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白き大英雄と白銀の守護者  作者: 澤中雅
第十三章 叶わぬ夢を花束に編
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血は争えない?

アクセスありがとうございます!



 リョクアの退室後、セルファの煎れてくれた紅茶でようやく一息。


「旦那さまがお戻りになりました」


「…………いよいよか」


 ――する間もなく、セルファから当主が帰宅したとの報告にフロッツの表情が強ばった。

 ついにヒフィラナ家当主とアヤトが対面する。いくらギーラスから礼儀作法も気にせず実家に顔を出す気分でいいと言われても、いくら孫娘の忘れ形見だろうと相手は公国元首も勤めた公爵家の当主。

 相手が誰だろうと不敬な態度を取りまくるのがアヤト。当主側がある程度の不敬なら構わないと捉えていたら大きな間違い。

 要は当主がどこまで寛容に捉えてくるか次第で今後が左右される。


「カナリア殿……あんたはすげーお人だぜ」


 故に厄介ごとを目前に控え、教国で自分の立場を最後まで勤めたカナリアを改めて尊敬。

 とにかく何をやらかすか全く読めないアヤトが口を開く前に、進んでコミュニケーションを取ることで当主の度量を推し量ろうと心に決めた。


「みなさま、恐れ入りますが練武館に移動をお願いします」


「は?」

「「「…………?」」」


 のだが、なぜか移動を進言されてフロッツから間抜けな声が漏れた。

 てっきり応接室で面会すると考えていただけにロロベリアやミューズ、レムアもキョトン。曾孫との対面をなぜ練武館に選ぶのか。


「へいよ」


 対するアヤトは紅茶を飲み干し疑問も持たず席を立つ。


「お前ら聞こえなかったのか。当主さまがお待ちらしいぞ」

「そうだけども! なんで君は変なところで聞き分けいいかな!」

「静かにしろ」

「すまん……でもさ、なんで練武館でご対面とか疑問ないのか?」

「そんなもの行けば分かる」

「…………」


 なのでフロッツが代表して意見するも極論を返してアヤトは荷物を手に。


「アヤトさま、お荷物はそのままで結構ですよ。面会中に他の使用人がお部屋まで運んでおきますから」

「テメェの荷物くらいテメェで運ぶ」

「……畏まりました。ですが他のみなさまはどうかそのままで」


 相変わらずなアヤトにセルファは苦笑いで一礼、そのまま他の四人に進言を。


「レムアさんも、同じ従者としてお気持ちは分かりますがここは一つ、ヒフィラナ家使用人の矜持を尊重して頂ければと」

「レムアさん。ご厚意に甘えさせてもらいましょう」

「……わかりました」


 同じ従者でもレムアは客人の一人、屋敷内では相手側を立てるべくミューズに言われるまま了承。

 もちろんロロベリアやフロッツも従い荷物を置いたまま応接室を後にした。


「あのぉ……セルファさん?」


 からの、移動中にフロッツは情報収集に勤しむことに。


「当主さまはどうして練武館なんかでご対面を希望されてるのでしょう? 忘れ形見とのご対面にはちょっとばかり不釣り合いに思えるんですけど」

「私もみなさまをお連れするよう命を受けただけで理由までは……申し訳ございません」

「……そうですか」

「だから、行けば分かるだろ」

「分かるけど意味不だから怖いんだよ」

「まあまあ……」


 しかしセルファも理由を聞かされていなく空振りに終わり、怨み節を漏らすフロッツを宥めるロロベリアも困惑気味。

 王国には精霊力持ちに匹敵する持たぬ者が居る、という情報は既に国外にも広まりつつある。相手は公国の公爵家当主、ギーラスから曾孫の話を聞いて情報収集をしていれば自ずとその持たぬ者がアヤトだと辿り着く可能性は高い。


 ヒフィラナ家当主は精霊士としてかなりの手練らしいとクローネから聞いているが既に八〇を超えている。なら場所が場所なだけにお抱えの精霊術士や精霊騎士と模擬戦をさせるつもりかもしれない。

 ただ実力の真偽を確認する為に曾孫との面会場所を練武館にしたのなら、当主も相当の変わり者なわけで。


「……不安しかねぇ」


 フロッツも同じ予想を立てたのか徐々に顔色が悪くなっていく。

 まあ気持ちは分かる。ただでさえアヤトの行動が読めないのに相手側も読めないとなれば保護者として不安だろうが、ロロベリアはアヤトに振り回され続けてもうすぐ一年。

 ある程度覚悟をしていただけにこの程度の事態に動じるはずもなく、アヤトへの信頼が強いミューズはやらかさないかとの不安など抱かぬまま屋敷の外へ。


「こちらが練武館になっております」


「…………?」

「……どうかしましたか?」


 しかし練武館の前に立つなりミューズは不思議そうに小首を傾げてしまう。

 公爵家だけあって練武館の外装は立派な物。ただデザインは王国や教国の物とそう変わらないというのがロロベリアの印象で。


「白いの、持ってろ」

「え?」


 などとミューズの反応を気にしていたが、先にアヤトから荷物が放られてしまいロロベリアは目を丸くする。


「この中には当主さましか居ないんだな」

「……お察しの通りです」

「たく……面倒だが付き合ってやるか」

「なんの話?」

「なにかあったのか?」


 意味深な確認にロロベリアやフロッツが問うもアヤトはため息一つ。道を空けるセルファの横を通り過ぎて練武館のドアを開けた。


「スキありじゃ!」


「ねぇよ」


 キン――ッ


 同時に気合いのこもった叫び共に何者かが襲いかかってくるもアヤトは瞬時に抜刀。

 白銀の一閃を月守で防いだが、それよりも――


「「「………………へ?」」」


 突然の襲撃にミューズやセルファを除く三人は唖然。

 襲撃者はローブのような灰色の衣服を纏い、背丈はアヤトとそう変わらないが顔の皺からかなり高齢の男性。

 また僅かに黒が混じった白髪を後ろに撫で、アメジストのような輝きを帯びた瞳から精霊力を解放した精霊士と分かるがなぜアヤトを襲撃したのか。


「……やりおるわい」

「そりゃどうも」


 三人の疑問を他所にアヤトと襲撃した老人は不敵に笑い合う。


「つーかお外で遊ぶなら練武館に来た意味がないだろ」

「待ちきれんくてつい出過ぎただけよ。故に続きは中でどうじゃ?」

「へいよ」


 そのまま後方に飛ぶ老人を追うようにアヤトも練武館に入るがとりあえず。


「……セルファさん? まさかとは思うけど今の御老人が当主さま……とかじゃないよね?」

「いいえ。あの御方こそヒフィラナ家当主、ダイチ=ラグズ=ヒフィラナさまでございます」


 事前にアヤトが確認しているが、それでも信じられないとフロッツが再確認すればセルファはとても良い笑顔で当主と認めてしまう。

 ロロベリアも模擬戦くらいは予想していたが、まさか出会い頭に直接本人が襲ってくるとは思いも寄らず。



「ヒフィラナ家の血筋は大人しくできないのかよ……」


 アヤトのみならずリョクアや当主も含めて、予想外な行動で振り回されてばかりのフロッツが嘆くのも無理はなかった。



 

ついにアヤトくんとダイチがご対面。

感動とはほど遠いご対面になったのは血筋なのか……フロッツの心労は続くようです。


ちなみに曾祖父のダイチは『大地』と書きます。


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読んでいただき、ありがとうございました!



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