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白き大英雄と白銀の守護者  作者: 澤中雅
第十三章 叶わぬ夢を花束に編
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公爵家子息子女の事情

アクセスありがとうございます!



 元々クアーラは休養日にロロベリア達と親睦を深めるつもりでいたらしい。

 ロロベリアはマイレーヌ学院の序列一位、ミューズは三位の実力者。加えて持たぬ者でありながら異例の序列入りを果たしたアヤト、従兄弟以前に好奇心を抱くのは当然と言える。

 しかし学院終了後もクアーラはその日の課題や人付き合いがあるのであまり時間が取れないので、ガイラルドとの模擬戦関係なく休養日を利用して誘ってくるのは少し考えれば予想できた。


 またシゼルやアドリアがわざわざ訪ねて来たように、サーシャやラストが訪れても不思議ではない。そしてクアーラと同じく学院生なら休養日の今日になるのもやはり少し考えれば予想は出来た……故に人付き合いを面倒がるアヤトが敢えて約束していたミューズとのデート日にしたのでは? とロロベリアは一瞬でも邪推してしまったはさておいて。


 クアーラの打ち明けからサーシャやラストの訪問も踏まえてロロベリアも今さらながら納得、しかしまだ解消されない疑問はあるわけで。


「なぜ昨日の内にクアーラさんに伝えなかったんですか?」


 練武館に訪れた際の様子からクアーラも二人の訪問は予想外に思えるだけにロロベリアは率直な質問。同じ三大公爵家という立場や幼なじみという関係から普段もアポなど取らず訪問することもあるだろう。またシゼルはダイチに誘われたがアドリアは急な訪問、自分たちが訪れていると知って急遽予定を合わせたなら仕方がないとも思える。

 サーシャはクアーラの一つ上で精霊術クラス、ラストは同い年でも精霊騎士クラス所属。学年や所属クラスが違おうと、クアーラに事前通達はできたはず。


「それは私の予定が空くかどうか未定だったからです」


 この疑問にサーシャが返答。どうも今日は別の予定が入っていたので来られるかどうか分からないとクアーラにも伝えていたらしい。クアーラも未確定が故に控えていたそうだ。

 そして予定がキャンセルとなり客人、つまりロロベリアたちに失礼のないよう手順を踏んで訪問するつもりだったのに今朝方問題が発生した。


「家の者を向かわせて予定を確認する前にラストが迎えに来たのです……」

「ガイラルドが評価するロロベリア=リーズベルトと早く勝負したかったんだ。仕方ないだろう」

「……彼はこう言った子なので一人で向かわせると余計に迷惑かと、失礼を承知で私も訪問させてもらいましたが……まさか出会い頭に勝負を申し込むなんて……」


「…………」


 悪気もなく言い放つラストに呆れて嘆くサーシャがとても可哀想に思えた。

 要は昨日、ガイラルドからロロベリアの話を聞いたラストが興味を抑えきれず暴走、お目付役としてサーシャも訪問したらしい。

 同時になぜいきなりラストが勝負を挑んできたのか、との疑問も解消。


「……いくらなんでも行動力ありすぎじゃね?」


 なので事情を聞いたフロッツが嘆くように、少々考えなしではないかとロロベリアもに思えた。


「フロッツさま、誤解なきよう。恐れながら私から見てもラストさまは公爵子息に相応しい振る舞いの出来る御方です。ですがスフィラナ家次期当主として厳しい教育を受けておられる故、反動からクアーラさまやサーシャさまの前では少々気が緩んでしまうのです」

「それにしては緩みすぎじゃないですかね」


 セルファの擁護にフロッツは身も蓋もない意見、申し訳ないがロロベリアも同意しかない。

 こう言っては何だがダイチが当主のヒフィラナ家、シゼルが当主のミフィラナ家に比べてアリドアが当主のスフィラナ家の方が厳格な教育を受けているのは想像に難くない。また公国三大公爵家という身分は息苦しさもあるだろう。

 だからこそ気心知れた幼なじみの前では息苦しさから逃れられる反動から、二人よりも年相応の感情がむき出すかもしれない。しかしサーシャを強引に誘ったり、ヒフィラナ家の客人にいきなり勝負を申し込んだりは度が過ぎているようにも感じる。


「またサーシャさまは強い殿方がお好きなようで、特にガイラルドさまに憧れておられるのです」

「……? なんで急にサーシャさまのタイプのお話に?」


 そんな印象を抱く中、セルファから新たな情報が。

 強い男性がタイプなら公国最強の精霊術士と評判のガイラルドに憧れを抱くのは理解できる。ただ今はラストを擁護しているのではと疑問視するフロッツにロロベリアも再び同意しかない――


「ガイラルドさまが認められたロロベリアさんに興味を持つのも分かるけど、だからって挨拶も無しに勝負を申し込むのは失礼でしょう」

「そこは悪いと反省してる。しかし俺がロロベリア=リーズベルトに勝てたらサーシャも見直すだろ」

「あのね……ガイラルドさまが認めるほどの武人にあなたが勝てるわけないでしょう? それに見直すもなにも、私にとってラストは大切な幼なじみ。クアーラと違って多少は手の掛かる弟でもあるけど――」

「……弟ってのを見返したいんだ」

「? どうして?」

「どうしてって……ああもう! 無礼については後でいくらでも謝罪する! とにかく俺も強くなったのを証明したいんだ!」


「……そういうことっすか」

「……納得です」


 同意しかなかったが、サーシャとラストのやり取りで全てを察したフロッツに別の意味で同意した。

 つまり気心知れた仲に加えてサーシャに対する恋心からラストは感情を抑制できなくなるうようだ。まあ公爵家子息としては未熟過ぎるが、敵意から勝負を挑まれたわけでもないと知れてロロベリアは安心した。

 また好きな人に認められたいとの願望も年相応で申し訳ないが可愛く思えるわけで、そういった気持ちで強くなろうとしているラストには好感が持てた。

 それにスフィラナ家とヒフィラナ家、ミフィラナ家の間には古くから確執があるとダイチから聞いているが、少なくとも次世代を担う三人は権力争いとは無縁な関係を築いていると伝わる。その手の話が苦手なロロベリアにとって三人とは仲良く出来そうで。


「サーシャさん、私は気にしないのでその辺で」


 ならばと身分や立場も抜きにした普段通りの自分で接すると三人の元へ。


「なのでラストさんも謝罪はなしで。先ほどの申し出は喜んでお受けするのでご心配なく」

「宜しいのですか……?」

「強い人との勝負は私にとっても良い経験になるから。もし良ければサーシャさんやクアーラさんもどうですか? もちろん私にも意地があるから、負けるつもりはないけどね」

「……むしろ私からお願いします。ラストには控えるよう言ってたけど、正直なところあなたと勝負したい気持ちはあったから」


 ロロベリアの心情を汲み取ったのか、サーシャも客人扱いから友人のような扱いに切り替え不敵に笑った。


「ただ意地があるのは私も同じ。マイレーヌ学院序列一位の実力、楽しみだわ」

「楽しんでもらえれば良いんですけど」

「二人とも俺を忘れないでもらえないか。サーシャ、最初は俺でいいな」

「はいはい。お好きなように」

「なら練武館に行くぞ」


「ロロベリアさん……気を遣わせてしまい本当に申し訳ない」


 ただクアーラは割り切れないのか、サーシャはまだしもラストの不躾な態度を謝罪。


「気なんて遣ってません。ただ私はどんな形でも良いから親睦を深めたいだけなので、ここからはちょっだけ礼儀を欠きますがクアーラさんもお許しを……なんてね」

「……では私も遠慮なく接しさせていただきます」


 それでもロロベリアの茶目っ気ある対応に、少しだけ肩の力が抜けて表情から陰りもなくなっていた。


「ただロロベリアさんのお相手になれるかどうか……サーシャさんはスファーナ学院序列五位の実力者ですが、私やラストはまだ序列入りも出来ない未熟者ですから」

「序列が強さの全てではないとアヤ……王国ではよく言われてますよ。でもサーシャさん序列五位なんだ……ますます楽しみ」

「序列が強さの全てはないのでは?」

「……目安にはなるから。とにかくクアーラさんとの勝負も楽しみです」

「お手柔らかに……」


 ロロベリアに感化されて、微妙な出会いが嘘のように楽しげな雰囲気で。


「さすがアヤトくんと常に行動してるだけあるわ。ロロちゃんの度胸も半端じゃないな」


 まあ相手が公国三大公爵家の子息子女だろうとあのような態度を取れる辺りがアヤトに振り回され続けているロロベリア、切り替えや思い切りの良さにフロッツも素直に感心してしまう。

 ただ度胸だけでなくロロベリアの人としての魅力があってこそ。故に良い交流の場になるとフロッツは安心して見守れると後に続く中――


「もしここにアヤトさまがいらっしゃればどうなっていたでしょうか」

「……言わないでくれ」


 レムアの呟きにこの場に問題児(アヤト)が居た場合を想像しただけでも胃がキリキリと痛んだ。




これまで大物を相手にする際、常にアヤトが居ただけに振り回されているロロですが、サクラとも対等に接しているように変に度胸が付いてます。またリースやユースが絆されたロロですからね、素になればなるほど親しみある魅力が伝わるかもです。

ちなみにアヤトくんが居たら……最後は何だかんだで親しくなってるのではないかと。フロッツの胃を犠牲にしてですけど(笑)。



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