食い違い
遅くなりましたが本編再開です。
アクセスありがとうございます!
アヤトに言われるままロロベリアは精霊種ノア=スフィネの精霊石に精霊力を流した。
「…………?」
「……えっと」
漆黒の精霊石がクリスタルのような無色透明に変化していく様子を不思議そうに首を傾げるリースと言葉を詰まらせるユース。
そして見守っていたラタニは当然、精霊力を視認できるツクヨやミューズも理解不能な現象に映ったのか茫然としたまま動かない。
もちろんこの現象を引き起こしたロロベリアも同じ。
「ツキ、ミューズ。どう視えた」
対するアヤトは全く動じず二人に確認を取る。
「どう……と言われてもな。アタシにはどす黒い精霊力がいきなり消えたようにしか視えなかったわ。聖女ちゃんはどうだ」
「……わたしも同じです。ただ漆黒の精霊力の中心……でしょうか。そこに白い輝きが視えたような気がします」
「白い輝き?」
「はい……その白い輝きが漆黒の精霊力を塗りつぶす……いえ、浄化されていくような感覚に似ていました。先ほどのような重苦しい感じもなくなりましたから」
また二人の視認は精霊力の色と感情を輝きで読み取る違いから、読み取れた感覚も違いらしい。ただ二人とも初めて視る現象なだけに動揺しているのか上手く言葉が続かない。
「透明になったが、精霊力は消えたのか」
「僅かですが精霊力は感じられます」
「全然感じられねーぞ」
「え?」
「は?」
だが続けて情報を求めてくるアヤトに、同時に答えた二人は食い違いから目を合わせてしまう。
「マジで? アタシには感じねーし……やっぱ何も視えねーな」
「わたしの目にも精霊力の輝きは視えなくなりましたが……僅かながら感じられていますけど……」
「ちなみにあたしはツクちゃんに一票。つまりなーんも感じない」
「「…………」」
ミューズの意見にツクヨは改めて透明化した精霊石を凝視するも首を振り、ニコレスカ姉弟も同じなのかラタニの意見に頷くのみで。
「あの……私も微かに感じるんですけど……」
しかしロロベリアはミューズと同じ意見。手にしている精霊石から僅かでも精霊力を感じられていた。
「白いのちゃんも……ちょい貸してくれ」
「……どうぞ」
「………………やっぱダメだ。ラタニさんはどうですか」
「右に同じだねぇ」
もしかしてとツクヨは精霊石を手にして確認するも何も感じず、やはりラタニも同じらしい。
「つーか手にしてるから感じられる、だとミューちゃんが感じ取れる理由にならんか」
「だよなー。それに白いのちゃんの精霊力が透明化したから、でも同じ結論になるか」
直接触れているから、透明化させたのがロロベリアの精霊力だから、では説明の付かない違いにツクヨが頭をボリボリとかく。
精霊力を視認できる特異性を持つツクヨや感知能力がずば抜けて高いラタニ、ニコレスカ姉弟も感じられない精霊力をロロベリアとミューズだけは感じ取れる。
ミューズの特異性がツクヨと違って突然開花したから、でもないだろう。ならばロロベリアも感じられないはずなのだ。
それともロロベリアの精霊力が起こした変化が故に感じ取れるのか。
「白いの、次はこいつに精霊力を流してみろ」
とにかく理解不能な現象や違いに混迷する中、アヤトのみ変わらず冷静に指示をだす。
テーブルに置かれたのは普通の精霊石。まだ黒いままだがそれよりも。
「アヤト……いったい何を確認してるの? どうして私にこんなことさせてるの?」
「それを僅かでも知る為の確認だ。いいからやってみろ」
自身の起こした現象に言い表せない怖さが込み上げ、ロロベリアは矢継ぎ早に質問するがアヤトは促すのみ。
ただ返答からアヤトは自分の為に何かを探ろうとこの場を設けたとの気持ちは伝わったなら。
「……わかった」
今は信じるのみとロロベリアは精霊石を手に、同じよう精霊力を流し込み――
「…………」
「おいおい……いくら白いのちゃんだからってそれはないだろ」
新たな変化にツクヨは軽口を叩くがロロベリアは笑えない。
「……なんて冗談言ってる場合じゃねーな。言っておくけど精霊石に精霊力を流し込んでも本来はなんにもおきねーぞ」
心中を察して真摯な対応をしてくるが、だからこそ分からない。
何故なら精霊石が透明化ではなく真っ白に変化したからで。
「これはアタシが精霊士だからじゃないぞ。精霊石に精霊力を流し込むって発想は親父が試したもんだ。つまり少なくとも土の精霊術士ではなにも起きねー。そもそもアタシの目には白い精霊力が視えるんだけど……ただ精霊石が白くなったからに過ぎねーのか?」
「……わたしの目でも白い輝きは確認できますが……どうなのでしょうか」
「その辺は二人にしか判別できんけど、今度はあたしにも精霊力が感じられるねぇ」
また色の変化だけでなくラタニやニコレスカ姉弟も精霊力を感じられるらしく、ツクヨやジンでは何も起きないはずが、ロロベリアの精霊力では変化がある。
「そんでもってロロちゃんが水の精霊術士だからって単純な理由でもないだろうねぇ。こうなるとノア=スフィネの精霊石は従来の霊獣から採れる精霊石とは別物だ」
「ついでにいや聖女ちゃんも従来の精霊術士とはちーと違うことにもなる。まあアタシや親父と違っていきなり開花した特異性で予想は出来てたけどな」
そして精霊種が残した精霊石は霊獣の精霊石とは違うこと。
ツクヨやラタニたちが感じ取れない精霊力を、ロロベリアと同じようにミューズも感じ取れること。
「ただある程度は覚悟してたけどよ、まさかここまでややこしい結果になるとは思わなかったぜ」
「ラタニさんも同じさね。ぶっちゃけ神さまなら全てお見通しなんだどうけど……なんせ神さまだ」
「ラタニさま、それはどういった意味でしょう」
ジト目を向けるラタニに対し楽しげにクスクスと笑っているマヤなら納得のいく結論を語れるだろう。
「てなわけでアヤト、この子らにあんたなりの推測を話してやりな。ついでにこの場を用意した理由も含めてねん。さすがに面倒で済ませるわけにもいかんだろ」
しかしマヤが素直に答えてくれるはずもなく、変わりに状況も含めてアヤトなりの見解を説明してくれるらしい。
確かにミューズの特異性をニコレスカ姉弟に打ち明けさせたのも、ロロベリアに精霊力を精霊石に流すよう指示したのもアヤト。ならロロベリアの精霊力で精霊石に何らかの変化が起きる可能性を予想していたはずで。
つまりこの場はアヤト主導の下で行われている。ラタニやツクヨもある程度は聞かされいるらしいが、とにかく今はアヤトの真意が知りたい。
「所詮は推測に過ぎんが構わんな」
故に苦笑交じりに確認してくるアヤトにロロベリアやニコレスカ姉弟が了承したのは言うまでもない。
ノア=スフィネの精霊石の変化に続いて霊獣の精霊石が白く変化しました。
次回は立て続けに起きている変化や、この場を設けたアヤトの真意についてを珍しく面倒くさがりのアヤトくんが語ります。
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