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白き大英雄と白銀の守護者  作者: 澤中雅
第十五章 迫り来る変化と終演編
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裏幕 目覚めの違い

アクセスありがとうございます!



「……なに? ここはどこなの?」


 霊獣地帯の異変に抗うべく森林地帯で眠っていた少女は目を覚ますなり困惑していた。

 夜明け頃に霊獣地帯に戻るギリギリまで精霊力を回復するつもりでいたので周囲が薄暗いのはまだいい。

 ただ樹木に寄りかかり眠ったはずなのに板張りの地面はガタゴトと揺れている。周囲も布で覆われ、荷物らしき袋が敷き詰められていた。

 なにより両手足の冷たい感触、目をこらせば桎梏で拘束されているではないか。


()()()()()()()()()


「っ――だれ!?」


 異様な現状に理解する間もなく聞こえた問いかけに少女は声を荒げるも、拘束されているが故に起き上がることも出来ず鎖の音が虚しくちゃらりと響くのみで。


「そう警戒しなくても宜しいですよ。あなたは大切な商品ですから手荒な真似をするつもりはありませんから」

「商品……アタシが?」


 柔らかい口調で語りかける声のする方に視線を向ければ微光を背負うよう腰掛ける男と目が合い、背後の景色や人影の様子からようやく自分が幌馬車の中にいると悟ることは出来た。

 しかし商品とはどういう意味か。

 そもそもなぜ自分は馬車に居るのか。

 この馬車はどこに向かっているのか。

 

 「ええ、大事な大事な商品です」


 混乱する少女を他所に男は微笑を浮かべつつ置かれている境遇を説明してきた。

 現在公国に向かう途中で、到着すれば商品として売られること。

 その間は食事も与えるし、手荒な真似は一切しないと。

 見目の良さや精霊力持ちだから高く売れる上に、きっと買い手の貴族も可愛がってくれるだろうと。


「ただし大人しくして頂けないのなら、多少痛い思いをしてもらいます。最悪色々な意味で傷物になってしまおうと精霊力持ちの商品は貴重、充分な高値で売れますから」


 丁寧な言い回しだろうと男がやっているのは脅迫でしかない。

 つまり暴れれば男の背後で下卑た笑みを向ける者たちから暴行や辱めを受けるというもので。


「恨むならあなたのように可憐な方があのような場所で無防備に眠っていたことを恨みなさい。ただ先も伝えたように、大人しくしていれば良い暮らしは出来ますよ」


 現状を理解させることで心を折り、面倒な事態を回避するのが目的なのか。


「まあ大人しくする他はありません。お気づきかは分かりませんが、あなたの両腕に填めているのは封じの枷。精霊力を解放できないでしょう?」


 確かに先ほどから精霊力を扱おうとしても妙な感覚が邪魔をしている。封じの枷というのは知らないが、精霊士や精霊術士対策としてそう言った物があるのだろう。


「大人しくするのがお互いのためとご理解なさったのならお願いします。そうです、お腹は空いていませんか?」


 精霊力持ちに対する対策も踏まえて、普通の少女なら男の狙い通り泣き崩れ、己の不幸を呪うだろう。

 それとも不可能と理解しながら自暴自棄に抵抗するのか。


 だが残念ながら男は勘違いをしていた。


「……これだから劣等種は」


 現に少女は泣くことも、自棄にもならず侮蔑の感情を吐き捨てる。

 何故なら現状を理解したことで少女が抱いたのは怒り。

 決死の覚悟で災厄に挑もうとした中、攫われたのは休んでいた自分が悪いと主張する勝手な言い分。

 敬愛する主君の優しい想いを冒涜する、精霊力持ちだから高値になるとの評価。


「なにか言いましたか?」


「…………はぁ」


 故にこれ以上この声を聞くのも耐えがたいとため息一つ。

 両手首に填められた枷によって妙な違和感はある。

 しかし()()()()()()()()()()()()()


「精霊力を封じる枷って……こんなオモチャでなにをイキがってるのかしら」


 集中しつつ精霊力を高めれば少女のエメラルドのような翠色の髪と瞳に更なる翠の煌めきが帯びた。


「愚かすぎて笑う気も起きないわ」


「な――っ」


 同時に両手首に填められた枷がバキンと音を立てゴトリと落ちた。

 その変化や壊れた枷に驚愕する男を無視、続けて両足首の枷に手を触れる。

 触れた枷が翠色に輝き、やはり音を立てて壊れてしまう。


「さて、後はお掃除の時間ね」


 拘束から解放された少女はゆっくりと立ち上がり冷笑を浮かべて男を見る。


「あなたたち! あの女を拘束しなさい!」


 立て続けに起こる異変、少女の笑みに畏怖した男が配下に指示を出すが既に遅し。


『アタシの前から消えなさい』


 淡々と紡がれた言葉を最後に、男はこの世から消滅した。


「……疲れた」


 語りかけていた男だけでなく、配下や馬車も消し去り周囲を更地に変えた少女は膝から崩れ落ちる。

 ただ奪った命よりも悔いるのは怒り任せにやり過ぎてしまったこと。

 髪や瞳の煌めきも消えてしまい脱力感が酷い。

 むしろ休む前よりも消費した精霊力に抗えず。


「なにしてるのよ……アタシ……は…………」


 霊獣地帯に向かうことも叶わず、感情のまま動いた自分を恥じながら再び意識を失った。



 しかし次に目を覚ました少女を待っていたのは――



()()()()()()()()()()()()


「…………は?」


 温かな温もりと強い口調で語りかける()()()()()()()


ロロの謎について新たに触れた後、鍵を握る少女の状況に触れてみました。

前回からの結末は読んで頂けた通りですが……ロロを探しているからか、猪突猛進と言いますか少女も中々に考え無しな子のようです。

とにかく再び意識を失っている間に少女はどこに連れられたのか、時系列や老婆についても次の裏幕で明かされます。



少しでも面白そう、続きが気になると思われたらブックマークに登録、評価の☆をお気持ちのまま★にして頂ければ嬉しいです!

みなさまの応援が作者の燃料です!


読んでいただき、ありがとうございました!



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