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白き大英雄と白銀の守護者  作者: 澤中雅
第十五章 迫り来る変化と終演編
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後輩の変化

アクセスありがとうございます!



 王都の実家に帰ったロロベリアたちを待っていたのはカイル、ティエッタ、フロイスの卒業生三人だった。

 急な訪問にロロベリアやニコレスカ姉弟、ミューズは驚きながらも再会を喜ぶ中(アヤトは面倒気ながらも挨拶はしていた)、三人は事前にラタニから今日王都へ帰宅すると聞いていたらしい。

 遠征訓練で会えなかった後輩と交流できるようにとの配慮で、わざわざ三人は休みを合わせて会いに来てくれたが、交流とは別件もあるらしく。

 その用件を伺うなり練武館に移動。


 つまり――


『氷槍縫い付け!』


 カイルの言霊によって上空に顕現した十を超える氷槍が断続的に放たれる。


『パチン』

『パチン』


 対するロロベリアは指鳴らしで精霊術を発動。氷槍の斜線上に小石程度の氷を顕現することで僅かに軌道を反らした合間を縫って疾走。


『舞い散れ!』


 ならばとカイルは逸らされた氷槍を遠隔操作で四散、無数の礫が降りそそぐようにロロベリアの背後から襲いかかる。


『パチン』


 しかしロロベリアは止まることなく、カイルに向けて床に氷を直線上に纏わせた。

 そのまま氷上に足から飛び込みスライディングすることで更に間合いを詰めながら瑠璃姫を抜く。


「はぁ!」


「この程度……っ」


 増した速度で振り抜かれた瑠璃姫をカイルは寸でのところで回避。勢いのまま通り過ぎるロロベリアを追撃するべく振り向きながら言霊を紡ごうと口を開く。


『まだまだですよ!』


 だが振り返った先でロロベリアは急停止していた。

 回避されるのも想定内なのか氷を床に纏わせた際、足場となる突起物も顕現していたようで。


「くう――!」


 思わぬ襲撃にもカイルは冷静に剣で瑠璃姫を弾いたが、その間にもロロベリアは突起物を利用して跳躍。


「……降参だ」


 瑠璃姫を投げつけると同時に顕現していた氷剣を突きつけられたカイルは精霊力を解除。ロロベリアも氷剣を下ろしつつ精霊力を解除した。


「ありがとうございました」

「こちらこそ感謝する」


 差し出された右手をカイルも握り替えし健闘を称え合う。

 これで分かるようにカイルの目的は学院在学時に果たせなかったロロベリアとの手合わせ。遠征訓練時でも狙っていただけに挨拶もそこそこで模擬戦を挑み、ロロベリアも快く了承した形で。


「噂以上に強かった」


 ようやく叶った手合わせは清々しいまでの惨敗。

 悔しさはある。しかし元より学院生レベルを超えた発動速度にラタニの編み出した音の発動によって更に凄みを増している。

 また言霊と違ってどのような精霊術か予測できない優位性を上手く利用した戦法。在学時代のロロベリアは場当たり的が故に相手に合わせすぎて無謀な戦法が多く、危なっかしい印象もあった。だが今は多くの手札から最善策を導き、相手の裏をかけるようになっている。

 なにより最後に顔を合わせてからと今とではロロベリアの雰囲気が変わっている。


「カイルさまにそう言っていただけで誇らしく思います」


 現に素直な感想を口にすれば気恥ずかしそうにしながらもロロベリアは微笑みかける。

 以前なら謙遜から自身を卑下するような言葉を返すはずが、相手の評価を純粋な気持ちで受け入れるようになっている。

 序列一位としての自覚が芽生えたのか、正しい自信を持てるようになったのは良い傾向。そう言った心構えがロロベリアの才能を開花させたのかも知れない。精霊術は精神面に左右されるならあり得る話だ。


 もちろん自信を得てもロロベリアは満足していないし、相手次第では相変わらず無謀な挑戦を仕掛けるだろう。要は無謀な挑戦を仕掛けるだけの強さが自分にないだけで、それも当然とカイルも受け入れている。

 レイドを追い詰めた時点で実力は既にロロベリアが上だった。その上今もアヤトの訓練を受け、鎬を削るライバルが側に居る環境だ。


「ではミューズさん、約束していた再戦をしましょうか」

「お願いします」


 ロロベリアだけでなく、ティエッタに挑まれたミューズも以前とは違い積極性が増している。後輩たちの成長を誇らしく思いつつカイルは観戦側へ。


「俺たちの卒業後も良い先生をしているようだな」

「別に先生なんざしてねぇよ」


 ただ固まって観戦しているニコレスカ姉弟やフロイスから離れて、一人あやとりに興じるアヤトの隣りに行けば面倒げにあしらわれてしまう。


「つーか白いの程度に惨敗とは、術士団に入って何してたんだ」

「リーズベルトを程度と評価できるのは学院ではお前くらいだろう」

「かもな。ま、白いのも白いのなりに足掻いているのは認めるが、先輩に腑抜けられるとあいつが自惚れる。俺を相手に見せた意地を少しは見せて欲しかったんだが」

「手厳しいな、カルヴァシアは」


 相変わらずな態度でも少しは心境に変化が起きているのか、嫌味だろうと自分から話しかけているアヤトに談笑を交えつつ、カイルはタイミングを伺おうとするも――


「他の連中に聞かれたくないのなら、場所を変えても構わんぞ」

「……察しの良さも相変わらずか」

「白いのと遊ぶ前から俺にうざい程の視線を向けていれば嫌でも察する」


 先手を打たれてカイルは苦笑い。

 どうやら再会してから意識を向けていたことで汲み取ったようだが、他にも理由はあるらしく。


「後はラタニの現状も踏まえれば先輩の耳に面倒な情報が入っている、程度の予想か」

「お前の耳にも届いていると」

「どうだろうな。で、場所を変えるか」

「話を聞いてくれるのか」

「俺は変えるかどうかを聞いているんだが」


 察した上で自ら持ちかけてきたなら、少なくともアヤトは相談を聞く意思はあるのだろう。

 なら願ってもない申し出だが問題が一つ。


「ここでカルヴァシアが抜けようと誰も疑問に思わないが、俺が抜ければ不審に思われるだろう」


 アヤトの奔放はいつものこと。しかし続いてカイルがどこかへ行けば目立つ。少なくともユースは違和感を抱くはず。

 鋭いのか抜けているのかよく分からないのもアヤトだがとにかく。


「それに俺だけでなく、ロマネクトやレイモンドもカルヴァシアと久しぶりに遊ぶのを楽しみにしているぞ」

「ならお話しは遊んだ後にするか」

「そうしてもらえると助かる」


 ティエッタとミューズの模擬戦を観戦しつつ、カイルは相談の場を設ける約束を取り付けた。



 

予想されてたかもですが先輩方の目的はロロベリアとの手合わせやミューズと約束していた再戦、それとアヤトくんと遊ぶことですね。ロロの変化や成長を感じ取れるカイルは良い先輩ですはさておいて。

ただカイルのみ別の目的からアヤトと接触しましたが、カイルの相談が今章のメインに関わる問題です。

その相談についてはお約束の次回で。


ちなみにですが、ロロVSカイル戦以外の先輩後輩の模擬戦(一戦のみですが)はオマケで描く予定です。どの先輩後輩になるかはオマケをお楽しみに。



少しでも面白そう、続きが気になると思われたらブックマークに登録、評価の☆をお気持ちのまま★にして頂ければ嬉しいです!

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読んでいただき、ありがとうございました!



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