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白き大英雄と白銀の守護者  作者: 澤中雅
第十三章 叶わぬ夢を花束に編
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互いの初手

アクセスありがとうございます!



 アドリアの思惑に乗らず、ガイラルドの対戦相手にロロベリアを指定したとは言えこの対戦カードはアヤトが勝手に決めたもの。そもそもアドリアが見定めたいのはロロベリアではなくアヤトの実力。

 なによりロロベリアは王国でも重鎮のニコレスカ子爵家の娘、アヤトの独断だろうとアドリアは避けたい対戦。

 故に万が一怪我でもさせてはニコレスカ家に申し訳ないと断りを入れた。


『ほう? つまり俺が怪我をしようと構わんということか』


 しかしアヤトの正論に反論の余地もなく。


『ラタニの手腕を弟子を通じて知りたいんだろう。それとも俺でなければならん理由でもあるのか』

『ありませんが、ロロベリア嬢の意思を確認もせず決めるわけにはいかないでしょう』

『案ずるな。良い経験が出来る機会を逃すほど白いのもバカじゃねぇよ。そうだろう?』

『……そうだけど』


 更に回避しようとするもアヤトに乗せられて、と言うより向上心の強いロロベリア。いきなり過ぎて理解が追いつかなくとも情報の少ない実力者との対戦は願ってもない場。


『ガイラルドさまが宜しければお願いします』


 そんな魅力的な状況を逃すはずもなく、最後は自らの意思で対戦を希望。

 こうなればアドリアやガイラルドも断れず二人の対戦は正式に決定した。



 ただそれはそれ――



「どうして私を巻き込んだの」


 模擬戦に備えて体を動かしつつロロベリアは早速アヤトに質問していたりする。

 ちなみに少し離れた位置でガイラルドはアドリアと話し込み、模擬戦の審判を名乗り出たダイチはセルファやミナモに指示を出しているので多少踏み込んだ話をして問題ない。


 それはさておき無駄なケンカは売らない、しかし売られたら遠慮なく買うのがアヤトの流儀。

 また積極的に求めなくとも強者と手合わせが出来る機会があれば遠慮なく遊ぶのもアヤトの流儀。

 少なくとも帝国ではエニシと、教国ではダリヤと遊んでいたなら公国随一の精霊術士とも遊ぶはず。なのにせっかくの機会を避けただけでなく、強引な形で自分をあてがえば違和感もあるわけで。

 もちろんフロッツの注意を素直に聞き入れたとは思っていないし、もしそうなら帝国や教国で必死に注意を重ねていたカナリアが不憫でならない。

 まさか自分に良い経験をさせる為でもないだろう。つまりアヤトなりに何か狙いがあるのではと、今までが今までなだけにロロベリアも勘繰りたくもなる。


「先ほど話したとおりだ構ってちゃん」

「私に良い経験をさせるって話?」

「後はあちらさんの要望も叶えてやろうとな。しかしまあ、ラタニはどの国でも大人気だ」

「……本当に?」

「たく……文句があるなら俺と変わるか。安い挑発分も含めてキッチリ返してやってもいいしな」

「変わらなくていいロロちゃん頑張れ!」


 いまいち信用しないロロベリアにため息一つ、不穏な物言いを始めるアヤトだがすかさずフロッツが拒否。


「まあお兄さんの本音としてはロロちゃんにも控えて欲しかったんだけど。結果は見えてても変な確執生むかもしれんし……」

「……すみません。でもせっかくの機会だったので……」

「わかります。わたしも出来ることならお相手して欲しいですから」

「ミューズちゃんも分かっちゃダメ……ほんと、良い傾向だけど昔のお転婆が戻りすぎじゃね?」


 そのまま保護者としての立場からロロベリアの軽率な行動を苦言するも、ミューズのやる気に肩を落とす。

 もちろん以前にはない向上心は兄貴分として嬉しくはある。ただ時と場合を考えて欲しかった。しかし決まってしまったなら後には引けず、今は座して見守るしかないわけで。

 そして疑惑が晴れないままでも、せっかくの場を無駄にしないとロロベリアも切り替えていくがその前に。

 

「ただ嘘ついてまで巻き込まなくてもいいのに」

「あん?」

「お姉ちゃんの後継者って言ったでしょ」


 アヤトが何を思ってガイラルドと戦わせようとしているかは教えてくれなくとも、こればかりは意見したい。

 ラタニの弟子、というだけでアヤトの規格外ぶりがある程度緩和されているように、彼女の名前は国を問わず高い影響力がある。にも関わらず相手の興味を向けさせる為だけに勝手に後継者扱いはやり過ぎだ。

 まあラタニは笑って許してくれそうだが、ロロベリアとしては()()()()()()()()()()()が広まるのを懸念していた。


「お前にはとっておきを見せたとラタニから聞いているが」

「? それがどうしたの?」


 なのに関係ない話題を振ってくるアヤトにキョトン。

 確かにラタニが編み出した最強の精霊術(とっておき)は見せてもらったが、あれはアヤトの白夜を参考に蒼月を編み出したように、自分の切り札を元に今後の成長に繋がればとの時間。

 謂わばラタニなりのご褒美のようなもの。今は関係ないと訝しむロロベリアをなぜか残念なものを見るような目を向けながらアヤトはため息一つ。


「たく……これだから白いのは」

「なんで呆れるのよ」

「なんでだろうな。とにかく良いお勉強をさせてもらえ」


 わけが分からないままバカにされて口をとがらせるロロベリアを無視、アヤトは背を向けてしまう。


「むろん勝つつもりでな」

「当然!」


 しかしアヤトなりの鼓舞を受けたロロベリアは疑問や不服も忘れて完全に切り替え、目を閉じて待ち構えるガイラルドの元へ。


「模擬戦に関する問題の全責任はワシが持つ。両者とも今は身分を忘れて存分に戦うがええ」


 向き合う二人にダイチから一言。

 子爵令嬢のロロベリアを相手ではやりにくいと、スフィラナ家に仕えるガイラルドに配慮しているのだろう。

 もちろんロロベリアからすれば願ってもない言葉、故に後押しするよう笑顔で手を差し出した。


「ダイチさまの仰るとおり、今は立場関係なくお相手を願います」

「……ならば私も一人の武人としてお相手しよう」


 完全にとはいかないがガイラルドも了承との意味合いを込めて手を握り替えし、両者は二〇メルの距離を空けて再び対峙。


「それでは開始じゃ!」


 ダイチの合図に合わせて互いに精霊力を解放。

 事前に聞いた通りこちらを見据える瞳や髪色はカーネリアンのような橙の輝きを帯びるガイラルドは土の精霊術士。また腰後ろに装備しているダガーを抜く素振りもないことから精霊術を主力とするタイプ。

 ただロロベリアが知る情報はここまで。後は解放したことでガイラルドの保有量がモーエンやカナリアと同等かそれ以上と分かる程度。

 

「どこからでも掛かってきなさい」


 さすが公国随一の精霊術士と言うべきか、両腕を組んで待ち構える姿だろうと気圧されるほどで。

 それでもアヤトやラタニを始め、様々な強者との模擬戦を経験しているロロベリア。萎縮どころか挑戦者として気持ちが高まっていく。

 情報が少ないのは相手も同じ、ならば奇襲を兼ねて責め立てると地を蹴った。


「では――『遠慮なくっ』」


「な……っ」


 同時に精霊術を発動、言霊を使わない発動法によって放たれた水鏃に虚を衝かれたガイラルドは咄嗟に右へ跳び回避。


「はあ!」

「ぬう!」


 誘導に成功したロロベリアは着地に合わせて瑠璃姫を一閃。

 しかしガイラルドも即座に反応。ダガーを引き抜き瑠璃姫を弾き返し、体勢を崩したロロベリアの隙を見逃さず後方へ飛んで距離を空けた。

 精霊術を主力としていようと反応速度、動きの鋭さも一級品。部分集約をしてようやく五分の身体能力、やはり一筋縄ではいかない相手だ。


「そうか……なるほど」


 などと呼吸を整えながら分析するロロベリアを他所に、ガイラルドも感心したように一息。


「末恐ろしい『()()()()()』」


「――っ」


 だが不敵に笑うガイラルドの呟きに合わせて周囲に十を超える礫が顕現、驚愕するロロベリアに襲いかかる。

 お返しと言わんばかりの奇襲を負けじと転がり回避したが、今のは()()()使()()()()()()()


「ラタニ=アーメリが後継者として選ぶだけある」


「……だと良いですけど」


 想像以上の強者を前にロロベリアは苦笑で交わしながらも昂ぶっていた。




ロロが強者と戦える機会を逃すはずがありませんということで、二人の対戦となりました。

ラタニの後継者云々に関しては無自覚なロロにアヤトくんが呆れても仕方ないかと。

それはさておき、ロロの奇襲をそっくりお返ししたように、ガイラルドさんも公国最強という称号は伊達ではありません。


改めて公国最強の精霊術士ガイラルドにロロがどこまで通用するのか、次回をお楽しみに!



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