表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
白き大英雄と白銀の守護者  作者: 澤中雅
第十三章 叶わぬ夢を花束に編
582/781

行動を起こす二人

アクセスありがとうございます!



 ミリアナの身勝手な思想が起こした一連の不祥事、平民と見下した誹謗の数々はアヤトを標的したもの。


「俺にこそ謝罪は必要ねぇよ」


 故に被害者として謝罪をされて当然の立場なのにアヤトは他人事のように一蹴。

 思わぬ返答に謝罪したリョクアは当然、他の面々も呆気に取られてしまうが、フロッツはある閃きから問いかける。


「アヤトくんさあ……まさかとは思うけど、初日でリョクアさまにああ言ったから……じゃないよね」

「それがどうした」

「まさかだったよ……」


 だが肯定されて緊張が解けたように項垂れてしまう。

 またフロッツに続いてロロベリア、レムア、リョクアも察するなり別の意味で唖然。

 対するダイチやクアーラ、ホノカは初日の一件は知れど詳しいやり取りまで知らないので不思議そうに首を傾げるのみで。

 ちなみに察したミューズは先ほどの怒りが嘘のようにアヤトへ敬意の眼差しを向けているが、フロッツは突っこまず三人に解りやすく説明を。


 ヒフィラナ邸に到着してすぐ、応接室に乗り込んできたリョクアが責めて立てた際、反論ではなく指摘としてアヤトはこう返している――


『歓迎しろとは言わん。当主さまは当主さま、あんたはあんただ。俺に対してどう思おうが好きにすればいいし、平民の俺に不躾な態度を取ろうと気にはせん』


 この発言がリョクア以外の親族も適用されるなら、襲撃を企もうと誹謗を吐かれようと好きにしろと容認しているわけで。


「それにテメェで言うのも何だが、俺のような不作法者が目障りなのも一理ある。罵られようが怨み買おうが反論できねぇよ」

「だから君はなんで変なところで聞き分けがいいのかな」


 つまり自分が容認している行為や言動に謝罪は必要ない……のだが律義もここまで来れば呆れてしまう。

 なんせケンカを売られれば買うのがアヤト。ミリアナの行為はケンカを売ったと同意、故にフロッツはアヤトがどう出るか戦々恐々の思いだった。


「ま、他にもあるがこの一件に関して謝罪は不要だ」

「その他ってのは――」

「さあな」

「――だよね。うん……分かってた分かってた……」


 まあ別の理由もあるらしいが、ミリアナの売ったケンカを買われるよりはマシとフロッツも追求を止めた。

 そしてまだアヤトを良く知らないクアーラやホノカは一端でも触れたからこそポカンとなるも、呆れながらもダイチは反論する。


「しかしお主が良くともお咎め無しとはいかんじゃろう」


 被害者のアヤトが不問にしようと当主としてミリアナの罪は見過ごせない。特にミューズに対する言い掛かりをレムアが許せないだろう。

 もちろんこのまま蟠りを残したまま終いにできないとアヤトも理解している。


「だろうな。故にミューズ、レムア、ここは俺に任せてくれんか」


 故にミリアナの、延いてはヒフィラナ家の処遇を一任するよう提案。

 元より一番の被害者はアヤトなのでミューズに異論はなく、相手に対して甘さが抜けきれない主よりはある意味徹底的にやってくれるとの考えからレムアも同じ結論に。


「お任せします」

「決まりだな。ならここからはサシで話し合いといこうか」


 互いの意思を伝えるなりアヤトの視線はダイチではなくリョクアに向けられた。


「……私とか?」

「当主は曾爺さんでも面倒ごとを起こしてんのはあんたの嫁だろ。それとも曾爺さんに泣きついて面倒ごとを丸投げするか? 公爵家のご子息さま」


「この……っ」


 まさかの指名に訝しむもアヤトは嫌味ったらしい嘲笑、先ほどの殊勝な態度が嘘のようにリョクアも敵意を露わに。

 ちなみに相変わらずなアヤト節に苦笑いするロロベリア、お腹を押さえるフロッツ、なぜか微笑ましく見守るミューズ、内心痛快な思いのレムア、ぎょっとなるクアーラやホノカと様々な反応。


「……ミューズちゃんやレムアちゃんが任せた以上、アヤトの好きにさせるのが筋じゃろうて」


 そんな中、ダイチはどこか投げ遣りにため息一つ。


「リョクアよ、元より非があるのはワシらじゃと忘れるな」

「……わかっています」

「なら執務室におるから後で報告に来い。クアーラやホノカは自室で待機、みなさんは客間で一息ついてください」


 指示を出して立ち上がるダイチに他の面々も頷き、アヤトとリョクアを残して食堂を後にした。



 ◇



「アヤトくん……今度はなにやらかすつもりなんだよ……」


 まあだからといって一息付けるはずもなく、アヤトに当てられた客室で待機するフロッツは気が気ではない。

 ミリアナの不祥事を不祥事とも思っていない様子から荒事にならないだろう。しかし行動理念が全く読めないだけに斜め上の面倒ごとを起こす可能性は拭えない。


「それよりもミューズさま、ご無事で何よりです」

「……? はい、ご心配をおかけしました」

「それよりもって……レムアさんも気持ちは分かるけど、心配するところはそこじゃなくない?」

「一理あります。せっかくアヤトさまとデートをされていたのに中断とは残念でしたね」

「そこでもなくてね!?」

「ですが半端がお嫌いなアヤトさまのことです。日を改めてやり直しデートをしてくださるかと」

「そう……ですね。お願いしてみます」

「……もういいです」


 にも関わらず共感されずに放置されては悲しくなる。

 ただ結局はなるようにしかならないと、フロッツも開き直って視線をロロベリアへ。


「んで、ロロちゃんも別の心配してるわけ?」

「それは?」

「ホノカさまのこと。そっちも楽しいティータイムを中断されたし、見た感じ懐かれてたようだけど」

「懐かれてるかは分かりませんが……心配ではあります」


 余り関心が向けられなくてもホノカは母親を慕っていたのは僅かな時間でも感じられただけに、不祥事はショックだったはず。現にアヤトやミューズ、ダイチに批判を浴びせていた時は涙を零していた。

 加えてアヤトたちとも仲良くなりたいと話していたところでこの不祥事。こちらがミリアナの不祥事とホノカは別と捉えても気にするだろう。

 交流を深めて友だちになれると思っていた矢先の出来事だけにロロベリアとしてはこのまま終わらせたくないわけで。


「だからホノカさんとゆっくり話したいなとは思います」

「ちなみにミューズちゃんがデートしてる間――」


 帰国までになんとかホノカと交流の場を設けたいと望むロロベリアに代わって、状況を知らないミューズにフロッツが不在時の出来事を説明。


「……そうでしたか。わたしもサーシャさんやラストさん、ホノカさん、もちろんクアーラさんともお話ししたいですね」


 クアーラやホノカだけでなく、急遽訪問したミフィラナ家のサーシャやスフィラナ家のラストとの時間を聞いたミューズも羨ましげに呟く中、不意にノックの音が響いた。


「アヤト……なわけないですね」

「ここは一応彼の部屋だし、入るのにノックするような子でもないからな」


 などと苦笑いのロロベリアやフロッツを他所に、従者としていち早く反応したレムアが対応に向かったが――


「……ホノカさま?」

「え?」


 ドアを開ければ今まさに話題に挙がっていたホノカが一人で訪問。

 自室待機を言い渡されていただけに驚く面々に対し、沈んだ表情のままホノカは室内へ。

 フロッツ、ミューズ、レムア、そしてロロベリアと一人一人の顔を見て、続けて深く頭を下げた。


「みなさま……お母さまを許して欲しい……とは、言えません。でも……ごめんなさい」


 か細く、振るえる声の謝罪からホノカの複雑な心境が伝わる。

 ミリアナの不祥事を理解しているからこそ許されるものではないと理解している。

 それでも娘として母の為に何かしたいと考えて、改めて謝罪に訪れたのだろう。

 たった一人で、ダイチの言いつけを破ってでも行動に移せたホノカの誠意。もちろんだからといって簡単に許すとは言えない。

 それでもミリアナの処遇はアヤトに一任している。

 アヤトとリョクアの話し合い次第になるので確約は出来ないが、自分たちの考えを伝えるには問題なく。


「わたしとしてはミリアナさまが心から反省してくださればそれで構いません」

「ミューズさまの思うままに」

「俺も今はアヤトくんが心配なんでお気になさらず……むしろこっちが謝罪する側になるかもだし」


 ミューズやレムアは思うままに、フロッツも軽口でホノカの示した誠意に正直な気持ちを伝えた。

 もちろんロロベリアも、三人の返答が予想外なのか呆然と頭を上げるホノカの目を真っ直ぐ見詰め返す。


「ホノカさんから会いに来てくれた」


 心配していたのがむしろ申し訳ない。

 辛い状況下でも自分に出来ることを模索して行動に移せるホノカはやっぱり強いと。

 なにより望んでいた場をホノカから作ってくれたのがロロベリアは嬉しくて。


「とっても嬉しい」

「ロロベリアさま……みなさま……ありがとうございます」


 感情がそのまま伝わる笑みに、少なくとも四人には許す意思はあると伝わりホノカも心からの感謝を伝えた。

 

「――だから、テメェらはなぜ俺の部屋でたむろするんだよ」


 ……のだが、ほっこりとした雰囲気をぶち壊す気怠げな声が。


「ふぇ……!?」

「アヤトくんさぁ……空気読もうぜ」


 飛び上がらん勢いで驚くホノカが余りに可哀想でフロッツは批判せずにはいられない。

 しかし元より自分に当てられた部屋以前にそこはアヤト、我関せずとホノカに訝しみの視線を向ける。


「つーかなぜホノカまで居るんだ」

「えと……あの……」

「わざわざ謝りに来てくれたのよ。でもアヤトには必要ないんでしょう?」

「ねぇよ」

「ここに居たのはアヤトを待ってたから以外にある? それで、どうなったの」

「どうだろうな」


 あたふたと戸惑うホノカに代わりロロベリアが対応しつつ、重要な結果を問うも端的な返答のみで。


「あ、あの……それは――」

「ホノカさん、聞いても絶対にさあなで交わされるから聞くだけ無駄なの。なんせアヤトは意地悪だから」

「白いのが言うじゃねぇか」


 ロロベリアの嫌味も苦笑で交わしたアヤトは改めて結論を口にした。


「とにかく今は()()()()()()()()()()()()()




ミリアナさまの罪は簡単に許せるものではないと理解していても、娘として何か出来ないかと些細なことでも行動に移せたホノカは内気でも芯の強い子だと思います。

対して相変わらず何を考えているのかさっぱりなアヤトくんの考えはやはりさっぱりですね(笑)。

そんなアヤトくんが想定外の状況下で動いたところで公国編も終盤、次回からは本格的にアヤトサイドのストーリーとなります。

つまりアヤトくんがダイチさまと密かに接触した理由、ミューズの協力から何を狙っていたのか、また公国を訪れた目的が少しずつ明かされていきます。

まずは次回、リョクアさまとの話し合いからになります。



少しでも面白そう、続きが気になると思われたらブックマークに登録、評価の☆をお気持ちのまま★にして頂ければ嬉しいです!

みなさまの応援が作者の燃料です!


読んでいただき、ありがとうございました!




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ