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白き大英雄と白銀の守護者  作者: 澤中雅
第十三章 叶わぬ夢を花束に編
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心内と狙い

アクセスありがとうございます!



 模擬戦と共にアドリアとの面会も終了となった。

 ロロベリアの傷は治療術で癒やせても衣服はボロボロ、体力や精霊力の消耗から大事を取って休ませる必要がある。そんな状態で面会など続けられず、更に言えばロロベリアの状態はガイラルドの所業。


 もちろんアヤトに丸投げされようとガイラルドとの模擬戦を望んだのはロロベリア、むしろ本気で相手をしてもらい感謝すらしている。


『アドリアさま。差し出がましいかもしれませんが、ガイラルドさんにはいい経験をさせてもらいました。なのでご配慮を……』


 故に治療術を施してもらったレムアと客室に戻る前、ガイラルドの立場を思いアドリアに自ら懇願。

 元より開始前にダイチが責任を持つと宣言しているのも踏まえ、重傷を負った本人の意思も尊重されてお咎めなしを約束してもらった。


「アドリアさまの命に背き……申し訳ありませんでした」


 しかしそれはそれ、模擬戦前にアドリアから出来るだけロロベリアに怪我をさせないよう注意されていたガイラルドは完全に命令違反。それもロロベリアの眼差しに当てられて半端なまま向き合いたくないとの個人的な理由で。

 故に帰路の馬車で向かい合うアドリアに自らの失態を認めて深々と頭を下げていた。


「……ロロベリア嬢も満足していた。謝罪の必要はないよ」


 間は空いたもののアドリアはガイラルドの独断を許した。

 多少は機嫌を損ねてはいるが自分の右腕がロロベリアの要望に応えたならとの妥協か。

 それとも本気で相手取ったことでより正確な情報が手に入ったからか。

 アドリアがヒフィラナ家を訪問したのは王国、教国の貴族令嬢との顔合わせ。ミフィラナ家当主が自ら出向き交友を深めたと情報が入り、スフィラナ家も足を運ぶ必要があった。

 爵位こそ下でも王国のニコレスカ子爵家、教国のイディルツ伯爵家は両国の国王にも気に入られている家柄。また両令嬢も様々な権力者と懇意にしているとなれば友好を築いて損はない。

 ただそれとは別の目的をガイラルドは事前に聞いている。


「それに目的の半分は達成しました。君から見てどう思う?」


 一つは王国最強のラタニ=アーメリの実力が噂通りのものか、弟子を通じてでも知りたいとの目的。学院生ながら王国最強の座に就き、以降も様々な武勇伝が公国にまで流れている。

 しかし信じがたい噂も多いのでこの機会に見定めたいらしい。例え弟子の実力でもある程度は予測できる、実際に立ち合ったガイラルドの意見も踏まえて参考にするのだろう。

 予定と違ってロロベリアを通じることになったが、マイレーヌ学院の序列一位がどれほどのレベルか確認できたのは不幸中の幸い。加えて王国最強が選んだ後継者がロロベリアと思わぬ情報が手に入った。


「本人の資質を踏まえれば後継者というのもあながち間違いではないかと。しかし資質だけではロロベリア嬢のような成長はいたしません」


 なにより後継者だからこそ王国最強を見定めることが出来たとガイラルドは自信を持って報告。

 精霊力の保有量は乏しくとも、神業的な技能をあの若さで習得した才覚。しかし才覚だけでは決して辿り着けない高み。また学院生レベルを遙かに超えた精神は多くの修羅場をくぐり抜けた武人のよう。

 故にロロベリアの才覚に加えてラタニの手腕があってこそ、ガイラルドでも今後どれほど伸びるか予想も付かない。


「恐れながらロロベリア嬢はそう遠くない未来、私をも超えるでしょう」

「君にそこまで言わせるか……そうなるとラタニ=アーメリは指導者としても優秀なのだろうね」


 自分の報告に笑わず、真摯に受け止めアドリアも納得してくれた。

 彼女が特別講師としてマイレーヌ学院に赴任したのなら、ロロベリアだけでなく他の学院生も飛躍するだろう。ならば公国も早急に対処が必要だ。

 もちろん戦争を見据えてではない。

 若い才能はそのまま国の強さに繋がる。いつまでも三大大国に遅れていては公国の威信に関わる。

 そういった理由からラタニを見定めたいとガイラルドも聞いているが、最も重要視していた情報は別にある。


「ではアヤト=カルヴァシアはどう見る?」


 続けてアドリアが意見を求めるよう、本命はアヤトの実力が本物か否か。

 帝国との親善試合を前に噂が広まり始めた王国最強の弟子であり、持たぬ者でありながら持つ者を凌駕する実力者。あまりに信じがたい噂にむしろラタニの実力が本物か否かを問題視されたほど。

 現に親善試合以降その持たぬ者の噂は即座に収束、お陰で親善試合に向けた王国側の心理戦の一つと捉えられていたが、最近その持たぬ者が序列入りしたと新たな噂が広まった。更に王国にはもう一人持つ者と同等に渡り合える持たぬ者の学院生がいるとの噂もあり、本腰を入れて情報を集めようとしたところで耳に入ったダイチが客人を招いたとの情報。

 その客人こそ疑惑の序列入りをした持たぬ者で、しかも元ヒフィラナ公爵家令嬢ワカバの息子となれば直接真相を確かめられると急遽面会に赴いたのだが、ガイラルドからすれば不敬極まりない男でしかなく。

 しかしただの不敬極まりない男ではないと武人としての直感が告げていた。


「……弟子であるなら噂も噂と否定できないでしょう。またあの男は言い表せない不気味さがあります」

「と言うと?」

「普段の立ち振る舞いから相手の実力はある程度計れます。私が見た限り、あの男は武芸に精通していない所作が目立ちスキだらけですが……全くスキがありません」

「……矛盾しているね。実力を計らせないよう、普段は敢えてそう振る舞っているのかな」

「申し訳ございません……ですが、ただの持たぬ者ではないのは確かかと」


 曖昧な報告になってしまったが、少なくともアヤトは何かある。立ち振る舞いに然り、雰囲気に然り、妙な異質さを感じられた。

 故にこの感覚が何なのか、実際に立ち合い暴きたかったが上手く交わされてしまいガイラルドとしても痼りの残る面会だった。

 それでもロロベリアと戦えたのは満足している。あれ程武人としての血が滾ったのも久方ぶりで。

 なにより持たぬ者が精霊力を持つ者、特にロロベリアのような精霊術士に勝利できるはずがない。


「でも彼は序列十位。同じラタニ=アーメリの弟子とは言えロロベリア嬢ほどではないだろう。噂では序列選考戦では上位者全てに勝利して序列入りしたらしいが、それほどの実力者が十位になるはずもない」


 アドリアが結論づけるよう理解不能な噂がアヤトには多いからこそ所詮は噂。他の序列保持者に勝利できる者がわざわざ十位に収まる理由もない。しかもあの不遜な態度からしてわざと敗北するようなプライドの持ち主でもないはず。


「私も同意見です。ただの持たぬ者ではない、ですが誇張された実力が広まったと推測します」


 なのでガイラルドもギリギリ序列入りするだけの実力があると結論づける。まあ持たぬ者がロロベリアを筆頭とするマイレーヌ学院の序列に入れるだけでも信じがたいが、ラタニの手腕や本人の不気味さを考慮すればあり得るかも知れない。


「ならアヤト=カルヴァシアの実力もある程度は計れた。充分な成果を上げた君を責めるつもりはないよ」

「ご配慮、感謝します」


 アドリアも自分の結論を笑わず受け入れてくれて、ガイラルドとしては主の期待に応えられて満足していた。


 ・

 ・

 ・


 ただガイラルドの心情を他所にアドリアに取っては不満の残る面会だった。


(……武人気質は扱いづらいですね)


 どうせ本気を出すのなら半端に痛め付けず()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。そうすればダイチに責任問題を突きつけヒフィラナ家を追い詰めることも出来たのだ。そうした融通が利かないのがガイラルドという男で。

 しかしガイラルドはスフィラナ家にとって重要な駒、下手に扱えないのがもどかしいとアドリアは内心ため息を吐く。


(ですが彼のお陰で欲しい情報は得られたので良しとしましょう。後は――)



 ◇



 一方、ガイラルドとの模擬戦を終えたロロベリアは客室で休息を取っていた。

 レムアの治療術で傷こそ癒えたが、体力や精霊力の消耗から夕食まで大事を取るよう大地に勧められては従うしかなく。


「……よし」


 ただ完敗したからこそ何もせず休んでいられないのがロロベリア。

 自分の模擬戦に当てられてフロッツやアヤトに訓練をお願いしたミューズの様子を見に行くとレムアが退室するなりベッドから起き上がる。

 精霊力は消費しているが制御力の訓練は出来ると早速――


「……テメェはなにやってんだ」


「わひゃあ!」


 ……精霊力を解放するより先に声をかけられ悲鳴を上げた。


「たく、曾爺さんに大人しくしてろと言われただろう」

「なんでアヤトが……というか気配消して入ってこないでよ!」


 声の主はもちろんアヤト、気配どころか物音すら立てず入室できるのはもう今さらとして、驚かされたことを猛抗議。


「どう入ろうが俺の勝手だ」

「でもせめてノックくらいするべきじゃない?」

「ミューズからお前の様子を見に行ってくれと頼まれてな」

「聞いて? 私の話聞いて?」

「で、つい今し方すれ違ったレムアには白いのが大人しくしているかどうか見張っていろと頼まれたんだが案の定か」

「…………」

「とまあノックなんざすれば白いのがわざとらしく良い子にすると思ってな。勝手に入ったことは謝罪するが?」

「……私も謝るのでどうか良い子にしていたことにしてください」


 アヤトなりの理由から居たたまれなくなったロロベリアは素直に謝罪。

 そのまま横になる自分にレムアが戻るまで付き添ってくれるのか、アヤトはベッド脇に椅子を寄せて着席。


「結構。では大人しく寝ていろ」

「……はい」

「ま、訓練代わりと言っては何だが先ほどの遊びでお前がどれほど無様だったか存分に貶してやる」

「言い方……せめて助言や改善点とかにしてよ」

「断る」

「どうして?」

「白いのだからな」

「……またそれ?」


 からの要望無視でガイラルドとの模擬戦を散々バカにされたが、遠回しな助言もしてくれて。


「貶されてなにニタニタしてんだ」

「貶されても良いお勉強になってるからよ」


 なにより久しぶりにアヤトとの()()()()()()()、ロロベリアは笑みが絶えなかった。


 のだが――


「じゃあな」

「行ってまいります」


「………………」


 翌日、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()もやもやした気持ちで見送っていた。




ガイラルドさんもアヤトからただならぬ者を感じていましたが、アドリアさまは常識と照らし合わせてアヤトを計り結論を出していました。

またアドリアさまは何らかの思惑を秘めているようですが今は触れず、二人きりの時間を過ごせてニマニマなロロでしたが、ミューズと二人きりのデートに行くアヤトにもやもやしてましたね。

なぜ急に二人のデートとなったのか、その辺りは次回で。



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