パートナー決定
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リースへの特訓に関する準備があるとお茶一杯分の時間を過ごしたロロベリアは学食でアヤトと別れた。
それなりに納得がいく理由を聞けた上に約束も取り付けた。後はアヤトが驚くほどの成長をするだけ……なのだが問題は誰と組んで出場するかだ。
最有力候補のリースと、内心期待してたアヤトが共に組むなら他に当てがない。
自分と相性が良く、頼りになる相手がロロベリアにはもう一人当てがある。
問題はリースほど上手く連携が出来るか分からない。加えて彼は選抜戦に対してやる気がない。もちろん下手な実力者よりは信頼関係がものを言うタッグ戦、意欲さえあればリースに次ぐ理想の相手。
しかし出場するからには勝ちたい。なら同じく強い気持ちで組んで欲しい……その気持ちを持ってくれるかどうかが鍵で。
出場登録は明日中、ただ先に誰かと組まれると本当に当てが無くなるため女子寮に戻らずそのまま男子寮へ。
「やっぱ今日は訓練なしか」
だが正門へと続く噴水広場に目的の相手が居た。
「まあ選抜戦で敵同士になる可能性あれば一緒に特訓もないだろうし当然だけど」
「……ユースさん」
そう、リースと同じくらいに時間を共有した信頼関係、実力込みで互いの手の内を知っている。
ただ学院に通う前から共に訓練をする時間が減り、父親の命令で選抜戦に出場する気はあるが自主的ではない。
連携や意欲に問題はあるも、そこさえ除けば理想のタッグパートナーになるのでロロベリアはユースにお願いするつもりでいたのだが、なぜここにと首を傾げてしまう。
「それはおいといて……姫ちゃん、良ければオレと組んで選抜戦に出てくれない?」
しかし逆にお願いされてしまいロロベリアはキョトン。
「ああ、うん……驚くわな。でもなんつーか……ぶっちゃけ姉貴に頼まれてさ」
「リースに……?」
反応で察したユースは正直に話していく。
元よりロロベリアに誘われれば共に出場するつもりでいたリースが父親の命でアヤトと組むことになり、ロロベリアが序列内で組む相手が居ないと知りユースにお願いした。
一学生同士でやる気のなさが問題でも、それ以上に他の学院生よりもユースは頼りになるからで。
何故ならロロベリアの悪評が広まっていた際、ほとんどの学院生は噂を鵜呑みにし、嫉妬や自尊心から敵に回った。エレノアとの一件で謝罪をしても、手のひら返しの態度がリースには許せなかった。
その点元より事情を知れど最初から最後までロロベリアの味方で居てくれたユースは違う。
こうした信頼も踏まえてロロベリアがユースを誘うと予想していたので――
「……もし姫ちゃんの足引っ張るなら燃やし尽くすと脅されました」
脅迫まがいの忠告を受け、ユース自ら誘うために待っていたらしい。
「もちろん無理にとは言わないぜ? オレとしては姫ちゃんと組むなら他の序列持ちとやり合うこともなくてラッキーだし、代表に選ばれたら親父殿が褒美くれると良いことずくめ……だけど、姫ちゃんにはメリットがない」
「……はあ」
「まあ姉貴が言うように今さら姫ちゃんの実力や立場ですり寄る奴らよりはマシかもだけど、やっぱ実力差がありすぎだし。とにかく他に候補いなけりゃ考えといてってお話だから」
苦笑混じりに話を終えられロロベリアは呆れてしまう。
自分の意思ではなく姉のリースに頼まれて強制的に、ロロベリアの立場や勝利すれば褒美があるとの不純な動機で誘われて了承する者がいるだろうか。
とのような理由ではなく――ユースを知るからこそ呆れてしまう。
本当に不純な動機を秘めているならリースに脅されたことも、自分のメリットも口にしない。そもそもユースが本当に信頼できない性格ならリースがお願いなどしないだろう。
リースも、ロロベリアも知っている。
普段こそおちゃらけでやる気がなさそうなユースは頼りになる存在だ。
タッグ戦は実力よりも信頼関係。自ら申し出てくれるならまずロロベリアの、リースの信頼を裏切らない。それがユースで。
なら今の自分にユース以外で理想とする相手はいない、つまり――
「ユースさん、私と選抜戦に出場してくれませんか」
「……え? いいの?」
「良いも何もユースさんから誘ってくれたじゃない」
断る理由はないとロロベリアは即決。
「なのでこれからお願いします」
「……いや、姫ちゃんが良いならむしろオレこそよろしくだけど」
ロロベリアの差し出す手をユースは戸惑いながらも握り替えし、これでパートナーは決まった。
ならば早速とロロベリアは行動に移る。
「ではユースさん、早速ですが訓練しましょう」
「今から?」
「今からです。選抜戦まで時間がありません、少しでも連携を深めておかないと。ユースさんとの模擬戦も久しぶりですし」
「いや……それよりもまずするべきことがあるんじゃね?」
「……それは?」
「姉貴とアヤトくんコンビが同じ組に入らないことを神さまにお祈りを――」
「マヤちゃんにお願いしたら余計に入ると思う」
「うっわ……マジなりそう。ていうか、この手の冗談が使えないの忘れてたわ」
「むろん二人と同じ組に入っても私は負けるつもりはないけど。だから少しでも特訓です」
「……へいへい」
テンション差はあれどユースと共にロロベリアは訓練所へ向かった。
同日夜。
「……わかった」
ユースとの特訓を終えて寮に戻ったロロベリアはアヤトに頼まれた言伝をリースに伝えれば嫌々で、しかし意外にも素直に了承。
「お父さまに言われたから……あいつの手伝いとか嫌だけど……仕方ない……」
「そんなに嫌なの……とにかく、明日は私も一緒に行くから清掃と仕事の説明をしてあげる。合い鍵はその時に渡すわ」
「お願い……はあ……」
「だから、そんな嫌がらないの。それに小父さまの言う通りよ、アヤトは厳しいけど、学べることは本当に多くあるもの。私が保証するから」
「分かるけど……選抜戦とか……あいつなら絶対に出場しないと思ってたのに……どうして」
やはり気になるのかリースはもう何度目かの疑問を口にする。
ロロベリアも詳しくは知らないがリースの父親から依頼を受けているのは聞いているが、内密なので話せず。
「アヤトの考えが分かるわけないでしょ。いいから今日は早く寝なさい、明日は五時起きよ?」
「……わかった」
努めて明るく接した。
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