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白き大英雄と白銀の守護者  作者: 澤中雅
第十五章 迫り来る変化と終演編
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異常な力

アクセスありがとうございます!



「まずはこの場を用意した理由だが、ツキやミューズの前で白いのにノア=スフィネの残した精霊石に精霊力を流させるためだ」


 ラタニに言われるまま珍しくアヤトは素直に真意を語り始める。

 精霊種の精霊石を一部とは言えアヤトが所持していることも、ツクヨやミューズの特異性も秘匿にしなければならない。加えてミューズの協力を得るにはマヤの正体も含め、ある程度でもアヤトの秘密を伝えておく必要はあるだろう。

 故に事情を知るメンバー内で試した、しかしそれは前提があってこそ。


「つまりお前は姫ちゃんの精霊力で何かが起こると踏んでたわけね。なんで予想できたよ」


 ロロベリアも抱いていた疑問をユースが問いかけてくれる。

 なぜアヤトは自分の精霊力で変化が起こる前提でこの場を設けたのか。でなければ精霊種だけでなく霊獣の精霊石まで用意していないはず。

 その疑問に対しアヤトはため息一つ。


「ノア=スフィネと遊ぶ前に、どこぞの神さまが気まぐれで情報をくれたんだよ」

「……マヤちゃんか」


 嫌味を含めた返答に変わらずドア付近で様子を窺うマヤにロロベリア、ニコレスカ姉弟、ミューズの視線が一斉に向けられる。


「ちなみにあたしは何も聞こえませんでした。まあ精霊力を解放してない状態であの距離だ、ひそひそ話されても聞こえんけどねぇ」

「それ以前の問題だ。ご大層にも俺にだけ聞こえるようにお話ししたようだからな。違うか? 神さま」

「さて、どうでしょうか」


 四人の視線やアヤト、ラタニの白々しい追求を前にしてもマヤは動じるどころかクスクスと愉快気に笑うのみ。

 確かにマヤならアヤトのみに語りかけることは出来るだろう。ただマヤがアヤトにだけ情報を与えたのか、気まぐれな神さまだけに真意が読めるはずもなく。


「とにかくどこぞの神さまが言うには、あの場に居た面子の中にはノア=スフィネの天敵がいるそうだ。そしてノア=スフィネの遊び相手を俺とラタニにご指名したなら、その天敵とやらは他の五人になる」


 また気まぐれが故に与える情報も曖昧なもの。あの時いたメンバーで最も天敵になり得るのは神気を宿すアヤトになる。

 しかし有力候補のアヤトや次点のラタニを除外すればロロベリア、カナリア、モーエン、スレイ、ジュシカの五人。

 その中でアヤトが天敵をロロベリアだと断定した根拠もあるわけで。


「ツキ、お前が視たネルディナの精霊力には黒点のような輝きを確認したんだろう」

「取れたての精霊石と同じようなどす黒い精霊力の輝きだ。恐らくその黒い精霊力が毒みてーに他人の精霊力を蝕んでたんだろーよ」

「だが白いのに効果は無かった。で、ノア=スフィネが生まれる際の集約した黒い靄や、散り際に見せた黒い霧がネルディナの秘めていた精霊力と同じものだと仮定すればもう分かるだろう」

「白いのちゃんの精霊力は黒い精霊力に対抗する力がある、だからマヤの言う天敵ってわけだ」


 黒い霧が集約してノア=スフィネが誕生したのをラタニは目撃した。

 その黒い霧が霊獣から採取できる精霊石に秘められた精霊力と仮定した上で、教国で対峙したネルディナの異質な精霊力に混じっていた黒点が同じものだとすれば。

 唯一ネルディナの精霊力に蝕まれなかったロロベリアの精霊力が、ノア=スフィネの残した精霊石を透明化という浄化が出来たのなら。

 ノア=スフィネが黒い精霊力の集合体、干渉させれば存在そのものを消し去れるだろう。


 つまりマヤの示す天敵は()()()()()()()()


「ま、ここまではラタニやツキの意見も踏まえて導き出した可能性だがな」


 マヤの曖昧な情報を元に、過去の出来事も踏まえてラタニやツクヨの意見を確認したことでロロベリアの精霊力には黒い精霊力を浄化する力があると導き出しアヤトはこの場を設けた。

 ミューズをこの場に引き入れたのも、ツクヨとは違う視認性から別の情報も得られると期待して。


「なら浄化前の精霊石を用意したのは精霊種の精霊石との違いだけでなく、黒い霧と浄化前の精霊石に秘められてる精霊力が同じ物か確認するためか」

「用意したのはあたしだけどねん。アヤトに頼まれてちょいとお借りした……は置いといて、ネルディナって子が人体実験で異質な精霊力を得たのなら、精霊石を使った実験によるもだろうからねぇ」

「問題は精霊種と霊獣の精霊石で違いがあるかだけど、これも神さまのありがたーい情報が元だったんわ」

「ノア=スフィネは精霊種と呼ばれている霊獣もどきらしいぞ」

「……なるほどね。ツクヨさんやミューズ先輩が精霊種の精霊石が普通の精霊石となにかが違うって感じてるなら、別の変化が起きる可能性も出てくるか」

「でも透明化したかと思えば白い精霊石にしちゃうとは予想外だったねん。ラタニさんは驚きびっくりだったよ」

「アタシも覚悟はしてたけど驚きましたよ。でもよ、アヤトはそうでもなかったよな」

「これでも驚きびっくりしてたんだよ。だがま、推測になるがノア=スフィネは生まれ方からして黒い精霊力の集合体、対する霊獣は獣……要は生命体だ。白いのの精霊力に黒い精霊力を浄化する作用があるとして、霊獣の精霊力には干渉できないんだろうよ」

「生き物には元々精霊力が秘められてる。なら黒い精霊力を浄化しても、本来秘めていた精霊力は残るってか」

「でもさー。それだと白い精霊石になる理由が分からなくね? 霊獣の精霊力が精霊士と同じ紫なら綺麗な紫になるさね」

「そーいやラタニさんには話してなかったな。自然界に満ちる精霊力は白らしいんですよ」

「白い精霊力?」

「親父の受け売りで、あくまで皮肉交じりの仮定ですけど――」


 そして霊獣の精霊石を用意した理由についてユースも加わり考察を始める。

 自然界に満ちた純然な精霊力が紫とされているが、ジンの皮肉を込めた仮定から本来は白い精霊力ではないか、という可能性はロロベリアも聞いている。


「ならアタシらにも精霊力を流せば白い精霊力になるかもですけど、精霊石に秘められた精霊力は持ち主を失ったものとすれば」

「ロロちゃんの精霊力で自然界の精霊力に戻っちゃった、てことか」

「可能性としてはあり得るかもですよ。そもそも治療術は体内水分を術者の精霊力で活性化させて傷を治す、まあ体に直接触れて精霊術を使うって過程にはなるけど、白いのちゃんの精霊力の影響を受けるなら治療してもらった奴は既に変化してるでしょうし」

「納得さね」


 持ち主(いのち)を失った精霊力はロロベリアの精霊力に干渉したことで本来の白い精霊力に戻った。

 対するノア=スフィネは黒い精霊力の集合体。持ち主(いのち)が干渉していない精霊力の色が無いだけに、黒い精霊力が完全に浄化されて色を失った。

 所詮は推測、しかしそれなりに説得力があるだけにラタニも納得したわけで。

 もちろん疑問はまだある。

 霊獣とは別の存在なら、ノア=スフィネはいったい何だったのか。

 本当に世界に満ちる精霊力が白だとすれば、黒い精霊力とどのような関係があるのか。

 そもそも黒い精霊力とはどう生まれてくるのか。

 多くの謎を解明するにはまだまだ情報が少ない。


 ただ一つだけ、ロロベリアの精霊力は()()()()()()()()()()()()()()()()()


「考察は後ほどだ」


 自身の精霊力が秘める異常な力に茫然となるロロベリアを一瞥したアヤトはため息一つ。


「お前らも教皇が神さまの啓示を受けたのは知っているだろう」


 続けて会話について行けないのか首を傾げてばかりのリースと、困惑を隠せないミューズを一瞥して不意に話題を変えた。

 教皇やギーラスの主張から教会派を操っていた神がいたとは三人も知っている。

 だがその行いから悪魔に唆されたと主張を変えたがあくまで声のみ。

 二人はその存在を確認していない。


「そいつと同一神かは知らんが、俺は神さまとやらを確認している」


 しかしアヤトが直接対面していたのは初耳だった。




白い精霊力に続いて黒い精霊力の存在など色々とありますが、これまで話題に挙がっていたように少なくともロロの精霊力は異常な力を秘めているのは確定しました。

ネルディナの一件やノア=スフィネの誕生や散り際、なによりマヤさんの情報からアヤトを中心に導き出したロロの精霊力についての考察がどこまで正しいかは敢えて伏せるとして。

これまでロロ、リース、ミューズに伏せていた教会派を操っていた神の存在を明かしたことで、アヤトがこの場を設けた別の狙いが次回で語られます。



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読んでいただき、ありがとうございました!


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