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白き大英雄と白銀の守護者  作者: 澤中雅
第十四章 絶望を照らす輝き編
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序章 楽しい遠征訓練?

新章開始です!

アクセスありがとうございます!



 マイレーヌ学院三学生の遠征訓練は最初の五日間は王都で、それぞれのクラスによって必要な施設を見学。


 以降は各クラスは地方に移動する。

 軍施設、研究所、政事関連を学ぶならやはり王都が最適。しかし王都以外でしか学べないこともある。

 故にクラス内でも更に三組に別れて地方へ。特に仕官クラスは地方の様子も知るべきと、残りの日数は出来る限りの村や町を回り、再び王都に戻った際持ち帰った情報を確認し合うことでより見解を広める実習となっている。

 ただ精霊術クラスと精霊騎士クラスに他クラス所属の序列保持者は組み分けもせず、毎年同じ場所に滞在する。なんせ両クラスのメイン実習は霊獣地帯に赴いて霊獣との実戦。霊獣討伐は精霊術士のみ、精霊騎士のみ、だけでなく協力して討伐も行う。

 また万全な体勢で挑もうと霊獣地帯では何が起こるか分からず、初の実戦が故に心身共に消耗する危険な訓練。なので同行する講師や軍関係者も分散させず両クラスでグループを作り、一日置きで交代しながら霊獣地帯に赴くことになっていた。


 とにかく精霊術クラスや精霊騎士クラスは最初の五日間で正規の術士団や騎士団の訓練に参加しながら、霊獣地帯に赴く心構えなども学べる貴重な時間。

 初日の施設見学では暴走しかけたラタニをカナリアが何とか押さえ込み、多少の遅れ程度で無事終了した。


「……カナリアさん、放置していいんっすか?」

「…………」


 しかし二日目の午後訓練が始まるなりユースはどん引き、カナリアは無言でうな垂れていた。

 と言うのも午前は主に体力作りや精霊術の基礎訓練、午後は実戦形式の模擬戦を予定していた。基礎と言えど第一線で活躍する術士団と共に熟せば学院生は様々な刺激を受け、合間に受けるアドバイスは多くを学べるもの。

 また今回は特別講師として引率しているラタニも本来は術士団のエース、故に術士団側として参加していた。まあ術士団でも敬遠されているだけに余り良い顔はされなかったが、珍しく真面目に取り組んでいることもあって大きな衝突もなく、敬遠しているからこそ普段関わらないだけに、改めてラタニの知識に感心するほどで。

 特別講師の任についたことで少しは模範的な振る舞いが出来るようになったのかと見直していたのだが、カナリアからすれば実に甘い考え。

 むしろ真面目な振る舞いが嫌な予感を募らせて迎えた午後、ラタニと下位、中位の精霊術士で構成された五人チームでの模擬戦で見事に的中した。

 人数的に不利でも相手はラタニ、五人どころか上位精霊術士が十人掛かりでも相手にならない。


「この……『燃え射貫け!』」


『行く手を阻め!』


『水刃よ!』


 なので背後で詩を紡ぐ仲間の時間を稼ぐために、言霊を扱える者は精霊術を放ちラタニを狙っている。

 その鬼気迫る雰囲気はまさに実戦さながら……なのだが。


()()()


 迫り来る精霊術を前にラタニは気の抜けた雄叫びを上げながら悠々回避。

 雄叫びはまだいい。問題はどこから持ち出したのか()()()()()()()()()()()()()()()で、獅子の真似事をしているのか四つん這いで動き回っている。

 余りにふざけた恰好に相手はムキになり、意地でも一泡吹かせると躍起になるのも当然。しかもラタニは精霊力の部分集約は使えど精霊術を一切使っていない。

 模擬戦でどう戦うかはそれぞれの自由。なのでラタニが精霊術を使わないのは自由で、ふざけた恰好も彼女なりに意味があると察しているだけにカナリアは様子見しか出来ず。


「あれ……霊獣のつもりっすかね」

「動きからしてそうだとは思いますが……」

「……無駄に完璧なのが凄いわ」

「先生だからな……」


 二人のやり取りにディーンやエレノアも参加しつつ肩を落とすように、ラタニの動きは獅子型の霊獣そのもの。速度からして恐らく中位種を想定しているのだろう。

 本来なら中位種相手でも後れを取らない構成、しかしラタニの恰好で冷静さを失っているために狙いも散漫。

 対するラタニは獅子型の霊獣についての講釈、更に動きながらどう対処すれば良いか、各精霊術で有効な対策などを述べる余裕すらあり。


()()()


 ……最後は間の抜けた雄叫びを上げるラタニに五人とも簡単に接近を許し、アッサリ敗北。


「たくよー。ガキ共の前で情けないったらありゃしない」


 からの獅子のかぶり物をしたままラタニはため息一つ。


「とにかくだ、実戦では何が起こるか分かんない。相手が下位種だろうと中位種だろうとビビって焦ったり冷静さを欠いたら先輩方みたいに呆気なく敗北するよん」


 更に霊獣地帯の心構えを学院生に伝えつつ五人の問題点まで告げていく。

 その助言や獅子型の動きをトレースしながら特徴の説明、更に対策法も実に的確で、敗北側も表情を歪ませながらも素直に聞いていた。


 上位種だろうと観察する余裕があり、精霊術の属性問わず深い知識を持ち、霊獣の動きや速度をもトレースできる無尽蔵な体力と能力を持つラタニだからこそ可能な対霊獣戦を想定した訓練。


「さてほて、今度はガキ共にも体験してもらうかね。もち下位種の真根っこだから心配するなし。精霊術が当たってもあたしは怪我せんから遠慮なく来いやー」


 これから初の霊獣討伐に挑む学院生にとっても有益な時間が故に、カナリアも止めるのに躊躇ってしまうわけで。


「どの霊獣にしようかにゃー。くまさんやおさるさん、おおかみさんからきつねさんと色々用意してるからリクエストあるなら受け付けるよん」

「それどこで手に入れたんっすか……?」

「クーちゃんに用意してもらったよん」

「お袋殿が協力したのかよ……」


 ただ大量に用意されたかぶり物は明らかな悪ふざけ。


「隊長……後で話があります」

「だいじょぶじょぶ。支払いは小隊の経費じゃなくてあたしのポケットマネーだから」

「それを聞いて安心しましたが……そうではありません」


 訓練終了後やりたい放題なラタニにそれはそれとカナリアがお説教したのは言うまでもない。




時系列的には公国でロロVSガイラルド戦が行われている辺り、王国では相変わらずラタニさんが楽しそうにしていました。

また公国ではフロッツがアヤトくんに振り回されているように、王国ではカナリアがラタニさんに振り回されていました。この師弟はほんと変なところで似ていますはさておいて。

カナリアのストレス以外は平和な王国でなにが起きたのか。

それは次回更新から少しずつ明かされていくのでお楽しみに!



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読んでいただき、ありがとうございました!



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