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白き大英雄と白銀の守護者  作者: 澤中雅
第十三章 叶わぬ夢を花束に編
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慌ただしい中で

アクセスありがとうございます!



 ヒフィラナ家滞在五日目。


 昨夜はフロッツの提案に従い自主学習や制御の基礎訓練と大人しく過ごしていたロロベリアは、翌朝準備を整えるなり即座にアヤトの客室へ。

 滞在中の朝食はアヤトの客室で一緒に食べる、というのもあるがいつ不祥事に対する処分の結論が出ても良いように一カ所に固まって待機するべき。


「…………あれ?」


 しかし客室にアヤトの姿はなく、時間差で訪れたミューズやレムアもキョトン。

 まあ自由奔放なアヤトのこと、書庫に居ると気にせず待つことに。


「…………なにしてるのよ」


 ……したのだが、自分たちの起床に合わせてお茶を用意してくれたミナモから行き先を聞いたロロベリアは呆れてしまう。

 なんせアヤトの行き先は書庫ではなかった。一時間ほど前に外出すると告げに来たらしいが、もちろん行き先は告げていない。

 ミナモは止めるもダイチから自由にさせるよう言われているだけに最後は見送ったが、昨日の今日で外出という想像以上の自由奔放ぶりにロロベリアが嘆くのも無理はなかった。

 ちなみにロロベリアも一応ブローチを通じてマヤから居場所を聞き出すも――


『ロロベリアさまから連絡があれば、大人しく先に朝食を食べていろ構ってちゃん、と伝えるよう言われております』


 対応はしてくれたが行き先は謎のまま。仕方なく三人で朝食を摂りつつ帰りを待つことになったが、ミナモから気になる情報が。

 なんでも昨夜、スフィアを拠点にしていた犯罪集団が一斉検挙されたらしい。今まで中々尻尾を掴めず前元首のダイチや元首のシゼルも苦労していたので喜ばしい話、ただ二点ほど妙な出来事があった。

 一つは犯罪集団が根城としている場所を綴った手紙が詰め所に置かれていたこと。いつ、誰が置いた物か分からない上に、念のため確認に向かえば三〇人近い無法者がボロボロの状態で見つかったらしい。

 そしてもう一つ、取り調べを受けた者が怯えながら口々に『仮面をした銀髪の悪魔にやられた』と供述したことで。


「状況からして手紙を置いた者が犯罪集団を制圧したと思われますが、なぜその者はわざわざ手紙で情報提供をしたのか」

「…………」

「また、三年ほど前にも似たような出来事が公国内で起きています。その時は盗賊のアジトを壊滅させた、という手紙が各地の詰め所に置かれていました。また仮面や銀髪との言葉はなくも、やはり全ての賊が悪魔にやられた、と供述しています」

「…………」

「三年前といえば……教国でも似たような出来事がありましたね」

「ミューズさまの留学前ですね。お陰で盗賊被害が激減し、周辺の町や村からは神の使いが助けてくれたと喜んでいましたが……結局真相は謎のままです」

「…………」

「教国でも同じような出来事があったのですね。とにかく盗賊や犯罪集団の規模から対処したのは複数人でしょうから、同一集団の可能性が高いと思われます。ただ、なぜその集団は手紙で情報提供をされたのかが分からず……」

「教国の一件も同じ集団の可能性はありますが……謎ですね」

「…………」

「ですが人知れず善意を行う方々には尊敬の念を抱かずにはいられません。ロロベリアさんもそう思いませんか?」

「……思います」


 三人のやり取りを静かに聞いていたロロベリアは同意を求めるミューズに何とか頷く。

 というのも三人が疑問視している一連の出来事は王国や帝国でも起きている。もっと言えばロロベリアは集団ではなく、単独で行ったものとも、ぶっちゃけアヤトの仕業だとも知っていた。

 そして昨夜の一件、犯罪集団をぼっこぼこにしたのは供述を踏まえれば白銀に変装したアヤトで間違いない。ただ何を思って犯罪集団をぼこりに行ったのか全く分からないが、今朝の外出はその件が関係しているのか。


 まあ感情を読めるミューズはロロベリアの困惑を誰がやったのか、という困惑として捉えているのでアヤトの仕業とは思わないだろう。また擬神化で白銀に変化するのを目撃しても、悪魔という単語からアヤトと結びつかないはず。


 とにかく後ほどアヤトを問い詰めようと心に誓うロロベリアだが、実際は――


(さすがはアヤトさまです)


 全く顔に出していないだけで、犯罪集団の検挙から三年前の出来事も踏まえてアヤトの行いだとミューズも察していたりする。

 なんせ犯罪集団の一人を昨日、白銀に変装したアヤトにお姫さま抱っこをされながら追走していたのだ。

 ちなみにミューズは顔が割れているため、襲撃犯を問い詰める間は姿を隠していたのでどのような話を聞いたかまでは知らない。ただ問い詰めた襲撃犯を拘束して隠した後、根城を聞き出したアヤトが深夜に潰すついでに転がしておくと口にしていたので実行したのだろう。

 また根城を潰した後、何をしていたのか、今朝外出している理由までは知らない。最後まで協力できなかったのは残念だが、アヤトのお陰でスフィアが少しだけ平和になったのは確か。


 ただロロベリアよりも事情を知るミューズも気になることがあった。


「おはよ~……いつ」


 しばらくしてフロッツが合流するも顔色が悪く足どりも覚束ない状態で。

 聞けば目を覚ました際、寝惚けてベッドから落ちて全身が痛むらしい


「わざわざすまんねぇ……レムアさん」

「お気になさらず」


「……?」


 ならばとレムアが治療術を施したのだが感情から嘘と分かるだけに、なぜそのような嘘を吐いたのか分からなかった。



 ◇



 アヤトの外出やフロッツの負傷と慌ただしいロロベリアたちだが、ヒフィラナ家も慌ただしい時間を過ごしていた。

 スフィアでも問題視されていた犯罪集団の検挙となれば政務に関わるリョクアは日が昇る前に官邸に赴き、前元首のダイチもシゼルに呼ばれて同行。

 クアーラは普通に登校、ホノカは昨日できなかった教育を受けているらしいが、ミリアナは謹慎処分で自室から出られない状況と使用人も慌ただしい状況。

 故に客人であるロロベリアたちもダイチやリョクアが帰宅するまで大人しく過ごしていれば昼前にアヤトが帰宅。

 早速ロロベリアが問い詰めるも、昨夜の出来事はお約束で交わされたが――


「ほらよ」


 行き先については買い物らしく、小さな紙包みをミューズへ。


「……? こちらは?」

「開ければ分かる」


 言われるまま包みを開けたミューズはその中身に目を見開く。

 というのも包みの中には黒革の紐に繋がれた羽根のネックレスが二つ。これは昨日の露店でミューズが惹かれた物で。


「それが欲しかったんだろう」

「はい……ですが……わざわざこちらを買うために?」

「元より記念になる物をプレゼントするようレムアと約束していたからな。半端に終わっても約束を違えるわけにはいかんだろう」


 無粋な発言はあるも、視線からミューズが気にしていたネックレスを特定したり、数が少なかったので朝早くから露店の場所で待機したり、約束したなら必ず守る辺りも律義だ。


「だがそいつはペアでの販売らしくてな。ま、一つはエレノアの土産にでもすればいい」


 そして二つ購入した理由や無粋な勘違いもアヤトらしいとミューズは首を振った。


「いいえ。アヤトさまとお揃いが良いです」

「あん?」

「その……元よりそのつもりでしたから。是非お受け取り下さい」

「むろんアヤトさまも常に身に付けてくれますね? それと半端に終わったのならやり直しデートも考えられているでしょう?」


 更にレムアの圧が強い援護に根負けしたのか、元よりプレゼントしたものをどう扱うかはミューズの自由と考えたのか、差し出されたネックレスを受け取った。


「たく……ならそれで貸し借り無しだ」

「ありがとうございます!」

「良かったですね、ミューズさま」


 面倒げでもネックレスを首にかけるアヤトに続いて、ウキウキと首にかけるミューズを微笑ましく見守るレムア。


「…………」

「ロロちゃん、アヤトくんはこう言う奴だから抑えて抑えて」


 本人は抑えているつもりでも、もやもや全開でやり取りを見守っていたロロベリアをフロッツが宥める結果となった。


 それはさておき、以降はアヤトも書庫に入り浸りで大人しくしてくれて、ロロベリアたちも自主学習に勤しんでいると夕刻前にダイチとリョクアが帰宅。


「だから、なぜ俺の部屋でたむろする」

「ただでさえ非があるのはワシら。時間を空けてしもうたなら誠意として足を運ぶのが筋じゃろうて」


 つまりミリアナの処分について語られるのだが、場所は食堂ではなくアヤトが利用している客室。ダイチの言い分ももっともなだけに不満を漏らしたのはアヤトのみだった。

 とにかくダイチやリョクアの対面にロロベリア、ミューズ、フロッツが。ミューズの背後にレムアが立ち、何故かアヤトは壁にもたれ掛かりあやとりを始めていた。

 まあ今回の処分はどちらかと言えばアヤトよりもミューズに対する配慮なので構わず続けることに。


「最初に妻の非礼の数々を改めて謝罪させて頂きます」


 まずリョクアの謝罪から、昨夜の内にダイチと話し合った処分について語られた。

 まずミリアナは隠居したリョクアの母の元に送られ、反省も兼ねて母により思想の改善に努める。改善が見られれば本人に謝罪の手紙を書かせると、どうやら未だ反省していないらしい。

 変わりにミリアナの実家に今回のあらましを伝えているので、近々当主からミューズ宛に謝罪の手紙が送られて来るとのこと。

 要は首都を離れた無期限の謹慎処分、未遂という部分とアヤトが温情を与えたのを加味しても充分な処分だ。

 だが更にもう一つ。


「妻の罪は私の罪。故に私も責任を取り、ヒフィラナ家()()()()()()()()退()()()()


 むしろこちらの処分にロロベリアは当然、ミューズも驚きを隠せなかった。




今回は事情をロロがほとんど知らず、ミューズの方が把握している状況ですね。

まあ一番把握しているのはフロッツですけど、治療術を受けるための嘘といい彼も抜かり在りません。

ただ一番抜かりないのはアヤトくんですけどね、この子は本当に律義ですはさておいて。

ここからアヤトくんの思惑、これまで陰で動き続けていた結果や動機が明かされていきます。

つまりまずはリョクアさまの結論から。アヤトくんの手厳しい発破からなぜこの処分になったのかは次回で。


少しでも面白そう、続きが気になると思われたらブックマークに登録、評価の☆をお気持ちのまま★にして頂ければ嬉しいです!

みなさまの応援が作者の燃料です!


読んでいただき、ありがとうございました!



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