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白き大英雄と白銀の守護者  作者: 澤中雅
第十三章 叶わぬ夢を花束に編
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初耳

アクセスありがとうございます!



 ロロベリアがガイラルドと模擬戦を繰り広げた日の夕刻。


 大事を取って静養したことでヒフィラナ家との夕食にロロベリアは普通に同席。と言ってもアヤトとの訓練に比べて心身、精霊力は余力も充分、骨折など珍しくもないのでむしろ静養する必要は無かったりする。

 ただダイチの立場を考えて従ったのみ、でなければガイラルド戦の反省会と称してアヤトに訓練をお願いしただろう。まあお願いすれば結果心身と精霊力を限界ギリギリまで削られて欠席していたので静養は正解かもしれない。

 また昨日は適当な理由で欠席したアヤトも同席。なのでフロッツには貴族然とした振る舞いとは別の気苦労が待っていた。


 相変わらずリョクアとミリアナが率先してミューズやロロベリア、フロッツとの交流を重視する中、話題はガイラルドとの模擬戦に。

 ちなみに模擬戦の結果や経緯も含めて伝わっていたのか、リョクアがダイチの対応を責め、ミリアナがあまり危険な目に遭わせないようやんわりと注意するのをロロベリアが自分が望んだのでと仲裁に入ったりとひと悶着はあったがそれはさておき。


「ガイラルドさんに認められるなんて、ロロベリアさんには感服します」


 これまで基本聞き手に回っていたクアーラが積極的に褒め称えるのも無理はない。

 完敗とは言えロロベリアはガイラルドに本気を出させ、敬意を向けられるまでの雄志を示した。自国の誇る最強の精霊術士に同じ学院生が認められたとなれば、純粋な憧れを抱くだろう。


「……恐縮です」


 模擬戦の雄志とは裏腹に相変わらずこの手の称賛に慣れず、気恥ずかしさから俯くロロベリアを他所にクアーラからお誘いがあった。


「もし良ければ明日は僕と一緒に訓練をしませんか? 交流を深める意味も兼ねて如何でしょう」


 確かに公国に来てからダイチやお世話になっているセルファやミナモ以外とは夕食の席でしか顔を合わせていない。また合間にミフィラナ家、スフィラナ家の当主との面会もあったりと同年代のクアーラやホノカとの時間は作れていない。

 しかし明日は学院も休養日、今のところ訓練以外(←ロロベリア内では)の予定はないので良い機会だ。


「いいわね。ミューズさんもクアーラのお相手を願えないかしら」


 ……良い機会なのだが、即座にミューズを誘うミリアナの態度にロロベリアはもやもやが。もちろん同年代の交流ならアヤトも含まれてはいるだろうが、こうもあからさまに除け者扱いをされては面白くない。


「もちろんアヤトさんも、あなたと一度手合わせをしてみたいと思っていましたから」


 ロロベリアのもやもやを察したのか、クアーラがフォローを。身分を気にしない彼らしい対応ではあるも、やはりアヤトの実力が本物か興味はあるのか。

 故に会話を振られたことも含めて、フロッツがお腹を押さえるのを他所に誘われたアヤトと言えば水を一口。


「悪いが遠慮させてもらおう」

「……なにか予定でもあるんですか」

「ずいぶん前から先約があってな」


 どこか残念そうに問いかけるクアーラに太々しい対応、リョクアやミリアナから厳しい視線が向けられているがそれよりも。

 先約を持ち出して断りを入れるアヤトにロロベリアはキョトン。今のところ明日以降の予定はなにもないはずと、場も忘れて構ってちゃんが発動するより先にアヤトは口を開き――


「明日はミューズと約束していたデートの予定がある」


「…………は?」


 告げられた予定に空気が強ばる食堂内にロロベリアの間抜けな声のみが響いた。


「…………ミューズさんとデート……えっと、もしかしてお二人は交際している……」

「してねぇよ。ただ色々と事情があってな、約束していたデートを公国で済ませると以前から決めてたんだよ」


 ――困惑気味に確認するクアーラさんに交際をきっぱりと否定したのは構わないしむしろ事実なので全然良い。しかしいつの間にそんな約束をしていたもやもやするいやデートというか二人きりで外出してお茶をする約束をしていたのはもやもやするけど知っている。色々な事情というのもラナクスでアヤトがミューズさんと二人きりで外出するのを控えて欲しいとエレノアさまに忠告されて、とってももやもやしたが予定していた外出は慈善活動の手伝いに変更したのも知っている。後に聞いただけであの日は二人でどんな時間を過ごしているのかと合間に切り替えもやもやしたものだ。なのでしばらく時間を空けて改めて約束を果たすらしいと聞いてまたもやもやしたが、私は頑張って笑顔で受け入れた。

 受け入れたがさすがに今は受け入れられない。いや、ラナクスで出来ないのなら公国に来てする、というのは納得できる。なんせスフィアの住民はアヤトもミューズさんも知らない、騒がれることもなければアヤトが居ればまず危険はないしミューズさんも強いので二人きりでも問題ないだろう。

 しかし、しかしだ。なぜ以前はお茶をすると表現していたのに今はデートと表現した? お陰でクアーラさんが勘違いする私も勘違いするしてないけど一瞬でももやもやしたではないか。この際、公国で二人きりで外出する予定を聞いていないのは流そう。もやもやして流したくないが二人の予定を自分にわざわざ伝える必要も無いしアヤトは元より言葉足らずなので頑張れば流せる。しかしデート表現にはちょっと意見したい。


「……もしやあの時お話しになっていた公国滞在中の予定とはアヤトさまとのデートでしょうか?」


 ――意見したいが先にレムアさんがミューズさんに質問するのでちょっと待とう。でもあの時とはどの時だろうか? いや、レムアさんはミューズさんの従者、事前にある程度聞かされていても不思議ではないし従者だからこそミューズさんを応援しているレムアさんがデート表現するのは流せる。


「はい。アヤトさま次第だったので今まで秘密にしていて申し訳ありません」


 ――そしてアヤト次第で出かけるか保留にしていたならミューズさんはなにも悪くない。もやもやするけど友人として楽しんで欲しいからやっぱり流せる。


「……いいえ。アヤトさまとのデートを楽しんできて下さい」

「ありがとうございます」

「……もしかしてミューズさん……アヤトさん、と二人で外出されるの?」

「? はい。元より二人でとお願いしたのはわたしなので」

「危険ではないかしら……」

「スフィアの治安は良いが……従者も付けず慣れない土地を二人でというのは……なあ?」

「お気遣いありがとうございます。ですがアヤトさまなので」


 ――やはりアヤトの実力を知らないミリアナさまやリョクアさまは心配されて当然だけどアヤトが居れば危険はまずない。なので気持ちは分かるがミューズさん、それではなにも伝わりません。でも変にアヤトの実力を知られるよりはいいし、ダイチさまに勝ったことも状況含めて敢えて伝えていないらしいなら私がここでフォローを入れる必要は無いし、下手に口出しするとまたやらかす可能性があるので自重しよう。


「なのでクアーラさん。お誘いは光栄ですが、申し訳ありません。次の機会は是非とも」

「……いえ、先約があるのなら仕方ありません。アヤトさんとのデートを優先して下さい」

「ありがとうございます」


 ――そしてクアーラさんのデート表現も流す。なんかここで今さらお茶とか外出とか表現は違うし意見する流れでもなくなった。


「ではロロベリアさんだけでも……ああ、もちろんフロッツさんやレムアさんも良ければご一緒して下さい」

「……ですね。私で良ければ」

「私までお誘い頂き光栄にございます」


 ――だからクアーラさんに誘われたフロッツさんやレムアさんが了承するなら流れを読んで私も了承するべき。そもそも最初から了承するつもりだったけどとりあえず。


「もちろん私も構いません」


 ――もやもやを我慢して頑張って笑顔でクアーラさんの申し出を受け入れたけども。


「ごちそうさま。ではミューズ、後で明日の予定を決めるか」

「わかりました」


 ――でも! 微妙な空気にしたのに我関せずで一人先に食事を済ませてさっさと立ち上がるのはこの際流すけどアヤト、後でしっかり構ってもらうからね!


「へいよ。噛みつかれるのも面倒だからな」

「……分かってるなら私も後で」


 表情や目の訴えで察したのか、通り過ぎざまに返答するアヤトになんら疑問も抱かず、ロロベリアはジト目を向けつつ約束を取り付けた。


「……とりあえず、クアーラさまとの交流までロロちゃんのケアをしておく必要がありそうだ」

「むろん私も協力します……その、ミューズさまの従者として、申し訳ないほどにロロベリアさまはもやもやされていたので……」


 ちなみに本人は必死に取り繕っていたようだが、ロロベリアのもやもやは全く隠しきれていなかった。




前話(SS除く)のラストで予想できたかもですがロロのもやもやシリーズも入れられて憂いなく残りの十三章を進められます! ……今までと違うパターンにしてみましたがほんとすみません(汗)。


とにかく公国に来てアヤトとミューズ、ロロ、フロッツ、レムアの三人が別行動。また二人がどんなデートをするのか、今まで交流のなかったクアーラとロロたちはどう過ごすのか。

まずはどちらの様子になるかは次回をお楽しみに!



少しでも面白そう、続きが気になると思われたらブックマークに登録、評価の☆をお気持ちのまま★にして頂ければ嬉しいです!

みなさまの応援が作者の燃料です!


読んでいただき、ありがとうございました!


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