輝かしい舞台を邪魔されたくないのでは?

それはさておき、カイルの依頼から式典の対策を話し合ったりと忙しいアヤトを呼び出したラタニさんの目的は次回で。




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