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白き大英雄と白銀の守護者  作者: 澤中雅
第十三章 叶わぬ夢を花束に編
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報告と深まる疑問

アクセスありがとうございます!



 出会い頭の立ち合いもあったがダイチが正式にアースラをアヤトの父と認めたことで、本当の意味で曾祖父と曾孫が対面を果たした。


「これ以上みなさんを疎かにするのは申し訳ないか」


 故にダイチも満足したのか、今までの破天荒ぶりとは打って変わり凜々しい顔つきに。


「ワシがダイチ=ラグズ=ヒフィラナじゃ。よう来なさった」


 さすがは公国元首を務めた御仁。公私を切り替えれば王国や教国の王に引けを取らない威厳から四人も無意識に背筋が伸びてしまう。


「お初にお目に掛かりますダイチさま。ミューズ=リム=イディルツと申します」

「ロロベリア=リーズベルトです。ダイチさまにお会いできて光栄にございます」

「私はフロッツ=リム=カルティ。ご招待してくださり感謝を」

「ミューズさまの従者、レムアと申します」

「みなさんについては曾孫の友人とギーラス殿から聞いておる。故に畏まらず、友人の爺さんとして接してくれて構わぬ。ワシもかたっ苦しいのは好まんからのう」


 故に四人とも出来る限り粗相のないよう自己紹介を心がけるも、ダイチはすぐさま笑みを浮かべて砕けた口調に切り替える。

 その変わりようから言葉通り当主としてではなく、曾孫の曾祖父として接して欲しいとの気持ちが伝わり四人の緊張も解けていた。


「ところでアヤト、べっぴんさんを二人も連れて来るとはやるではないか。して、どちらがお主の良い人なんじゃ?」


「「――――っ」」


 ただ砕けすぎというべきか、ロロベリアとミューズを交互に見据えて興味津々とアヤトに問いかけるなり二人の顔が真っ赤に染まった。


「それとも両方に花状態か? ワシの曾孫は隅に置けんのう」

「やはり頭は老いぼれか。一人は飼い犬、一人はただの友人だ」

「アヤト!?」


 ……のだが、アヤトの訂正にロロベリアの顔は別の意味で更に赤くなるがダイチは止まらない。


「……ふむ。どうやらロロベリアちゃんがお主の……ワシ、反応に困る」

「違いますダイチさま! 今のは言葉の綾で私は――」

「騒ぐな白いの」

「しろいの……まんまじゃな。しかし愛犬に対して酷い名ではないか?」

「ダイチさま聞いてください!」

「愛犬でもねぇからな」

「アヤトは少し黙ってて!」


 ダイチのからかいとアヤトの無粋発言にロロベリアは板挟み状態。緊張どころか素でわたわたと対応する結果に。


「アヤトさまから友人と紹介してもらえました」

「あのアヤトさまが友人と口にしただけでも大きな一歩かと」

「……よかったね」


 ちなみにアヤトの訂正に喜ぶミューズとレムアにフロッツはおざなりな称賛を。

 まあ相手が捻くれ者のアヤトなだけに気持ちは分かるがそれはさておき。


「まあお主らの関係は後ほどゆっくり聞かせてもらうとして、まずは曾孫を構い過ぎてみなさんを蔑ろにしたこと、謝罪する」


 四人から緊張を感じなくなったところで改めてダイチは客人を無視した立ち合いについて謝罪を口にする。


「それと我が孫の無礼も、当主として謝罪させてもらいます」


 また帰宅時にセルファから報告を受けたのか、リョクアの失態には先ほどよりも真摯な態度で頭を下げた。

 

「リョクアにはワシからきつく言っておくので、どうか許してもらえんでしょうか」

「セルファさんにお伝えしたように、わたしたちは気にしていません。なのでリョクアさまの処置もダイチさまにお任せします」

「みなさんの配慮、感謝します」


 故に四人の中で最も身分の高いミューズが代表して謝罪を受け取り、ダイチも安堵の表情。


「俺も子息さまについては何とも思ってねぇよ」

「今のは客人に対する謝罪よ。曾孫のお主には関係ないわ」


 またアヤトも受け入れるが、家族なら別問題とダイチは一蹴。


「だろうな」

「……まあええ。ところでお主らは昼食は済ませたのか」


 もちろんアヤトはどこ吹く風、若干呆れつつダイチから提案が。


「スフィアに到着する前に済ませている」

「なら夕食まで茶を飲みながらゆっくりするかのう。みなさんも宜しいかな?」


 その提案に四人も了承、セルファに目配せで合図を送りダイチと共に練武館を後に。

 ただ向かった先は応接室ではなく、ダイチのプライベートルームらしく。


「ここに客人を招くのも久しぶりじゃ」


「「「…………?」」」


 上機嫌なダイチを他所にミューズ、フロッツ、レムアは室内の装いに目を丸くする。

 というのも当主のプライベートルームにしては狭く、家具なども最小限に抑えている簡素な内装。なにより床にカーペットの類いも敷いてなければ板張りですらなく、何かの植物で編まれた物が敷き詰められていた。

 奇妙な内装に困惑する三人を他所にロロベリアは記憶を辿り質問を。


「……もしかしてタタミ、ですか?」

「おお、ロロベリアちゃんはタタミを知っておるのか」

「昔文献で読んだので……実物は初めて見ました」

「白いのにしては博識じゃねぇか」


 ニコレスカ家の養子になって以降、東国の文献を調べていたロロベリアは東国の文化に詳しく、元より東国について詳しいアヤトも気づいていたらしい。


「俺も母から聞いていたが、まさか現物を拝めるとはな」

「ワカバもこの部屋には来ておったからのう。それで、感想はどうじゃ?」

「落ち着いた装いは悪くない」

「ほのかな植物の香りも素敵です」

「じゃろう? ワシも文献を元に作らせて本物は見たことがないんじゃが、気に入っておる」


 自慢の私室を褒められダイチは得意げに笑うもそのまま入らず、まずは五人に確認を。


「難点と言えばタタミが痛むので履き物を脱がなければならん。故に面倒であれば別の部屋にするがどうする?」

「その程度の面倒なら構わん」

「私も問題ありません」


 しかしアヤトやロロベリアは当然、ミューズらも物珍しい文化に興味深いと了承。ダイチに続いてそれぞれ靴を脱いで室内へ。


「靴を脱いで部屋に入るのも変な感じだけど……悪くないかも」

「ちょっとした開放感とでも言いますか、楽しいですね」

「気に入ってもらえてなによりじゃ。セルファ、みなさんに座布団を」

「畏まりました。みなさま、こちらの上にお座りください」


 また部屋の隅に重ねているクッションとは違う東国の敷物をテーブルに並べるセルファに感謝を伝えて一同は着席。

 上座にダイチ、下座にアヤトが。両サイドにロロベリアとフロッツ、ミューズと応接室と同じ配置に。


「レムアさんもお座りください」

「ありがとうございます」


 ただ床にそのまま座るので一人立っているわけにもいかず、レムアも勧められるままミューズの隣りに着席。

 そのままセルファはお茶の用意の為に一端下がったところで早速ダイチが切り出した。


「ところでアヤト。お主の刀はもしやジン殿の作か?」

「そういや曾爺さんの刀はジンから譲り受けたものらしいな」

「……なぜお主が知っておる」

「先ほどセルファが話していただろ」


 立ち合いの最中、セルファとのやり取りが聞こえていたらしいアヤトはさておいて、刀を打てる職人といえば他に居ないとダイチも察していたようだ。


「手紙には夢を叶えたと書かれておったが、現物を拝めるとは思いもよらなんだわ」

「ジンから手紙が来たのか」

「お主がどこまで聞いたかは知らんが、昔世話をしたからのう。義理堅い男であったから報告もするじゃろうて。にしてもお主がジンの刀を手に入れているとは奇妙な縁じゃ」

「かもしれんな」

「して、ジンは元気にしておったか? 義理堅いワリに報告の手紙以降は音沙汰無しで気になっておったんじゃ」


「「「「…………」」」」


 しかしジンの最期までは知らないようで、ロロベリアだけでなくツクヨとの交流で事情を知った三人も沈痛な面持ちに。


「……あんたになら話しても構わんか」


 アヤトもダイチは知っておくべきと判断したのか製法については伏せた上で、簡潔ではあるがジンとの出会いやツクヨという娘がいることを伝えていく。

 ただ朧月の完成を目前にジンは霊獣との戦闘で亡くなったと知り、ダイチはショックを受けたようで目頭を拭いつつ大きく息を吐いた。


「そうか……ジンは逝ってもうたか……」

「残念ながら」


 対するアヤトはタタミに置いていた月守を鞘ごとテーブルに。


「こいつがジンの言っていた月守だ。よければ見てやってくれ」

「……そうさせてもらおう。月のような美しい刀じゃ……ジン殿、見事なり」


 自ら月守を鞘から抜き、淡い金色の輝きを放つ刀身を見据えダイチは天国にいるであろうジンを静かに称える。


「そしてこいつがジンの遺作だ」

「……柳雪のような刀身でありながら、世の邪を全て浄化しそうな輝きは柳雪を超える美しさ。朧月もまた見事なり」


 続いて今度はアヤト自ら鞘から抜いた朧月の刀身の煌めきは息を呑むほどの美しさ。

 ジンが魅入られた始まりの刀を確かに超えたと、柳雪の所持者としてダイチは認めるも気になることが。


「しかしアヤトよ、なぜ朧月は直接見せてくれぬ?」


 ジンの夢を手助けした者として夢を叶えた証の月守は直接確認させてくれたのに、最後の一振りとなった朧月は触れさせようともしないアヤトの対応。

 ダイチとしては朧月の美しさから是非とも手にしてみたいのだが、アヤトは苦笑交じりに首を振る。


「こいつは俺がジンから託された大切な形見だ。ジンの娘ならまだしも触れさせるのは抵抗がある。面倒な拘りかもしれんがな」

「……構わぬ。むしろその拘りは当然よ」


 刀の可能性に生涯を捧げたジンが持ち手を認めて打った唯一の一振りが朧月。ならば手にする資格があるのはジンの技術を受け継いだ娘かアヤトのみ。他者がおいそれと触れて良いものではない。

 故に朧月を鞘に納めてしまうが、むしろ無粋な質問だったとダイチも一人の武人として賛同。

 もちろん話を聞いていたミューズやフロッツ、レムアもアヤトの拘りに納得していた。

 しかしジンの娘以外で、なぜかその拘りが除外されている者が居る。


「…………」


 未だ理由を話してもらえていないロロベリアがアヤトの拘りに一人もやもやしていたのは言うまでもない。




手合わせ交流から改めてダイチと五人の交流でした。

やはりまずはジンについての報告になりますが、アヤトくんの拘りはなぜロロだけ除外されるのか……。

ちなみにアヤトくんはもちろん無自覚です(笑)。



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