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白き大英雄と白銀の守護者  作者: 澤中雅
第十三章 叶わぬ夢を花束に編
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ヒフィラナ家

アクセスありがとうございます!



 セルファやミナモとの交流を踏まえ、お茶を飲みながらアヤトがワカバやアースラとの思い出を語り、セルファやミナモの話を聞いたりと過ごした。

 ただ夕食までと時間は短く、一端調理場に戻る二人を見送った後はロロベリアたちも当てられた客室に戻ることに。

 交流の為にアヤトの部屋に居たので荷物はそのまま、荷物整理や着替えを済ませている間に夕食の準備が整ったと報告が。

 ちなみにミナモが報告に来たのだが、最初に報告を受けたロロベリアがアヤトを呼びに行くと要望通りの対応。ミナモは苦笑いしていたがロロベリアは当たり前のように引き受けたのは言うまでもない。

 そして食事の席でも朧月と月守を帯刀したままのアヤトにミナモはまた苦笑いを浮かべる羽目になったがそれはさておき。


「ところでミナモさん? 夕食の席にはダイチさまの他に親族の方々がおられるんでしょうか」

「はい。旦那さまが紹介したいとみなさま既にお待ちになっております」

「……ですよねー」


 予想通りの展開にフロッツは肩を落とす。当主の客人なら紹介されて当然なので一応程度の確認だったがやはり気が重い。

 先走ったリョクアはともかく、ワカバと直接接点のない残り三人の親族がアヤトを敵視する理由はない。しかし妻や二人の子どもがリョクアの影響からワカバに対する印象がいいとは言えないはず。

 当主の客人にリョクアのような暴走はしないだろうが、生粋の公国貴族がアヤトの態度をどう捉えるかは火を見るよりも明らか。ダイチが許している以上トラブルは起きないとしても、和やかな会食にはならないと考えるだけでも食欲が減衰していくわけで。


「アヤトくんさあ……頼むぜ」

「テーブルマナーは母に叩き込まれている。それなりに自信はあるから安心しろ」

「だからそうじゃないんだよ……君の場合はお口のマナーが悪すぎるんだよ……」


 なので念のためにクギは刺すもアヤトは見当違いな返答、もう不安しかない。


「ご安心くださいフロッツさま。アヤトさまについては旦那さまが既にお話しになっています」

「あちらにも事前にクギは刺してるわけね。ちなみに反応はどうでした?」

「リョクアさまの奥様は多少気にされていましたが問題ないかと」

「……そうですか」


 ミナモの情報からとりあえず配慮が必要なのはアヤトの叔母にあたる人物とフロッツは理解。

 ただ会食一つでなぜここまで警戒しなければならないのかと、改めてアヤトの保護者役を担ったカナリアに敬意を払う。


「私もフォローします」

「レムアさん……頼もしいぜ」

「お前ら俺をなんだと思ってんだ」

「生粋のトラブルメーカーだろ」

「まあまあ……」

「アヤトさまなら大丈夫です」

「……たく」


 などと公爵家との会食に対する緊張感とは別の緊張感を抱くのはフロッツとレムアのみ。ロロベリアやミューズはリョクア以外のアヤトの親族に会えるのを内心楽しみにしつつ食堂に到着。


「お客さまをお連れしました」

「ご苦労」


 聞いた通り食堂内では上座に就くダイチ以外の親族も左側に並んで席に就き、途端にリョクアの表情が歪んでいたが他の三人は興味津々と言った視線を感じる。

 また親族については事前にある程度教えてもらってるロロベリアやミューズの視線は自然と長女に向いてしまう。


「お客人、まずは座ってください」


 二人の反応を他所にダイチが席に就くよう促せば、右側に控えていた使用人が椅子を引いて対応。

 ただ控えていた使用人は四人、また引かれた椅子もダイチ側から四席のみで。


「セルファから聞いたが、お主は使用人に世話をされるのは気が引けるんじゃろう?」


 疑問視するより先にアヤトに向けてダイチがほくそ笑む。

 つまり要望通り自分でやれとダイチなりの皮肉らしいがそこはアヤト。


「食事は同じ物を出してやるがオマケならそこで良かろう」

「話が早くて助かる」


 ダイチの皮肉もどこ吹く風、むしろ当然といった態度で下座の椅子を引いて着席。

 この対応にリョクアの表情が更に歪むがアヤトは止まらない。


「お前らもさっさと座ったらどうだ」

「この曾孫にしてこの曾祖父かよ……」

「アヤトさまですから」

「ロロベリアさまはこちらへ」

「ありがとうございます」


 呆れながらミューズ、ロロベリア、フロッツ、レムアの順で席に就くと何故かダイチはご満悦。


「とまあアヤトはこう言った奴じゃ。みなもいちいち気にするでないぞ」


 どうやら言葉だけでなく実際に為人を知らしめる狙いだったらしいが、初対面の三人は微妙な反応。


「既に話しておるがワシの客人じゃ。挨拶の前にリョクアよ」

「……客人の方々、先ほどは失礼な態度を取ってしまい申し訳ない」


 全員が揃ったところでダイチに指名されたリョクアは席を立ち謝罪を口にする。


「このようにリョクアも反省しているので、どうか許してやってください」

「リョクアさまの謝罪、受け取らせて頂きます」

「感謝します。では改めて、私はリョクア=ラグズ=ヒフィラナ。みなさんを歓迎する」


 代表してミューズが対応すればリョクアも安堵の笑みを。

 ダイチに注意をされたとはいえ妻や子どもの前でも誠心誠意の謝罪ができる辺り、アヤトに対する敵意がなければ誠実な人らしいとロロベリアは関心する中、腰を下ろしたリョクアから家族の紹介が。


 まずリョクアの隣りに座るのはミリアナ=ラグズ=ヒフィラナ。

 セルファの情報によると社交会でリョクアと出会い、互いに惹かれてヒフィラナ家に嫁いだ元伯爵令嬢。

 結い上げた鮮やかな金髪に大きな金瞳、今年三五になるそうだがかなり若く見える。また持たぬ者で武芸には疎いが市勢に強く、将来ヒフィラナ家当主となるリョクアを支えるに相応しい夫人と聞いていた。


「みなさんの寛大なお心に私からも感謝を」


 ただミリアナの興味はミューズ、ロロベリア、フロッツに向けられているのが視線で分かる。ミューズの専属従者とは言え平民のレムアは客人としてとりあえず受け入れているようだがアヤトには視線すら向けようとしない。

 ミナモが懸念していたように身分による区別をするのは生粋の公国貴族故か。ただ公国の常識を当てはめればミリアナの対応は間違っていない。


「どういたしまして」


 むしろ変にアヤトと関わろうとするよりはマシと、フロッツも笑みで対応。


 続いて紹介されたのはミリアナの隣りに座るクアーラ=ラグズ=ヒフィラナ。アヤトの一つ下で従弟に当たる長男。

 ミリアナの血を濃く受け継いでいるようで左肩から流すよう一つに纏めた金髪と大きな金瞳に顔立ちも中性的で温和な印象がある。

 しかし精霊術士としての実力は高く、在籍しているスファーナ学院の精霊術クラスでも一学生でありながら有望視されているらしい。加えて頭脳明晰、周囲にも慕われている人柄で。


「僕は学院があるのであまりお会いできないかもしれませんが、機会があればお茶を共にさせてください」


 またレイドを彷彿とさせる柔和な笑みや口調、レムアにも語りかけるようにミリアナと違って身分によって対応を変えるようなタイプでもないようだ。


「アヤトさんも。僕たちは従兄弟になりますから仲良くして頂ければと」

「機会があればな」


「…………」

「……アヤトくんさぁ」


 アヤトにも変わらず対応するなら尚更なのだが、クアーラに対するアヤトの返答にミリアナのこめかみがひくつきフロッツが肩を落とすのも無理はない。


 まあ敵意がないだけ御の字と捉えるとして、最後に紹介されたのはホノカ=ラグズ=ヒフィラナ。クアーラの二つ下でもちろんアヤトにとって従妹に当たるヒフィラナ家の長女。

 現在はスファーナ学院に入学する為、屋敷で教育を受けているので滞在中はクアーラよりも顔を合わす機会があり、持たぬ者で武芸の才は平凡でも頭脳に関しては兄と同等の才があるらしい。

 そして名前や食堂に入ってロロベリアやミューズの視線が向いたように、父のリョクアにこそ表れていない東国の血が影響しているのか、ホノカの長い髪や伏し目がちな瞳は黒寄りの灰色。


「……みなさま、よろしくお願いします」


 ただ曾祖父や父と違って内気な性格らしく、小柄で愛らしい顔立ちも相まって守って上あげたくなる可愛さがあった。

 加えて内気な性格からかどことなくアヤトを怖がっているようで、気にしながらも視線を向けようとしない。


「こちらこそよろしくお願いします」


 例えアヤトの自業自得でも、できれば従妹として仲良くなって欲しいとの気持ちを込めてロロベリアは笑顔で返した。


「さて、紹介も終えたことじゃ。みなで食事を楽しもうかのう」


 そしてロロベリアたちも自己紹介を済ませたところでダイチが手を叩き、テーブルに料理が並べられて夕食を囲いつつ交流の時間となった。




今回はざっくりとした紹介ですがダイチやリョクア以外のヒフィラナ家でした。

これでアヤトくんの親戚も勢揃い。それぞれの詳しい為人については後のお楽しみと言うことで。

まあアヤトくんの親戚ですからね……どうなることやら。


少しでも面白そう、続きが気になると思われたらブックマークに登録、評価の☆をお気持ちのまま★にして頂ければ嬉しいです!

みなさまの応援が作者の燃料です!


読んでいただき、ありがとうございました!



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