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白き大英雄と白銀の守護者  作者: 澤中雅
外伝 それぞれの物語
651/779

恩師 中編

アクセスありがとうございます!



 ラタニ=アーメリとの衝撃的な出会いから十日後――



「そんなわけで、今日から三人の先生を務めるラタニ=アーメリさね」


 十日前の屋外訓練場に集まったレイド、カイル、エレノアの前で改めてラタニが自己紹介を。

 ちなみに前回はラタニが神業を披露した後、カナリア=ルーデウスという下位精霊術士がやって来てレイドらに挨拶と謝罪をするなり説教を始めて再び唖然な状況になったりする。

 またラタニが軍に入ってからお目付役を任されているカナリアから事情を聞いたが、あの日は急遽王城に呼び出され、その帰りにいきなりラタニが姿を消したそうだ。

 本人曰く、ちょうどカイルたちが屋外訓練場に向かうのを目撃、講師も決まっていたことで少し実力を確認しようと後を付けていたらしいが城内での勝手な行動、一声かけず消えたことをカナリアが説教したのは言うまでもない。


 とにかく最終的にカナリアがカイルたちや講師に頭を下げさせそのままラタニを連行したのでまともに話せず終い。一連の出来事は国王に報告すれどラタニの講師は予定通りとなったのは、やはりラタニの実力を実際に目の当たりにしたのが大きい。

 噂以上の問題児、しかし本人の実力は当然、レイドの精霊術を遠目で見ただけで的確な分析も踏まえれば優秀な指導者としても期待できる。

 なによりラタニを気に入ったレイドが指導を希望し、エレノアは及び腰だったがやはり向上心から、カイルも興味より期待が上回り同意した。


「んでもって、とりあえず三人のレポートを読ませてもらったけど、これまた面白くなさ過ぎてラタニさん驚きびっくりだったわ」


 そしてお目付役のカナリアは別件で不参加の中、最初の訓練が始まり早速だめ出しを受けたのは訓練が始まる前に提出させられたレポートについて。

 精霊術士に開花してからそれぞれがどんな訓練を受けていたのかを知る為と事前に用意していた。開花時期だけでなくカイルは実家の講師もいるので認識を合わせる意味合いもあるのだろう。

 一見適当に見えるラタニだが、任された講師は真面目に務めるらしい。まあ教え子が王族や侯爵家という理由ではないのは身分関係ない対応で重々承知、加えて前回講師にぶつけた批判から育成には真剣な面もある。

 だからこそカイルもラタニの手腕を期待しているわけで、レイドだけでなくエレノアも教わる側として不敬な態度にも目を瞑っていた。


 なんせ精霊術士の訓練と言えば精霊術を使う為に必要な制御力、顕現に必要なイメージを構築する詩の工夫。また複数人だと立ち回りの技術を磨く連携、後は基礎体力を付けるために走り込むくらいだ。

 故に面白くないと言われて当然、しかし不満があるならラタニの訓練は特種なもの。王国最強は普段どのような訓練をしているのか。


「まあレイちゃんの精霊術を一回見たからある程度は予想付くけど、とりまエレちゃんとカイちゃんの精霊術を見せてもらおうか。それと立ち回りも確認したいから模擬戦してもらうかねぇ」


 実に興味深いと注目する中、ラタニは様子見を提案。三人も当然の確認とエレノア、カイルが基本の精霊術を披露、続いて総当たりで模擬戦を。


「なるほろね。今のところはレイちゃん、カイちゃん、エレちゃんの順か。てなわけで訓練を始めましょうか」



 そして順当な評価を受けた後、いよいよ本格的な訓練が始まった。



「は……は……」

「……さすがに、もう……」

「…………」


 のだが一時間後、レイドとカイルは息も切れ切れで闘技場に倒れ込み、エレノアに至っては声を出す余力もないほど疲労困憊。

 というのもラタニが言い渡した最初の訓練は、彼女が良いと言うまで走ること。精霊術の訓練でいきなり体力作りが始まるとは思いも寄らず、しかし教わる側としてエレノアも渋々ながら了承。

 ただいつまで経っても終わる気配のない走り込みに十分前にエレノアが脱落、カイルと一周差を付けてレイドも限界が訪れてしまった。


「なるほろね。体力もレイちゃんが一番あるみたいだ」


 そんな地獄の走り込みを課したラタニと言えば、条件を満たせず休む三人を批判することなく平然としたもので。

 そもそもラタニは精霊術の講師を任されているはず、なのに精霊術を教えず体力を重視する理由が分からない。


「でもラタニさんから言わせればまだまださね。てなわけであたしが想定する基準値に届くまで体力作り中心でいくからねん」

「アーメリ殿……質問、いいでしょうか……」

「なんだい?」


 故に今後も同じメニューが続くと言い渡されて堪らずレイドが代表して挙手を。


「あなたは精霊術の……指導をするよう言われているのに……なぜ、走り込みを……?」

「予想通りの疑問どうも。まあ三人とも無駄口なく従ったし、教わる姿勢があるならご教授しても構わんか」


 対するラタニは想定済みのようで、三人の姿勢に免じて理由を教えてくれた。


「精霊術士は精霊術が上手く扱えれば良い、だから基礎体力や立ち回りなんかは最低限で良い、みたいな風潮があるけどラタニさんからすればバッカじゃねと思うんよね。だいたい精霊術の基礎は制御力と想像力、特に制御力が必要になる」

「「「…………」」」

「なのに基礎をポイして早く言霊を習得したい、変換術を習得したい、みたいに焦る奴ばかりで、教える側も最低限あればいいみたいな奴ばかり。そういった高等技術を習得するなら基礎がなによりも必要なのにね。ぶっちゃけ矛盾してんよ」

「「「…………」」」

「もち精霊術が強大だ。魅入られるのもわかるけど、焦るから半端な実力を身に付けて伸び悩む。元々基礎を軽視してるから上に行く為にもっと詩や想像力を工夫しなきゃ、みたいな思考になって基礎を磨こうと思わない」

「「「…………」」」

「実際に三人のレポートにも基礎に使う時間はせいぜい一時間、体力作りに至ってはウォーミングアップ程度。まあ三人とも剣技の訓練も受けてるみたいだけどやっぱり足りない。精霊術を放つための立ち回り、疲労しても冷静に状況を把握して的確な精霊術を放つために体力は必要なんよ」

「「「…………」」」

「つまり三人ともラタニさんが精霊術のうんちくを教える水準に全然届いてない。だからまずは走り込んで体力を付ける、からの今みたいに疲労してる状態で制御力の基礎訓練を重点的にやっていく」


 基礎の重要性、体力の必要性を説かれた三人は反論することも出来ず。


「てなわけで、ラタニさんから精霊術のうんちくを教わりたいならさっさと基準値に届くよう普段から鍛えるように」


「「「わ……わかりました……」」」


 ラタニの方針に従うしかなかった。



 ・

 ・

 ・



 最初の訓練以降、三人は方針通り基礎と体力作りに励んだ。

 当初の予定通りラタニの直接指導は月に一度か二度、それ以外の時間はひたすら走り込みと制御力の基礎訓練に当てるほど。

 もちろん今まで担当していた講師の訓練は通常通り受けていたが、王国最強と謳われながら本人が基礎を軽視せず、体力面も普段は馬車を使わず走って移動するほど地道な努力を続けていると知ればやはり感銘も受ける。


 なによりラタニの指導は基礎訓練一つ取っても秀逸で、他の講師よりも細かく的確な指摘をしてくれた。

 基準値に届いた三ヶ月後からは精霊術も踏まえた指導も始まり、やはり基礎的なものばかりだが自分でも実感できるほど上手く扱えるようになり。

 レイドやカイルと違い、度々ラタニの態度に愚痴を零していたエレノアも自主的に先生と呼ぶほどまで慕うようになった。


 そして年越し祭を迎える頃、ついにレイドが高等技術の一つ言霊を習得。


「お兄さま、おめでとうございます!」

「ありがとう。これも先生の指導のお陰です」

「レイちゃんの頑張りが実っただけさね。お礼なんてよかよか」


 尊敬する兄の成長にエレノアは誇らしげで、ラタニも教え子の成長を喜んだ。


「さすがだな、レイド」

「次はキミの番だよ」


 またカイルも称賛する反面、僅か一年足らずで言霊を習得させたラタニの手腕、この一年で知った彼女の為人や自身で集めた情報を元に()()()()()()()()()()()()()()()


 故に訓練外で個人的な接触を考えていたが――


「カイちゃん、ちょいとラタニさんと遊ばないかい?」

「……は?」


 まさかその日の訓練後、意味不明な誘いも含めてラタニの方から接触してくるとは思わなかった。



  

ここまでは今までちょいちょい話題に出ていた内容でしたが、カイルが個人的にラタニに抱いた期待。

そしてラタニがレイドやエレノアの居ないところでカイルに接触した理由。

つまりメインのカイルとラタニが一対一で向き合い、何があって恩師となったのかについては次回で。



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読んでいただき、ありがとうございました!



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