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白き大英雄と白銀の守護者  作者: 澤中雅
第十四章 絶望を照らす輝き編
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最強闘

アクセスありがとうございます!



 擬神化の秘密、普段は身体強度から全力を出せない弱点をロロベリアの治療術で補ったなどを知らないラタニはこの状況に疑問を抱いた。


「あんたロロちゃんになにしたよ」

「さあな」


 故に救われた感謝よりも質問するもお約束の返答が。

 ロロベリアを狙う謎の少女について既に伝えているだけに、一人残して駆けつけるとは思わなかったが、だからこそひと一人を抱えても予想以上の速さで到着した方法が分からない。この問題もフロッツから借りた精霊器によるものとも知らないので仕方ないがとりあえず。


「もしかしてロロちゃんと乳繰りあってたから遅くなったんかい?」

「あん?」

「それとも乳繰りあってたからこそか? ロロちゃんから充電したラブラブパワーでそれなりに急げたぜい! みたいな?」

「…………」

「にしても意識失うほどの乳繰りとかアヤチンも中々にむっつり――にぎゃあ!」


 せっかくなのでからかって遊んだ結果、アヤトは立ち止まるなりラタニを放り投げた。


「なにするさね!」

「バカを捨てたんだよ。つーかアヤチンはやめろ」


 顔から地面に激突したラタニは即座に抗議するもアヤトは擬神化を解きしれっと返答。


「たくよー。照れ隠しにしても酷いんでないか」

「照れ隠しじゃねぇから酷いもなにもないな」


 やはりしれっと返されるが状況を察するなりラタニも精霊力を解除した。


「んで、マヤとはどんな取り引きしたん」

「した覚えがないから何とも。だがま、神さまが気まぐれなのはいつものことだろ」

「それもそうだねぇ」


「――こんな状況でもあなたたちは本当に……」


 などとのんきに立ち話を始める始末。これには駆け寄ってきたカナリアも無事を喜ぶより冷ややかな視線を向けるがそこはラタニとアヤト。


「カナちゃんはなにか聞いてるかい」

「マヤとは連絡を取り合っていたんだろう」


「……もっと気にすることがあると思いますが」


 平然と確認されてはカナリアもうな垂れるしかない。

 と言うのもノア=スフィネという脅威を前に二人が擬神化も、精霊力も解いて言葉を交わしているのはマヤの気まぐれがあってこそ。

 呼びかけを無視していたマヤから突然連絡が入り、ラタニが黒弾に飲み込まれる寸前アヤトが救出したとカナリアは教えてもらった後――


『今まで無視し続けていたカナリアさまにお詫びとして、少しだけわたくしが手を貸しましょう。なので嫌いにならないでくださいね』


 そう告げるなりマヤはノア=スフィネの目前に姿を現したのだ。


『グル……ゥ……ッ』


 神の身業か、それとも威厳か、ただ見つめているだけでノア=スフィネは金縛りに遭ったように動かなくなった。

 お陰で追撃の心配もなくカナリアも合流できたが、問題はここには他に三人いるわけで。


「あれはマヤの嬢ちゃん……だよな」

「浮いてるように見えるのは気のせいなのだ……?」

「ついにぼくも壊れたかな持たぬ者のマヤが空を飛んでるだ。そもそもノア=スフィネが怯えてるようにも見えるおかしいねやっぱり壊れたんだね――」


 案の定、ノア=スフィネと上空で対峙しているマヤに事情を知らないモーエン、ジュシカ、スレイは混乱していたりする。

 マヤの気まぐれで助かってはいるものの、いくら非常事態とは言え今までマヤの正体を隠していたのに良いのだろうかとカナリアは気掛かりで。


「実に嘘くせぇ」

「右に同じ」


「……もう良いです」


 いたのだが、マヤが手を貸している理由を聞くなり訝しむ二人にどうでも良くなった。



 ◇



「兄様もラタニさまも酷いですわ」


 一方、ノア=スフィネの目前で浮遊しているマヤは二人の反応にクスクスと笑っていた。

 だが二人の疑心は正しい。

 なんせマヤが手を貸しているのはカナリアへのお詫びではなく、楽しませてもらったご褒美のようなもの。


 道中で力尽きたロロベリアをアヤトが放置しなかったのは謎の少女の存在を知るからこそ。

 また同じ理由から治療役をミューズではなくロロベリアにしたのもある。もちろんロロベリアが期待通りの成果を上げれば、との理由もあるだろう。


 ただマヤがなによりも楽しいのはロロベリアの安全を優先した結果、アヤトが狙い通りの成果を上げたこと。


 なんせ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


 例え偶然だろうとミューズでも、それ以外の人間でも不可能と知らずアヤトがロロベリアを選んだ結果が面白く。

 ならば楽しませてもらったご褒美に神らしく、ちょっとした慈悲を与えてもいいと、まさに気まぐれな行動だった。


「それにわたくしが手を貸したところで運命は変わらないでしょう。あなたはどう思いますか?」


『ルルル……ガァァァ――ッ』


 故に抑制しつつ気まぐれに問いかければノア=スフィネは威嚇するように吠える。


「ああ、勘違いなさらず。あなたのようなトカゲごとき、わたくしが手を掛けるまでもありませんから。面倒ですし」


 もちろんマヤが動じるはずもなく、むしろからかうように言葉を紡ぐ。


「そして()()()()()()()()()()()()()()()、怯えなくても大丈夫ですよ。なんて……兄様には聞こえたかもですね」


 しかしニタリとした不気味な笑みは安心させるよりも、この気まぐれも含めて何かを期待しているようで。


「あくまであなたのお相手はわたくしの契約者と興味深い人間です。なのでもう少しお喋りにお付き合いしてください。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?」



 ◇



「たく……なにが聞こえたかもだ。白々しい」


 などとマヤが楽しんでいる中、ロロベリアをカナリアに預けたアヤトはため息一つ。


「なんの話だい?」

「神さまが少しばかり興味深いお話しをしてくださったんだよ」


 ラタニの問いを適当に流し、変わらず困惑している三人にも適当な忠告を。


「マヤについてはカナリアにでも聞け。でかいトカゲの相手は俺たちらしいからな」

「……マヤさんは排除してくれないんですね」

「してくれるならにらめっこなんざしてないだろ」


 アヤトの返答に僅かばかり期待していたカナリアは落胆するもなにも言わず。


「故にさっさと終わらせるか」

「だねん。あ、言っておくけど四人は後でお説教だよん。助かったけどそれはそれさね」

「隊長にお説教される日が来るとは思いませんでした」


 そのまま背を向けるアヤトとラタニに皮肉を返すのみ。


「……よく分からないが大丈夫なのだ?」

「隊長殿だけでなく坊主も随分消耗しているように見えるが……」

「そもそもどうしてアヤトがここに居るんだろうね。確か公国に居たはずなのにでも心配だね。ぼくと違ってしっかりしてるけど相手が相手だし――」


「……しんぱい、ありません」


 未だ状況を呑み込めなくともたった二人でノア=スフィネを相手取ると理解するが故に三人は別の困惑に陥るも、返答したのはカナリアの両腕で眠っていたロロベリアだった。


「起きていましたか」

「つい今しがた……でも、だいじょうぶです」


 まだ意識が朦朧としているのか声はか細く、身体に力も入っていないが、遠ざかるアヤトとラタニの背中に焦点の定まっていない瞳を向けていて。


「だって……アヤトと、おねえちゃん……だから」


 状況を把握していなくとも、二人を信頼するからこそ浮かぶ微笑みにカナリアも同じ気持ちだ。



 ・

 ・

 ・



「やはり白いのはよく分からんな」

「あの子がおねむしてどれくらいだい?」

「三〇分も経ってねぇよ」

「……ほんによく分からん子だわ」


 そんな期待を他所に並んで歩く二人の興味はロロベリアに向けられていた。

 アヤトがどんな役割をさせたのかは分からずとも、ラタニが感じ取った限りロロベリアの精霊力は枯渇寸前だった。にも関わらず三〇分程度で意識を取り戻したのだ。

 教国の一件といい、下克上戦でミューズが感じ取った違和感といい、異常なまでの回復力といい、ロロベリアは他の精霊力持ちに比べて異質すぎる。

 この疑問も彼女を探す謎の少女を捕らえていれば解消したかもしれないが今さらで。


「なんにせよ話は後にするか」

「それ賛成。ただアヤト、精霊種さまにでかいトカゲ呼びはどうかだよん。せめてノア=スフィネって呼びんさい」

「まんまじゃねぇか」

「でも簡単に駆除できるかねぇ。なんせあいつ精霊の咆哮に耐えた怪物だよん。しかもこっちが出向けば容赦なく精霊力の攻撃しまくりんこ。あんたを運びながら近づくのはちょい厳しいかもだ」

「その程度なら問題ねぇだろ」


 変わりにノア=スフィネについて軽く情報交換をするもアヤトは余裕の表情。

 ただその表情とは裏腹にかなり疲労しているのはラタニも察している。

 どのような方法だろうとロロベリアを抱えて馬車で四日の距離を短時間で走りきればむしろ当然の疲労。現に汗が出ないほど肌は乾ききり、足どりもどこか重く感じる。

 加えてマヤの介入を機に擬神化を解いたこと。擬神化についてはラタニもさほど詳しくないが、精霊力の解放と同じ原理ならそれなりに意識を集中する必要がある。

 つまりそれなりの集中力すら休息に当てたのだろう。まあ同じ理由で精霊力を解除したようにラタニも時間稼ぎの無理も祟りかなり限界が近い。


「またまた強がっちゃってー。そんなにロロちゃんの前で格好つけたいのかい」

「悪いか」

「…………おおう。素直に返されるとはラタニさんもびっくりだ」


 それでも普段のノリでからかえば即答、さすがのラタニも驚きを隠せない。

 

「ひよっこが限界まで意地見せたんだ。なら強がりだろうと俺たちも格好つけなけりゃ示しがつかねぇよ。違うか?」

「……違わないねぇ」


 しかし挑発的な笑みと共に告げられた理由に、まさにその通りとラタニも笑う。


「あたしは部下の前でもあるからねー。より強がらないとだ」

「納得したなら結構」


 そして高低差はあるもノア=スフィネと二〇メルの距離で足を止めた二人は空を見上げた。


「マヤ、もう良いぞ」

「こっちは準備オッケーさね」


「ではご武運を――」


『…………ッ。ヴゥ……ヴアァァァァ――――――!』


 労いの言葉を残してマヤは姿を消し、拘束から解除されたように両翼をバサリと広げつつノア=スフィネが憤怒の咆哮を上げる。

 常人なら意識を失うほどの明確な殺意を向けられても尚、アヤトとラタニは臆することなく――


「「そんなに遊びたいなら遊んでやるよ――クソトカゲ」」


 むしろ不敵な笑みで神力と精霊力を解放した。




次回からラタニ&アヤトVSノア=スフィネ戦……と言いながら本格的なバトルは次回になりましたね。

変わりにマヤさんがまさに神の気まぐれのように意味深な情報を口にしたのでお許しを(汗)。まあロロや謎の少女も含めて詳しい事情はまだ控えますが。

とにかくこれまで個々の能力が高すぎて共闘の必要の無かったアヤトとラタニがノア=スフィネという怪物を前に初の共闘。

何気に息ぴったりな今作二強がどんな戦いぶりを見せるのか、そして次回は今までちょいちょい話題に出しては放置していたラタニさんのアレが明かされます。

アレとは何かも含めてお楽しみに!


ちなみにアヤト&ラタニのやり取りが久しぶりに書けて作者満足(笑)。



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みなさまの応援が作者の燃料です!


読んでいただき、ありがとうございました!



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 いつか来るだろうと思ってだけどついに来たか、共闘……ワクワクする!
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