今後のために
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教会派を操っていた神の存在はロロベリアたちも聞いているが、声を聞いた教皇も記憶が残っていたギーラスもその存在は確認していない。
「ま、そいつが本物の神さまかは知らんがな」
だがアヤトは会っている。これには自身の精霊力にショックを受けていたロロベリアも、話の流れについて行けなかったリースも面食らっていた。
「ユースさんはご存じだったのですか……?」
そんな中、驚きこそするも今の発言に違和感を持ったミューズの視線がユースへ向けられた。自分の特異性を知った際も何かに納得していた様子から、既にアヤトから聞かされていたのだろうがなぜユースのみ知らされているのか。
「さっきも言ったけど後で弁解するって」
ロロベリアやリースにも注目されて居心地が悪そうにユースは頬をかく。
「ただその神さまが理由でアヤトがオレを番犬代わりに雇ったんだよ」
「番犬? 意味が分からない。分かりやすく」
「そこも含めて話を聞けば分かると思うから。アヤト、続きを頼むわ」
「……ですね」
意味深な告白にリースが詰め寄るも、ユースの言い分はもっともとミューズは落ち着く為に深呼吸を一つ。
「アヤトさま、その神とはいつお会いになったのですか?」
「聖域にフロッツが来た後だ」
「……言われてみれば、教皇猊下の元へ向かう途中アヤトさまは別行動をされていました」
あの時は教皇の状況に気が動転していつ離れたのか記憶にない。しかし治療中にアヤトが窓から入ってきたのはミューズも覚えているが、まさかその別行動中に神と出会っていたとは思いも寄らず。
またその場に居なかったが教皇を治療したのがアヤトだとロロベリアは聞いているも、教皇の異変についてリースは聞かされていない。
「それで……神はどうされたのですか」
「始末した」
「「「え?」」」
が、ミューズの問いにとんでもない結果をしれっと返すアヤトに三人は再び唖然。
「そもそも神さまとご対面したのはマヤの呼び出しを受けたからだ」
故にアヤトは簡潔に当時の事情を説明。
教国行きの前にマヤと話し合った際、協力を得る対価として三つ望みを聞くと約束したこと。
望みの一つとしてあの時、白夜でマヤの目の前に居る存在を斬るよう呼び出しを受けたこと。
ただ教皇を治療するには時間操作の能力が必要とは伏せ、その神さまが強引な契約破棄を行い教皇に異変が起きたとマヤから聞いたとは伝えている。
なんせミューズにマヤの正体を知っても、時間操作の能力や対価として自身の寿命を消費する秘密は聞かされていない。ニコレスカ姉弟も知らないだけに簡潔な説明になったがそれはさておき。
「……条件だから問答無用で神さまを斬ったの? 師匠は相手が分からなかったのに?」
それとは別にアヤトの行動がリースですら理解できなかった。
「オレも聞いた時は呆れたわ」
「仕方ねぇだろ。つーか話を進めるぞ」
そして仕方ないで済ませる神経も理解できないが、もうアヤトだからと割り切るしかないわけで。
「俺が見たのは後ろ姿のみだが、そいつは金色の輝きを纏っていた」
「金色……教典に記されているレーヴァ神と同じ輝きですね」
「神気は感じられなかったが、マヤが言うにはそいつが教会が崇めていた神さまで、真の黒幕らしいぞ」
「教会が崇めていた神であり、真の黒幕……ですか」
元よりアヤトの行動に疑問も不満も抱かないミューズはマヤの情報に眉根を潜めていた。
その存在が本当に神かどうかは判断できない微妙なニュアンスもあるが、世界を滅ぼそうと裏で教会派を操っていた。
なにより黒幕ならばその存在が自分を狙っていたのだ。
「要はお前を欲していた神さまは本当に存在していたわけだ」
未遂に終わった神降臨の儀、その器としてあの事件に関わったミューズはその存在を神と認めたくない。
しかし事件の規模からその存在は人知を越えた力を持っている。現に誰にも話していなかった精霊力の視認という特異性を知られていた。
また神が実在しているのなら、他にも未知の存在が居る可能性は高い。
そして今まさに、自分と同じような理由から狙われているかもしれない。
「もう一人、狙われそうな奴が居るだろう」
「……ロロベリアさんですね」
まさに心配していた状況をアヤトが指摘する。
ロロベリアを探す精霊術士としての能力のみならず世事に疎く、言動なども不審な点が多い謎の少女が探すロロベリアも異常な精霊力を秘めているのだ。
加えて下克上戦で視た奇妙な回復がその特異性と関係しているのかは分からない。
ただアヤトが伏せているならこの情報は控えるべきと、ロロベリアを一瞥するのみに留めた。
知らずともロロベリアは先の実験で自身の異常な力を理解した。
「ミューズの特異性を神さまが知っていたように、白ローブの女は白いのの力について何かを知っている可能性が高い」
つまり今以上に警戒しなければならないわけで。
「もう一つ、白いのを付け狙う奴が現れたなら、再び現れるミューズを狙う奴が可能性もあるな」
「そういうことん。可能性の一つとして捉えてた問題が現実味を帯びたならロロちゃんだけじゃなく、ミューちゃんにも警戒して欲しいとあたしらは忠告してるんよ」
そしてミューズも警戒しなければならない。
故にマヤの情報を元にロロベリアの力を確認した上で、今後の対策を話し合う為にアヤトたちはこの場を用意してくれた。
ならアヤトがマヤの正体を明かしてまで自分に協力を求めたのは、ロロベリアの力を探る為だけではないかもしれない。
「とりあえず聖女ちゃんはマヤからもらったブローチがあるだろう。そいつはマヤ伝手になるけど距離関係なくアヤトだけじゃなく、神気のアクセサリーを持ってるアタシらと連絡が取れる不思議なブローチってのも教えておくぜ。マヤも聖女ちゃんには使わせないって意地悪しないよな」
「そのような意地悪はいたしませんわ。そもそも先ほどミューズさまにブローチの使い方をお話ししていますから」
ツクヨの圧にクスクスと笑いながら返すよう、正体を明かされた際にマヤからブローチの機能を教わっている。
契約者のアヤトを始め、現在神気のアクセサリーを所持している面々と距離関係なく連絡が取れると聞かされた時は驚いたものだ。
同時にこれまでアヤトたちがどのような方法でそれぞれの状況を把握し合っていたのか、その謎も解消された。
まあエニシはマヤの正体は知れど、教会派を操っていた存在までは知らないらしいが、後の状況次第では協力を仰ぐ方針で居るらしく。
とにかくロロベリアのように一緒に暮らして居ないが、アヤトは基本ラナクスに滞在している。緊急時にアヤトと連絡が取れるのなら心強く、自分を守る手段を伝える為にも打ち明けてくれたとすれば嬉しくもあった。
(……いけませんね)
ただロロベリアと比べるのは止めると決めておきながら、こんな時にまで対抗心を抱く自分が醜いとミューズは反省。
なんせ他者とは違う何かを秘めていると知った気持ちミューズは痛い程知っている。しかも自分も知らない力を知り、探している人物が居るとなれば尚更だ。
「…………」
現にロロベリアは自身の置かれた境遇、未知の力を理解したことで先ほどから口を閉じたまま。
こう言っては何だが、普段なら構ってちゃんと呆れられる程にアヤトの話を遮るはずなのにずっと表情が強張ったままで顔色も優れない。
精霊力の輝きも彼女とは思えないほど淀みが渦巻いている。
自分は何者なのか。
謎の少女は何を知っているのか。
恐怖や困惑が精霊力の輝きでまさに視て取れるだけに痛々しく。
彼女の気持ちを少しでも理解できるのなら心のケアをするべきだが、敢えてミューズは静観を選んだ。
この場を用意したのがアヤトなら恐らく想定済みで。
「つーか白いの。随分と大人しいが、普段の構ってちゃんはどうした」
例え辛辣な物言いでも、ロロベリアは立ち直ると確信している。
ミューズが心配していたように、今までアヤトが話している時にロロが口を挟まなかったことがあったでしょうか(笑)。まあそれほどロロにとっては衝撃的な事実が続いていますからね。
ただロロやミューズに打ち明け今後の対策をする前に、やはりロロのケアが必要。そう言った意味でも今後を見据えてアヤトくんはこの場を設けています。
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