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白き大英雄と白銀の守護者  作者: 澤中雅
第十三章 叶わぬ夢を花束に編
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面会の目的は

アクセスありがとうございます!



 ダイチに訓練をしてもらっている最中、スフィラナ家当主が来訪。

 シゼルに忠告され、ダイチからスフィラナ家との関係を聞いたロロベリアとしては嫌な予感しかしない。


「あ~もう……なんで来ちゃうんだよ」


 となればロロベリアよりもアヤトのやらかしに耐性がなく、保護者という立場からフロッツが愚痴るのも無理はないわけで。


「これはあれか? お祈りサボってる俺に神さまが罰でも与えてんのか?」

「…………」


 少なくともロロベリアの知る神さまにお祈りしたところで避けられず、むしろ楽しむ為に引き合わせるとはもちろん言えない。


「それでどうするアヤトよ。面倒なら追い返してもワシは構わんぞ」

「確かに面倒だが、わざわざお越し下さった公爵家当主さまを追い返すわけにもいかんだろう」


 それはさておき、スフィラナ家と微妙な関係だからか辛辣な対応も考えていたダイチに対し、アヤトは読んでいた本を閉じて一蹴。


「それにあちらさんの目的は俺よりも白いのやミューズだろうしな」

「私やミューズさん……?」

「たく……これだから白いのは」


 スフィラナ家の目的が自分たちと言われてキョトンとなるロロベリアに冷ややかな視線を向けつつアヤトはため息一つ。


「男爵家のフロッツはともかく、ミューズは元枢機卿の孫娘であり次期財務長候補の娘。お前は王国の双璧と呼ばれる精霊騎士団長のおっさんと王国随一の商会を率いる女傑クローネの義娘。加えて身分だけでなく王国や帝国の権力者と懇意にしていれば、是が非でもお近付きになりたい相手なんだよ」

「…………」

「それとは別に俺たちを客人として招いたヒフィラナ家の曾爺さんはともかく、ミフィラナ家の当主さまが挨拶に来たのならスフィラナ家の当主さまも挨拶せねば面子が潰れるだろう」


 呆れから肩を竦めるアヤトにロロベリアはぐうの音も出ない。

 元より貴族社会や立場に疎いことから忘れがちだが、ミューズだけでなくロロベリアの両親も爵位こそ子爵だがかなりの重鎮。そしてレイドやエレノアを含めた王国の権力者、また帝国の皇女サクラと懇意にしているのはアヤトだけではない。

 シゼルの目的はワカバの息子アヤトだったが、公国に訪れた自分たちとも顔通しをしたのなら三大公爵家のスフィラナ家からすれば出遅れた形になる。

 つまりワカバを心配していたシゼルとは違い、スフィラナ家の目的は他国の重鎮の子女との顔合わせ。

 ダイチもスフィラナ家は身分や精霊力の有無に固執する古い考えが抜けきれないと言っていたなら、ヒフィラナ家の血筋を引こうと平民のアヤトよりも他国の伯爵家や子爵家の子女を重視するのはあり得る話しで。


「故に元首さまは念のため程度の忠告を俺にして下さったんだが、どうやら己の立場を全く理解していないお前らにもしておくべきだったようだ」


「すみません……」

「申し訳ありません……」


 ロロベリアだけでなく自身の身分に疎いミューズも今さら理解したようでアヤトの嫌味にも素直に謝罪。

 ただアヤトとの接触とは関係なくスフィラナ家当主の目的が自分たちと知ったロロベリアは気が重くなる。ただでさえ貴族としての振るまいを苦手としているのに、貴族としての社交的な場など初めてなのだ。


「とまあ己の立場を理解したなら尚さら断れんだろう。ま、せいぜい足下を掬われんよう振る舞うことだ」

「「……はい」」

「そんでもってアヤトくんはマジで自重しろよ」

「つーかお前らはその格好で当主さまと会うつもりか」

「おい無視するな。返事してくれないと余計に怖いだろ!」


 フロッツの注意を無視してアヤトが指摘するようロロベリアとミューズは練武館から直行で書庫に来たので訓練着のまま。確かにスフィラナ家当主との面会には失礼かもしれない。


「構わん構わん。なんせあちらさんも急に来おったんじゃ、無礼なのはお互い様よ」

「かもな」

「じゃがミューズちゃんやロロベリアちゃんが恥ずかしいのなら着替えてくるか? あやつらなんぞいくらでも待たせればええしのう」

「さすがにこれ以上お待たせするのは申し訳ないので……」

「……このままで良いのなら私は構いません」


 しかしミナモの報告を受けてから随分と経っているだけに忍びないと、お言葉に甘えて訓練着のままで面会することに。

 もちろん武器はミナモに預けたがアヤトはいつも通り帯刀したままなのは言うまでもなく。


「なあアヤトくん。頼むから自重してくれよ」

「さあな」

「安心せいフロッツ殿、多少のやんちゃくらいワシが何とかしてやるわ。故にアヤトも普段通りで構わんぞ」

「へいよ」

「なんでダイチさまにはちゃんと返事するの? そんでもってアヤトくんは多少のやんちゃじゃ済まない子だからダイチさまも注意してくださいって」


 やはりスフィラナ家には辛辣なダイチに振り回されているフロッツが不憫ではあるも、面会の目的が目的なだけにロロベリアも余裕がないままシゼルと面会した応接室の前へ。


「神さま……これからは毎日お祈りするんで何事もなく終わらせて下さい……頼みます」

「フロッツ殿は心配性じゃ」


 ついには神頼みを始めるフロッツに逆効果ともやはり言えず、セルファがドアを開けてダイチが室内へ。


「待たせて済まんかったのう」

「こちらこそ急な訪問、申し訳ない」


 ロロベリア達が続く中、シゼルと同じソファに座っていた男性が立ち上がる。

 この男性こそアドリア=ラグズ=スフィラナ。肩口まで伸ばした濃いめの金髪にやや細目の瞳は碧、スラリとした体格をしているが風の精霊術士としてかなりの力量と事前に聞いていた。また先代当主が早く隠居したので年もリョクアの二つ上らしいが、人懐っこい笑みが印象的で若く見える。

 しかしダイチから話を聞いた後なのであの笑みに裏がありそうと勘繰ってしまう。


 そしてアドリアの背後に立つ、短く切りそろえた茶髪に鋭い金瞳をした男性はガイラルド=ハーヴェス。

 公国の誕生からスフィラナ家に仕える一族で今回の席にも同伴しているとは事前に聞いている。アドリアに比べてガイラルドは体格も良く、その実力は公国随一と評価されている精霊術士らしい。

 年は三〇と聞いているが、隙の無い佇まいや纏う雰囲気はサーヴェルのような風格があり、視線を向けられたロロベリアは気圧されるほどで。


「ガイラルド、お主はただでさえ厳つい顔をしておるんじゃ。あまり睨むでない、客人が怯えるじゃろうて」


 ……確かに武人然とした風格に気圧されたがその言い方はどうかとダイチに突っこみたかった。


「ヒフィラナ卿は手厳しい。それよりも……」

「お主はお主でせっかちな奴じゃ」


 それはさておき、アドリアの視線から用件を察したダイチはため息一つ。


「じゃが一つ言っておく。ワシの曾孫はワカバに似て豪胆でな、加えて平民育ちが故に礼儀というものを知らん。それを踏まえて大目に見てくれ」

「構いませんよ。ガイラルドも良いね」

「畏まりました」


 とりあえずアヤトに対する牽制を挟んで改めて、ミューズから順にダイチから紹介してもらい。


「そして見目で分かっておると思うが、曾孫のアヤトじゃ」

「アヤト=カルヴァシアだ」

「君がワカバ嬢のご子息か……会えて嬉しいよ」

「そりゃどうも」


「「…………」」


 まあ牽制したところでこの場にいる誰よりも太々しい態度をすればアドリアも面食らうわけで。


「はは……確かに豪胆のようだ」

「豪胆かは知らんが曾爺さんが言うように礼儀を知らんだけだ。むろん目に余るなら退室しても構わんぞ」

「最初に構わないと言ったからね、私は退室なんて望まないよ」


 それでも切り替えの速さはさすが公爵家当主と言うべきか、すぐさま人懐っこい笑みで対応。


「…………」

「……俺こそ退室したい」


 ただガイラルドは必死に堪えているのが伝わるだけに、シゼルのようにはいかないとフロッツが弱音を吐くのも無理はなかった。




アヤトくんばかり注目されていますが、ロロやミューズも公国側からすれば重鎮なんですよね。

果たしてスフィラナ家当主アドリアさまの目的はどちらか。

そして面会は無事に終わるのか、その辺りはもちろん次回で。



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読んでいただき、ありがとうございました!



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