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白き大英雄と白銀の守護者  作者: 澤中雅
第三章 選抜戦と二人の戦い編
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お姉ちゃんの精霊術講座

アクセスありがとうございます!



 二日後、ロロベリアは再びレイドとエレノアの屋敷に訪れていた。


 ラタニの提示した条件は三つ。

 ラタニは学院の特別講師。選抜戦前のロロベリアに個人指導をするのは贔屓になるので内密に行えるよう学院内にある序列専用訓練場ではなく、個人の訓練場が必要。

 それをレイドとエレノアが暮らす屋敷の訓練場を貸してもらうことが条件で、二人はもちろん了承した。


 そして二つ目。

 やはりラタニは忙しい身、個人指導は学院の休養日とその前日夕方のみ。つまり今夜はここへ泊まることになるのでロロベリアは寮へ外出許可を申請。もちろんレイド、エレノアも了承してくれた。

 時間は短いがラタニの個人指導を受けられる機会は滅多にない。

 加えて彼女の予想が正しければ言霊の習得は一日あれば可能。もちろんこの条件をロロベリアは受け入れた。


 ただ最後の一つが厄介で――


「アーメリさま、本日はよろしくお願いします」


 エレノアの客人として訓練場へ訪れれば既にラタニは到着していて、ロロベリアは頭を下げる。


「お姉ちゃんね」

「…………お姉ちゃん、本日はよろしくお願いします」


 即座に訂正されて、今度は俯きがちに挨拶を。

 これが最後の条件。今後は学院外でラタニを『お姉ちゃん』と呼ぶこと。

 最初の条件通り、ラタニが一人の学院生を贔屓すると色々と問題がある。

 なのでラタニは講師としてでなく未来の妹分と親交を深める体で個人指導するので、ロロベリアに『お姉ちゃん』と呼ぶよう条件を出した。

 そして言うまでもなく、ロロベリアがラタニの未来の妹分になるのはアヤトの姉代わりだからで。


『将来ロロちゃんがアヤトと結婚したらあたしの妹、なら早いか遅いかの違いでしょ』


 もちろんロロベリアはそうなれたら良いと思う。

 だが王国最強精霊術士として尊敬していたラタニを姉と呼ぶのは恐れ多いよりも気恥ずかしい。

 理由も気恥ずかしい。

 そもそもなぜ今後なのか。せめて個人指導時のみにして欲しい。

 なにより学院外ならアヤトがいる前でも呼ぶのか。

 それはもっと色々気恥ずかしいと反論したがラタニの方が一枚上手で。


『ならこのお話はやーんぴ。やっぱ講師が学院生を贔屓にするのはねー』


 最悪の脅しに屈し、これも言霊の習得のため、強くなるためと泣く泣く了承。

 ちなみにこの条件にレイドとカイルは苦笑、ユースは爆笑。

 ただエレノアのみ微妙な表情をしていたのはミューズの存在があるからか。もしかして本人からなにか聞いているのかと気になるが、ロロベリアは聞けるわけもなく。


「ん~……もうちょい甘えん坊な妹っぽいしゃべり方が良いけど、そこは追々として。ロロちゃんにお姉ちゃんって呼ばれるのは嬉しいもんだ」

「それは……なによりです」


 とにかくラタニが満足しているならと項垂れるしかない。


「ではでは時間もないから特訓を始めようか。まずは精霊術のおさらいから」


 それはさておき訓練場に通されるなり向かい合ったラタニは精霊力を解放。

 赤髪と紫の瞳がエメラルドよりも澄んだ翠へと変わり――同時に感じる膨大な精霊力はすぐさま緩やかな圧になる。

 解放して尚、自身の膨大な精霊力を押さえ込むこの制御力。


「何年も口にしてないからぶっちゃけ恥ずかしいんだけど……」


 尊敬の瞳を向けるロロベリアに対し、こめかみをぽりぽりとかいていた右手をラタニが前へかざした。


『裂け・裂け・一陣の刃となりて・解き放つは我が刃――風の刃(ゲ・フェル)


 詩を紡ぎ精霊術を発動。

 かざした手の周辺に歪みが生じ、飛び出した風の刃がロロベリアの左横を通り過ぎる。


「さて問題です。精霊術を使うのに詩を紡ぐのはなぜでしょーか?」

「四大の力を顕現するからです。私の場合は水の力をどのように顕現するか。威力、射程距離、速度をイメージした詩に必要な精霊力を込めることで、世界に自分の精霊力を干渉させて発動できます」

「せーかい。ついでに言えば詩の内容でどのような術を使うか、干渉させる精霊力によって威力や距離、規模や狙いなんかも調整できる。要は自分独自の精霊術だね」


 先ほどの術がラタニの精霊力に比べて小規模なのはそうイメージしたから。強すぎる力を抑えて被害を小さくするのは難しいが、それを平然としてしまうラタニの制御力がずば抜けている証拠。

 解放、基本一つ取っても凄さが伺え改めて尊敬を抱くロロベリアだったが。


「んじゃ問題その二。干渉させるに必要な詩を紡がなくて術を使うにはどうすればいいのでしょーか」

「あの……それを知りたくて私はお願いしたのですが」


 この場はその為なのにと再び項垂れてしまう。


「だよね。だから教えてあげよう。今のロロちゃんは術の詳細をイメージして、干渉させるに必要な精霊力を集める時間もいる。だから面倒で長い詩を紡がなきゃいけないわけだ。それを省略可するのが言霊なわけ。こんな感じにね」


 説明していたラタニが再び右手をかざして。


『切り裂け』


 精霊力を込めた言霊を口にした瞬間、同じように手の周辺に歪みが生じ、飛び出した風の刃がロロベリアの左横を通り過ぎる。


「今の言霊にさっきと同じイメージと精霊力を込めたから、世界に干渉できたってことだね。まあ大規模な精霊術を使うには更にごちゃごちゃ色んなイメージや、必要な精霊力を込めないといけないから詩が必要になるけど。でも簡単な精霊術なら必要なし」

「だから精霊術を使い続ければ自然と身につくと言われているんですよね」

「そういうこと。ただ――」


 言葉途中でラタニは微笑み三度右手をかざして。


『パチン』


 指を鳴らすと同時に指周辺に歪みが生じ、飛び出した風の刃が三度ロロベリアの左横を通り過ぎた。


「やろうと思えば詩どころか言霊もいらんけどねん。要は世界に自分の精霊力を干渉させればいいわけだし……ま、指パチンに込められるのなんてたかがしれてるからたいした術にならんけど」


 つまり声ではなく音に必要なイメージと精霊力を込めて干渉した。

 理屈では分かるが、このような干渉方法などラタニ以外に不可能だ。


「とにかく精霊術ってのは根本を突き詰めれば威力、射程距離、速度なんかのイメージに必要な想像力と、必要な精霊力を操る制御力の二つになるわけで。言霊はそれをどれだけ瞬時に出来るか」


 つまり精霊術を遣い続けることで自分なりに必要な力を完全に把握することで言霊は習得できる。


「ただ厄介なのが想像力。同じ言葉や現象でも個々で感じる部分が異なるから、風と水の違い以前にあたしの感覚をロロちゃんに教えても意味不、逆も同じ。だから言霊ってのは難しいわけで」


 しかし続く説明のように、だからこそエレノアも返答に悩んでいた。


「かと言って感覚を共有できても結局は制御力が足りてなければ発動せんし、精霊力の必要量を間違えれば暴発の恐れがある」


 故に基礎を磨くには精霊術を使い続けることが重要なので、精霊術を重きにした訓練を続けていた。

 それでも習得できていない。

 制御力にはそれなりに自信はある。

 ならば想像力が足りないのか。


「とまあこれで分かるように、言霊は想像力と制御力を高レベルで磨く必要があるんだけど……なんでロロちゃんは使えないの?」


「……へ?」


 思い悩むロロベリアの耳にラタニの疑問視する言葉が投げかけられた。




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