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白き大英雄と白銀の守護者  作者: 澤中雅
第十四章 絶望を照らす輝き編
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幕間 いつもの風景

アクセスありがとうございます!



 ダラードから西へ少し向かった場所にある監視塔は、そのまま霊獣地帯を監視する目的で戦後に建設された。

 その監視塔には交代制で人員を配置し、昼夜問わず霊獣地帯を監視している。もちろんダラード以外の、霊獣地帯に最も近い街の近くには同じような監視塔があるのだが霊獣地帯は広大。特にダラードが管轄しているのは国内で最も広大な霊獣地帯、故に出来る限りの範囲にはなるが、なにか異変が起こればすぐさまダラードに報告が行く手筈となっていた。


 そして予定通り大規模調査を行う為の調査隊がダラードを発って間もなく、監視塔から使者がダラードに訪れた。


 目視でも二〇〇〇を越える霊獣が突如霊獣地帯から溢れ、更にはダラードに向かっていると。


 異変を確認してすぐさま監視塔を発ったが故に、もしかすると数はまだ増えている可能性もある。また馬車で一時間ほどの距離でも霊獣の速度ならそれよりも早く到達する。

 この報告を受けたナーダはすぐさま使者を派遣。霊獣のルートから影響を受ける近辺の町や村に異変を伝えて警戒するよう指示。また全ての霊獣がダラードに向かっていないと見越してルート外の確認に数名の術士団を派遣した。

 なにより既に霊獣地帯に向かっている調査隊にだ。調査隊がこの異変を知らないまま霊獣と鉢合わせすれば全滅は免れない。故に応援が向かうまで陣を取り待機、ダラードには最低限の戦力を残し、調査隊も加えた術士団と精霊騎士団総勢五〇〇名で霊獣を迎え撃つ命令を下した。


 数的戦力では圧倒的不利、しかしダラード支部は王都に並ぶ精鋭の猛者が揃っている。更に王都から派遣されたメンバーには王国最強の精霊術士がいる。

 最悪な事態でも最善の状況。故にこの難局も必ず乗り切れるとナーダの激励を受けた討伐部隊、先行して出発したミルバ大隊に合流するべく準備が出来た者から次々とダラードを発った。


「こんな時にまで隊長は……」

「だから、ごみんって謝ったじゃまいか」


 そんな中、合流ポイントに向かいながらジト目を向けるカナリアに悪気もなくラタニは手を振るのみ。

 ちなみに移動手段は馬車ではなく各々走ってだったりする。調査隊が馬車で向かっているなら精霊力を解放して走ればすぐに追いつける。

 精霊力や体力の温存は必要、しかし解放する程度なら消費は微々たるもの。普段から鍛えているだけあって多少の距離なら体力も充分。それよりも早く合流して態勢を整えるのが最優先だからで。

 にも関わらず解散後、初日と同じく気づけばラタニがどこかに行ってしまい、結果ラタニ小隊は最後尾を疾走することになった。


「まあこの程度のロスなら問題ないだろう」


 それはさておき、モーエンが宥めるように遅れたといっても二分ほど。ラタニは当然、普段から様々な面で鍛えられている隊員にとってはむしろ追い抜ける自信があった。

 

「それに隊長殿もなにか理由があってのことでしょう?」

「まあにゃー。ちょいと保険を用意しておこうとねん」


 なによりこんな事態だからこそと確認すれば予想通りの返答が。

 普段はマイペースで周囲を振り回すラタニも職務は真面目、つまりこの事態に備えて必要な別行動だったと予想するに容易いわけで。

 もちろんカナリアも信頼しているが、他の三人も知らない秘密を知るが故にその保険とやらに心当たりがあった。


「……もしかしてアヤトさんに連絡を?」

「したよん」


 なので三人に聞かれないよう確認すればあっさり肯定、だからこそカナリアは怪訝な表情に。

 確かにこの状況下でアヤトという戦力は最大の保険になるだろう。ただダラードや王都から派遣された部隊の前で本来の実力、特に擬神化はあまりにも目立ちすぎる。

 いまは心配する事態ではないとカナリアも理解している。しかしダラードと王都の先鋭にラタニがいる以上、十分対処は可能なはず。ナーダも無謀な判断では無く、冷静に戦力を分析したからこそ自信を持って送り出したのだ。

 なのにアヤトの秘密を露見する可能性もある保険をラタニが用意したのが違和感で、そもそもこの保険には無理があった。


「ですがアヤトさんでも間に合わないのでは?」


 カナリアが疑問視するのはアヤトの居場所だ。昨夜ラタニから聞いた限りではもう公国は抜けている頃、それでも位置的にダラードまでは最低でも馬車で四日の距離。

 いくら街道を利用せず最短ルートを走っても半日は掛かる……まあ充分デタラメな速度だが間に合わない。


「あたしなら二時間あれば充分だけどにゃー」

「……それは同じバケモノでも隊長だからでしょう」


 この疑問に対しラタニはケラケラと笑うが、同じバケモノ以前に二人の選ぶ最短ルートが大きい。

 と言うのもラタニの最短は飛翔術で今まさに異変が起きている霊獣地帯の上空を突っ切るルート。しかし持たぬ者のアヤトは飛翔術が使えず迂回する必要がある。

 それとも擬神化の能力向上を視野に入れての計算か。カナリアも擬神化については知れど、それによりアヤトの速度がどれほど向上するかまでは未知なので計算できない。


 またカナリアはマヤの正体、擬神化の知識はあれど時間を操る能力を知らない。

 時間を操るにはアヤトの運命(寿命)を消費する諸刃の剣、さすがにこの情報ばかりは伝えられないとラタニが伏せている。


「あたしも分からん。なんせあの子は秘密主義だ……まあ、あたしの見立てでもさすがに二時間は無理か」

「……なら必要ないのでは?」

「だから念のための保険さね。とにかく今は保険のことは忘れて頑張るんよ」

「そう……ですね」


 故になぜ伝える必要があるのか理解に苦しむがラタニの言う通り。

 今の戦力でも対処は可能。しかし犠牲を最小限に抑えるには適度な緊張感を持ち――


「てなわけでドベの子は今晩の酒代持ちってことで」

「なにがてなわけですか!」


 ……目の前の脅威に集中するはずが、適度な緊張感どころか皆無の発言にカナリアは即座に突っこんだ。


「心配せんでもハンデはあげるさね」

「そんな心配は――」


「なら隊長殿は三〇秒遅れのスタートでどうですかい? ありすぎても白けますからね」

「それならあたしたちでも勝てるかもなのだ!」

「三人なら勝てそうだよね凄いねさすがだね。ぼくなんて三〇秒どころか三〇分もらっても負ける負け犬だから羨ましい――」

「んじゃ、よーいどんであたしは良い子に待てしようかねぇ」


「…………」


 しかしラタニだけでなくモーエンやジュシカはノリノリ、スレイは卑屈発言はあれど受け入れてしまうのでカナリアは悲しくなった。


「そいじゃよーい――どんさね!」


「ああもうこの小隊は本当に――!」


 だからと言うわけではないが、悲しみをぶつけるように合図と共にカナリアは全力疾走。

 結果として一位はラタニに奪われたが堂々二位で合流ポイントへ。

 続いてジュシカ、スレイの順で合流。つまり最下位はモーエンで。


「……散財すると嫁に叱られるんで、手加減してくださいよ」


 約束通り全員の酒代を持つはめになりうな垂れていた。



 

どんな時でも楽しくがラタニ小隊のモットーです(笑)。

ただラタニはともかくこんな状況下でもカナリア、スレイ、ジュシカ、モーエンが普段通りでいられるのはやはりラタニに対する信頼あってこそ、なんですよね。

なので保険についても詳しく聞きませんし、こんな状況下でも夜にお酒が飲める結末になると疑いません。また別の脅威を抱くラタニさんも理由があって隊員には伏せています。

とにかく次回からついに霊獣の大群と接触します。さすがにシリアス展開になる……はず(汗)。


ちなみにマヤの正体や擬神化について知るメンバーは増えましたが、時間を操る能力を知るのはニコレスカ姉弟のみ。エニシ、ツクヨ、カナリアは知りません。

更に対価として運命を消費すると知るのは現在ラタニとロロだけです。



少しでも面白そう、続きが気になると思われたらブックマークに登録、評価の☆をお気持ちのまま★にして頂ければ嬉しいです!

みなさまの応援が作者の燃料です!


読んでいただき、ありがとうございました!



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