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白き大英雄と白銀の守護者  作者: 澤中雅
第十三章 叶わぬ夢を花束に編
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三者三刃 交流戦

アクセスありがとうございます!



 ミューズの屋敷でダリヤと夕食を共にするならマヤが一人で留守番になる、となればマヤも招待するのは自然な流れ。

 当初はミューズが馬車で迎えに行くと提案したが所詮は体なお迎え。時間を無駄に消費するのを(団体行動も含めて)好まないアヤトが自ら迎えに行くと引かず別行動になった。


 ただそれとは別にツクヨを迎えに行く為でもあったりする。

 ツクヨとの面会を希望するダリヤには休養日に王都の自宅に案内する、という約束はしたもののマヤ伝手ならばツクヨをラナクスに呼び出すのは容易。加えて実のところ昨夜の内にツクヨから遊びに行くとマヤ伝手に報告があったのだ。

 故にこれ幸いとアヤトも学院終了に合わせてくるように指示。帰宅すれば偶然ツクヨが来ていたので連れてきた、という体でいたが学院終了間近――


『ツクヨさまがラナクスに入られたようなので、わたくしは自宅で待機します』


『待機するのは好きにすれば良いが、ツキにはそんな体は必要ねぇだろ』


 実技訓練中にマヤから妙な報告にアヤトが訝しむ。ツクヨはマヤの正体を知っているので人間の真似事をする必要もない。


『ツクヨさまには必要ありませんが他の人間には必要でしょう』


『あん?』


『どうやらツクヨさまは兄様を驚かせようとしていたのでしょう。なので誰かはわたくしを迎えに来てからのお楽しみと言うことで』


 しかし正体を知らない者には必要とツクヨに配慮したのかマヤは同伴者を明かさないまま報告を終えて。


「……帰ってみたらお義父さまだったのね」

「そういうことだ」


 ツクヨやサーヴェルがラナクスに居る経緯をアヤトから聞いてロロベリアも納得。要はツクヨが訪れるのは予定通りでもサーヴェルはアヤトにとっても予定外だったらしい。

 ちなみにそのサーヴェルと言えば家主のミューズ、エレノア、サクラに挨拶を済ませた後、ツクヨの訪問に用意していた体をみんなに説明中。

 そしてみんなの意識がサーヴェルに注目しているので、少し離れた場所なら問題ないと(いつものようにアヤトが我関せずと壁面であやとりに興じていたのをいいことに)マヤの連絡手段を踏まえた真相を聞いていたりする。

 またサーヴェルはともかくツクヨが訪問するなら事前に教えてくれてもいいとの訴えたには『事前に知った上で自然に振る舞えてから言え』と一蹴。悲しいかな自分でも不自然になる自信があるだけにロロベリアは反論できなかった。


 それはさておき、ツクヨの訪問理由は入れ替え戦の前に瑠璃姫を始めとした自身の打った武器の整備半分、クローネの依頼も一段落したので純粋に遊びに来たのが半分とこれまた現在みんなに説明中。

 対するサーヴェルの訪問理由は前回の長期休暇で帰省しなかったリースの様子見と――


「我もツクヨ殿に武器を打ってもらった故、アヤト殿に手合わせをお願いしようと考えていたところちょうどツクヨ殿もラナクスに行くというので便乗した」


 ――らしく、サーヴェルの休暇と上手くタイミングが合った結果と、本当に偶然の訪問で。


「知ってます! あたしもサーヴェルさまの子に凄く興味ありました! どんな子な――むぐぅ!?」

「……うん、お前は少し黙ってような」


 途端に目を輝かせるランの口を塞ぐディーンもさておいて。


「しかしイタズラ好きの聖霊が導いてくれたのか……エニシ殿はともかく、教国の剣聖まで居るとは我も運が良い」


 一通りの説明を終えるなりエニシとダリヤを見据えながらサーヴェルはニヤリと口角をつり上げる。


「おやおや、サーヴェルさまのような精霊騎士にまで存じて頂けるとは……なんとも恐れ多い誉れでございますなぁ」

「私もかの有名な精霊騎士団長殿とお会いできて光栄です」


 サーヴェルの視線にエニシは変わらず謙虚に、ダリヤも騎士として礼節を弁えた対応をしているが交える視線はピリピリとした緊張感が帯びていた。

 エニシとダリヤが顔を合わせた際にお互いを意識し合っていたように、サーヴェルにも感じるものがあるのだろう。

 なんせサーヴェルはラタニと共に王国の双璧と謳われる最強の精霊騎士。知名度で言えば二人以上で、言うなれば近接戦において王国最強の実力者だ。同じ距離を主戦とする二人が意識して当然と言えるだろう。


「サーヴェル殿、厚かましいと承知の上でご提案いたしますが、ちょうどお嬢さまにご許可を頂き、ダリヤさまと手合わせをするところでした。もし宜しければサーヴェルさまもご参加してはどうでしょう?」

「アヤト殿を想定していた貴殿には物足りぬかもしれないが、私からもお願いする」


 故にこの機会を逃すはずもなく二人は手合わせを提案。


「物足りぬも何も、我はアヤト殿に何度も敗北している身。まだまだ未熟な騎士が故に、お二人が満足する時間を提供する自信はないが……ここで背を向ける姿など我が子らに見せられぬ」


 そして首を振りつつも闘志を燃やすサーヴェルが拒むはずもなく。


「その提案、喜んでお受けする」

「こちらこそ学ばせて頂きます」

「ありがとうございます」


 エニシとダリヤにサーヴェルが加わる期待以上の好カードが実現。

 まさに夢のような対戦に固唾を呑んで見守っていた面々も否が応でも盛り上がってしまう。なんせ三大大国の近接戦最強が相まみえる。

 しかもツクヨの武器を所持している者同士となればより興味深いと胸を熱くさせていた。


「……アヤトくん、サーヴェルさまにも勝利してたんだね」

「カルヴァシアのデタラメぶりに驚くのはもう飽きた」


 ……まだアヤトとの交流が浅いルイとジュードは新たな情報に若干引いていたが。



 ◇



 改めて室内訓練場に移動する間、ツクヨやサーヴェルと初対面の者はそれぞれ自己紹介や挨拶を。ロロベリアやニコレスカ姉弟は父親と近況報告をしたりと和やかな時間を過ごしていた。

 また三人の交流戦を前に対戦方法や審判について話し合いも行っていたが――


「私が審判だと!?」


 話し合うよりも先にアヤトから指名されたエレノアは目を見開いてしまう。

 これから戦うのは三大大国を代表する三人の猛者。公平な判定以前に動きを追えるかすら怪しいと及び腰になるのは無理もない。

 故にアヤトかツクヨが受け持つとエレノアは思っていた。


「なぜ驚く。各国を代表する強者の立ち合いなら、相応の者が裁くべきだろう」

「でも皇女さまにはちーと荷が重い。だよな?」

「そもそも妾は武芸に疎いからのう」


 しかしそのアヤトだけでなくツクヨやサクラも同意。


「それにエレノア殿であれば自国の騎士を贔屓することもあるまいて。信頼しておるよ」

「そー言うこった。まあ万が一何かあればアヤトが出しゃばるから、ドンと構えてりゃいいって」

「出しゃばりたけりゃテメェがやれ。だがま、王女さまがこの程度の大役を投げ出す腑抜けでもない」

「だよなー。てなわけで頼んだぜ、王女さま」


「…………いいだろう」


 だがニヤニヤと楽しんでいる節のサクラはともかく、アヤトやツクヨの挑発的な態度に引き下がるエレノアではなく審判役に決定。

 続いて対戦方法だが意識はすれど三人とも初の顔合わせ、互いの手の内を知らないのなら出来るだけ初戦は避けたいだろう。

 故に運任せのクジをサクラが提案。まずクジで初戦の二名を決め、敗者が次戦でもう一人と対戦。次戦の者は連戦になるが対戦相手の実力を事前に知ることが出来る。初戦に決まった者は少しでも万全な状態で望みたければ初戦で勝利すればいいだけ。

 この対戦方法に三人から異存もなく決定、レムアにお願いしてクジ棒を用意。

 そして筒に入れたクジ棒を三人が引いた結果――


「剣聖と呼ばれる剣技、どれほどのものか楽しみだ」

「王国最強の精霊騎士殿のおめがねにかなうといいが」


「ではお嬢さま。しばしお暇を頂きます」

「期待しておるぞ」


 初戦はサーヴェルとダリヤに決まり、次戦のエニシはサクラに一礼、再び距離を取り一人で観戦。

 同時に三人の雰囲気が一変。それぞれ距離を空けて集中を高める様子は声をかけられないほどで、審判を務めるエレノアも緊張してしまう。


「で、なぜお前らは群がってくるんだ」


 ……なのだが室内の緊張感など知ったことかとアヤトはため息一つ。

 まあアヤトとしても楽しめる時間なだけに一人で観戦したいと隅に移動するも、他の面々が許してくれず。


「だってあの三人の手合わせよ? なら相応の解説者が必要でしょ」


 代表してランが先ほどの言い分を持ち出してしれっと反論。みなも同意するよう頷くように、次元が違いすぎて理解できない可能性がある。

 故にバケモノ……もといアヤトに解説してもらい色々と学ぼうとしているわけで。


「ダチが人気者でアタシも鼻が高いぜ」

「誰が人気者だ。つーかお前がやれ」

「そう言わずによ。普段から先生してんだから、生徒に色々教授してやれよ」

「先生でもないんだがな……たく」


 それでもツクヨに肩を抱かれて鬱陶しげにしつつ、面倒になったのか最後は押し切られる形に。なので審判のエレノアが加わりたそうにしているも、やると決めたなら後には引けず。


「そちらがツクヨ殿の一振りか」

「命は煌刃。サーヴェル殿は二振り打ってもらったのですね」

「ありがたいことに我の特性を活かすには二振り必要ともらい受けた。命を『烈火(れっか)』『雲水(うんすい)』という」


 中央で向き合う二人はまず互いの武器をお披露目。

 大剣ほどではないが長剣の煌刃よりも僅かに長く剣幅がある、紅暁を彷彿とさせる紅色が映える両刃の烈火。そして長さや剣幅は煌刃よりも僅かに無い、しかし片刃の雲水は覚めるような青空に一滴の白を加えたような鮮やかさ。

 色合いはリースとロロベリアを、二振りなのは双剣使いのユースを意識したのか。

 もちろん命や振るう者の特性に拘るツクヨが打った武器、ただサーヴェルの子を意識しているはずもなく。


「良き試合を」

「心ゆくまで楽しもう」


 それは実際に知ればいいと互いに鞘に納め握手を交わし距離を取る。


 二〇メルまで開けて再び向き合いダリヤは煌刃を、サーヴェルは烈火を抜いて共に青眼の構えを取り――


「それでは交流戦第一試合――始め!」


「行かせてもらう!」

「受けて立つ!」


 エレノアの宣言に合わせて精霊力を解放、同時にサーヴェル目がけてダリヤは地を蹴った。



  

オマケその二の第二話、ギリギリですがまずはダリヤVSサーヴェルとなりました。

同時にツクヨがサーヴェルに打った専用武器『烈火』と『雲水』のお披露目も出来たところで、二人のバトルや結果も含めて次回をお楽しみに!


……今さらですがサーヴェルが本作で同格相手と戦うのって何気に初ですね。



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読んでいただき、ありがとうございました!



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