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白き大英雄と白銀の守護者  作者: 澤中雅
第十五章 迫り来る変化と終演編
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結びつく可能性

アクセスありがとうございます!



 学院再開初日、学院長室へ向かったロロベリアと別れたユースは先にミューズ専用の室内訓練所に向かった。


『ユース兄ちゃん!』


 しかし教室を出て間もなくエランが手を振り駆け寄ってきた。


『お久しぶりです! 可愛い後輩のファルも居ますよ!』

『……自分で可愛いとかよく言う。そもそもお前はいい加減静かにするのを覚えろ』


 またファルシアンやレイティも一緒で周囲から注目を浴びたが(主にファルシアンが理由で)それはさておき。

 遠征訓練を終えたユースを労おうと来てくれたらしく、弟分のエランに気遣いはくすぐったくも嬉しいもので。ついでと言えど一緒に来てくれた二人の気遣いももちろん嬉しいもの。

 ちなみに精霊騎士クラスに移動したリースのところにも後で行くらしい。ただ今日はアヤトとの個人訓練なので既に帰宅しているだろうと伝えれば残念そうにしていた。

 とにかく三人もこれから合同訓練をするなら途中まで一緒に行こうと誘い、道中は遠征訓練の話題で談笑を。まあ主に霊獣地帯の異変、特に精霊種の単独討伐を成し遂げたラタニの話題で。近々ラタニの勲章授与式が行われるので見に行こうと誘われたりもした。


『そう言えばユース兄ちゃんたちの留守中に序列保持者のファンが来てましたよ』

『……ファン?』


 だが別れ際、エランが告げた話題にユースの表情が一瞬強張った。


『わざわざ帝国から来るほどだったんで、無事に会えたかどうか気になってるんです』

『遠征訓練の日程を忘れて間違った情報を伝えていれば気になるだろう』

『伝える前に二人が来たから仕方ないだろ……だいたい忘れてたのはレーテも同じだ』

『それは……そもそもファルが悪いんだ』

『褒めないでくれたまえ』

『『誰も褒めてない!』』


 続くやり取りは良いとして、エランの言う人物が誰なのかユースも察した。

 加えてダラードで序列保持者が不審者に襲われたこと、不審者の特徴なども含めて三人の耳にも届いている。ただ伝わっているからこそ、その人物が不審者だと結びつかないのだろう。

 なんせ不審者は風の精霊術士、自分たちと出くわした時と同じように精霊力を抑えていれば持たぬ者と勘違いする。


『エラン、そのファンってのは可愛い女の子? 序列保持者の中で特に誰のファンとか聞いてないか?』


 なら三人には勘違させたまま、確信を得る情報が欲しいとユースは軽薄な態度で質問を。


『女の人……だと思いますけど白いローブを深く被ってたので顔までは……。それと誰のファンとかまで言ってなかったですね』

『……ユース先輩、容姿など知る必要はないと思いますが』

『老若男女関係なくファンというのは尊き、力になるもの! そう――』


 恐らく自分のファンなら可愛い子が良いと捉えたのか軽蔑するレイティの視線やファルシアンの熱弁は無視してユースは内心ほくそ笑む。

 帝国から序列保持者のファンと公言する、白いローブで顔が隠れていた人物。

 特徴が一致しているならエランが出会ったファンは謎の少女と確定したようなもの。


『確かに女の子ならみんな可愛いからな。無粋な質問だったわ』

『……この先輩は本当に』

『それとエラン、悪いけどオレたちのファンってのに会ってはないわ』

『やっぱり……悪いことしたなぁ』

『だからどんな子だったのか教えてくれないか』


 軽蔑されようとユースはエランから少しでも情報を聞きだし、結果ミューズと共に教室でロロベリアを待つことに。

 と言うのも序列専用訓練場には従者のレムアがいる。彼女は謎の少女を知れど深い事情までは知らない。

 要はそれだけ気掛かりな情報を得たからこそロロベリアと合流後、合同訓練を中止してアヤトにも報告しようとミューズも同行して早々に帰宅。


 既に訓練を始めているアヤトに代わり夕食の用意に名乗り出たレムアに感謝しつつ、予定通り事情を知る面々で話し合いの形を作った。


「……クロさん?」


 そして早く帰宅した自分たちに訝しむ二人に早速その情報を伝えれば、リースはまさにロロベリアと同じく唖然な反応を。

 エラン曰く序列保持者の不在を告げた際、謎の少女はクロという言葉を呟いた。

 しかも色というより誰かに対する不満を漏らすようなニュアンスだったらしい。故に幼少期ロロベリアとアヤトがシロ、クロと呼び合っていたのを知るエランもアヤトを連想したそうだ。

 残念ながら質問する前にレイティとファルシアンが合流、うやむやなまま別れているので詳しい関係性は不明なまま。

 そもそもクロという愛称など他で使われていてもおかしくないし、見た目から予想する年齢だと少女が幼少期のロロベリアやアヤトと出会っているなら七、八才あたり。ロロベリアが知る限り教会関係者や出入りしていた住民に少女の特徴と一致する人物は居ない。

 考えすぎかもしれないがロロベリアにとってクロは大切な存在。ロロベリアに執着する少女がその愛称を口にすれば引っかかるわけで。


「リースの気持ちは分かる。クロだと、どうしても……ね」


 故にリースやミューズだけでなくロロベリアも過去のアヤトと結びつけてしまうのも無理はないし、ユースも最初は同じような連想した。

 しかし改めて考察したことで他の可能性も見出している。


「お前はどう思うよ」

「俺とクロとやらは無関係だ……と言いたいが、知らぬ者からすれば同一人物と勘違いしてもおかしくねぇ。白いのにご執心な女がその名を口にすればお前らも無駄に結びつけるか」


 なので自身の考察は伝えず様子を見守っていたアヤトに意見を問えば、とりあえず肯定的な返答が。


「だが()()()()()()()()()()()()()()()()他にも結びつく奴がいるだろうよ」

「やっぱそうなるよな」


 しかし続く考察で同じ可能性に行き当たったとユースも同意。

 アヤトの言うようにロロベリアに執着している少女は精霊術士として不可解な能力を持ち、世事に疎く人間を見下すような言動や態度があった。更にロロベリアの異常な力を知って近づいている可能性が高いと、今後に備える為に伏せていた教会派を裏で操っていた神らしき存在を明かしたのだ。

 そして不可解な存在は教会派の黒幕や謎の少女だけではない。


 他にもう一人――いや、もう一柱と表現するべきか。


「どうせ何も教えてくれんだろうが一応確認してみるか」

「……二人して誰のことを言ってるの?」


 今までのやり取りを不思議そうに聞いていた三人を代表してロロベリアが質問するもアヤトは無視。


「つーわけで一応聞くが、お前には愛称呼びされる程に仲良しな奴でもいるのか。ただの知り合いでも構わんぞ」

「――もしかしてわたくしに質問していますか?」


「……あ」


 だがマヤが顕現するなりロロベリアも気づいたのか目を見開く。普段はマヤと呼んでいるだけに結びつかなかったのか、たんに彼女の中でクロの存在が大きいだけか。

 とにかく少女がマヤの存在を知り、愛称呼びをするほどに深い関わりがあるのなら。

 またエランが聞いたクロの呟きが一部分だったとすれば。


「他に誰がいる、()()ノフさま」

「兄様にその名で呼ばれるのは久しぶりですね。そして質問に対してのお答えは――」

「知りたきゃ対価を払え、だろ……たく」

「その通りです」


 少女が不満を抱いていた対象は()()()()()()()の可能性もある。



  

十四章でエランが聞いた謎の少女が呟いたクロは過去のアヤトかそれともマヤか。それぞれが考えすぎなだけで全く関係ない可能性もありますが、その辺りは後程として。

次回はついに鍵を握る謎の少女の行方に迫る! ……予定です。



少しでも面白そう、続きが気になると思われたらブックマークに登録、評価の☆をお気持ちのまま★にして頂ければ嬉しいです!

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読んでいただき、ありがとうございました!



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