エレノアの助言
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ユースの情報通りエレノアは自身の専用訓練場で自主訓練をしていた。
ちなみに序列専用の訓練場は申請すれば毎朝学院側の役員が清掃や点検をしてくれるが貴族などは自身の従者に任せている。貴族家の養子といえどロロベリアには従者がいないのでもちろん申請しているも、エレノアは王族故に後者。
なので訓練場に訪ねれば従者が取り次いでくれて二人はその場に待機。
少ししてからリビングルームに通されると一度シャワーを浴びたのか制服姿のエレノアがソファに座っていた。
「それで、私に話とはなんだ?」
紅茶の用意をさせるなり従者を下がらせたエレノアは神妙な面持ちで問いかける。
これまで一度も訪問のないロロベリアとユースが訪ねてきたと聞き、用件はアヤト絡みと考慮したのだろう。内容によっては王族の従者にも秘匿にするべきと配慮してくれたらしい。
ただ個人的な質問をしに来ただけにロロベリアはこの配慮に申し訳なかった。
「その……言霊について教えて頂けないかと」
「……カルヴァシアのことではないのか?」
理由を聞くなりキョトンとした表情になるエレノアに頷く。
そう、ロロベリアが導き出した勝利の一手に必要なのが詩を紡がず精霊術を発動させる言霊の習得。
これまでアヤトとの訓練は接近戦がメイン。なんせ彼の動きが速すぎて詩を紡ぐ余裕がなかった。もちろんその訓練が実りロロベリアの接近戦は向上して、目の前にいるエレノアのみならずリースにも押し勝てるほどになった。
しかし本来ロロベリアの戦闘スタイルは精霊術を駆使したもの。更に言えば精霊術は制御力も含めて得意分野でもある。事実エレノアとの模擬戦も言霊という大きなアドバンテージで苦戦を強いられた。
とにかく精霊術なくしてアヤトに対抗する手段がない。
その為には何よりも言霊は必要な武器になる。
もちろん言霊を習得して、精霊術を駆使すれば勝てるとの自惚れはない。しかし戦術の幅が一気に増えるのも確か。
問題はロロベリアも言霊についての知識はあるも習得をしていないこと。故に習得しているエレノアに助言をもらおうと訪れたわけで。
「なるほど。リーズベルトらしい向上心だが……そこまでなのか」
理由を聞いて納得するもエレノアは困惑の表情。
霊獣地帯に単独で赴ける事実、ロロベリアを遊び感覚で手玉に取れる実力については受け入れているが、その全てはあくまで人伝。やはり実際に見ないと実感がわかないのだ。
故に選抜戦は良い機会で、実のところ同じブロックに入り直接手合わせしてみたい気持ちがエレノアにはあった。
「とにかく私も協力するのはやぶさかではない……が、リーズベルトの知る知識しか持ち合わせていない。そもそも私の感覚でリーズベルトが習得できるかも疑問だ。下手に助言を与えると暴走の可能性がある」
「そう……ですよね」
それはさておきエレノアの返答は予想通りでロロベリアも頷くのみ。
精霊術は基礎部分こそ全ての精霊術士に通じるが言霊や変換術といった高等技術はそれぞれにより異なる部分が多い。現に熟練の精霊術士ですらどちらも扱えない者も存在している。
そして高等技術を習得するには何より基礎が大事と言われているので、ロロベリアもこれまで以上に精霊術を重きに置いた訓練をしているが未だその兆しすらない。
ただエレノアからすれば疑問はある。
ロロベリアの制御力は序列保持者の中でもずば抜けて高い。
事実精霊術士に開花してわずか一年で、しかも独学で変換術を習得した。
だからこそ将来有望な一学生として期待されているし、同じ高等技術なら既に習得していてもおかしくない。
つまりなにか切っ掛けさえあれば可能なはずで、ただそれには精霊術に造詣の深い知識を持つ者に教わるべき。制御一つで大惨事になるのも精霊術なのだ。
ならば学院の講師……既に相談しているだろう。でなければ同じ学院生に相談しないはずで――
「……先生には相談したのか?」
思考を巡らせていたエレノアが思いつくまま問いかける。
先生と聞きロロベリアはそれがラタニだと理解するも首を振った。
「いえ……お忙しそうですし、ですが……それが?」
もちろんラタニにも相談するつもりでいたが彼女は特別講師。学院の訓練以外は軍務で忙しく王都にいることが多く個人で会うのは難しい。現にここ数日は王都に入り浸りだ。
「なら今から会いに行こう」
にも関わらずエレノアは立ち上がり準備を始めるのでキョトン。
「会いにとは……まさか王都にですか?」
「私の屋敷だ。お兄さまとカイルさまがお会いしているが、終わった後なら問題ないだろう」
ユースから聞いたレイドの用事とはラタニに会うことと理解したが、ならばこそ良いのだろうかと気が引けるもロロベリアは僅かな躊躇は見せるも決断する。
「では……お願いします」
今はなりふり構っている場合ではないと、エレノアの提案を受け入れた。
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