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白き大英雄と白銀の守護者  作者: 澤中雅
第十三章 叶わぬ夢を花束に編
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初日を終えて

アクセスありがとうございます!



 ヒフィラナ家との会食は予想に反して終始和やかムードで終了。

 リョクアやミリアナは同じ貴族としてミューズやロロベリア、フロッツとの交流を重視。クアーラは両親に遠慮してか口数は少なく、希に参加した際レムアやアヤトに気遣い話題を振る程度。ホノカは基本聞き手で会話に参加しない。

 ダイチは孫夫婦や曾孫の交流を優先したようでクアーラと同じ対応と、つまりアヤトが会話に参加する機会が少なかった。

 変わりにダイチやクアーラが話題を振った際、余計な返答をしないか内心ヒヤヒヤしていたが適当な相槌を返すくらいで終えてくれたのも大きい。

 お陰でホノカ以外の親族とはそれなりに交流を深められた会食だった。


「……この手の食事は肩が凝るんだよなぁ」

「……私も疲れました」


 のだが、フロッツとロロベリアは憔悴気味。ダイチの時はむしろ相手が砕けた対応をしてくれたので気を張らなくて済んだが、貴族としての対応を迫られると変に気遣うわけで。

 またテーブルマナーも要求される場にも慣れてないだけに、貴族とは言え社交の場と縁のない二人にとっては色々と気を遣いすぎて料理の味も分からないほど大変な時間だった。

 対するミューズは慣れているだけにテーブルマナーや受け答えも見事の一言。レムアも客人としての立場は初めてでも、ミューズに作法を教えただけあり充分。

 ただ一番完璧なテーブルマナーを披露したのはアヤトだったりする。これで口のマナーが良ければそれこそ完璧なのだがそれはさておき。


「なんにせよ問題なしで乗り切れたなら一先ず良しとするか。あちらさんも無理にアヤトくんと関わろうとしないみたいだからな」


 初対面の様子から少なくともミリアナやホノカは無闇に接触する雰囲気でもない。リョクアも注意をされたのなら控えるだろう。

 唯一アヤトに興味を示していたクアーラも普段は学院に通っているなら機会も少ない。あったとしてもダイチのように流してくれそうなタイプなら大事にもならないはず。


「安心したならさっさと部屋に戻れ」


 お陰で多少は心労が減りそうだとフロッツは肩の力を抜くもソファに寝そべりであやとりをしていたアヤトが面倒げに急かす。

 というのも会食後、フロッツも含めた四人はそのまま当てられた部屋に戻らずアヤトの部屋に直行。食後のティータイムを楽しんでいたりする。


「つーかお前らはなぜ俺の部屋に集まって茶を飲んでんだ」

「一部屋に集まった方がセルファさんやミナモさんの仕事が一度で終わるだろ」


 故の疑問に対しフロッツは平然と返す。

 確かに各々の部屋にお茶を用意するよりは二人の手間も省ける。

 また気疲れしていただけに仲間内で落ち着いた時間を過ごしたいのもあるが、アヤトの部屋でなければアヤトが参加しないとの理由もあった。

 フロッツとしても保護者として少しでもアヤトと交流を深めたいわけで、ロロベリアやミューズは言わずもがな。

 ただこの二日間は移動に費やしている。明日はスフィアを案内してくれるらしいので早めに休んで疲れを取るべきとフロッツは席を立つ。


「でもまあアヤトくんの言う通りか。そろそろお開きにして明日に備えようぜ」

「そうですね。ならお茶は――」

「私が片付けますのでご安心を」

「……お願いします」


 同意したロロベリアがティーセットを返しに行こうとするも、仕事をしたくてウズウズしていたのかレムアが我先にと片付けを始める。


「なら俺たちは先に休ませてもらうぜ」

「アヤト、おやすみ」

「おやすみなさい」

「へいよ」


 三人はそれぞれの客室に戻り、片付けを終えたレムアも遅れて退室しても変わらずあやとりに興じていたアヤトだったが不意にその手が止まった。


 コンコン


「入れ」


 同時にノックが響き入るよう促しつつ、ドアが開くのに合わせてアヤトはあやとりの紐を解いた。


「急な訪問……申し訳ございません」


 来客は先ほど部屋に戻ったはずのミューズで、一礼してから入室する間にアヤトも解いた紐をテーブルに置いて身体を起こす。


「もしかして察していましたか」

「どうだろうな。なんにせよ用があるなら早めに済ませろ」


 否定も肯定もせず促すアヤトに恐らく自分が訪れるのも、目的も察していると判断。

 故に必要ないかもしれないが念のためにと報告にきたミューズは対面のソファに着席。


「アヤトさまは()()()()()()()()()()()()()()()どう思われますか?」


 その切り出しにアヤトは背もたれに身体を預けてほくそ笑む。


「ま、お前は気づくだろうな」



 ◇



「お主はアヤトをどう見る?」


 同時刻、書斎でお茶の用意をするセルファにダイチはアヤトについて感想を問うていた。


「色々とありますが想像以上の御方かと。特に旦那さまから一本取られたのには驚きでした」

「あれにはワシも驚かされたのう」


 簡潔な意見にダイチも苦笑い。

 ギーラスからワカバの息子かもしれない人物に心当たりがあると聞いてすぐダイチは情報を集めた。その人物が公国にも噂が流れていた精霊力持ちに匹敵する持たぬ者と知った時も驚いたものだ。

 だが実際に立ち合ってみれば噂以上の強さ。精霊力持ちに匹敵どころか公国内でアヤトを上回る者など居ないだろう。

 なぜ持たぬ者でありながらあれほどの強さを身に付けているのか疑問はある。

 しかし強さ以上に興味を向けられるものがアヤトにはあった。


「あやつはリョクアをわざと放置しておったと見破っておるぞ」

「……まさか」


 ダイチの呟きにセルファの手が止まるよう、リョクアの接触は意図的なもの。

 ただ促したのではなく、ダイチの留守中にワカバの息子が訪れたと知ったリョクアがどう動くか敢えて放置していただけ。つまりダイチの急な外出は偽り、ずっと錬武館で待機していた。

 結果はある種予想通りではあったが、アヤトの対応は予想外。

 加えてリョクアの失態を当主として謝罪した際、わざわざ()()()()()()()()()()と強調してアヤトも受け入れた。

 恐らくだが自分は気づいているぞと警告したのだろう。一蹴したダイチに肯定的な態度を返したことから可能性は高い。

 底が知れないだけにダイチですらアヤトを読み切れないが、孫娘も同じだったなら似た者親子と言うべきか。


「なんにせよ、面白い曾孫じゃ。さて、どうなることやら」


 自分の予想を超えられても、それがまた楽しいとダイチは満足げに笑った。



 

親族とのご対面を済ませてヒフィラナ家での初日を終えましたが、色々と思惑があるようですね……。

アヤトくんは今さらとしても感情を読み取れるミューズも何やら察したようですが、その色々についてはもちろん後ほど。


少しでも面白そう、続きが気になると思われたらブックマークに登録、評価の☆をお気持ちのまま★にして頂ければ嬉しいです!

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読んでいただき、ありがとうございました!



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